おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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もしもここが悪夢の世界と原理的に同じだとしたら
肉体は既にヤハグルのミコラーシュのように滅んでミイラになってると思う。
悪夢から逃れたと思ったアンゲリカを待っていたのは別の悪夢だった
つまりどう足掻いても永遠に悪夢からは出られない、怖すぎる

BGM The Hunter
アンゲリカ

ガゼフ Lv27
アンゲリカ Lv100
シフ Lv100




Hunt 23 戦士長

 

「さて、どういうことか説明してくださるかしら・・・・・」

王都の冒険者組合の受付嬢に詰め寄るアンゲリカ。

そもそもバジリスク討伐が依頼内容だったはずなのに、塒のはずの洞窟で出てきたのは六腕の幹部。

誰が考えたって、冒険者組合が操られたとしか思えない状況。

『おい見ろよ、すげぇ美人だな。依頼に来たどこぞのご令嬢か?』

『ばか、”串刺し姫”だ。死にたいのか』

『あれがか、噂通りの美しさ・・・まるで月の女神・・・』

『俺、ラキュースさんのファンだったけど、アンゲリカさんのファンになったよ』

『いや、一番はやっぱりラナー姫様だろ』

 

組合に入っていくと人で混雑していた中も彼女の前から人が退いていく。

「組合の依頼はバジリスク討伐、にも関わらず私は犯罪組織の襲撃を受けた・・」

 

カンカン・・と杖で床を叩く音が聞こえる。

 

 

「組合が犯罪組織と繋がってた・・・大スキャンダルね、これ」

 

受付嬢はアンゲリカの脅しに蒼くなったり、涙目で『申し訳ありません!ただいま組合長を呼んで参りますので!』と大慌ててでパタパタと受付から事務室の方に飛んで言った。

 

アンゲリカとしては別に大して怒ってもいないが、先日の『串刺し姫』の二つ名をつけられた事件以来別に大したこともしていないのに恐れられるようになってしまった。

恐怖する者とファンとではっきりと区別がつくようになったのは喜ばしいことだろう。

ちなみに受付嬢は恐怖する方であった。

受付の椅子に腰掛け、紅茶を嗜んでいると組合長の方が駆けつけて来た。

「まっことに申し訳ありません!」

と駆けつけるなり南方より伝わる最大級の謝意を表すポーズのドゥゲザァで足元にひれ伏して来た。とはいえ、美女の足元にひれ伏したい男なら世の中にはいくらでもいるのでご褒美かもしれない。「この度の依頼がまさか犯罪者達の罠だったとは知りませんで!」

「いや、私が言ってるのはバジリスクじゃなくて・・・えーと何だっけ?

鎧着てペラい剣持ってた・・・6うでの・・・何だっけ、何でもいいや。

とにかく、そいつを殺したし面倒くさいしアダマンタイトプレートを発行して欲しいのよ。

これ、証明がわりでいい?」

啓蒙の低い連中の名前などいちいち覚えていないのであった。

 

そうやって冒険者組合の受付に袋から血塗れのペシュリアンの空間斬の剣と首であった。

極限まで薄く鍛えた刃を腕の微妙な動きで蛇のようにうねらせて相手の不意を突く剣だったが

ネタを明かせばその程度であり、同レベルあるいはそれ以上の相手には切れ味特化ゆえ重さが足りず二撃目が遅いため接近されたらどうするつもりだったのだろうか?

初見で一撃で相手を確実に仕留める事に特化した剣法を持って、正々堂々と相対するのが間違っている。

不意打ちしようとしてもこの実力差では結果は同じだろうが。

「ひぇ!」

受付嬢は今までにも討伐されたモンスターの一部を換金するくらいは平気で行える。

とはいえ、普通に人の首を野菜でも置くみたいに差し出されたのは初めてだった。

啓蒙の低い連中なら大騒ぎするだろうが、受付嬢や組合長は蒼くなっただけだ。

美女と首というあまりにも凄惨な組み合わせに,勃起した啓蒙の高い連中もいたことを記すこともあるまい。

とはいえ、この世界の住人の啓蒙は低すぎる!

そう、思考の次元が異世界の人間は低すぎるのだ・・・・・

だが、手っ取り早くインスタントで啓蒙を高めようとした連中の末路は知っての通り。

ウィレーム先生のおっしゃる通り、自分の力で成長せねば意味はないのだ

所詮、永劫不滅の存在のアンゲリカは彼らとともに歩むことなどできはしない。

なぜ?自分はこんな事を考えるのだろうか?というかここが悪夢の世界の延長線上なら一つの世界を生み出す儀式には代償が・・・

いや、これ以上啓蒙が高くなりそうな思考はやめよう。

 

目の前に差し出された六腕の一人の頭を見て、啓蒙が高まったのか組合長は大急ぎでプレートを用意させていただきますと言って『君!後は任せたから!』と受付嬢に全てを任せて転がるように事務所の方に

