境界線を越えた先にあるもの   作:✟クロス✟

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漸く私が一番好きな三人称での戦闘シーンが描けたZ!
そしてなんと過去最長の文字数一万字越えというね(苦笑)

ところでこの作品の書き方(地の文)について、このまま続けるか原作のような書き方にするか迷ってるのでコメント欄に意見を書き込んで貰えると嬉しいです。


第十二話 垣根、最終試験に臨む

 

9月13日

 

SIDE 垣根

 

この日、俺は学校をサボって、樹の部屋の中の一室を樹の時空魔法で改造した空間で全身を銀色の甲冑で覆われた一人の騎士と向かい合っていた。

なぜこんなことになっているかと言うと、事の始まりは今朝のことだ。

 

 

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「今日は学校サボってね、ていとくん」

 

俺がいつも通り一緒に登校するために樹の部屋に樹を迎えに来ると開口一番そう言われた。

 

「あ〜、一応聞くけど理由は?」

 

「今日はていとくんに最終試験を用意したからそれに挑戦して欲しいの。

でも今回の試験は下手をすると死んじゃうかもしれないから拒否してもいいんだけど…、どうする?」

 

樹の言葉から推測できるように俺は今までにも幾つかの試験を受けてきていた。

その内容は樹が時空魔法に属する召喚魔法という分類の魔法で召喚した、音速を軽く越えた速度で動き回る猫の魔物(アクセルキャット)に魔法を当てるといったものや、先と同様樹が召喚した身体がとてつもなく硬い巨大な亀の魔物(アダマンタートル)を倒すというものだったりと様々だ。

ちなみに、超能力者が魔法を使った際の副作用だがこれは魔術同様身体から血を吹き出すといったものだった。

これもいつかは克服しねぇとな。

閑話休題(それはともかく)

 

「そんなもん受けるに決まってんだろ」

 

「…分かった。それじゃあ準備ができたらいつものリビングにある扉から私の作った異空間に入って最終試験を受けておいてね。

あと、今回の試験の内容と合否はその対戦相手がしてくれるから」

 

「ああ、分かった」

 

俺は試験部屋に入るために樹に背を向けた。

 

「それじゃ…、…いってらっしゃい」

 

「…ああ、いってくる」

 

俺は背後から聞こえてきた不安気な樹の声に首だけ振り返り、安心させるために微笑んで出立の挨拶をして試練の部屋へと入った。

 

 

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ということがあって俺は今、樹が創った所々地面が隆起しているサバンナで樹が召喚していた騎士と向かい合っている。

今回は内容は対戦相手から知らされるって言ってたが、こいつがその対戦相手ってことでいいんだよな?

 

「私の名は騎士王(ナイト・オブ・ナイツ)、全世界線の全ての騎士の力を扱う能力を持っている」

 

喋れたのかよ!!

入ってからずっと黙ってるから喋れねぇのかと思ってたぜ。

 

「垣根帝督、今回の試験名は『限越死闘』。

勝利条件は私を倒すこと、敗北条件は貴公が死ぬことだ。

手段は問わない。

だが断言しよう。

超能力、魔術、魔法、貴公の持ち得る全ての力を使い、尚且つこれまでの限界を越えなければ私には決して勝つことはできないと」

 

ハッ、面白ぇ。やってやろうじゃねぇか。

 

 

SIDE 三人称

 

「悪ぃが、俺はまだまだ強くならなきゃならねぇんだ。

だから、お前も俺の踏み台として越えさせてもらうぜ」

 

「その心意気や良し。死に物狂いでかかってくるがよい」

 

垣根は未元物質で体長10m程の白いカブトムシを合計30体創造し、騎士王へと向かわせた。

 

そのカブトムシ達は、原作新約とある魔術の禁書目録第六巻にて復活した垣根帝督が用いていたものと見た目は(・・・・)同じものだった。

そのカブトムシ達の原作との相違点はたった一発の砲弾が学園都市製の核シェルターを粉々に粉砕するほどの砲の威力と一体一体が能力を使えるという点だ。

 

