おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました 作:溶けない氷
鈴木悟のゲーミングVRナノマシンは民用で負担が少ない
軍用は寿命も精神もゴリゴリ削るが反応速度が超速
もっとも軍用でゲームをするような奴がいるはずもないが…
クレイドルが落ちた虐殺事件。
1億人の死を皮切りに、世界は奴によって破壊され尽くした。
「人は滅びる、なぜならば人であるゆえに」
「見ろ、この腐りきった星を。人は滅びつつあるのではない。滅んだのだ」
「2000万、4000万…1億。どうだ?1億人殺した気分は?なんとまぁ殺しに殺したものだ。
終わりを始めよう、これが人類への手向けだ。なぁイレギュラー」
「見ろよ!人がゴミみたいだ!ボーン!綺麗な花火だなぁ」
「連中は感謝すべきだろう、ゴミみたいな人生をダラダラと送る代わりに一瞬とはいえ綺麗な花火になれたんだから」
「見捨てられた者たちの怨念が、どう世界に復讐できるかの良い例だな。
人の揺り篭から棺桶が燃えて落ちる」
アンゲリカは奇妙な夢を見た…
腐った世界を蝕む者たちを燃やして落とす者たちの夢…
凄まじかった、空から揺籠が燃えて落ちる。
それを皮切りに世界中のアーコロジーが燃えた。
燃える、燃える、人類史そのものが燃えて落ちる。
逃げ出すことも出来ずに燃え上がる人々、壁にほんの少しの穴が開いただけで猛毒の大気が流れ込む。
なんて脆い殻なんだろうか…
男も女も老人も子供も、富める者も…そもそもアーコロジーには富めるものしか住めなかったが…富こそが正義の世界、だが真理は違った。
世界の真理は相変わらず一つ、すなわち暴力こそが正義だった。
首輪を千切ったあの獣こそが最強、故に唯一無二の絶対的正義。
破壊され、燃え上がるアーコロジーを見て貧民街の人々が巣穴から飛び出して来る。
人から人扱いされなかった者達があげるのは嘆きの声でなく、歓声。
破壊されたアーコロジーの秩序に乗じての暴行・略奪・殺人。
最早止める人間はいない、絶望しか無い世界では人は皆獣なのだ。
世界中で繰り返される悪夢…今わかった、ヤーナムの悪夢は上品過ぎた。
悪夢があろうとなかろうと…人は皆、獣なのだ…
一方 モモンガはというと…
(うーん、やっぱナザリックの今後の運営資金の事を考えると慎重に動きつつも
やはりモモン・ザ・ダークウォリアーとしての活動は続けざるを得ないか…」
正直なところ、僕に冒険者として活動してもらった方がいいきが…
やっぱダメだ、人間蔑視しまくりで最悪戦争になる未来しか見えない。
ただ引きこもるにしても、ナザリックは維持費がかかる、外から補給を受けれないとじり貧だ。
(よし…ナザリックの事は秘匿しつつも、情報収集と資金集め!
それには変わらないか!)
モモンガは最大限の秘匿をしつつも活動する事を決意した。
そばに仕えるナーベラルなどは
「流石はモモンガ様です。あの時一時撤退したのは、騒動を更に大きくし
モモン・ザ・ダークウォリアーの武功を最大限に知らしめるタイミングを図っていたのですね!」
などと相変わらずのさすモモ賛美を繰り返していた。
「その通り!まさにモモンガ様がお望みの通りの展開だというわけだよ!
愚かな人間が招いた騒乱の種が最大限にまで育ちきったところを美味しく頂く!
このデミウルゴス、モモンガ様の叡智に感服の極み!」
「ああ、流石は至高のお方!一瞬でここまでの展開をお読みになられていたとは…」
部下からの厚いモモンガ賛美が苦しい。
すまない!本当は冒涜召喚イベントにびっくりしてつい撤退してしまっただけなんだ!
