この素晴らしい算術士に祝福を! 作:鰯の頭
俺……ではなく、アクアに向かって一直線で襲いかかってくるアンデッドナイト達。
「わ、わああああーっ!なんで私が狙われるの⁉︎私、女神なのに!神様だから日頃の行いも良い筈なのに!!」
迷える死者であるアンデッド達は女神に救いを求めて集まるんだろうか?
「おい、アクアー!お前、さっさと浄化しろよ!」
さっき見せた浄化魔法なら余裕でアンデッド達を消せるはずだが…
「無理よ!こいつら、何かの加護を受けていて、ターンアンデッドが効かないのよ!」
そうなのか。面倒臭い連中だなあ。って、何のんびり見物してるんだ!はやく、助けないと!
「アクア!伏せろ!『ライト・オブ・セイバー』ッ!!」
全てを切り裂く光の刃で、延長線上のアンデッド達を全て真っ二つにした。
「なっ!!アンデッドナイト達を一瞬でだと!?貴様ぁ!!」
ベルディアが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「部下達じゃ話にならねえよ。とっととかかってこい!」
「舐められたものだ!そこまで言うなら相手をしてやろう!!」
背中にかけていた大剣を手に持ち、こちらに斬りかかってきた!
「動くスピードが遅せえよ!『フラッシュアロー』ッッ!!!」
向かってくるベルディアに向かって、光の矢の嵐をぶつける。
ガンガンガンッ!!
「ふん、その程度の攻撃などでこの鎧を傷つけることはできん!終わりだ!!」
ベルディアが俺の頭上をめがけて大剣を振り下ろす。
ーー攻撃が効かないのはこっちも同じだ!
「何だ!?この壁は?くそっ!貴様の魔法か!小賢しい!」
「正確には魔法じゃなくて、算術だけどな!きついの喰らいやがれ!」
光を纏った右手で辻を描き、十字架型の光を前方に生成する。
「い、いかん!回避せねば!」
逃げようとするベルディアだが、それは無駄だ。
「『グランドクロス』!!!」
鋭い掌底で十字の刃を打ち出す。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
圧倒的な速度飛来するそれは、ベルディアの鎧を切り裂く。
「ちっ!鎧を解体できなかったか!何て硬さだよ!」
ベルディアの纏う鎧には、深い十字の切り傷が残されていたが、奴の体に到ってはいなかった。
「はあはあはあ!さすがに今のは焦ったぞ!流石は光の使徒。何て強さだ。それに、無詠唱にチャージも無いとは。貴様、ただのウィザードではないな!さてはーーー」
「『セイクリッド・ターンアンデッド』!!」
「ひああああああああー!!!」
後方に控えているアクアから浄化魔法が飛び、再度ヤツの浄化を試みた。
「ナイスだ、アクア!おまけに『ホーリー』ッ!!」
情け容赦無い不意打ちの光の柱が、奴を光熱の奔流に晒した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
光が止むと、若干体が透明になってきたベルディアが立ち上がった。
「き、貴様ら…騎士道や人の心というのを知らないのか…ッ!」
「アンデッドが騎士道や人の心とか、何言ってるんですかー?プークスクス!」
アクアがベルディアを煽る。
「そうだ!アンデッドで魔王軍のくせにそんなこと言うんじゃねえよ。もう1発喰らっとけ!『ライト・オブ・セイバー』!」
ベルディアの鎧の傷にさらに追撃を加える。
ガァァン!傷の部分を中心に一部、鎧が砕けた。
「リーク、なんかあいつから嫌な臭いが収まったわ!あと、もう少し弱らせれば浄化できると思うわ!」
「分かった!『ホーリーランス』ッ!!!『ホーリーランス』!!『ライトボール』!!」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」
休む間も無く次々と光の攻撃を当てていく。
「最後にとっておきの技を見せてやるよ!」
腰にあるグラディウスを手に掲げて、その刀身に光と魔力を充填させていく。
「○○クエ好きなら誰もが憧れる技!喰らえ!『ギガスラッシュ』ッッッ!!!」
剣を薙ぎ払い、雷を纏った光の三日月をベルディアにぶつける。
「がはっっっ…………」
ベルディアの鎧が全部砕け散って、地に倒れた。
「よし、これで弱ったな。」
「弱ったなじゃねえよ!もう、そいつ瀕死じゃねえか!オーバーキルだろ!なんかそいつが可哀想に見えてきたよ。」
カズマが哀れみながらツッコンできた。
「別にいいじゃねえか。それより、アクア!浄化を頼むよ!俺は浄化魔法を使えないんだ。」
「分かったわ!任せてちょうだい!」
そう言うと、街の方からアクアの方へロッドらしきものが飛んできた。
「『セイクリッド・ターンアンデッド』ー!」
杖を両手に聖なる魔方陣をベルディアの足元に展開する。
「ああああああああああーっっ!!」
ベルディアが白い光に包まれ、今度こそ消えて無くなった。
【魔王軍幹部ベルディア討伐・クエスト達成】