境界線を越えた先にあるもの   作:✟クロス✟

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少し?遅れましたが皆様明けましておめでとう御座います(^ー^)ノ
今年もよろしくお願いしますm(_ _)m

それでは!ていとくんが主役の第八話をどうぞ!


第八話 垣根、踏み入れし新たな領域

始業式を終えた私とていとくんは学校帰りに寄った地下街のゲームセンターにある太鼓の超人で遊んでいた。

 

「お前よく裏超人モードで良フルコンボなんて出せるな」

 

「いやいや、これぐらいていとくんもできるでしょ」

 

「フルコンボはできてもオール良は無理だな。できる気がしねぇ。『ーーー地下街に外部からのテロリストが侵入しました!現在地下街にいる方は風紀委員(ジャッジメント)の誘導に従い、速やかに地上へもどってください。繰り返しますーーー』

…ん?」

 

突然、私達の頭の中に声が響いた。

どうやら風紀委員(ジャッジメント)がテレパシーで皆に伝えて回っているみたいだね。

 

「…どうやらテロリストが紛れ込んだみたいだね」

 

「みたいだな。どうする?俺たちは介入せずに帰るか?」

 

「うーん、私は残って避難を手伝うよ。テロリストの攻撃でシャッターが降りて閉じ込められる人がいるかもしれないからね。それに不純物(イレギュラー)が暴れてるかもしれないし。だからていとくんは先に帰ってても良いよ」

 

「いや、お前が残るんなら俺も残ってアンチスキルの手伝いでもしてくるわ。

もし不純物(イレギュラー)がいたらアンチスキルじゃ対処できねぇからな」

 

「分かった。…やり過ぎないでね」

 

「分かってるよ」

 

私達はゲームセンターを出て、ていとくんはアンチスキルの手伝いに、私は避難の手伝いをするために、二手に別れた。

 

 

 

「だいたいの人は風紀委員(ジャッジメント)の誘導もあって避難できたみたいだね」

 

ゴシャァァァァン!!! ガチャンッ!

 

凄まじい轟音が鳴り響いた次の瞬間、ブレーカーが落ちた時の音が聞こえて、辺りが暗闇に包まれた。

ワオ、照明が落ちて真っ暗になったね。

ってことは緊急時用の防犯システムが作動してシャッターも閉まっただろうね。

……何か嫌な予感がするなぁ。

さっさと閉じ込められた人を外に避難させた方が良いね。

 

 

 

 

閉じ込められた人達を外へ出すために出口の方へ向かっていると、見覚えのあるツンツン頭と常盤台の制服を着た短髪が見えたので声を掛けてみることにした。白いシスターもいたからできれば声かけたくなくないんだけどね。

まぁ流石にこの緊急時にお腹すいたんだよなどとほざいたりはしないでしょ。

 

「おーい、ヒーロー」

 

「如月!?お前もここにいたのかよ!」

 

「うん。ていとくんと遊んでたのよ。

それよりもヒーロー達も逃げた方が良いよ。テロリストが暴れてるみたいだからさ」

 

「暴れてるって、もうアンチスキルと交戦してるの!?」

 

「うん、でも大丈夫だよ。アンチスキルのところにはていとくんが応援に向かったからさ」

 

「ていとくんって誰よ?」

 

「ていとくんはLevel5第二位の未元物質垣根帝督のことだよ。

みこっちゃんは絶対能力進化計画の時に操車場で会ったでしょ?」

 

「あ!もしかしてあの時のホストっぽい奴!?」

 

「そう、だから勝敗的な心配はしてないんだけど一つ問題があるんだよね」

 

「問題って?」

 

「ていとくんの攻撃の余波でこの地下街が崩れないかどうかってこと」

 

私が苦笑いしながら言うと眼鏡をかけた長髪の女の子、風斬氷華(あだ名はメガネちゃんかな)と大罪シスターがえぇ!?と言って驚き慌て、ヒーローとみこっちゃんが『全然大丈夫じゃねぇ(ない)!!』とツッコミを入れた。

さすが漫才コンビ上条美琴、息があってるねぇ。

 

「ねぇ、あんた今失礼なこと考えてない?」

 

なぜ分かった!?

 

「考えてないってば〜。

だからその電気は仕舞ってね〜」

 

ヒュンッ!

