「クルーゼ隊長、本当によろしいのですか? ……あのコロニーはオーブの物ですが。
ガモフのゼルマン艦長からも確認が入っております」
「構わん、評議会の方々には話が通っている。ゼルマンにもそう伝えろ」
ヘリオポリス外に待機するザフト艦、ナスカ級・ヴェサリウス。
そのブリッジでは、今しがたヘリオポリス内に差し向けたモビルスーツ隊の装備について、感情のさざなみが立っていた。
D装備。
これは重粒子砲や、大小のミサイルランチャーを使う高い火力を持つ装備で、使用には指揮官級の許可が必要になる。
今回の目標は艦艇が1隻に機動兵器が2機ほど。
その気になれば、コロニーを破壊できる装備は過剰では、との空気があった。
加えて、クルーゼは出撃させたパイロットに、ここで連合の艦とモビルスーツを落とすために全力を尽くせ、と送り出していた。
コロニーへの被害については何も口にしていないのだ。
表だって反抗などはないが、それでもクルーの半数は落ち着かない様子だった。
ヴェサリウスと同時に作戦参加していたザフト艦、ローラシア級・ガモフからも確認がきたのだ。
部下を納得させる為に、機会を欲していた艦長のアデスが、そのタイミングでクルーゼに確認していたところだった。
実際、クルーゼの言葉にブリッジクルーはあからさまにホッとしていた。空気が和らぐ。
ただ、アデスは口に出さないが気付いた。
評議会から許可、ではなく。評議会の決定、でもない。
評議会の誰か、またはその派閥に《もしもの時の話をしただけ》とも受け取れる言い方なのだ。
実直なクルーばかりなのを逆手に取った擬装に思える。 問題だ。
ヘリオポリスを傷つけても、評議会を納得させられるのか……? アデスはクルーゼを見る。
中立国のコロニーに損傷を負わせて、どうやれば処分を免れるのかなどと、予想もできない。
連合のモビルスーツ開発を妨害するためとはいえ本当にいいのか?
クルーゼはアデスの視線に気付いたのか口の端を挙げた。
艦長のアデスが士気を下げるような事は言わないだろう? と言いたげな笑い方だった。
アデスは黙っているしかなかった。
クルーゼにとって、ヘリオポリスの損害はどうでもよかった。
モビルスーツを奪取するこの作戦。
同時に今回の件は、中立を謳い積極的な戦争参加をしてこなかったオーブという国を、表舞台に引っ張り出すためにちょうどいいのだ。
評議員のパトリック・ザラとは話がついている。強硬派の代表のような男だ。煽るのは楽だった。
クルーゼは奪取したモビルスーツの脅威を煽る、パトリックはクルーゼの話を利用してプラントの主導権を握る足掛かりにする……そういう形だ。
そのために、ヘリオポリスはむしろ壊れてくれた方が実に都合がいいのだ。何なら崩壊しても一向に構わない。
事態を見守る存在などは邪魔。オーブが頭に血を昇らせて、引き金に指をかければ後は泥沼に入り始める。
(いけないな。プラントと地球、みんなで戦おうという時に自分だけ冷静な考え方は。苦労は分け合うものだ)
クルーゼの目的の為には、人類全体で頭に血が昇ってもらわねば困るのだ。殺し合いに参加してもらわねば。
……そういえば一つ確認する事があった。
出撃命令を出していないはずの、アスラン・ザラが出た事についてだ。
「アデス。アスランが出撃した理由は、誰も聞いていないのだな?」
「……は。完全な独断かと。呼び戻しておりますが」
「いやいい、分かった。すまんな、私の部下だ、今回は奪った機体の性能テストだと。
必要があれば、そう説明をしておいてくれ」
「……分かりました」
評議員、かつ国防委員長のパトリック・ザラ。その息子がアスラン・ザラだった。
若く優秀で、およそ冷静。命令違反や独断専行をやらないタイプだと評価していたのだが。
戦闘意欲や功名心にでも駆られたのだろうか。
戻って来たら問いただす必要がある。
(……優秀なのは確かだからな。ジンを落とされないように牽制ぐらいしてくれれば、コロニーの被害も増すだろう)
死んだところで言い訳ぐらいは用意してある。
妻を失い、息子も失うパトリック・ザラは、さらに煽れるだろう。
クルーゼは次の手を楽しげに考え始めた。
キラは、イージスがビームライフルを連射しながら飛び込んでくるその動きに危険な物を感じた。
