機動戦士ガンダムSEED~逆行のキラ~   作:試行錯誤

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アルテミス宙域策謀戦 2

 

 

 クルーゼ隊所属の艦艇、ガモフと名前を付けられたローラシア級。

 そのブリーフィングルームでは、3名のモビルスーツパイロット達が映像データを見せられていた。

 彼らはザフトの士官学校と言えるアカデミー、その卒業成績優良者の証の赤い服……いわゆる《赤》を着る若者達だ。

 ヘリオポリスへの潜入、連合のモビルスーツ奪取。そしてついさっき、それぞれ奪った機体のデータの吸い出しを終えたところだ。

 

 見ている映像の内容は、隊の旗艦であるヴェサリウスから送られてきた戦闘データだ。

 奪った機体のX-303イージス、そしてミゲル・アイマンの機体、さらには隊長のクルーゼ機から回収され編集された物。

 連合の新型艦と、残った最後の《G》ストライクと交戦した映像だった。

 

 彼らは映像を一通り見ると口を開いた。皮肉でひきつったような、闘志に溢れたような、動揺と疑念が混じったような表情と、反応は3人それぞれだった。

 

「へえ、これマジ? やるじゃん」と、口笛を吹いたのは、Xー103バスターを奪ってきたディアッカ・エルスマン。

 

 Xー102デュエルを動かしたのはイザーク・ジュール。彼は食い入るようにストライクの動きを見ている。

 

「クルーゼ隊長のシグー、ノーマルとは言えミゲルのジン。おまけに……アスランを格闘戦で退ける奴がいるとはな」

 

「機体性能のせいでは? 向こうの機体はずいぶんよく動きます。

 同じシリーズでも、あの1機だけハイエンドタイプなのでは」などとニコル・アマルフィは性能面を考えた。

 

「性能ねぇ。どっちかって言うとパイロットの方じゃないの? コーディネーターを乗せてるとか? ナチュラルには無理でしょ、これ?」

 

「ナチュラルだろうがコーディネーターだろうが、モビルアーマー相手よりは、落とし甲斐のありそうな相手だ。

 マシューとオロールの仇を取らせてもらうさ」

 

 まだ若いパイロット達は多少の余裕を見せながら話しているが、それを横目に見る艦長のゼルマンは無言だった。

 これまで、連合のモビルアーマーとザフトのモビルスーツは能力に明確な差があった。

 

 戦況にもよるが、モビルアーマーに集られてもそうは落ちないのがモビルスーツだ。

 いや、攻撃を食らわない、逆に敵を食い荒らす。それほどに運動能力の違いがあると言える。

 

 ゼルマンが経験してきた戦場は、物量に勝る連合に質で戦いを挑むザフトと言うのが常だった。

 一部の例外を除いては、ザフトが質で負けた事はない。

 

 それがこの映像の中では、数に勝るこちら側のジンがボロボロと落とされているのだ。

 

 交戦時間は10分に満たない。しかも彼らと同じ赤を着るエリート、アスラン・ザラの乗った同シリーズの機体を撃退されている。

 隊長のクルーゼ機も小破。魔弾のミゲルに至っては制圧、機体の放棄までさせられているのである。

 

 ゼルマンは《G》の事を量産を前提としたテスト機の一つと聞いていた。

 正直、このレベルの機体が量産できるとは思えない。若い彼らの言う通りパイロットの能力が大きいと思える。

 しかし、もしこれが量産されたらどうなる。

 

 ザフトに勝ち目があるとは思えなかった。

 

 既にあの機体には戦闘データが蓄積されてしまった。危険だ。あのパイロットは逃がすべきではない。

 何としても、宇宙にいる間に仕留めなければならない気がする。

 そんなゼルマンの思考を遮ったのは、イザーク・ジュールとニコル・アマルフィだった。

 

「艦長、それで出撃はいつです。他の部隊と合流される前に叩くとは聞きましたが」

 

「補給を受けないとモビルスーツがありませんよね?

