おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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前回までのけもの狩り
 けものはいてものけものはいないよ
アンジェ「すっごーい、君はワンちゃんの餌のフレンズなんだね!」
サキュロント「食われました、ワンちゃんに」


Hunt 21 入団試験

「それで?サキュロントのバカが犬死したのか?

バカだバカだとは思っていたが、ミスリル級に殺されるとはバカここに極まれりだな」

王都のスラム街、そこの目立たない酒場風の建物の特別な一室に怪しげな集団がいた。

スラム街にある建物はどれも薄汚れており、この酒場も一見したところ溶け込んでいるが

この集団のいる部屋は一目見ただけで高価な家財がしつらえており、其の事が彼らの暗黒社会での地位と権力を示している。

八本指の実戦部隊『六腕』

今ここに昨日殺されたサキュロント以外の5名が集まっていた。

死人をバカと言ったのは筋骨たくましく刺青を入れた闘鬼の”ゼロ”

彼らのボスであり、アダマンタイト級冒険者は愚か王国戦士長にも匹敵する実力の持ち主。

 

「ああ、全くこっちの身にもなって欲しいよ。

おかげでこっちにまでとばっちりが飛んできた。上の連中は面子・面子とうるさいからな。

死ぬのならせめてアダマンタイトチームに追い込まれて殺されて欲しかったよ。

そうすれば言い訳もできたものを!」

鎧の男、空間斬のペシュリアン

空間すら断ち切る斬撃を放つ男。

 

「それも正面から喧嘩を売っておいてこのザマだと。

ふん!早くも王都に新しい英雄様のご登場か!其の女もだが、サキュロントの方も俺が殺したいくらいだ」

“千殺”マルムヴィスト、毒剣を使っての暗殺を得意とする超一流の暗殺者。

 

「たかが、落ち目の娼館一つ潰された程度痛くもかゆくも無いけど。

それとこれは別ってワケねぇ、死んでまで同僚に迷惑かけるなんてあのバカらしいっちゃらしいけど」

薄衣の妖艶な女 ”踊るシミター”エドストレーム

五本の刀を自在に操る凄まじい才能の持ち主。

 

「で、問題はこの件をどう落とし前をつけるかだが?

誰かサキュロントの仇を討とうというやつはいるか?」

 

漆黒のローブを纏う不気味な人物が皆に問いかける。

暗い空間にしばし沈黙が走る。

「いるわけはないな・・・所詮は人数合わせのためにとってつけられたような奴。

むしろ感謝すべきだろう、そのウルフテイマーのアンゲリカとやらには。

あの手品師に払う退職金が浮いたわけだからな」

 

他の四人が故人を嘲笑って失笑する。

実際に、幻影を作り出すとは言っても彼自身に卓越した魔法や剣術があるわけではない。

アンゲリカ相手に舐めてかかったが、本来は奇襲で相手を幻影に向かわせて自分は死角から襲いかかるのが最も効率的だったろう。

タネが割れれば対策などどうとでも取れる、初見だけに通じるまさに”手品”。

同僚の死体蹴りはなおも続いたが

ローブの男がおもむろに右手を上げて提案する。

「さて・・・ゼロ、提案がある。

私が調べた限りではそのミスリル級のウルフテイマーのアンゲリカはかなりの実力者だ。

奴の狼は難度100。間違いなくゼロ、お前でも負けかねんよ」

 

皆が目を丸くする、ゼロが負ける?ありえないとでも言うように。

そして難度100?信じられない、それこそ伝説の魔獣ではないかと

それを使いこなすと言うテイマーならアダマンタイト級でもおかしくはあるまい。

 

「確かに・・・俺の戦闘スタイルは対人戦闘に向いている。

大型モンスター相手に不利になるのは否めん、だがデイバーノックよ。

不利だからと言って俺が負けるとは思っておるまい?」

 

不死王デイバーノックは苦笑する。

ローブを払ったその下の顔は生者を憎むアンデッドのそれであった。

この世界では圧倒的強者にちがいないエルダーリッチ、そんなおそるべき者までもこの犯罪組織に加わっている。

「確かに・・お前相手にちょっと大きいだけの獣で勝てるとまでは本気で思っておらんよ。

だがそ奴の実力はわかったろう、我ら六腕といえど油断すれば敗北しかねん。

そこでこの提案だ。その狼使い”アンゲリカ”を六腕に勧誘し、サキュロントの後釜に据えるのは?」

 

不死王の提案には誰もが戸惑いを隠せないと同時に成る程と言う感想もあった。

 

「成る程、それならより前任者を破ったから後任になるという言い訳もたつ。

腕も確かだし、後釜の問題も解決するだろう。

だが?仲間に加わるかな、その女?