「うん、それじゃぁ私は宿屋の方に戻るから・・・」

と受付嬢の手に首と剣を渡してアンゲリカは出ていってしまった・・・・

「ええぇぇぇぇぇ!?」

涙目で頭を抱えるのだ、今や頭は二つあるが。

 

・・・・

しばらくして、受付嬢が死んだ目をしながら抱える首を受け取りに来たのは王国の戦士団であった。

六大貴族が連んでいる事は言ってみれば公然の秘密であり、その手下の一人の首となると彼らは下手に触れて自分たちまでとばっちりが来ては敵わないと八本指関連は衛兵には無視するように言付けておいた。

そのおかげで取りに来るのは王国の戦士という有様なのだから・・・

そして今ここに犯罪者の首を取りに来たのはガゼフ・ストローノフ王国戦士長。

殺されたペシュリアンは大物であり、報告を受けた戦士長も半信半疑だったのでついて来たのだが。

「ランランラーン、ランランラー・・・」

死んだ目をした受付嬢は発狂でもしたのか歌を歌っていた。

聞くものの啓蒙をあげそうな良い声だと思うのだが、カウンターの上の首を見れば常軌を逸しているのは明白であった。

「おい!君、通報通りあのペシュリアンの首検分に来たのだが・・・」

 

「あ・・・はい・・・どうぞ・・」

とガゼフにぽんと首を渡す、受付嬢。

戦士長に向かってその態度はどうかと思うが、ガゼフにもそのお付きの騎士にもそれを咎める気はなく。

虚ろな目で彼方に何かを呼びかけるような彼女をそっとしておいてあげるくらいの優しさはあった。

「うむ・・・・これがか・・・しかし、モンスターのでもあるまいし幾ら罪人のとはいえ

首を持ち込むなど・・・」

 

「戦士長、これが・・・・あの六腕の空間斬ペシュリアンでしょうか?

偽物という可能性は?」

 

「・・・いや・・この剣、そしてひしゃげたこの鎧に顔。

確かに違法に奴隷を捌いていた八本指の戦闘部隊の一人に相違ない。

お前たちは知らんかもしれんだろうが、私は嘗て六腕と衝突したことがあってな。

その時には結局貴族どもの圧力で連中を殲滅する事は出来なかったのだが・・」

 

「・・ですが戦士長なら勝てたでしょう」

 

「確かに、こいつらの戦い方は言って見れば暗殺者に近いものだった。

最初の一撃を凌ぐか正面から正対すれば勝てるだろう

だが、こいつを倒したのはまだうら若い女性だと聞いているが?

おい、君!」

 

「ああ、ゴース・・・あるいはゴスム・・・・

あれ!?あ!はい!?何のご用でしょうか?」

啓蒙の高い独り言を呟いていた受付嬢に問いただすと正気に戻ったようだ。

 

「大丈夫かね?こいつを打ち取ったのはまだ若い女性だと聞いているが?」

「は、はい。今回の六腕を2名討伐した実力でアダマンタイト級冒険者への昇格が間違いない

”血姫アンジェリカ”様ですね」

血姫、随分と物騒な二つ名だなとガゼフは思う。

戦士長が現れたという事で冒険者組合には冒険者以外にも物見高い庶民が大勢現れた。

『戦士長、まだ噂は聞いてないんですか?

皆その噂で持ちきりですよ、”串刺し姫”アンゲリカ!

今王都で知らない奴はいませんよ』

 

『俺は大狼使いのアンゲリカだって聞いたぜ!門の前に巨大な狼で現れたんだと!』

『強大なビーストテイマーの上に暗黒街に名を轟かせる六腕を二人もやっつけちまうなんて、こりゃとんでもない新人だって持ちきりですよ』

 

噂話を聞いたガゼフは確かに驚いた、王国ではビーストテイマーや魔術師といった自分の手で戦わない者を重視しない風潮がある。

だが、それはガゼフも間違いだと思う。

強力なビーストテイマーなら森や山岳地帯といった人間の不得意な場所を突破することも

人では出来ない速度を活かして偵察、伝令として活躍することもできる。

現に帝国ではビーストテイマーの鷹使いが伝令・偵察として活躍し重視され王国は毎年のように動きを読まれ先手、先手を取られて被害を出している。

数に頼っただけの大軍なだけに素早い命令を行き渡らせることができないのだから

せめて伝令役の魔術師かせめて伝書鷹使いがいればと思うが

王国の偵察・情報伝達軽視はなかなか治りそうにない。

(・・・・迂闊だった、そのような強者が冒険者組合に入ってしまう前に勧誘出来なんだとは・・・)

ガゼフにしても冒険者が王国にとって重要だとはわかっている。

とはいえ、そこまでの才能がある者ならば王国に仕えて王を支えて欲しかったというのが本音だが。

(いや・・・アダマンタイト級とはいえ、なりたて・・・チャンスはあるか?)

ガゼフはこの件を後に王に報告しようと思った。

 

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