「そいつらは全員電撃使い(エレクトロマスター)のLevel3で俺と同一の脳波を持っている。

つまり、そいつらは妹達(シスターズ)同様電気的ネットワークで繋がっていて瞬時に細かい指示を出し合える上に演算能力も上がっていて実質一体一体がLevel4クラスの力を持ってるってことだ。

で、これに対して騎士王はどう出る?」

 

瞬間、カブトムシ達は騎士王を取り囲み、そのツノ型のスプリング式砲による全方位同時砲撃を開始した。

さらにカブトムシ達はそこに能力による電撃も加えた。

騎士王がいた地点がその圧倒的蹂躙により土煙で埋め尽くされていく。

 

 

しかし、一閃。

 

 

その騎士王が放ったであろうたった一閃で全ての砲弾と電撃が切り裂かれ、その延長線上にいた大量のカブトムシ達もまとめて切り裂かれた。

 

「次は私の番だ。

参照、【ヨハネの黙示録第一の騎士】

能力は【射出】だ」

 

そう騎士王が言った途端、騎士王の全身を包み隠す甲冑が銀から白濁とした色へと変化した。

騎士王は垣根へ手を翳した。

それを合図としたかのように地面が滑らかに隆起し、矢の如く射出された。

垣根はそれを2対の翼を繭のように変化させて防ぎながら残りの1対の翼で飛翔した。

無数の大地の矢はそれをどこまでもしつこく追尾する。

 

「チッ、うざってぇんだよ!!」

 

垣根は翼を大きく振るい、空気の壁を生じさせて襲い来る無数の大地の矢を全て叩き潰した。

 

「では、こんなものはどうだ?」

 

突如、垣根を巨大な影が覆い尽くした。

 

「まさか!?」

 

垣根は咄嗟に上を向くと、そこにはおよそ直径20mはあろう巨大な隕石が見えた。

射出の能力により、騎士王が宇宙空間から射出したのだ。

 

「洒落になんねぇぞオイ!」

 

垣根は莫大な量の魔力を副作用で血反吐を吐き、全身から血を流しながらも放出し、その全てをマナに変換した。

垣根は更にそこからマナを解離させて不安定な状態にし、その不安定なマナを隕石にぶつけた。

不安定なマナが接触した隕石はどんどん魔素へと強制変換されていくが全てを変換することはできなかった。

だが、

 

「それで充分だクソッタレ」

 

垣根は未元物質と化合させて爆発を防いでいた初めに解離させていた魔素で隕石を覆うと同時に解離し、起爆させた。

魔素の爆発に呑まれた隕石は元々不安定なマナにより小さくなっていたこともあり、完全に砕け散り塵となった。

 

「参照【ヨハネの黙示録第二の騎士】。能力は【破壊】。

上ばかり見ていると足下を掬われるぞ?」

 

声が聞こえたと同時に言い知れぬ感覚に襲われた垣根は咄嗟に翼を羽ばたかせて右に回避した。

すると垣根が先程までいた空間を炎が飲み込んだ。

その炎は先の隕石と比べてもなお大きく、回避しきれずに当たった左翼が焼け落ちた。

垣根は未元物質で創った、この世界の物理法則が全く通じない翼を焼き尽くすというその現象に驚愕しながらも、左翼再構築の演算を済ませて左翼を再生させた。

破壊の炎の出処、騎士王を見ると、その鎧は先程の白濁とした色から荒々しい紅蓮へと変化していた。

 

「そっちこそ俺ばっか見ていていいのか?」

 

「……ッ!」

 

空の彼方で光が見えたと思った瞬間、騎士王に無数の光弾が降り注いだ。

それは垣根が超高高度で隕石を魔力の応用で破壊した際に生じた魔力やマナで描いた巨大な魔法陣から発せられた魔法だった。

その魔法は一発一発が小隕石と同等の威力を持っており、それを雨のように降り注がせるという強力なものだが、その分難易度は高く、それを短期間学んだだけで実践で使いこなす垣根はやはり天才なのだろう。

 

 

だが、

 

 

それでも、

 

 

騎士王はそんな雨の中、平然としていた。

 