聞いた話では正義の味方気取りの蒼の薔薇の後押しを受けてるんだろ?」

マルムヴィストが疑問に思う。

 

「ふむ、確かに世間では正義の為にとなっているな。

だがな、逃げ出した従業員の話を聞いているとその女は正義の味方とも言い切れんようだ」

 

「と言うと?」

 

「その女の殺しの手口は残酷無情、俺も現場を見、従業員の話を纏めたが・・・おお、あそこまで悍ましい殺し方はなまなかなアンデッドでもしはしまい。

そしてわかった、あの女は血に飢えた血狂いよ。

こちらが言いがかりをつけたのをこれ幸いと殺しを楽しむ、ある意味では冒険者連中よりも我々の方に近い感じがするな」

 

場に居合わせたものがしんと静まる。

不死王を持ってして悍ましいとすら形容させるのならば、その性質が善だとは到底思えないだろう。

 

「ほう・・・成る程、つまりそいつが我々に入る可能性は十分にあると言うわけだな・・・

よかろう、で?誰が勧誘する?」

五人が顔を見合わせる、

「それなら俺がやろう、その女ってのは評判の美形なんだろ?

なに、入るならよし、さもなきゃ・・・くっくっくっ。

どっちに転んでも損はない」

空間斬のペシュリアンが名乗りを上げた。

 

「ふむ、まぁいいだろう。

その女はテイマーでもあるが、接近戦もこなせるようだからな。

この中で正面から立ち向かうなら俺かお前が適任だ。

なに、ちょっと脅すか傷でもつけてつけあがった格の違いを教え込んでやるだけだ」

 

そう言ってゼロはペシュリアンに交渉を任せることにした。

 

 

 

翌日、アンゲリカは冒険者組合から呼び出しをくらった。

首都で大立ち回りをした挙句、建物を潰したのだから組合どころか衛兵から呼び出しをくらってもおかしくは無いが。

アダマンタイト級への昇格試験だと言うことだった。

なんでも六腕の撃退とこれまでの実力が認められて王都でのみ登録可能なアダマンタイト級冒険者への昇格が認められたらしい。

「すごいですよ!登録してからあっという間にアダマンタイト級なんて!」

受付嬢ははしゃいでいる。

「うん?でも私これから・・・」

とそこまで言いかけて今回の蒼の薔薇の任務に同行する予定だったのが突然の昇格試験。

これでは彼女たちに同行できないので、後にしてもらおうと思ったが秘密任務ゆえ理由が開かせない。

理由もなしに試験を先延ばしにしてください、では印象が悪い。

それに試験内容にしてもアダマンタイトにふさわしいかどうか見極めるものゆえ、簡単に用意できるものではないらしい。

今回を逃したら次はいつになるやらわからない。

この事をラキュースに話すと

「ええ?もうアダマンタイト!?ってまぁ貴女の実力なら当然か。

うん、もちろん試験受けてきて!大丈夫よ、元々私たちだけでこの任務を受けるつもりだったし!・・・・まぁ不安じゃないかと言われればそうなんだけど・・・」

 

それに蒼の薔薇と行動するなら後々の事を考えればアダマンタイト級の信用を得たほうが良いだろう。

そう言うわけでアンジェは試験を受けることに決定した。

だが・・・彼女が試験を受けるとう報告を受けてほくそ笑むものたちがいるとまでは彼女にもわからなかった。

「ククク・・・ここまで思い通りとはな。

顔と腕はいいが所詮は田舎娘。六腕の真の恐ろしさを教えてやる」

試験自体は正式なもの、だが冒険者組合にも八本指の指は届いていた・・

 

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