扶桑(似非)   作:かのそん

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勢いだけで書いたもの。

冒頭の様なゆるーいやり取りをメインに書きたかっただけなのに、ちょっと掘り下げたら・・・。
どうしてこんなことに。(←)


プロローグ

「ダメです!」

 

「何故山城が口を挟む。俺は扶桑に聞いているんだ。」

 

「姉様が元は人間の男の人だからこそ、女の私でも問題ないはずです!いいえ、きっと女の人の方が好きに決まってます!!」

 

「いや、女性云々より先に、そもそもお前は妹だろうが!」

 

「二人は仲良しね。」

 

「「それはない!」」

 

ー息ピッタリね。

 

 それにしても、なんだろう、この状況・・・。

 口を挟んでも挟まなくても、二人の口論染みた言い争いはドンドンとヒートアップしていくし。自分にだけ聴こえる声は、まるで微笑ましい物でも見てるかのように、どこか楽しげな声色だ。

 

 自分が口を開けば更に加熱する事を懸念して喋れず、されど悪化した場合は、誰かが止めなければいけないので、その誰か。

 

 回りを見渡しても面倒事に巻き込まれる前に、と我先に出ていってしまった主力達はもういない。巻き込まれた、もとい逃げ遅れた自分は仲裁が必要な可能性も考え、此処から離れるわけにもいかない。

 

 

 

「あぁ、空はあんなに青いのに・・・。」

 

 こんな状況に巻き込まれた自分は、現実逃避しようと空を見上げる。雲1つない快晴。手を翳して直射日光を避けながら、そんな一言を呟くのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ゴボリ・・・。

 

 

 ある日。目が覚めると、そこは真っ暗な闇だった。

 確かに目を開いている筈なのに、何も見えず。そして自らの身体なのに、意識はふわふわとしていて上手く動かせない。動かない。

 

 目が暗闇に慣れてきたのか、刻一刻と変わっていく景色に気が付く。海草、大きな岩、そして巨体な鉄の残骸。景色は一瞬たりとも同じものを写さずドンドンと変わっていく。

 暫くの間横へとズレていった視界が、鉄の残骸に辿り着いた所で初めて止まった。その残骸を先端からなぞるようにゆっくりと眺めていき。

 やがて中程でポッキリと折れた箇所へと辿り着く。

 

 その折れた先は何処に行ったのか、それはわからなかったけれど。それを見届けた後、視界が凄いスピードで下へとズレて行く。それに伴って暗室の様な暗闇が少しづつ晴れ、明るくなっていく。

 

 自分の意識では動けない事から理解するのが遅れたが、どうやら誰かの見ている視界を強制的に見せられているらしい、と言う事実をようやっと理解する。

 

 

 

 コポ、コポ・・・。

 

 視界の隅に流れて、立ち上ぼり消えていく気泡。

 先程の海草とゆらゆら揺れる視界。そして、漏れ出る気泡。

 

 この視界の持ち主は、どうやら水中にいるらしい。

 

 

 そして、自分で動かした訳ではないので良くはわからないが、結構な距離を浮上し水面へと近付いていく。そう長い時間を掛けずに身体は水上へと躍り出た。

 

 開けた視界。そこに映るのは、数人の女性の姿。

 

 

 小さな、それこそ中学生にも満たない女の子達や、丈の短いセーラー服姿の娘、そしてこちらも丈は短く、脇が外気に晒されている改造した和服の様な物で着飾った女性の姿。

 自分を見て、皆一様に息を飲んだのが分かる。

 

 視界の持ち主はと言うと、そんな女の子の集まりを見るや否や、彼女達を知らない俺を巻き込むほどの様々な気持ちが溢れだす。

 

 

 憎悪、嫌悪感、怨嗟、破壊衝動。

 そして、一際強い嫉妬心。

 

 それら負の感情が際限なく膨れ上がり、不自然な程に白い右腕が前へと突き出される。次いで、自分のすぐ背後からとてつもない轟音。

 

 