 

「参照、【ヨハネの黙示録第三の騎士】。能力は【制限】」

 

騎士王の鎧が荒々しい紅蓮から薄暗い夜黒へと変化していた。

『ヨハネの黙示録第三の騎士』の能力、『制限』は視認したありとあらゆるものを制限するというものだった。

騎士王はそれにより、体表面に当たる隕石の雨一つ一つの威力を制限することでそれを完璧に防ぎきっていたのだ。

だが、逆に言えば視認出来なければ制限することはできないのだ。

 

「……ッ!」

 

垣根はその強力な魔法さえもただの囮としてしか意味はないと分かっていたからこそ油断せず、その弾幕を防いで騎士王が油断しているその隙を突き、目に見えない分子レベルの未元物質を瞬時に集めて目を覆うことで視界を潰すことに成功した。

偶然にも弱点を突いて第三の騎士の能力を封じた垣根は止めとばかりに未だ光弾の雨に曝されている騎士王へ全方位から未元物質の槍を同時に射出した。

 

「参照、【ヨハネの黙示録第四の騎士】。能力は、………【死滅】」

 

騎士王を貫かんと高速射出された未元物質の槍や目を覆い隠していた未元物質、空から降り注いでいた光弾の雨は甲冑の色を薄暗い夜黒から死を匂わせる不気味な蒼白へと変化させた騎士王の体を覆うように現れた甲冑と同色の青白い霧のようなものに触れた途端、ボロボロと崩れ、死に絶えた。

騎士王の体から漂っていた青白い霧は突如爆発的にその勢いを増し、柱のように空へと昇っていき、上空の光弾の魔方陣を死滅させた。

空へと昇った青白い霧の柱は大樹のように枝分かれし、そのまま蛇のような動きで垣根へ襲いかかった。

垣根は翼を全力で羽ばたかせて羽の弾幕を張りながら青白い霧から逃げるが、青白い霧はそんなもの障害にすらならぬとばかりに問答無用で羽の弾幕をボロボロに崩し殺しながら距離をドンドンと詰めてきていた。

 

「チッ、仕方ねぇ」

 

垣根は副作用で血管がブチ切れていくのを堪えながら空間転移魔法を完成させ、騎士王の背後の上空に転移した。

そしてそのままダメ元で、辺りを見回して垣根を探している騎士王に未元物質製の長い純白のネジを大量に射出した。

それは先のように騎士王を覆っている青白い霧によって死滅すると思われた。

しかし、大量に飛来するネジを空気の流れで感知して振り返った騎士王はそれを青白い霧で防がずに、右手に持つ刃渡り180cmのロングソードで弾いて防いだ。

それどころかさっきまで身体を覆っていた青白い霧は跡形もなく消え去り、甲冑も死を匂わせる不気味な蒼白から元の騎士然とした銀色に戻っていた。

 

(こいつ…、なんでいきなりあの厄介な青白い霧を消したんだ?

あれなら確実に防げただけじゃなく俺を殺すことだって容易にできたはず…。

もしかして、一つ一つの能力に制限時間があって、青白い霧は消したんじゃなく、制限時間がきたせいで消えたのか?

だとしたら辻褄が合うな。

体感時間からしてあいつの一つ一つの能力の制限時間は大体3分ってところか。

何はともあれ、新しい能力に切り替える前に倒さねぇとどっちみち勝機はなさそうだな)

 

コンマレベルの高速思考で騎士王の能力の弱点を見破った垣根は翼を全力で羽ばたかせて、未元物質を纏うことで空気抵抗を減らすことでマッハ5というバカげた速度を出して騎士王に迫った。

それにより新しい能力に切り替える間がなくなった騎士王は能力を諦めて自身の剣術で迎え討つことを決めた。

直後、騎士王のロングソードと垣根の翼が激突した。

 

ロングソードと翼が激突した際に生じた衝撃波は辺りの岩や木を吹き飛ばし、地盤すら割り、殺風景だったサバンナをより一層荒れ果てたものにした。

勿論、二人はその一撃では終わらず、常人なら目視すらできないような圧倒的な速度で移動しながら互いに攻撃を交わしていた。

 

ドガッガキグキュズガッゴッガンガンゴガッバキッドゴッキンキャキッゴバァ!!!!