回避運動をしながら撃ち返すが当たらない、動きでかわされ盾で防がれる。速い。
「アスラン!?」
《その声! やはりキラ・ヤマト……何をやっている! そんな物に乗って! そんな所で!》
イージスは止まらない。
ヘリオポリスでの彼はこんなに速かったか、と疑問が浮かぶ程に動きが鋭い。
あっという間に格闘戦の距離になる。知っているモーション。
近接戦闘に強いアスランの動きだ。
イージスは両手足に固定装備されているビームサーベルの両足分二本を起動、蹴りを放ってきた。
ストライクは全速後退で下がりつつ、後ろへ向かおうとするジンの1機にビームを撃ち込む……その動きを、またもイージスに妨害される。
全く躊躇いのない突撃で弾きとばされたのだ。
アスランの乗るイージスに直撃などかけられない。キラの弱さとも遠慮とも言える鈍さにイージスは猛攻を仕掛けてきていた。
「……っ!? いけない! これ以上は!」
驚く程の思いきりの良さだ。
アスランの技量に焦りを覚える。間違いなくヘリオポリスで出会った頃の動きと違う。
自惚れだが、今の自分の技量ならすぐにジンを落とせるだろうと思っていた。そしてイージスを、と。
だが思わぬ鋭さのイージスに邪魔されて、ジンを落とすどころか牽制もろくにできない。
アークエンジェルに接近されれば終わりだ。
アークエンジェルから迎撃の火線が上がり始めた。
副砲、対空機銃はフル稼働。さすがに主砲、ミサイルは加減が見えるが結局は使っている。
ショックだが、責められない。キラは何も出来ていないのだ。
「このっ!」
ストライクはイージスからの攻撃を捌きつつ、スラスターを噴かしてジンの一機へ向かう。
位置取りを考えた動き。イージスに盾を向け、ジンにライフルを向けた。
追随してくるイージスはすぐ後ろ。
盾で壁を作り、邪魔をされないようにして発砲する。狙いもろくにつけずに撃った。
アークエンジェルに狙いをつけていたジンは回避運動もしていたが、かろうじて当たる。当たってくれた。重粒子砲を構えていたジンが大破。
いや、一瞬遅かった。
ジンが落ちる間際に撃っていたビームが延びていく。それはアークエンジェルを外れた、しかしながら地表に当たってしまう。
キラが息つく間もなくストライクの盾を蹴り飛ばされた、本能で機体を振り回した先で銃口が見える。イージスだ。ライフルを構えている。
撃たれたビームの回避はきわどい所で間に合った。
さらに、切り込まれたビームサーベルを盾で受ける。
強い。
負けるとは言わないが簡単に相手が出来るレベルではない。
「アスラン、僕だ! キラ・ヤマトだ、君と戦うつもりはないんだ! 話を聞いてく……」
《目の前でマシューを撃っておいて! お前はナチュラルに味方をするのか! 何故だ!》
言葉では問いかけてくるのに、ビームサーベルでの攻撃には躊躇いが全くない。キラの記憶と違いすぎる。
いや、声も顔もアスランだ、親友のアスラン・ザラ。
自分にとっては数日ぶりの、向こうにとっては数年ぶりの再会。
ストライクはイーゲルシュテルンを撃ち込み、ビームサーベルを抜き放つ。
キラがイージスのセンサー部と武装破壊を狙ったのだ。
対するイージスは盾を構えて急速に後退……ビームサーベルだけを完全に防御。
イーゲルシュテルンの弾幕にセンサーを叩かれながらも、その動きの最中にビームライフルを放ってきた。
撃たれた緑の光はアークエンジェル甲板に突き刺さる。
キラは一瞬だけ目線を送り、艦の被害を見やった。
ラミネート装甲による防御力はこのくらいでは突破されない。まだ大丈夫だ。
しかし容赦のない対艦攻撃……アスランを止めないと本当に取り返しがつかなくなる。
ストライクはビームライフルを連射、イージスを押し返そうと試みるが、イージスは押し負けずに撃ち返しきた。
「……アスラン! ここはヘリオポリスなんだぞ!」
《居座っている奴が言う言葉か、ふざけるな! 死にたくなければ投降しろ、武器を構える以上は敵だ!》
「くっ!」
手強い。このアスランは簡単に止められない、いや、迷いがない。残念だが話も聞いてくれそうにない。
(当たり前か……! 仲間を殺しておいて)
まずとにかくジンを止めないといけない。