 指し示した場所が弾け飛ぶ。大きな音、弾け飛ぶ海面に水飛沫、バランスを崩す女の子達。

 そこは水上だと言うのに。まるで地上だとでも言うかの様に飛び退く和服の女性の姿。なにやら大きな声を上げて指示を飛ばしている様に見える。

 

 

 1人1人。全員が全員をフォロー出来る隊列を組み、先程の息を飲み固まっていた姿からは想像も出来ない流れる様な自然な動き。その顔には疲労感が色濃く、しかし隊列に乱れはない。

 

 あまりにも整った動きに見惚れる。

 されども、そんな内面の自分を置き去りに身体は悪意と共に勝手に動く。合図するかの様に手を突き出し、間髪入れずに響き渡る轟音。避けながら距離を詰める相手。

 

 

 それを何度か繰り返し、最初に視認した距離。

 それが中程まで接近された頃。1番前にいる小さな女の子の身体が、盾の様な物で踏ん張ったにも関わらず、衝撃の余波で帽子と小さな身体が宙を舞う。すぐ後ろにいる1人がその子を抱き止め、その他の全員がこちらへと砲を向ける。

 

 

 その流れる様な動作と、自然な動きで今更ながらに不自然な部分に目が行く。

 彼女達は直接手で操作していないにも関わらず、その背後や腕にある砲身が、脚に付いている発射装置が、正確にこちらを向いていく事に。

 

 砲身がゆっくりと。だが確実に動き、複数の砲身が黒い円になった。

 

 それは即ち、こちらを的確に狙い定めていると言う事に他ならない。

 

 

「撃てぇーーー!!!」

 

 隊列を組み一斉に放たれる砲撃。瞬間激しくぶれる映像。火薬の匂い。吹き飛ばされる身体。今の今まで思い通りに動かせなかった癖に痛みだけは如実に伝わる身体。

 

 

 海面に近付くのに時間の掛かった、あんなにも深い水上を沈む事なく自在に動く身体。敵意を持ってこちらを睨み付ける眼孔と凛々しい姿。

 

 危害を加える為ではなく、少しでもあの眩しく綺麗で、愛しい姿に近付きたくて。痛みの代わりに手に入れた身体の所有権を行使する。

 

 

 今度は自分の意思で腕の伸ばす。

 

 

 空を切る。

 

 

 軋む身体で身を乗り出す。

 

 

 指がひび割れ腕が崩れる。

 

 

 支えを失い転倒する。

 

 

 当然、届かない。

 

 

 沈み行く身体と視界。

 

 

 意識が混濁する。

 

 

 アァ、ナゼジブンハ。

 

 

 アソコニ・・・イナイノダロウ・・・。

 

 

 

 

 そこで。意識と、映像が途切れた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ん・・・。」

 

 ぼんやりとした視界。見慣れぬ白い天井。

 

 

ーあら、おはよう。お寝坊さんね。

 

 そして、聞き慣れない声。

 上手く動かせない身体を横たえたまま、首を左右に向けてみるが誰も見当たらない。当然、声の主もわからない。

 

 

ーうふふ、そんなに探しても見付からないわ。だって私は貴方の中にいるのだから。

 

「んぅ?中って?」

 

ーえぇ、まあ私にも良く分からないのだけれど。そもそも人の身体を持って間もないのだから。それも貴方が来てからは表に出れないみたいだし。

 

 聞けば聞くほどに理解が遠くなっていく。こんなにもしっかりとした受け答えが出来る、少々おっとりとした優しい声。

 

 声の主である女性の姿は見えないが、そんな確かな知性を感じさせる。

 そんな女性が身体を持って間もない?

 

 

「ここは?」

 

ーそうそう、ここはね。

 

「姉様!目が覚めましたか!?良かった!!」

 

「えっ。」

 

 未だぼんやりとしている自分に、部屋へと転がり込む勢いで入ってきた誰かが突然抱き付いてくる。

 

 

ーようこそ、鎮守府へ。

 

 

 自分の頭を抱える様に抱き付いてきた人。

 

 

 涙が滲み取り乱したかに見える、その姿は。

 

 

 自分には縁のないような、とても綺麗な女性だった。

 

 

 




色々な方々のTS作品を見て、私が書いたらどうなるかの実験作品。
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