 

垣根の翼が騎士王の剣を防ぎ、その隙に余った翼で騎士王に斬りつけ、それを騎士王が剣で受け流し、ビルをも一撃で粉砕するほどの回し蹴りを叩き込み、垣根はそれをしゃがんで躱しながら翼を鈍器のようにして回し蹴りによって背を晒した騎士王に叩きつけ、騎士王がそれを剣を背にまわして盾にして防ぎ、と互角の攻防を繰り広げていた。

 

だが、その互角の攻防は遂に終わりを告げた。

騎士王がダメージ覚悟で垣根を遠くへ蹴り飛ばしたのだ。

それにより垣根の鈍器と化した翼が当たるが、身体を逸らすことで直撃は避けていた。

そして騎士王はこのチャンスを逃すまいと、高速で能力をダウンロードした。

 

「参照!【太陽の騎士】!」

 

新しい能力をダウンロードした騎士王は銀色の甲冑姿から、太陽のようなゆらゆらとした造形の朱色の甲冑姿となった。

騎士王は魔法の詠唱を開始した。

 

「我、太陽を体現せし者。

骨は鉄、血肉は溶岩でできており、心は常に太陽が如く燃え盛っている。

我に近づきし尽くはその理不尽なまでの熱量により溶けゆく」

 

垣根は騎士王が魔法を完成させる前にケリを付けようと、全長100mまで伸ばした三対の翼全てを全力で振り下ろす。

が、一足遅かった。

翼が騎士王を押し潰す寸前、騎士王はギリギリ魔術を完成させていた。

 

「故に、我に近づける者はなし」

 

刹那、周囲の景色が荒れ果てたサバンナから、巨大な太陽がギラギラと照りつけ、炎や溶岩に囲まれた灼熱の大地へガラリと変わり、寸前まで迫っていた翼は全て騎士王に触れる前に騎士王から発せられている圧倒的な熱量により一瞬にして焼失した。

垣根は翼が一瞬で焼失したことに驚愕や疑問という感情を抱くよりも先に、巨大な太陽から発せられている莫大な熱に身体を焼かれる激しい痛みに襲われた。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッ!!!!」

 

熱を遮断するために熱を一切通さない性質を持つ未元物質の翼で身体を一切の隙間なく覆い尽くすが、それでも尚、熱は翼越しに容赦無く襲い掛かり、垣根の皮膚を、眼球を、毛髪を、次々と蒸発させていった。

余りの激痛に悶え苦しみ、翼の中で暴れ回るが、それは自身の身が滅ぶのを促すだけで、痛みは引くどころかさらに激しいものとなった。

眼球を支える筋肉が熱で溶けてその力を失ったことでドロっと溶けた眼球が零れ落ち、暴れた時の衝撃で、熱で溶けて脆くなった右脚と左腕が千切れた。

本来その断面から噴き出す筈の血液は騎士王と周囲の世界が発する圧倒的な、理不尽なまでの熱量によって赤黒い水蒸気と化す。

 

(クソ、俺は…、こんなところで終わる訳にはいかねぇってのに。

強くなって、いつも独りで戦おうとするアイツを助けるって決めたのに…)

 

「………ぃ……っ…………き……」

 

熱により酸素が薄く、意識が朦朧とし、更に喉を焼かれたことで本来なら一言も発せない中で、垣根は自分を救ってくれた、垣根が常に側で護ってやりたいと唯一想う最愛の女性の名を口にした。

 

 

 

 

 

「まったく、お前が死んだら誰が樹を支えるっていうんだ。」

 

 

 

 

 

突然、声が聞こえたと思い顔を上げると、そこには綺麗な湖畔が広がっており、湖の上には白いスーツを着た金髪の男がいた。

そして何故か自分の周りを覆うように展開していた翼がなくなっていて、身体も傷一つなくなっていた。

 

「俺は……、死んだのか?」

 