しかし自他共に認める経験を持つ今のキラを持ってしても、このアスランの相手をしながら残る二機のジンを撃つのは困難だった。
少なくとも手加減などは考えていられない。
わずかな隙を作り出して、ジンに乱暴な牽制射撃をするのが精一杯だった。
ヘリオポリスには被害が広がり始めていた。
アークエンジェルのCICでフラガは焦っていた。
キラの言う通りに、敵のジンが要塞攻略装備で来た事、さらにそれをヘリオポリス内で撃ってきた事にだ。
後ろでナタルは苛立たしげに迎撃指揮を取っている。
前に出たストライクは何とか1機を落としたが、今はイージスに食いつかれ苦戦中だった。
呼び戻して援護させたいが、気を散らせばやられかねない、通信を送るのは自重するしかなかった。
アークエンジェルはジン2機を止まったまま迎撃。
ミサイルの狙いをつけさせないように、弾幕を張り、相手を振り回していた。
相手を回避に集中させるしかないのだ。
それでも弾幕の隙間から機銃くらいは撃たれる。少しずつダメージが重なるのだが、せめてブリッジに撃たれていないのをマシだと思うより他にはなかった。
「くそっ、撃ってきた! 正気かあいつら!」
「ヤマトめ、何が押さえるだ……! イーゲルシュテルン、バリアント、迎撃! コリントスは装填したな、よく狙えよ! シャフトには当てるな!
フラガ大尉、ジンを追い込みます、ゴッドフリートよろしいですか!」
「バジルール少尉、待って!」
ナタルが使用を指示した火器にマリューは思わず横やりを入れた。
コロニー内では副砲のバリアント……リニアカノンですら強力なのに、対空ミサイル……コリントスの弾幕や、主砲……連装式の高エネルギー収束火線砲ゴットフリートは危険すぎる。
「大尉、艦は止まっているんです! ラミネート装甲はビームはともかく、ジンの大型ミサイルは防げません、撃たれれば被害は」
オペレーターから警告が来た。
「ジンが弾幕を抜けます! 大型ミサイル来ます!」
「着弾させるな、空中で迎撃しろ! コロニーにも落とすなよ!」
無茶な命令だった、いかに高性能な艦と言えど、高速かつ自在に動く相手からのピンポイント攻撃を完全に防御するのは難しい。
ナタルとて、アークエンジェルに被弾しなければ、周りがどうなろうとも構わないなど考えていない。
だが、現実として艦を守らねばならないのだ。
民間人を収容するためにまだ飛べない、移動できない。それを今言っても仕方ない、だから出来る事をやるのだ。 彼女も下の者に無茶を言うのだから、自分も責任を果たさねばならない。
ナタルがジンとミサイルの迎撃をするために全力での弾幕を張る命令を出す直前、細いビームが何発か走った。
ビームはジンをかすめてよろけさせ、発射されていた大型ミサイル4発の内の1つに当たる……爆発を巻き起こし誘爆で他のミサイルを巻き込んだ。
複数の爆発にあおられるジンを、フラガが目ざとくマニュアル照準する。
ゴッドフリートによる砲撃、ジンを直撃する。大破だ。
フラガは今のビームをストライクからの援護射撃だと気付いていた。
「……やるじゃねえの、あのガキ……!」
フラガの目から見てもあの赤い機体……イージスのパイロットはかなりの腕だが、ストライクはその攻撃をしのぎつつ、こちらに援護射撃をやってのけてくる。
大した物だった。
あれで素人は完全に無理があるが。
残るジンは1機。
しかもミサイルは撃ち尽くしつつある相手だ。アークエンジェルのクルーが、これなら何とかなるか、と息をつくが、ジンが移動を始める。
他の機体が装備していた重粒子砲に向かっているようだった。コロニーの骨組みと言えるシャフトの近くに落ちた武器に向かっているのだ。
さすがにナタルもフラガもそうは撃てない。すでにゴッドフリートで穴が開いてしまっている。
「ストライクに通信! ジンを牽制しろと伝えろ!」
民間人に援護を頼む軍人がどこにいる……ナタルは自分に酷く腹を立てた。
キラには通信はよく聞こえた。
格闘戦の距離でつかず離れずだったイージスのアスランにも、モニターから漏れ聞こえたしい。
キラに射撃をさせないように猛攻を仕掛けてきた。
「アスラン! どうして君が……こんな!」
《ユニウスセブンだ……そこに母が居たと言えば分かるだろうがっ!》