 

「お姉様、まだ避難していなかったんですの!?

それに類人猿も」

 

私たちがコントをしていると風切り音と共にパンダ(白井)が現れた。

テレポートで飛び回って閉じ込められた人達を避難させてるのかな?

 

「まぁまぁそんな怒らないでさ。

今はみんなの避難が先でしょ?」

 

「…そうですわね。

では、まずはお姉様とそこのシスターを外へ避難させますの」

 

「えっ?ちょ!黒子!」

 

みこっちゃんと大罪シスターを連れてパンダが外へテレポートした。

それじゃ、私はこの先の出入り口で立ち往生してる閉じ込められた人達の避難を手伝うかな。

 

prrrrrrrrrrrrr

 

電話?

ポケットからiPhoneを出して画面を見てみると、そこにはていとくんと表示されていた。

なにかあったのかな?

 

「もしもし、何かあったのていとくん」

 

『ああ、どうやら学園都市に侵入したテロリストは三人いて、そのうち二人が不純物(イレギュラー)らしい。

しかもその内二人はこの地下街にいて、もう一人の不純物(イレギュラー)は第23学区にある衛星管制センターに向かっているらしい』

 

「それは誰からの情報なの?」

 

『土のゴーレムを操るテロリストと交戦していた警備員(アンチスキル)の一人だ』

 

「交戦していた(・・)?」

 

『全員土のゴーレムにやられたからな』

 

「てことはていとくんはそのゴーレムを操る敵と戦いながら電話してるの?」

 

『いや、そいつは俺が一撃でゴーレムを吹き飛ばしたら勝てないと思ったのか粉塵に紛れて逃げやがったよ。

だから今は衛星管制センターに向かってる奴を倒す為に地下街を出て衛星管制センターへ飛んで先回りしてるとこだ』

 

「そっか。じゃぁていとくんはそのまま衛星管制センターに向かった不純物(イレギュラー)を倒して。こっちで地下街にいるテロリストは倒すから」

 

『分かった』

 

私は通話を切ってヒーロー達の方へ振り向いた。

 

「ヒーロー、テロリストの狙いはヒーロー達みたいだよ」

 

「な!?本当かそれ!」

 

「うん。さっき連絡があってね、褐色肌の女のテロリストの目的はイギリス清教と学園都市で戦争を起こさせることらしいの。

その火種としてそこのメガネちゃんやヒーロー、大罪シスターっていうある条件が揃っている人物を狙ってるみたい」

 

まぁ、そんな連絡受けてないけどね。

全部原作知識のおかげだし。

 

「クソ!どうにかして外へ出られればインデックスを助けに行けるっていうのに!」

 

「大丈夫だよ。私が外に出してあげる」

 

「でも、俺には幻想殺し(イマジンブレイカー)のせいで異能の力は効かないんだぞ?」

 

「分かってるよ。まぁ見てて。

 

『サーチ』」

 

私は自身を中心として球状に魔力を放出し、それにより地上の地理を把握した。

よし、上は建設途中のビルがあるだけみたいだね。

 

「『デリート』」

 

私は人差し指で真上の天井に向かって円を描いた。

すると、天井が円柱状に消滅して円状の穴が空いた。

 

「『モデリング【ラダー】』」

 

土が天井の穴へ向かって隆起し、土の梯子ができた。

 

「さぁ、これで外へ出て。

右手は使わないようにね」

 

「分かった。ありがとうな」

 

「どういたしまして。

それじゃ私はもう一人のテロリストを倒しに行くね」

 

「え!?テロリストって一人じゃなかったんですか?」

 

「違うよメガネちゃん。

学園都市に侵入したテロリストは合計三人だよ。

残りの一人はていとくんが相手をするからヒーロー達は心配しなくていいよ」

 

「そうですか…。分かりました。気をつけてくださいね」

 

「うん、そっちもね」

 

それじゃ、私はこの穴を塞いで地下街にいるテロリストを倒しに行くかな。

場所は地上の様子を調べた時ついでに調べた限りじゃ地下街のさらに地下にある鉄道にいるみたいだし。

私はさっきやったのと同じようにして真下に穴を開けて地下の鉄道へと向かった。

 

 

SIDE垣根

 