垣根は立ち上がって、湖面に立つ男にそう問い掛けると、金髪の男は首を横に振って否定した。

 

「お前が死にそうだったから意識だけをこの空間に呼んだんだ。

ちなみにここにいる間はお前がいた世界の時間は進まないから安心するといい」

 

「どうして俺をここへ呼んだ?」

 

「俺が何者かは聞かないんだな」

 

「聞く必要がねぇからな」

 

「…単にお前に死なれると困るからだよ。

彼奴の心の支えとなれるものはありとあらゆる平行世界、時間軸を見てもお前しかいないんだよ。垣根帝督。

だから、なんとしてでも生き残れ。こんなところでくたばったら俺は一生お前を許さないからな」

 

「ハっ、せいぜい神の怒りを買わないよう、足掻いてみせるさ」

 

そう言った瞬間、金髪の男の表情は驚愕に染まった。

 

「気づいていたのか」

 

「当然だ。俺を誰だと思ってやがる」

 

あえて不遜な態度で言った垣根の真意に感づいた神はあえてその先を促すように

 

「ふっ、お前は一体誰なんだ?」

 

垣根は自信に満ち溢れた表情で、まるで自分を鼓舞するように、そして誓いを立てるように言った。

 

「俺は学園都市第二位の『未元物質』を操る超能力者にして、樹を支える最強の不死鳥……」

 

 

 

「垣根帝督だ」

 

 

 

金髪の男ーー神はその言葉に満足したように笑顔を浮かべた。

 

「もう大丈夫そうだな。

さぁ、さっさとあの騎士を倒して、樹に笑顔を見せてやれ」

 

神のその言葉を最後に、垣根の意識は再び沈んでいった。

 

「俺の力のほんの一欠片とはいえ、神の力をやったんだ。

絶対に勝って、樹を喜ばせろよ」

 

 

 

 

 

 

(彼奴の心の支えとなれるものはありとあらゆる平行世界、時間軸を見てもお前しかいない…か。

最初(はな)っからこの場所(樹の隣)を誰かに譲るつもりなんざねぇよ。たとえそのライバルが神であってもなぁ)

 

 

 

 

 

 

再び意識が浮上すると、またもや激痛に襲われたが、そんなものは今更気にならなかった。

垣根は未元物質を体内で生成し、身体中の細胞一つ一つに馴染ませていった。

すると、千切れた筈の右脚と左腕が再生した。

未元物質を身体に馴染ませることで未元物質も身体の一部とし、未元物質で体細胞を増殖させることで再生させたのだ。

分かりやすく言うと、身体を構成する物質である酸素や炭素、カルシウムに並び、新たに未元物質というものが加わったのだ。

本来なら原作の復活した垣根帝督の方法でほぼ完全ともいえる不死になれる中、垣根が態々こんな方法をとったのは、この方法なら人間のまま不死に近い再生力を獲得できるからである。

 

(彼奴の横に化物は似合わねぇからな)

 

その方法で皮膚や毛髪など次々に再生させていった。

そして最後に零れ落ちていた眼球を引き千切って、新たな眼球を再生した。

そこから更に、全身を未元物質で包み込むと同時に、全身に馴染んだ未元物質を用いて、体内で呼吸が行えるようにした。

最初はただののっぺりとした人型の人形のような姿だったが、次第にその姿を変えていった。

のっぺりとした表面がパキパキと音をたてて割れていき、体表面を包むツルツルだった未元物質はだんだんと刺々しいものへと変化していった。

そして最終的にはその姿は、ファンタジー物に登場する竜騎士のような刺々しい全身を包み込む鱗のような鎧となっていた。

その鎧は魔法と未元物質を融合させた物で、太陽の騎士の熱を完全に遮断することに成功していた。

さらに駆動鎧と同じ効果もあり、その身体能力は二重聖人であるアックアすら凌ぐものとなっている。

といってもまだ少し不安定で、完全な状態を維持できるのはせいぜい三分が限度なのだが……

 

(だが、それだけありゃぁ十分だ)

 