 ヴェサリウスには0、ガモフにも予備のジン1機とパイロット1名だけ、オロールが始めに乗っていたジンは回収しましたけど……大破して使えません」

 

「……クルーゼ隊長の判断次第だ。

 ただし、君たちの奪取してきたモビルスーツをいつでも出撃可能にしておけと。……必要な調整は終わっているのだな?」

 

「あれ使うの? マジ? さすが隊長、すっげえ皮肉」

 

「慣熟訓練もなしか、人使いの荒い」

 

「……ですがゼルマン艦長、この辺りは連合の要塞がありましたよね? アルテミス……でしたか。あそこに逃げ込まれると面倒では? 防御は固いと聞いてます」

 

 

 ニコルの質問にゼルマンが答えている頃、ヴェサリウスのブリッジでも、これからの方針の説明が行われていた。

 

 クルーゼは通信で既にゼルマンに伝えた事を、今度はヴェサリウスのモビルスーツパイロットと艦長のアデスに話している。

 ちょうど、ニコルと同じ質問をアスランが聞いていた。

 クルーゼはそれに笑って答える。

 

「……何、問題あるまい。あそこの司令官殿は極めて防御思考な方だ。駐留している戦力もそう多くはない、打って出てくる事はないだろう。……我々と戦うよりも、観察する方がお好きらしいのでな」

 

 クルーゼは手元にある情報で考える。

 

 ヘリオポリスに潜入していたスパイの情報では《G》とあの艦は大西洋連邦、そしてオーブの物だ。

 しかも非公式。高い確度で識別コードがまだ無いとの話だ。

 

 対してアルテミス要塞はユーラシア側の拠点。

 大西洋とユーラシア……同じ連合ではあるが水面下では対立をしているような連中だ。

 司令官の階級は少将……辺境で暇を持て余し、政治を考えて余計な事をするのに十分な階級と状況だろう……果たして何を考えるか。

 それとも厄介事は御免と門前払いだろうか。

 

 どちらもありだ。クルーゼはニヤリとする。

 

「つまりは臆病ってことか」とはミゲル・アイマンだ。

 

 それにアスランも続く。

 

「では、仕掛けるんですねクルーゼ隊長。……しかし、モビルスーツはどうします」

 

 クルーゼは頂いた物があるだろうと皮肉げに言った。

 

「データは取った。ガモフの3機もそろそろ使えるはずだ、こちらの戦力として使わせてもらう。

 彼らにも戦果を挙げる機会を与えてやらなくては、不公平だろう?」

 

 クルーゼは暗に、アスランが命令なく出撃した事を引き合いに出した。

 アスランとガモフに居る赤服の3名は同期だった。全員の親が、最高評議会の議員という共通点もある。

 友人であり、ライバルのような関係でもあった。

 

 それらを指揮する立場の人間には、面倒な配慮が必要な時がある。そう言って笑うクルーゼに、アスランは直立して謝罪した。

 

「……申し訳ありません。処罰は覚悟の上です」

 

「あー、クルーゼ隊長。あまりアスランを責めないでやってくれ、おかげで俺はすぐに帰ってこれた。魔弾としちゃ情けないがな」

 

「いえ、命令無視をしたのは自分です。味方の援護ができず、任務の達成も出来ませんでした」

 

 かばったミゲルに甘える事なく、愚直な態度のアスランにクルーゼは苦笑した。

 

「いや、残りの1機……ストライクだったか。あれほど動くとは思わなかった、私の予測を超していたよ。

 アスラン、よくミゲルを連れて帰ってくれた、おかげで私は部下を一人失わずに済んだ」

 

「いえ……当然の事です」

 

 クルーゼは固い表情のアスランを気にせずに話題を切り替える。

 

「ミゲル、君の我が儘でヴェサリウスに積んでいたハイマニューバ……先程修理が完了した。次はそれで出てもらうぞ」

 

「ようやくか……了解だ、クルーゼ隊長。見てろよ魔弾の名誉挽回だ」

 

 ヘリオポリスへの潜入任務の数日前、別の作戦により損傷していたジン・ハイマニューバ。ミゲル・アイマン専用機の話だ。

 今度は白い奴、ストライクを落としてやると意気込みながらミゲルは格納庫へ向かっていった。

 クルーゼは艦に指示を下す。

 

「アデス、ヴェサリウスは加速。最大戦速だ、足つきの前に出る。最低でも横にはつけろ」

 

「足つき……ですか。あの艦ですな?」

 

 アークエンジェルの形状を見た感想としては、分からなくもないネーミングだ。

 

「今考えた、ちょうどいいだろう?

