おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました 作:溶けない氷
ブラドー「ドーモ、アンジェサン。狩人スレイヤーのブラドーDEATH!こんばんは死んでくださーい!」
これこそドーモグリーティング!
狩人の間に伝わる古式ゆかしい由緒ある挨拶!挨拶は大事ってウィレーム先生も言ってるしね。
蒼乃薔薇一行「もうやだこんな奴ら」
森の中、ゴブリンを始めとする亜人の調査にやってきた蒼の薔薇の面々であったが
森の中の惨状に目を思わず背けたくなった。
「こりゃぁ・・・ひでぇな・・」
思わずガガーランの呟くが全員既に臨戦態勢をとっている。
森の中にあったゴブリンの集落は既に壊滅し、粗末な小屋は勢いよく燃え上がり
森の中の木々には串刺しになったゴブリンの残骸が今なお血と臭気を芳しく漂わせている。
「なんだこれは?魔獣にでも襲われたというのか?」
面々はそれぞれが調査依頼通りに集落を調べようとするが、結果は知れている。
生存者無し。ゴブリンの集落は老いも若きも関係なく無残な惨殺死体へと変わっていた。
まるで削ぎ落とされたかのような死体のむごたらしさに顔を背ける薔薇とは対照的にアンジェリカはその殺し方に見覚えがあった。
見覚え?いや、正確にはその方法で殺し、殺されたというべきだろう。
(知っている、私はこの殺し・・・いや狩り方を知っている。
これは・・・狩人のやり方、それも特徴的な”瀉血”を使う奴を知っている)
脳裏に浮かぶのはNPCか、それともプレイヤーか
だがどちらにせよ、恐るべき使い手であるのには違いない。
「この殺しをした奴は楽しんでる」
「抵抗してきた連中を一挙に殺して、あとは一人一人時間をかけてなぶり殺しにしてる。異常者」
ティアとティナの現場検証ではまず最初に集落の戦士たちを一箇所で一瞬にして皆殺しにしたあと、逃げ惑う弱いものたちを一人一人追い詰めながら殺していったという点が死体からわかるのだという。
アンゲリカもわかっている、獣へと堕ちた狩人ならそういう事を間違いなくするだろう。
わかる。
彼らもまた、血に酔った狩人なのだから。
・・・・・・・・
「これで、終わりかね?くくくっ、それにしても夢から覚めれば又しても夢の中とは・・・
悪夢の作り手もなかなか洒落た真似をしてくれるじゃあないか」
今も逃げ惑うゴブリンの群れを容赦なく削り殺し、おぞましい血と肉と内臓に塗れた瀉血の槌を無造作に担ぎながら異形の面を被った狩人が傍らに立つ男。
ニグンに語りかける。
「どうかね?なに、大したことはしていない。所詮は手慰み・・・所詮は弱者を嬲って楽しむ外法の一端に過ぎぬ・・・」
「な・・・なんなんだお前は・・・ゴフッ・・・」
ニグンは今や両手両足を叩き潰され、満身創痍で身動きが取れない。
生きているのが不思議なほどだが、彼のレベルの高さが災いした。
「何・・・諸君らのいう神の存在とやらに興味が湧いてね・・・ああ、まるで哀れな実験棟の者たちではないか
”ああ、マリア様・・・マリア様、お導きを”ってね」
鹿のような異形の獣の面を被った男は茶化すようにニグンをからかう。
「この・・・狂人め・・・なぜその力を人類のために使おうとしない・・・」
「力・・力か・・力を求め血に酔い、腑に塗れ・・・そしてどんな思考の昇華があるというのか・・」
ニグンも最初、森の中で出会ったこの男を獣人かと咄嗟に攻撃したのだ。
普通の人が踏み入らない深い森の中で獣皮を被った男は獣以外の何者でもないように見えた。
そして・・・結果は無残なものだった。
20人以上いた陽光聖典隊員のうち半分が一瞬で殺され、残りもニグンの目の前で生きながらミンチにされた。
召喚した天使たちもおぞましい槌の一撃で片っ端からまとめて塵へと帰った。
「うん?なんだまやかしの肉か。つまらないなぁあ・・」
あまりの膂力に天使達は一方的に狩られる、ニグンの持つタレント
そして精鋭と呼ばれる陽光聖典の隊員の必死の抵抗も虚しく
一人、また一人とミキサーにかけられた肉のようにぐちゃぐちゃに殺されていった。
「はははっはははは!いいなぁ!もっとだ!もっと争ってみせろ!死にたくないんだろ!?」
獣の皮を被った男は一人残ったニグンがなおも天使を召喚する様子を見てせせ笑う。
「いいぞ、お前は見込みありだ・・・」
そしてわざとニグンだけは半殺し状態で残し、無造作に槌に引っ掛けてここまで引っ張ってきた。
カッツェ平原
王国と帝国の戦場となり、アンデッド湧き出す不毛の地である。
今、ここにニグンを引っ張ってきた獣面の男はここに湧き出す負の存在に惹かれたのか。
自らも既に死者だというのに・・・あるいは死者だからか。
「ああ、ここはいいな・・・なかなか面白い場所だ」
男の名前はブラドー、既に死者でありそして狩人であり狩人を狩る者であり狩られる者でもある。
カッツェ平原を選んだのはここの陰気な雰囲気が彼の漁村に似ていたからだろうか?
ニグンの弱々しい生命の反応に惹かれ、次々とアンデッドが押し寄せてくる。
「ほら・・・それじゃぁ死ぬなぁ・・ああ、死ぬのが怖いんだな?」
そう言うなりブラどーは手持ちの輸血袋の針をニグンへと近づける
「な・・何を!?やめろぉぉぉぉ!」
「何、礼ならいらんよ。親切心さ、何があっても・・・悪夢みたいなものさ」
・・・・
「こっち!すごく近い」
「今度は人間・・・だと思う」
ティアとティナが死体が点々と続く森をたどっていくと、今度は人間の死体がそこかしこに散らばる場所に出た。
「この装備は・・・法国の者か?うっ、だが酷いな。
?なんだこの装備は・・桁違いだぞ?」
魔法で死体らしきものの装備を鑑定すると・・いずれもマジックアイテム、それもかなり高価なものだった。
「まさか・・・法国の特殊部隊か?だがどんな奴に出会えばこんなことができるんだ?」
その時、突然アンゲリカが口を開く。
「あっこれ多分ヤったのは狩人だわ、私の同業者ね」
「「「「「はぁ!?」」」」」
一同は唖然とした、凄惨さに比べてあまりにも軽いアンゲリカの口調だった。