垣根は背中に今までのものとは異なる様相の、硬質で刺々しいドラゴンのような翼を左右1対新たに展開し、その翼を広げることで周囲を囲んでいた未元物質の壁を粉砕し、散弾のように周囲に撒き散らすと同時に、さっきまでとは比べものにならないほどの速度で騎士王に接近して、油断していた騎士王の脇腹を右脚の前蹴りで蹴り飛ばした。

騎士王は反射的に踏ん張ってしまったがため、吹き飛んで隙を作ることはなかったが、衝撃が逃げなかった脇腹はそのまま抉り取られてしまった。

だが、騎士王もただやられるだけじゃない。

脇腹の痛みなどないかのようなスムーズな動きで右手に持つ炎のロングソードで垣根を左脇腹から右肩に掛けて逆袈裟に焼き切ると同時に爆発を起こして爆風に乗って距離をとった。

が、騎士王が地に足を着けたその瞬間、地面を突き破って出てきた純白の蔓が騎士王に巻きついた。

 

「………ッッッ!!」

 

その蔓は危険だと警報を鳴らす第六感に従って蔓を斬り裂いて飛び退いた次の瞬間、蔓の断面から斬り裂かれた蔓の欠片を繋ぐように光のラインが構築された。

蔓の欠片を結ぶ光のラインが構築したのは攻撃性の魔法陣だった。

魔法陣からは数百もの雷の矢が射出され、騎士王を襲った。

それと同時に垣根も騎士王の脚を地面から伸ばした蔓で足止めしつつ、挟み撃ちにするようにして背後から巨大なハンマーを模した手甲による奇襲攻撃を仕掛けた。

騎士王は雷の矢を右手の炎のロングソードを振るって炎の衝撃波を生み出して相殺し、足に絡みついた蔓を爆発的に炎を噴出することで吹き飛ばしながら垣根のハンマー型手甲による奇襲攻撃を左拳で手甲を砕くことで防ぎきり、そのまま垣根の頬をを殴って頭蓋を粉砕した……筈だった。

 

「……ッッッ!??」

 

騎士王の拳は確かに垣根の頬に当たり頭蓋を粉砕したが、それによって生じる結果は脳漿を撒き散らすスプラッタな光景ではなく、まるで紙屑の塊を殴り散らしたかのような光景だった。

 

(分身だと!?確かに温度や魔力を感じられたというのに!?

否、そんなことよりも奴は一体何処に…)

 

騎士王が垣根を見失い、索敵すると、上空に巨大な生物反応があった。

見上げるとそこには巨大な純白の西洋の龍ーードラゴンがいた。

ドラゴンは炎のブレスを吐きながら襲いかかってきた。

 

「まさか、未元物質と魔法を融合させることでドラゴンをも再現するとはな」

 

騎士王はそれを見て昔を思い出した。

魔法世界にて、樹、否、魔法世界の勇者の召喚獣となる前の戦いの日々を。

騎士王はフッと笑い

 

「良いだろう。この勝負受けて立とう。私の誇りにかけて、真っ正面から何の小細工もなしに切り伏せてみせよう」

 

騎士王は心中で最大級の賞賛をしつつ、それに応えるように炎のロングソードを下段に構えた。

 

「古来よりあらゆる世界線にて騎士はドラゴンと戦い、時には敗れ、時には勝利してきた。

さて、此度の対決では…

果たしてどちらが勝つのだろうな!」

 

騎士王はロングソードを下段に構えたまま、真っ正面からドラゴンへと向かい走った。

 

「ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

騎士王は真っ赤に燃える大空へ飛び上がり、両腕を振り上げてドラゴンのブレスを上段から斬り裂き、勢いそのままに回転し、ドラゴンの首を叩き斬った。

 

「お前の騎士道精神に掛けて正解だったぜ」

 

ガシュッ!!

