まあ、本編では既にフェードアウトした彼と彼の食べたデイドラのゆるーい話。
「・・・ここは何処だ。」
吹き荒れる風はスカイリムの物と比べ生ぬるく生物の死骸のような香りが薄っすらとする。辺りを見渡すとスカイリムのような雪景色が広がるが全くと言っていいほど現実味がない、まるで絵のようであった。
「っ・・・我は敗れたのか。」
酷い頭痛と肉体の損傷、魂の消耗どれを取っても万全とは言い難い気が付けばかの邪神も弱っているようであった。
『くそっ!あのドラゴンボーンはどうなってんだ!こっちは最高の依り代と新たな権能を備え依り代たる我が契約者もオブリビオンに影響を及ぼせる人外だぞ!くそが!』
「五月蝿いぞ、邪とは言え神なのならばもう少し覇気を出せ。」
しなやかな肢体は短く目は随分と幼くなった。変わらないのは口の悪さとその黒い長髪、そして我との繋がりぐらいであろう。
『うっさいな!我が契約者様と違って現状が理解出来てるぶん混乱が激しいんだよ!バーカ!』
「・・・」
どうやら持ち前の智謀(笑)も退化してしまったらしい、しかし此処が何処だかわからないと言うのもある種の真理である。となればここで立っていても仕方がないので影を操作し玉座とする。暫くは周辺の生贄でも貪って傷や知識の収集をしなければな。幸い形も魂もひどく磨耗しているが血肉には困らなさそうだ。
数日か数週間か数ヶ月か、年月の感覚など意識を沈める毎に薄れていくが度々意識を末端である影の獣に移し偵察や観察をするが何処を見てもタムリエルの何処かと言うことはなさそうだ。わかっているのは此処の住人は死なないと言うこととあらゆる法則が自分のよく知るタムリエルの物とは違うと言うことである。
『不死人、灰、呪い、繰り返し、うむ、全くと言っていいほど別世界だな!』
血肉やそれを手に入れる際にこちらへ向けられる恐怖や畏怖、絶望などの感情を吸い幼女のような姿から辛うじて童女呼べるような状態まで回復した智謀のデイドラボエシアは最初に比べれば幾分マシな顔をしていた。しかしやはりと言うかあの竜殺しにして我らを討った男であるケールムの事お考えては発狂している。
「・・・動くか、」
どさりと自身に降り積もった雪のような何かを振り落としつつ完全に傷が癒え権能を展開可能になったウルフリック・ストームクロークだった者はゆっくりとしかし確かな足取りで玉座から立ち上がる。貪った供物の血肉とその記憶から様々な情報を得た。
曰く、此処はアリアンデルと呼ばれる絵画の中であると
曰く、此処は自分の居た世界とは違う世界であると
曰く、此処を統治する王がいないと
「手始めにこの世界を手に入れる。なに、タムリエルほど大きくはなさそうだ。」
『・・・我が契約者様は馬鹿なのかそれとも阿保なのか…まあいい好きにするがいいさだが約束しろ今度こそ負けるな。僕は負けるのが嫌いでね。』
「案ずるな、我もだ。」
そう言って失った顔を凶悪に歪めその双眸にまた紅い眼光が宿る。
「集え!我が眷属よ!侵略の時だ!」
「「「「「ワオオオオオオオオオン!!」」」」」
一瞬にして雪景色を黒く染めその闇からはそれの使役者と同じ狂気と渇きに満ちた黒き獣が無数に現れる。そのどれもがマトモな生き物としての体裁を持たず姿は狼によく似るがその肉体は彼らによって貪られ一時の渇きを潤した他者の血肉であり、略奪の戦利品である。
「目指すは彼方に見る教会!その道にある全てを我らの物とするのだ!」
そう叫べば空が割れ曇天の空を真紅に染める、気づけばその王は闇と血肉に彩られた戦装束とマントを翻しその頭には禍々しくもそれが王たる証であるとばかりに王冠が、そして吹雪は全て赤黒く染まり彼の周りをまるで嵐のように吹き荒れる。
「我はウルフリック・ストームクローク!嵐を纏し孤高の王なり!」
彼の足が地面を踏むたびにそこを侵食し残らず彼の『領地』とする。彼の声が響くたび生物も死者でさえ貪られ彼の軍勢へと姿を変えさせられる。そして彼の武器が振るわれる時かの者の敵は自身の鮮血に彩られる。
落とされたつり橋を眷属の死骸を積んで渡り、教会の守護者たる『ヴィルヘルム』なる甲冑の男を討ち滅ぼし、内部にいた女を容赦なく喰らいそれに激昂した『アリアンデル』と名乗った神父を呑み込んだ。
教会を根城とした彼は急速にしかし確実にその支配域を広げその全てを飲み干していく、気が付けば周囲には雪景色などと言う物は存在せず、転々とある『篝火』なる神代の遺物を除き赤黒い此処に住んでいた腐った亡者と深淵を狩る者たちを狩る狩人、このような辺境、いや絵画の中にまで居場所を追われてきた騎士団をその世界のことごとくを貪り飲み干した。