 ガモフには後ろから来させろ、挟み撃ちにする。艦の砲撃射程に捉えさせておけ。ただし近づきすぎるな、とな」

 

「確認ですが、沈めるのですね? ストライクも」

 

「危険物は処分だ、仲間の仇でもある。……私は私室にいるので何かあれば呼び出せ。

 アスラン、確認したいことがある、一緒に来てくれ」

 

 クルーゼは必要な指示を行うと、アスランを伴ってブリッジを出た。

 

 通路に出た途端、クルーゼの笑みは消える。

 

 実のところ、モビルスーツ部隊が敗退して帰還した時、クルーゼ隊の面々は少なからず動揺した。

 が、指揮官のクルーゼは、そんな事もあるだろうと余裕を崩さなかった。

 数ある選択肢の中の一つがずれただけだ、修正は可能だと。

 だから部下達にいつも通りの態度を見せていた。

 

 だが、イージスから取り出した戦闘データを見た後は、クルーゼの受けた衝撃は誰よりも強かった。

 

 ストライクの動きに自分以上の物を感じたのだ。

 

 アスランに言った、予測を超えていたとの話は、別に命令無視を多目に見たのではない……本気でこの映像を持ち帰ってくれてよかったと思っただけだ。

 

(まさか、モビルスーツ4機で止まっている艦を沈められんとはな……)

 

 自分の他に気付いた者はいないかもしれない……あのストライクは手加減をして戦っていた。

 落としている相手と、落とさない相手がいるが、それは状況がよく見えている事の証明だ。

 モビルスーツ4機を相手に加減を考える腕なのだ。

 アスランが出ていなければ、ここまでの技量とは把握できなかっただろう。

 

(私とやった時は本調子ではなかった? ……シグーでは話にならんな)

 

 以後、ストライクと単独で当たるのは慎むべきだ……クルーゼは強く思った。

 まったく、ザラには助けられる、どれだけ私に手を貸してくれるのか。精々これからも利用させてもらおう。

 

 クルーゼは表情を引き締める。

 少々プランの修正が必要だ、あの危険物。利用しようと考えるのはやめだ。早めに沈めてしまおう。

 沈めるのに生け贄が必要ならば、何かを用意する必要があるが……。

 足つきの行動を思い出してみる。

 

(戦闘中でも地表に降りたままだったな。ハッチが空いていた……補給が絶対的に足りなかったのか、あるいはどうしても乗せなければならなかった者がいるのか。

 あの車両隊……民間人か? 逃げ込む先がなかった? なら付け入る隙は……)

 

 

 アスラン・ザラは自分がただで済むとは思っていなかった。クルーゼが、ブリッジで自分に何も言わないのを、不思議には思わない。

 

 勘の鋭い人だ、何かあったのを薄々……いや、勘がどうこうではない。

 通信ログを見れば異常は分かる。イージスにはストライクとの交信の記録が残っている。整備兵から報告は行っているはすだ。

 士気を下げかねない発言を人前でさせるのを嫌ったのだろうと、考えた。

 

「……さて、ようやく確認ができるな。アスラン」

 

 クルーゼが言葉を発したのは、部屋に入りドアが閉まったすぐ後だった。アスランは言い訳をするつもりはない。 黙って罰を受けるつもりだった。

 

「先の戦闘では失礼しました、如何なる処分も……」

 

「落ち着きたまえ、懲罰を課すつもりはない。

 君がデータを持ち帰ってくれたおかげで、あれの危険性を正しく認識できた。むしろ功績と思っている。

 だが、通信ログの報告が上がっていてね。疑わしい物があると。

 君からも話は聞いておきたい。いつもの君らしからぬ振る舞いだ……何があった?」

 

 アスランは戸惑った。

 まさかそう来るとは思わなかったのだ。通信の露見は覚悟していた、罰どころか銃殺も。重大な違反だ。

 なのに、話を聞きたいとは。

 