 

騎士王は突如ドラゴンの首の中から飛び出してきた血に塗れた硬質で刺々しい白い翼に胸を貫かれた。

 

「ドラゴンを倒した瞬間を狙ってくるだろうとは思っていたが…。

まさか…、ドラゴンの中に隠れていたとはな」

 

胸を貫かれて力が弱まった騎士王は世界も姿も元に戻り、そのまま重力に従って落ちていった。

垣根も翼とドラゴンの亡骸を消して、騎士王の後を追うようにして地面に着地した。

 

 

 

 

 

「じゃ、試験の合否を聞こうか」

 

垣根はサバンナの乾燥した地面に仰向けに倒れている騎士王を見下ろしながらそう尋ねた。

太陽のようなゆらゆらとした造形の朱色の甲冑姿から元の銀色の甲冑姿に戻った騎士王は地面に仰向けに倒れたままフッと笑い言った。

 

「ギリギリ合格…、と言ったところか」

 

そう言うと、乾燥した地面に倒れていた騎士王の姿が朧げになり、消え、フと気配を感じて顔を上げるとそこには革鎧を身に纏い、両腕には銀色の龍の手のような手甲をした短い銀髪に綺麗なブルーサファイアのような碧眼を持つ精悍な顔立ちの男が岩の上に腰掛けていた。

 

「贅沢を言えばこの姿の私に勝って欲しかったが、まぁ、それは酷というものか」

 

革鎧を纏った男はそう言って苦笑した。

 

「ハッ、さっきまでのはただの試験用のお遊びモードだったって訳か。騎士王さんよぉ」

 

「当然だ。アニメやゲームじゃあるまいし、幾ら魔法で関節部分に柔軟性を持たせているといっても、あんな全身甲冑なんて着てたら動きの邪魔になるだけだ。

だからさっきまでの私は能力の使用を含めても本来の4割程の力しか出していない。否、出せていない」

 

「あれで、4割かよ。

王の称号は伊達じゃねぇな」

 

「ああ、王は何があっても負ける訳にはいかない。故に誰よりも強くなければならないからな。

それより、さっさとここから出て行ったらどうだ?

そろそろ樹も帰ってきている頃だろう」

 

「そうだな…。お前はどうするんだ?」

 

「私は召喚体だ。

精霊界に戻るだけさ」

 

「そうか。じゃぁな、騎士王」

 

垣根は身を翻し、出口へ向かった。

 

「また会おう、不死鳥の騎士よ」

 

騎士王はそう垣根の背に別れを告げるとユラユラと陽炎のように消えて行った。

垣根はそれを振り返らず手を振って応え、そのまま扉を開いて部屋へ戻った。

 

 

 

 

 

 

時は少しばかり遡り、垣根がまだ騎士王との死闘を繰り広げていた頃、誰もいない(部屋の扉から続く異空間にいる二人を除いて)家に玄関の扉の開く音が響いた。

帰ってきたのは当然の如く、家主である如月樹だ。

リビングへとやってきた如月はいつもの元気溌剌とした態度はどこへやら、少々不安気な様子で垣根が死闘を繰り広げている異空間へと続く扉の前で行ったり来たりを繰り返していた。

 

(どうしようどうしようどうしようぉ。やっぱりまだ無茶だったかなぁ。敗北条件は死だなんて言わなきゃ良かったかなぁ。

でもこうしないと意味がないし。でもそれで死んじゃったらそれこそ意味ないよねぇ。

それになによりていとくんが死ぬのは私が嫌!

でもこれからのことを考えるとていとくんにはできる限り強くなって欲しいんだよね。

あぁ〜でもでも…)

 

「何やってんだお前」

 

「へ?」

 

如月が扉の前で右往左往していると聞き慣れた人のあきれた声が聞こえた。

声が聞こえてきた方向ーー異空間へと続く扉がある方を向くと、そこには如月が無事の生還を待ち望んでいた人物ーー垣根帝督がいた。

彼の無事な姿を目にした瞬間、さっきまで考えていたいろいろなことが吹き飛び、それらは涙へと姿を変えて頬を伝った。

感極まった如月はそのまま垣根の腹へ飛びつき泣きじゃくった。

 

「ていとぐぅ"ぅ”ぅぅぅぅぅぅん!!!

