おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました 作:溶けない氷
一話見るごとに啓蒙が7up!
Ooh majestic!(すごーい!)
PPPようこそヤーナムタウン!
今日もドッスンバッタン大冒涜!
アンゲリカは宿屋のベッドにドスッと行儀悪く寝転がる。
「はぁ、やれやれ。普通の冒険よりケダモノ狩りの方が多いんじゃないかな、これ」
ちなみに宿泊しているのは蒼の薔薇と同じ王国の高級宿屋。
本当はラキュースの帰りを彼女のベッドを温めながら待ちたかったが、あまりにもひどいセクハラなので追い出されてしまった。
全ての上位者は赤子を失い、そして求めているのだ。
服をポイポイと脱ぎ散らし、下着姿でベッドに寝転ぶ。
血の宴に酔い、満足ではあるが望んでいた冒険者の姿とは違う気がする・・・
冒険者とは未知の古代遺跡や大自然の神秘を解き明かし
文字通り、とてつもない冒険が始まるものと期待していた。
だが実際には王国の冒険者とは大抵は害獣駆除業者にすぎず、しかも低賃金・高リスクなもので
冒険者組合にしても斡旋こそしているが、冒険者の教育は最低限しか行えず
ユグドラシルならある戦士コース・魔術師コース・盗賊コースといったチュートリアルすら殆どない。
「つまんないなぁ・・・・これならヤーナムで腕を磨いてた方が・・・いや、あそこも飽きたな」
もはや何回死んだり死なせたりしたのかも定かではない。
「っていうか、私って何だっけ?」
今のあなたは本当にあなただろうか?
そもそも人間のあなたの記憶が別の物に移しかえられた場合、あなたを定義づけるものはどこにあるのだろうか?
あなたがリアルでどんな人間だったのか?
リアルがあったという記憶はある、自分が生きていたという記憶もある。
だが、もはや記憶は定かではない。
「んー思い出せない・・・まいーか、急ぐもんでもあるまい」
アダマンタイトプレートが出来あがるまで暇で暇で仕方ない。
キャンディやアイスといったお菓子でも買いに行くかと思い、普段着の騎士装束に着替えたところ
コンコンとドアをノックする音がした。
「ブリューティヒ様。ロビーにお客様がお見えです。
賞金首の報酬の件でお話があるという事です」
宿のコンシェルジェがアンゲリカに来訪があると伝えた。
すぐに行くと返事し、宿のロビーに行くと場所に似合わぬ軽装の戦士がいた。
若く、まっすぐな瞳をした若者だ。狩人には一目で向いていないことがわかる。
「お初にお目にかかります、私はクライム。
この度はガゼフ戦士長からあなた様に対して、犯罪者討伐の件で報奨金を支払うゆえ
お手数をかけますが、王城の衛兵屯所までご足労いただきたいとのことです
金額が多大なゆえ、本人に直接手渡すのが規則とのことです。」
よく鍛えられた若者が伝えたのはこれくらいだった。
「ああ、賞金がかかっていたんだったなそういえば。
ふむ、では行くとしようか」
目の前の若者はまた罠の餌だろうか?
いや、餌にするにはまっすぐすぎる。それに流石に城までなら道は覚えているが人通りが多い。
連中もそんなところで仕掛けはしないだろう。
アンゲリカは宿を出て、城に向かうことにした。
手持ちの現金が現地の通貨で無い以上、遅かれ早かれ気軽に消費できるそれなりの現金は必要になる。
その意味では獣よりも簡単に狩れる、賞金首狩りは趣味と実益を兼ねた良い副業かもしれないと思った。
比喩でも何でもなく首を狩るのだからモンスターよりも面白い。
城へと歩いて行くまでの間、道ゆく人誰もがアンゲリカに釘付けになる。
見栄えだけはいいからね。
「あなたは、ガゼフ戦士長の従者?」
「いえ、私はラナー姫様の護衛の者です。
戦士長殿は私のような者にも稽古をつけてくださる大変心の広いお方です」
「ラナー姫・・・ああ、ラキュが言ってたわねお友達だって
お付きの者ってことは貴方も騎士階級の出身?」
「まさか!私はただの平民にすぎません、ですが姫様のおかげで
こうして分不相応な待遇を受けていられるのです」
意外だった、王族の従者とは普通は大貴族の子弟が務めるものと相場が決まっているとてっきり思い込んでいた。
もっとも、それならラキュースがあんなお転婆姫な例もあるのだから何事にも例外はあるのだろう。
城に着くと、そこにはアンゲリカの騎士ではなく中世の騎士らしい騎士が大勢いた。
(鉄、低グレード。ただの鉄、魔力があるわけでも防弾鋼でも無い。
あれじゃただのクロスボウボルトでも貫通するな)
ここに来るまでに市場でも調べたが、マジックアイテムは高価らしく防弾効果のありそうな物は皆無だった。
初期装備の皮鎧だってもうちょっとマシという代物が騎士の装備なのだから農民兵に至ってはお察しである。
これが軍の主力なのか、軍隊とは到底呼べない・・・・よく今まで滅亡してこなかったなと半ば感心する代物だ。
民兵が哀れだ、彼らは相手の矢を貧相な盾と肉体で受け止める生きた盾がわりであり
決着は貴族の騎馬部隊でつけるつもりなのだろう。
・・・・・・毎回負けてるのによく考えを改めないな、頭おかしい。
・・・・軍隊の構成というものは、その国の政治体制が決めるものだから国が変わらないと軍も変わらないのだろう。
人類史を見るとたいていの場合、手遅れだが。
(ま、所詮流れ者が気にすべきことじゃ無いな)
プレイヤーは所詮は流れ者の余所者、あまり関わり合いになれば誰もが不幸になりかねない。
城というとカインハーストの城を連想したが、さすがに入るなりバケモノが襲って来ることはなかった。
王城を少し中に入った扉を抜けたところに屯所はあり、外からは人目につきにく場所にあった。
こういう軍事力を誇示すべきところでは
『我が国はこんなにも精強な兵士を育成しておりますぞ!』と見せつける目的でもっと目立った中庭に練兵しているかと思ったが、あまり軍事力を重視してはいないのだろうか?