 クルーゼは続ける。

 

「あのストライクが動いた時、君は確か、側にいたと言ったな。何か見たのかね。……それを確認しに行った?」

 

「……申し訳ありません、動揺しておりました。報告が遅れてしまい。自分でも確信が持てなかったので出撃を」

 

「知り合いでもいたのか?」

 

「……あれに乗っているのは友人の……キラ・ヤマトです。コーディネーターです。月の幼年学校で一緒でした」

 

 アスランは感情を揺らすまいと思った、ただ事実を報告しようと。

 しかし幼い時に最も信頼していた相手の名前。それを出すとき、目線を伏せてしまった。友を売るような気分がしたからだ。

 

 だから気付かなかった。

 クルーゼがキラの名前を聞いた時、わずかとは言え狂気の感情を見せた事に。

 気付くチャンスを逃した。

 

「……泣き虫で甘ったれで、優秀なのに、いい加減な奴で。弟みたいな奴でした」

 

「……………………そうか……なるほどな、それでか……キラ・ヤマト……か……奴が」

 

 いつものクルーゼとは微妙に違う声色。

 アスランは目線を上げたが、その時には既にクルーゼの不自然さは消え去っていた。

 確かめる前に新たに問われる。

 

「アスラン……そのキラ・ヤマトと連絡は、とっていなかったのか?」

 

「は……父が、テロに遭ったのをきっかけに月へ行った頃でしたので。

 連絡先は誰にも言ってはいけない、誰からも受けとってはいけないと……厳命されておりました。

 卒業してプラントへ戻る時にも、キラにだけはと思いましたが……」

 

 再会を誓うのが精一杯だったと、アスランは苦渋の表情を浮かべた。

 

「なる程な、肉親の命がかかっているのではどうしようもあるまい。正しい判断だろう。

 事実、彼は《連合の》兵士として現れた。あるいは、昔からそれを狙っていたのかも知れん。ザラ委員長の判断は正しかったと思える」

 

 クルーゼは内心、舌打ちしながらそう言った。

 連絡先……渡しておけばよかったのだと。そうすれば、もっと早く手札として使えた物を。バカなアスランめ。

 

「そんな事はありません! 騙されているんです、あいつは! ……バカなんです。

 お人好しで、ぼーっとしてて、優秀な癖に大事なところで抜けてるんです。

 いつもいつも自分の事も忘れてフラフラして……だからいつも俺が面倒を見て……い、いえ、失礼しました。申し訳ありません」

 

 アスランは口を閉じる。

 これは関係のない話だ。いや、してはいけない話だった。

 仲間を殺されているのだ。これでは敵をかばっている事になる。

 クルーゼはアスランの態度を気にした風もなかった。

 

 実際に気にしていないのだ。クルーゼが考えるのは更に別の事……これから後の事だ。

 

「戦争とは皮肉なものだな。まさかそんな再会があるとは。君の動揺も仕方あるまい。

 分かった。そういう事なら次の作戦、君は外そう。

 幸いイージスは修理中だ、《連合》の兵になった相手とはいえ、君は友を撃ちたくあるまい。私とてそんな真似をさせたくない」

 

「い、いえ! 出れます。戦えます! 自分は志願した時に、プラントのために戦うと!」

 

「かつての友人とはいえ今は敵だ。プラントに仇なす者なら、撃たねばならない。ストライクの動きを見たろう、君の友人は強敵だ」

 

「分かっています」

 

 クルーゼの、一見すると配慮を見せるような……それでいてその実、巧妙に戦意を刺激するような言葉、話の流れに、アスランは淀みなく答えた。

 答えさせられてしまう。辛そうな表情で。

 

 キラの能力の高さを、アスランは昔からよく分かっていた。

 コーディネーター全てが兵士として優秀という訳ではないが、少なくともキラは強敵だった。

 

 先ほど負けたのだ。

 思わぬ再会に激昂してしまったが身体は動いていた。

 

 当然、殺すつもりは無かったが、怒り任せに叩きのめしてやろうと思ったのは事実だ。

 バカなキラ。また変な奴に騙されたのかと。

 そして負けた、正面から。

 