よがっだぁぁぁ。ッエッグ!無事で…、ホントに……良かったぁ…」

 

垣根は突然のことに一瞬焦ったが、そこは流石のLevel5、すぐに平静を取り戻し、如月が落ち着くように黙って如月の頭を撫でた。

 

「悪い。心配かけたみてぇだな」

 

「うぅん、私こそあんな無茶な試験させてごめんね」

 

「お前が謝ることなんざ何もねぇよ。

お前のことだ、どうせこれから先の俺の身を案じてこんな無理難題な試験をさせたんだろう?」

 

垣根の腹から顔を上げた如月は驚いたような表情になった後、俯き、落ち込んだような声音で

 

「…流石ていとくん。

全部お見通しだったんだね」

 

「そりゃ、お前が未来についてある程度知っているのを知っているからな。それぐらいの予想は着く」

 

垣根はそこで一旦言葉を切り、

 

「だからこそ、これからもそんな無理難題をぶちかましてこい。

その度に俺はそれを乗り越えて強くなってやる。

お前を護れるように、ちゃんと支えてやれるように。

俺はもう決めたんだよ。お前をずっと護り続けるってよ」

 

垣根は俯けていた顔を上げて潤んだ目で見上げてくる如月の目を見つめながらそう言った。

如月は一度目を閉じた。

もう一度開いた時、そこには先程までの弱々しい少女はおらず、いつも通りの凛とした光を宿す目をした勇者がいた。

 

「…ありがとう、ていとくん。

私もていとくんを護り抜くことができるほどの強い勇者になるよ。

護られているだけじゃない。

護り、護られる。そんな勇者に」

 

如月はそう言って、垣根を抱きしめている腕に優しく力をこめて、垣根もそれに応えるように如月の背に腕を回し、そっと抱き締めた。




垣根未元物質融合状態のスペックについて

身体能力:鎧なしverでは並の聖人クラス
鎧ありverでは二重聖人より少し上。
回復能力:右腕を完全消失させた場合にかかる時間は約3秒。
切り傷程度なら一瞬で治る。
しかし脳を破壊されると、死ぬ。
原作のように未元物質で体細胞を構築しているのではなく、あくまでも細胞増殖の促進程度にしか使っていない。
細胞増殖の際に消費する栄養素(たんぱく質)などは魔法理論と未元物質を組み合わせて体内に生成した栄養素を作り出す臓器で賄っている為、細胞増殖に際限はない。
有機物の創造可能。
未元物質が体に馴染んだ影響で、魔法及び魔術を使った際に生じる副作用を克服している。


魔法と未元物質の融合について

魔法は魔力によって想像した現象を現実にする異能の力だという性質を自分だけの現実に組み込むことで、魔力と未元物質を合成した時のみ、自分の思うがままの物質を作ることができるようになる。


騎士王の騎士道について

聖ジョージを始めとし、あらゆる世界線で騎士は古来より幾度となくドラゴンと戦ってきました。
そしてそれは騎士王とて同じだったのです。
だから騎士王はあの場面で対戦相手である垣根がドラゴンを倒した瞬間を狙ってくると分かっていながらも、長年の宿敵であるドラゴン相手に最大限の敬意を払い、真っ正面からのガチンコ勝負を仕掛けたのです。

召喚魔法について

野生にいる魔物や精霊界の精霊がテイム又は契約し、使役されるものの総称が召喚獣。
その中でも人型の召喚獣は召喚体と呼ばれる。
剣や鎧などの物は召喚物と呼ばれる。
召喚獣は通常時は精霊界にいる。
召喚獣は殺されても精霊界に強制送還されるだけで死ぬことはない。
しかし暫くの間再召喚はできなくなる。
元が魔物の召喚獣は術者が死ぬと元の世界の元の居場所へ強制送還される。
召喚獣の身体の一部分のみを召喚するものを部分召喚魔法と言う。

カブトムシについて

カブトムシの電気的ネットワークで演算能力が上がり、能力のLEVELが上昇するというのは、ミサカネットワークを基に作った幻想御手が実際に能力LEVELが上昇していたのでミサカネットワークならぬカブトムシネットワークも方式は一緒なんだから同じようになるんじゃない?と思ったのでそういう設定にしました。
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