しかし遠隔の鏡での偵察と偵察として先行させたエイトエッジアサシンの情報によれば
悍ましい外見のモンスターは(主に目玉一杯のでかい豚)
レベルにしてせいぜい5から10程度であり、最も強力な奥地のぐちょゲロ巨大スライムですらせいぜいがLv30程度であった。
これならば数こそ無駄に多いが戦士体系のモモン・ザ・ダークウォリアーでも楽勝である。
(っていうかこれって外見だけはヤーナムダンジョンのモンスターじゃないか
あのダンジョンのモンスターが現れたからビビって撤退しちゃったんだよな)
ヤーナムダンジョンは狂った運営の狂ったダンジョンであり、通称カンストプレイヤー大量虐殺都市である。
雑魚エネミーですら防御耐性スキル無視の攻撃を繰り出してくる狂ったモンスター揃いのためにマジックキャスターのモモンガとナーベラルでは相性が悪いと瞬時に撤退を決断した。
そしてその決断は間違っておらず、もしもオリジナルの強さ通りだったならばナーベラルが危険に晒されていたろう。
もちろん、この数日というものモモンガはぼーっとしていただけではない。
カルネ村フロント企業化計画の一環としてゴーレムを村の防備と建設作業の為に貸し出したり
マーレのドルイドのスキルを利用しての作物をエクスチェンジボックスに入れて資金が稼げるかどうか試行錯誤してみたりとなかなかナザリックの内政者として忙しくしていた。
そしてモモンガは相変わらず遠隔の鏡の前でエ・ランテル近郊の様子を見ていた。
エ・ランテルに突入した王国の軍隊が一瞬で蹴散らされ食い殺されたりする様子を見るが
今のモモンガはアンデッド、特に思うところはない。
蟻同士の喧嘩で弱いなこいつら程度でしかない。
「モモンガ様、デミウルゴス参りました」
「うむ、そろそろ時期だと思ってな。お前をこうして読んだ次第だ。
お前の提出したリ・エスティーゼ王国に関する情報を吟味した。
見事なものだ」
「恐れ入ります」
モモンガ様はこの数日不眠不休で情報を収集し吟味していた。
「そして、この世界における強者の情報。
さしあたっては王国の最強戦力、王国戦士長。朱の雫、蒼の薔薇、そして血姫。
結論を言おう、私が予想していた通りユグドラシルプレイヤーがいた」
「何ですと!了解致しました!すぐさま戦闘体制『慌てるな!』」
モモンガがプレイヤーを全力で排除しようとするデミウルゴスを制止する。
「そもそも、ユグドラシルプレイヤーだからといって必ずしも敵とは限らん。
それに例えナザリックが勝利する事は確実としても、強力なプレイヤーと戦えば少なからぬ損害がこちらにも出る。
それは私としても歓迎することではない」
「申し訳ありません、私めの浅慮をお許しください」
「良い。さて、彼女の名前はアンゲリカ・ブリューティヒ・ド・カインハースト。
私がかつてユグドラシル時代にナザリックの運営費用を稼ぐ場所として使っていたヤーナムを拠点とするプレイヤーだ。
タイプは弐式炎雷さんに似た近距離軽戦士タイプ、そして傭兵モンスターのグレートウルフのシフ。
むしろこれは好機とすら言える、彼女は幸いにして人間種に非常に近い上に
私自身も彼女とは何度か共闘体制を築いたことがある。
あのエンリ・エモットと同じく我々ナザリックが外の勢力と無用の衝突をしないためのクッションになってくれる可能性は高い」
「!至高のお方と共闘とは…申し訳ありません、まさかそれほどのお方とは思わず…」
「いや、あくまでも協力者だ。至高の41人とは言わないが、少なくとも敬意は払え。
これから先、客人をもてなす際にはナザリックのホストとしての品格が問われるのだからな
(実際あの人かなり強いんだよなー)」
モモンガは典型的な紙装甲の魔法詠唱者タイプだ。
しかもアンデッドの使役による魔王RPとして純粋な魔法詠唱者タイプに比べると瞬間火力では劣る。
彼女は基本的にシングルプレイだが相手のヘイトを集めつつ回避する回避タンク兼アタッカーとして非常に優秀だった。
「モモンガ様、お客人とおっしゃられましたが?」
「うむ、彼女は言っての通りナザリックの運営費用を稼ぐ時に協力体制にあった。
私は恩には恩で、仇には仇で報いる。
ゆえに彼女が我々と敵対関係にならない限りは敬意を持って接するべきだと考えている…
とはいえ、この世界における彼女の立ち位置と考えが本人から確認できない現状では迂闊に接触することも望ましくない…」
そう、彼女も既に冒険者として(モモンガと同じ考えかどうかはわからないが)既に身分や世間体というものがある。
悲しいかな、鈴木悟もかつてはサラリマンとして世間体の重要さを叩き込まれただけによくわかる!
挨拶が出来ないものはサラリマン失格!ハラキリは免れ得ぬ!ナムアミダブツ!
…なんか違う気がする…
「まぁ良い、現状では王国軍のエ・ランテルの奪還失敗につきアダマンタイト級冒険者を主体とする討伐チームが編成されていると聞く。
そこでだ…私は彼らと合流し、英雄としての実力を見せつけるつもりだ」
モモンガはエ・ランテル壊滅に止まらず溢れ出す冒涜的アンデッド討伐の任務に合流することでますます英勇としての賞賛を得ようとしていた…
(あれ?別にパンドラズアクターにやらせても…ま、いっか。それに改めて冒険してみたいしな)
ちなみに覇王炎莉は村に攻めてきたオーガに内臓攻撃を食らわせて文字通り血塗れになっていた