「ふむ、『火』か…」
幾多の者たちを飲み干した王は新たな力を得た。しかしそれはあまりに自身にそぐわぬ暖かく身を焼く物だった。
『・・・随分と派手にやったな。前回のが堪えたかな?』
少女のような見た目になったボエシアがひとしきり世界の表層を舐めた自身を食らう者を揶揄う。
「ああ、そうだな徹底的に塗りつぶす。それが我の力だ。しかしタムリエルのソレはあの時の我の飲み込める大きさではなかった。分をわきまえ臆病になったと罵るのもいいが我は負け戦をしたい訳ではない。」
だが彼は苛立ちを見せることなく、冷静にしかし遠回しに応える。珍しく長文を答えた彼にボエシアはひどく驚くが聞いてみれば漸く彼が冷静にしかし野心を燃やす元の狼に戻ったのだと言うだけの話だった。彼女が気に入った彼は総じてそう言う男だった。むしろ今までが逆上せていたのだ、全くと言っていいほど自身には大きすぎる力を手に入れ驕り昂ぶりその末更に上位のものに叩きのめされた。しかし今の彼は違う、負けた事もあるが漸く彼は自身の力とその全てを支配することができそれを見て、感じて漸く邪悪な理性を取り戻したのであった。
それからと言うもの彼は王としての堂々とし高慢で全てを見下すような振る舞いと、理性的で病的なまでに執拗に相手を弱らせ確実に仕留めようとする狼のような振る舞いを身につけその二面性を一側面にまとめ上げる為自身の領地となり既に領界となりつつある世界を抜けだしこの世界に存在する『薪の王』と呼ばれる者を食らう為旅を始めた。
初めは酷い物だった。幾度も薪の王を殺し儀式を成そうと動く無数の灰に殺された。まさか物理攻撃や自身の次元には遠く及ばない魔術や呪術と呼ばれる業によって自身が殺されるとは思わなかったのである。ボエシアもこれには流石に戸惑ったようで最終的にアレらはケールムのような災害でいつか克服するが今は無理であると位置ずけ、焦点を薪の王だけに絞り戦いを始めた。
しかしこれも酷かった。深淵殺しの戦士たちは鼻歌でも歌うかのように闇と死肉と血でできた異界の現人神たる彼を切り刻む、彼に良く似た神喰らいはなまじ神に近いが為に彼を食べようとしてくるし、巨人は大きいし、王子たちはナニカ腐敗臭を感じさせ近づき難いし、唯一殺せそうだと思った小人は灰の近くにいるしで踏んだり蹴ったりであった。
しかし彼らは折れなかった。消耗分は回復して更に力を求め様々な物を食らった。新たな権能を生み出してみたり創意工夫を重ねるうちに無駄がなくなり驕りは消し飛び遂には王である事を一瞬投げたがやり遂げた。どの王も喰らうことは出来なかったし、得られたものと言えば彼らの力を感じさせる力の塊『ソウル』だけだがそれらから学び取れる全てを吸収し彼は進化した。
「遂にかの竜狩りと同じものが見える位相にたどり着けたのだろうか…」
『うう、長かった、消化されてる途中とは言えほぼ同化してるから痛かった。』
彼らの足元は宇宙、様々な混沌の渦中であるが彼らも混沌であるが故にそこに立てた。しかしてかの竜狩りはどこにいるのだろうと探すが居ない、どうやらまた別の世界のようだ。彼らの記憶は最後、王たちの化身を打ち倒しそのソウルを食らった所で終わりこの場所で始まっている。
「どうやら此処は『ヤーナム』と言うらしいな、狩人と呼ばれるあの灰達のような存在がいる総本山………か」
『・・・・・うわあああぁぁぁ!』
そこらに居た気色の悪い水色の人型生命体を呑んだ彼がそう言うと顔を青くした。結局彼らは目標であるケールムに届きうる存在である灰を打倒できなかったのである。それはひとえに彼らが悪だからなのだろうか、それとも彼らが英雄だからなのだろうか、少なくとも彼らには解らず、しかし管理神による嫌がらせは終わらないのであろう。
ウルフリック『侵略と野望のデイドラ擬き』
権能
侵食、支配、掌握:彼の真骨頂とも言える能力、周囲の物を侵食し彼の支配下に置くまた生物やその新鮮な血肉を侵食し掌握することで狼の軍勢を作ったり装備品を作ったり様々に応用できる力
ぼえしあたん『智謀(笑)と裏切り(失笑)のデイドラ』
権能はほとんどなくウルフリックに食べられている途中のデイドラの残滓のようなゆるキャラじみたナニカ、よく喋りよく泣きよく発狂するが美人、此処だけの話ウルフリックの好みなのでよく食べられている、え?どんな感じに?勿論だが性的に。