「やっと来たか。待ちくたびれたぜ糞野郎」

 

衛星管制センターに先回りして戦闘しても大丈夫なように衛星管制センター近くの広い道路で待つこと数分、不純物(イレギュラー)のテロリストがやって来た。

その風貌はSPのような真っ黒なスーツを着た目つきの悪い20代の男だった。

 

「もう暗部が動きだしたのか」

 

「さぁな」

 

「まぁ良い。第二位と言えど、俺の能力なら攻撃を通すことができるだろうしな。

さっさと殺して衛星をジャックするとするか」

 

「お前の狙いは人口衛星『ひこぼしII号』をジャックしてそれに搭載されている軍用レーザーを照射して学園都市に大打撃を与えるってとこか。

なんともチープな作戦だな」

 

「何とでも言うが良いさ。

仮に失敗したとしてもローマ正教が学園都市に攻撃をしたってことに変わりはない。

それだけで俺達には意味がある」

 

「そうかい。

まぁ、そっちのことは知ったこっちゃねぇ。

どうせどっかの野郎がコソコソと動き回ってくれるだろうしな。

とりあえず、俺はここでお前をブチのめすだけだ」

 

「やってみろ。第二位!!」

 

黒スーツが能力を発動したのか、周りの空間が歪んだ。

なんなんだこれは?

空間操作系の能力で周囲の空間と断絶させて閉じ込めたのか?

ま、一応用心はしとくか。

黒スーツはまるでリニアモーターカーのように浮遊しながら高速接近してきてその勢いのまま殴りかかってきた。

確かにスピードは大したもんだが動きが直線的過ぎてカウンターしてくださいって言ってるようなもものだな。

俺は未元物質で作ったガントレットを付けた右拳でカウンターを極めた。

かのように見えたが何故かすり抜けて後頭部に強烈な衝撃が加わった。

俺は二撃目を防ぐために三対の翼を展開し、それを振り回すように回転しながら距離をとった。

 

(さっき殴ったのは光を操作して作った立体映像か?)

 

だが、光学操作系の能力ではなさそうだな。

さっきの移動は電磁力を利用したもので光学操作系の能力じゃまず不可能だからな。

とりあえずいろいろ実験してみるか。

俺は翼を使い、光を回折させることによって太陽光を殺人光線へと変化させて黒スーツへと照射した。

だが、殺人光線は黒スーツに当たる瞬間、何故か拡散した。

 

「そんなものか?第二位」

 

「なわけねぇだろ三下!」

 

俺は翼を弓のように引き絞り、一気に六枚全ての翼を黒スーツに打ち付け、続けて未元物質で黒スーツの周りの空気を毒ガスへと変化させ、さらに未元物質の粒子と反粒子を衝突させることで対消滅を起こして爆破した。

だが、それでも黒スーツは爆炎の中から悠々と出てきた。

 

「ヒントをやろう。俺は天災をも再現できる」

 

黒スーツは何もない虚空から赤い雷を落とすと同時に黒い靄のような剣を作り出し、切りかかってきた。

俺は雷を翼で防ぎ、斬撃は前方に未元物質の透明な壁を作ることで防いだ。

すると透明な壁に当たった黒い靄の剣は拡散することで壁を躱し、黒い槍となって俺の全身を覆う目には見えない未元物質の防禦膜ごと切り裂いた。

 

「があああああああああああ!!!!」

 

クソ、こいつの攻撃は通常の物理法則に則ったものじゃねぇってのか!

俺は瞬時に黒い靄の正体を解析し、二撃目の黒い靄の槍を未元物質でスポンジのように吸収させて防いだ。

かなりのダメージを受けたがさっきの攻防でだいたいの能力の見当がついた。

奴のさっきの言葉が正しいのだとしたら、奴は現象を操る能力だ。

それも、既存、未存の現象を発生、操作する能力でほぼ間違いないだろう。

今も周りに展開しているこの空間の歪みやさっきの黒い靄で作った剣なんざ既存の現象には存在しないからな。

あのリニアモーターカーみたいな高速移動も下がただの地面であるここじゃぁ本来不可能だしな。

 

「その様子だと、どうやら俺の能力がわかったみたいだな」

 

「既存、未存の現象を発生、操作する能力だろ」

 