キラの記憶と違い、容赦のない攻撃をかけてくるアスランに戸惑っての言葉だが、アスランは何故戦争に参加しているのか? と、問われたと感じたようだ。
「ここだってコロニーだ! 分かってるだろう!」
《ここはナチュラルがこんなものを作っていていい場所じゃない! お前は何故! お前まで……!》
この友人は、憎しみに捕らわれているとキラは感じた。
まだ子供なのだ、自分よりもさらに。
不器用なまでの感受性の高さだ。だが今はそれが恨めしく悲しい。
こちらを説得したいのか、殺したいのか。
横目でジンを見る、時間がない。アークエンジェルの迎撃はほぼなくなっている。
卑怯な手を使う決断をする。
キラが信頼を置いた友人の力は本物だ、殺す気で仕掛けねば止められない。
(アスラン、ごめん……!)
心で詫びながら動く。
ストライクは盾とライフルを離してビームサーベルをごくわずかに大袈裟に振るった。
イージスからは盾で隠れて見えない左手はアーマーシュナイダーを掴む。
右手のビームサーベルを見せ札に、捨てたライフルと盾に隠れての、アーマーシュナイダーの急襲。
それは反応の遅れたイージスの右胸部にかろうじて刺さった。
フェイズシフト装甲と言えども、モビルスーツの運動量で隙間に実体剣を叩き込めば刺さりもする。
キラの技量だからこそ可能な技だった。
ただ、イージスの動きを止めきる事はできなかった。
ストライクも、高速で反応してきたイージスのビームサーベルにより左足に損傷を負う。
ダメージレベルはかろうじて軽度。
それを認識した二人は互いに愕然とした。
アスランはキラがこんな手を使った事に。
キラはアスランの技量に……立ち直る土台はキラの方が頑丈だった。
互いに、反応の速さで致命傷を避けた形。
だがイージスは、確実に右腕の駆動系に異常が出る損傷のはずだ。
《キラぁァぁ!!》
アスランの叫びを聞きながら、ビームライフルと盾をキャッチしてジンへ向かう。
(……君たちだって、こんな所で仕掛ける必要はないだろ!)
シャフトをうまく使ってアークエンジェルの迎撃を封じながら狙いを定めるジンを見て、思った。
お互い様じゃないかと。
そして、自分もだ。
割りきるが、割りきれない気持ちのままに撃った。ジンの重粒子砲だけを破壊する。
イージスは損傷をさせた。
はっきり言ってジン1機など今更どれ程の危険性もない。場所も場所だ。
大破爆散させるくらいなら降伏させるか、いっそ逃がしてやるべきだとキラは考えた。
しかし、そんな打算的な考えが次から次へ出てくる自分も嫌だった。
一気にジンへ接近して、ビームライフルを突き付ける。
「聞け! ここで自爆するとシャフトを傷つけるぞ!
コロニーを崩壊させたパイロットの汚名を着たいか! 降伏しろ! 友軍機のイージスは残ってる! 生きて帰りたければコックピットを出ろ! 今すぐだ!」
苛々する感情のままに叫んだ。
少しして、了解との返事と共にパイロットはコックピットを出てきた。名前はミゲル・アイマンと言うらしかった。
ミゲル・アイマンを回収するイージスを、キラはビームライフルを構えて見守った。
アークエンジェルからの通信は切ってある。何を言われても今は怒鳴り散らしてしまう確信があった。
話さない方がいい。話したくない。
幸い、アークエンジェルは砲撃を止めて待ってくれている。帰った後、何を言われるか分からないが、黒煙をあげるヘリオポリスの街並みを見てしまえば、キラはここでの戦闘続行は不幸を招くと確信があった。
終わりにできるならする。
通信自体を切っているために、イージスとも交信は出来なかったが、アスランの怒りは透けて見えるようだった。
胸部にアーマーシュナイダーが刺さっている。
高い技量を持つアスランであれば、死なないでかわしてくれると、身勝手すぎる願望で放った一撃。
騙し討ちにしか思えないだろう。
ストライクとイージスは距離を保って対峙した。
通信を求める反応がモニターに出るのを見て誘惑に駆られる。
この距離なら繋がる、全部ぶちまけてしまえば楽になれるのではと。
未来から戻ってきた、そう言って信じてくれる人間がいればだが……指が伸びかけて、止まる。
サイ達はどうなる。
自分がスパイと疑われているのに、信用がないのに、ザフトのパイロットと友人では。
自分がいなくなったとしたらアークエンジェルは?