戦時中の筈だよね?
それはともかく、練兵をしている一際目立つガタイの壮年の戦士。
あれが戦士長なのだろう、成る程確かに周りの兵とは訳が違う。
「戦士長殿、ブリューティヒ様をお連れいたしました」
「おお、クライムか。ご苦労であった、すまんな本来なら私自らが行くべきところであったのを・・・今はかの連中の護衛で手が離せんでな・・
全く、連中はこの王城がドラゴンの群れに襲われるのでは無いかとでも思っているのかね!?」
ガゼフが言うには、今城に滞在している大貴族を警護するように戦士団に命令されたの
理由はわかっている、稼ぎ頭の8本指の事件にガゼフが首を突っ込まないようにさせるためだ。
多くの戦士がアンゲリカを見て、その美貌と華美な服装に驚く。
悪名高い六腕を2名も倒した凄腕冒険者というからもっとガガーランのような女性だと思っていたらしい。
「私がガゼフ・ストローノフ。王国戦士長だ。
この度の六腕討伐の件で報奨金が王から支払われることになっているが・・・」
チラと戦士長が上の階見ると、そこはどうも大広間らしく大勢の人間の気配がする。
「フゥ、情けない話だが。貴女の功績をよく思わないものも大勢いるゆえ・・・
だが、王はかの悪名高い連中が倒されたことをお話しすると殊の外お喜びでな。
王より直接報酬を手渡したいと申されたゆえ、この場にご足労願ったのだ」
王から直接報酬を与えるとは、なんとも気安いことだと思った。
「大袈裟ね、たかがチンピラ一人やっつけた程度で王様に拝謁?
私は報酬をもらえればそれでいいんだけど?」
「ハハッ!ブリューティヒ嬢にかかればかの六腕もチンピラ扱いとは!
いや、恥ずかしいお話だが王には信頼に足る戦士が必要なのだ・・
率直に言おう、ブリューティヒ嬢。
ぜひ国王直属の戦士団の一員となっていただきたいのだ」
「あら?知らない訳じゃ無いんでしょ。”冒険者は国事に関わるなかれ”
アダマンタイト級冒険者に向かって臣下になれなんて横紙破りもいいとこよ」
「・・・そうか、まぁ無理強いはせぬ」
ガゼフは心底がっかりしたようだが
「まぁ、冒険者として依頼を受けるのであれば依頼主が貴方であろうと王様であろうと受けるわよ」
そういうとガゼフはパッと顔を上げて
「成る程、そういう考えもあるか」
と何か納得したようだ。
しばらくすると、練兵所に戦士団とは明らかに毛色の違う華美な服装の騎士が入ってきた。
「控えなされぃ!国王陛下の御成であるぞ!」
と騎士が布告すると戦士団の面々はパッと横に別れて跪く。
ガゼフですら横に逸れるがアンゲリカはどうすればいいのかと思ったが、女王アンネローゼの時のように拝謁のポーズを空気を読んで取ることにした。
しばらくすると、枯れ木のような覇気の無い老人が歩いてきた。
豪奢な服装、お付きの従者ですら華美な服装をしている事から国王らしい・・・
だが、あれが王だろうか?
薪の王、四人の公王、墓王、覇王、ネズミの王に巨人の王。
王と名のつくものは何かしらの力強さを感じさせるものだ、それが例え今にも消えそうな燃え残りのルドレスでも。
目の前の老人からは・・・・言っては悪いが何も感じない。
これが王なのだろうか?
「良い、面を上げよ皆の者。
かの悪逆非道の者達を討った勇士を見たいとは余の我儘なのだからな」
「ハハッ!者共、面を上げよ。陛下のお計らいである!」
とはお付きの騎士の偉そうな物の言い方である。
「そして、そこのご令嬢がかの悪党どもを討った勇士であると?
なんと・・・・・」
アンゲリカの輝く美貌を見た王は思わず微かに震える。
蒼ざめた顔はこの世のものとも思えず、なぜか背筋が凍った・・・
目だ!あの黒水晶のような目が余を不安にさせる!
・・・・余は今何を思っていた?いかんな、王たるものが娘くらいの歳の娘に懸想でもしたのか?
「アンゲリカ・ブリューティヒ・ド・カインハースト嬢。
聞けば異国よりの来訪者にして、華麗なる剣士だとか
この度、王都の平和を乱す極悪人討伐の功績により下賜を与える」
と、従者からアンゲリカに金貨を与えさせる。
かなりの大金であり、箱にぎっしり詰まっている。
「ありがたき幸せ、今後とも正義のために剣を振るう所存でございます」
こういう時は常識が幅を利かせるので短めに対応する。
「うむ、今後ともよしなに」
国王は何を平民に言っても貴族にネチネチ嫌味を言われかねないので短めに切り上げた。
王から彼女を勧誘する事すら出来ないあたりが
戦場でガゼフを帝国に勧誘したジルとの国内での立場の違いを示している。
無論、悪い方に。