「8割正解といったところか。正確には俺が想像した現象を発生、操作する能力だ。既存未存問わずな。ま、どんな能力を使っているか分かったところでどうしようもないだろうがな」

 

「いや、能力さえ分かっちまえば対処法なんざいくらでも浮かぶ。

最悪、全ての対処法が通じなくとも無限に未元物質を生産し続けて持久戦に持ち込めば勝てるしな。

だけど、今回は試したいことがあるからな。

お前にはその実験台になってもらうぜ」

 

「なんだと?」

 

俺はベルトに付けられているホルダーからカードケースを取り出し、その中からルーン札を三枚取り出した。

 

「な!?まさか、魔術を使うつもりか!!

能力者が魔術を使うと副作用が発生するんだぞ!

いや、それ以前にどこで魔術を知った!」

 

「これは若い姉ちゃんから道案内のお礼に貰った本に書いてあったんだよ。

まぁ、樹に教えてもらうまでは全く意味が分からなかったけどな」

 

それにしても、まさかあの時貰った本がこんな役立つ物だったとはな。

 

__________________

 

八月二十九日

 

「あの〜、ちょっと道を尋ねたきなのよ」

 

第七学区の公園のベンチでぼーっとしてると自分の身長よりも長い金糸のように綺麗な金髪にサファイアのような碧眼の姉ちゃんが道を尋ねてきた。

 

「ああ?何処に行きてぇんだ?」

 

「ちょっとセブンスミストというところに行きたきなのよ」

 

「セブンスミストならそこの大通りを右に歩いて行けばすぐ見つかる。

セブンスミストって書いてあっからすぐ分かるはずだ」

 

「おお!ありがたきことなのよ!

お礼にこれを差し上げるのよ!」

 

金髪の姉ちゃんはカバンから幾何学模様の赤い本を出して俺に渡した。

 

「なんだこりゃ?」

 

「ふふ♪いずれ貴方の役に立ちし物でありけるよ。

では、さようなら」

 

「ああ、じゃぁな」

 

手を振って別れを告げ、見えなくなったところでさっき手渡された本をもう一度見てみる。

するとその本のタイトルにこう書かれていた。

 

『炎の魔術』

 

「炎の魔術?

なんだこれ?あの姉ちゃん厨二病なのか?

ま、一応樹に見せてみるか。

あいつならなにか知ってるかもしれねぇし。

転生者がいたぐらいだしもしかしたら本当に魔術なんてものがあるのかもしれねぇな」

 

 

 

_________________

 

 

 

「さぁ、実験開始だ」

 

「フッ、バカが、俺はローマ正教の所属、つまり魔術のことも知っているんだよ。

だから魔術では俺の想像現象(オールフェノメノン)は攻略できんぞ」

 

「誰が魔術だけを使うっていった?

俺がこれからやるのはそれの一つ先の力だ」

 

「何?」

 

灰は灰に(AshToASh)ーーー

ーーー塵は塵に(DustToDust)ーーー

ーーー吸血殺しの紅十字(SqueamishBloody Rood)

 

さらに未元物質を合成、異世界の法則を未元物質と融合させることに…ゴフッ…成功」

 

詠唱と共に俺の手にある三枚のルーン札が燃えて炎剣となり、さらに未元物質と融合することで、白く輝く光剣へと昇華する。

クソ、副作用がここまで酷いとはな。

能力者が魔術を使うと全身が破裂するって樹が言ってたが、針小棒大に言ってたわけじゃなかったみたいだな。

 

「フッ、確かにある程度強力にはなったようだが…。

合成する魔術がその程度のものなら大したことはないだろうな」

 

「なら、試してみるか?」

 

「良いだろう。その虚仮脅しの魔術もどきごと私の最強の技で消し去ってくれる!」

 

黒スーツは両腕を俺へ翳し、この世に存在する全ての色が混ざり、けれども混ざり切らず、それぞれの色が独立したような言葉では表現しようのない色彩の光線を照射した。

その光線は周囲に様々な科学現象を発生させながら真っ直ぐこちらへ向かってきた。

おそらくあれはアイツが現時点で扱える全ての現象を一条の光線に収束させたものなんだろう。

確かに凄い技だ。

未元物質だけじゃぁ防ぐ事は出来なかっただろうな。

だが…

 

「この融合能力を破るにはちっとばかし役不足だな」

 

俺は未元物質で視力を強化したことによりゆっくりと迫り来るようにみえる光線を魔術と超能力を融合させて創り出した光剣で斬り裂いた。

 

「な、なんなんだ……それは…。

……ふざけるなよ。

俺が、俺の能力が負けるはずはない!