ストライクに乗って、たった今アスランの仲間を撃っておいて話を始めるのか?
ならばいっそここでアスランを討つか? 何故?
今後の戦況を考えて? 友人を助けるために友人を撃つのか? 生き残って戦争を止めるために?
今からでも撃ってしまえと言う自分がいる。
アスランを死なせたくないならここで落として、アークエンジェルに拘束でもしておけと。しかしそれは友のやることか?
思い出すのも恥ずかしいがキラは一度やっている。それに近い事をやってしまっている。
アスランは何故あの後も自分を信じてくれたのか、分からない。
もう一度、信じてもらえるのか? 今、言葉だけで。
考えれば考えるほど、今のアークエンジェルと、今のアスランを納得させる事は不可能にしか思えない。
「……アスラン」
説得できると思っていたが、アスランは記憶にあるアスランではなかった。
もしかしてかつてのアスランも自分と再会した時、こんな無力感に襲われたのだろうかと、ふと思う。
ストライクが交信をしないのを諦めたのか、イージスはミゲル・アイマンを手に乗せゆっくり離脱していった。
撃たれはしなかったが、イージスのビームライフルの銃口は、最後までストライクから外れなかった。
ヘリオポリス内で戦うのを好まないのか、それとも自分を撃ちたくないと思ってくれたのか。
ここから出ればまた、戦闘になる。
今度はアスランの友人達とだ。自分も知っている人がいる。
できれば撃ちたくはないが、アスランの変わり様を見ると……と、キラは暗い気持ちになった。
どのくらいそうしていたのか、いつの間にかアークエンジェルが発進してストライクに近寄ってきていた。主砲や副砲はこっちを向いている気がした。
ため息が出る。
とにかくヘリオポリスを出なければならない。アークエンジェルへ帰還するためにストライクを飛び上がらせた。 通信を入れるとやはり声が響いてくる。
《キラ君、大丈夫!?》
《ばか野郎! 通信を切るんじゃねえ、撃つところだぞ! とっとと帰ってこい! 逃げるぞ!》
《何故イージスを見逃した!? 撃てただろう! 答えろキラ・ヤマト!》
「……」
これからの事を冷静に、話し合おうと思って努力する。 説明はしなくてはならない、しなくてはならないが今はもう疲れていた。
殺されてから目を覚まして、自分の馬鹿さ加減を思い知らされて。
ナタルの詰問はキラの痛いところを突いてくる。
「済みませんでした……一度戻ります、ランチャーパックに喚装させてください」
《質問に答えろ! さっき落としておけば》
「だから……! ヘリオポリスが壊れたらどうするんですか! もうここでは戦えないでしょう。
外に出ます、アークエンジェルも来てください!」
怒鳴って通信を終わらせようとすると、ナタルではなくマリューから返事がきた。
主砲で穴が開いたためにそこを通って脱出すると言うのだ。……了解して、乱暴に通信を切った。
疲れた。本当に。
アスランと何故こうなったのか、自分でも分からないのをどう説明しろと言うのか。
アークエンジェルごしに見えるヘリオポリスの風景はボロボロで最悪な物だった。
それでも崩壊しなかった、それだけは良かったとキラは思った。
前中後編は構成が難しい、(中編1、とか2とかやっちゃったし)次から1話ずつにするかも知れません。
後、キラ。書いてて分かってきた。
この子矛盾が多すぎる(。´Д⊂)
2018/3/6 戦闘シーンを色々と修正。