 アスランは考える。

《連合の》兵士となってしまったキラを止めるためには、死にもの狂いで戦わねばならないだろう。それこそ殺す覚悟で。

 話して止まってくれる物だろうか。

 

 悩むアスランに、しばらくの間を置いてクルーゼが尋ねた。

 

「説得してみるかね?」

 

 兵士としては許されない。

 アスランはそれが分かっている。

 否定しなければ……そう思っていても、口は別の言葉を発していた。

 

「……はい、可能であれば。どうか機会を」

 

「好きにしたまえ」

 

 アスランは、いいのか、とでも言いたげにクルーゼを見上げる。そこにあるのは厳しい上官の顔ではなく、いっそ優しげな物だった。

 

「だが、アスラン。君の友人のために手加減はできん、あの艦とストライクはプラントに危険と考える。速やかに破壊するべきだ。

 よって、私は部下達に全力で戦えと言うつもりだ。余計な話を伝えるつもりもない。時間に余裕はないぞ。

 次で沈めるつもりだ……もし、相手が聞き入れないときは」

 

「そ、その時は……私が、撃ちます……」

 

「それでこそだ、ザフトのアスラン・ザラ。

 酷なようだが立場を忘れないで欲しい、人には取れる行動と、やってはいけない行動がある。以上だ、下がっていい」

 

 クルーゼの最後のセリフには、何か言いたげのアスランだったが、結果として彼は黙って退出していった。

 

 クルーゼは椅子にかけ、しばらく無言だった。

 ぽつりと呟く。

 

「……キラ・ヤマト、貴様だったか」

 

 許せない存在。

 しかもアスランと旧友とは。

 なんと素晴らしい展開か、何という世界か。

 面白い。

 色々な可能性を考えてはきたが、こんな状況が整うとは。何という事か。

 

 このカードをどう使うか。

 

 中立のヘリオポリスに、連合軍とオーブ軍がいて、共同で対ザフト戦を行った。

 未成年が連合の兵器に乗っている。しかもその未成年は、プラントの国防委員長の息子と古い友人。

 こんな贅沢な手札はそうはない。

 

(国籍は……オーブだったな、連合に変わった? いや、間違いない。奴の事は何もかも調べた。オーブだ、オーブの人間が連合のモビルスーツに乗っている)

 

 仮にスパイだと言い掛かりをつけるだけでも、どちらにでも効果を与えられる。

 オーブのウズミは引きずり下ろすか、据えておくか。

 連合に対する打撃としてもよい。いや、オーブ自体を揺らす手もある。それともユーラシアと大西洋を割るか。

 あの盟主はこの情報を喜んでくれるだろうか。

 

 アスランの説得に応じて、プラントに来るなら来るで、使い道は少なくないが……。事故死はどうだろうか。

 いや、出来るならば殺したい。はっきりと、それも今すぐ。

 奴を、キラ・ヤマトを討つ事は最高の気分になれるはずだ。

 自分の手で討つか。

 それとも同じコーディネーターの手で討たせるか、どちらも最高に皮肉が利いている。

 

(それとも、やはり貴様は究極の存在なのか? 私では勝てないのか? どうなんだ、キラ・ヤマト……)

 

 クルーゼの言葉に、面白いように追い込まれてくれたアスランの思い詰めた顔を見る限りは、次の戦いで宇宙の塵と消える可能性もある。

 

 万が一逃げられた時は、それはそれで謀略につなげればいい。

 クルーゼは机から常用の薬を取り、飲み込んだ。笑いが止まらなかった。

 手元にある通信機を起動、ブリッジを呼び出す。

 

「アデス、連合の月本部へ打電、レーザー通信だ。……聞き間違いではないよ。連合に打電だ……そうだ。

 暗号通信ではなく、通常文で送る。以下のように打て……」

 

 





やっと何とか書き上がりました。
サイレントラン。フェイズシフトダウンの、二話分をまとめて、展開させるのに、やたらかかった。疲れた。疲れました。

※アルテミス 1をアルテミス宙域策謀戦 1にサブタイトル変更
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