そうさ!超能力と魔術の融合がなんだ!!

そんなものよりも俺の能力は強い!!」

 

「そうか、ならもう一度試してみろ。

そのご自慢の能力と俺の融合能力。

どちらが強いのか」

 

「死ね!!第二位ィィィィィィィィィイイイイイイイイイ!!!!!」

 

「これで終いだ。クソッタレ」

 

瞬間、俺の光剣と黒スーツが生み出した青白い炎のような剣が正面から激突し、その際の衝撃波で周囲の地面を砕き、吹き飛ばしながらも数瞬拮抗するが、すぐに黒スーツの炎剣は光剣に切り裂かれ、そのまま光剣から出た光の斬撃により黒スーツは塵一つ残さず消し飛ばされた。

黒スーツを消し飛ばした斬撃は100mほど地面を抉り飛ばして消滅した。

黒スーツを倒したからか、周囲の歪んでいた空間も元に戻った。

 

「はぁ、クソッ。血を流し過ぎたな。クラクラする。

……どうやらこれ(・・)も時間切れみたいだな」

 

右手に握っていた光剣は限界がきたのか、糸が解けていくようにして崩壊していき、空気に溶けて消え去った。

俺は崩壊した光剣を握っていた右手を眺めて溜息を吐いた。

 

「まだまだ使いこなせていない証拠か。

ま、ぶっつけ本番でこれならギリギリ及第点ってところか」

 

俺は近くにあった衛生管制センターの壁に凭れるように座り込み、ポケットからスマートフォンを取り出して第七学区の冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)が勤務する病院へ電話した。

 

「衛星管制センターに重症患者一名だ。早く来い」

 

とだけ言い、通話をきってスマートフォンをポケットに戻した。

ちょっとだけ寝るとするか。

流石に……疲れ…た…。

 

 

 

 

 

SIDE 三人称

 

 

窓も扉もないビルの天井に無数の管が張り巡らされた一室にて男にも女にも子供にも老人にも囚人にも聖人にも見える『人間』がいた。

『人間』ーーアレイスター・クロウリーは目の前に表示されている滞空回線(アンダーライン)によって撮られたある録画映像を興味深気に見ていた。

 

「まさか彼女と関わらせるという切っ掛けを与えることでここまで短時間で飛躍的に進化するとはな…。

これも未元物質が持つ無限の可能性故か…。

それとも…垣根帝督という人間の可能性故か…」

 

そう、アレイスターが見ていた録画映像とは第23学区衛生管制センター前にて行われた垣根と黒スーツの男ーー渋柿宗真の戦闘映像だったのだ。

 

「どちらにせよ、これでプランの大幅な短縮ができる」

 

「しかし、問題もあるのでは?」

 

アレイスターの入っているビーカーの横にまるで空気かのような影の薄さで立っていた黒髪黒目、美形でも不細工でもない、背も高くなく、かと言って決して低い訳でもない、中肉中背で、強いて特徴を挙げるとすればその圧倒的なまでの無個性さが個性と言えるような無表情の男は自信の内に生まれた問題の可能性を確かめるようにアレイスターに確認をとった。

 

「君が言っているのは未元物質の無限の可能性のことか?

それとも如月樹を始めとする転生者達のことか?」

 

「両方です」

 

「どちらも問題はないさ。

未元物質の無限の可能性は今回のように幾らか方向性を定めることができ、転生者達は強大な力を持っているものの、所詮は『ヒト』。

これまで通り必要ならプランに組み込み、支障をきたすようなら排除するだけだ」

 

「そう、上手くいくでしょうか」

 

「いくとも。

この程度の差異で崩壊するほど…、私のプランは安くない」

 

そう言って、アレイスターは映像を地下鉄へと切り替えた。

 

「さて、垣根帝督は超能力と魔術の融合能力という新たな領域を見せてくれたが、その切っ掛けとなった彼女はいったいどんな力を見せてくれるかな?」

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