境界線を越えた先にあるもの   作:✟クロス✟

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さて、今話から新章突入です!
では、特に書くことも思いつかないので早速十三話をどぞ♪


動き出した異世界からの来訪者達
第十三話 勇者、スカウトされる。


九月十日

 

今日は祝日なので学校もなく、ていとくんの修行も一段落したので、私は一人で外をブラブラと散歩していた。

 

ちなみにていとくんは「造りたいものがあるからゼフィを召喚してくれ」と言って私が召喚したゼフィと一緒に例の試験部屋に籠っている。

ゼフィというのは私が契約している召喚体の内の一人である。

本名をゼフィロス=アークヒルズと言い、元剣帝であり、『剣の道だけでなく魔の道をも極めたい、しかしいくらヴァンパイアといえども限りある生の中では時間が足りな過ぎる』という理由で禁術を用いて不死者の王(ノーライフキング)となった。

不死者の王という称号は伊達ではなく、長い時の中で魔法だけでなく、死霊術、結界術、陣術、各種武術など様々なものを修めており、その技量は然る事乍ら、知識量もとてつもない量を保有する。

 

閑話休題

 

今はちょうどお昼時ということでクレープの屋台で照り焼きチキンとレタスのクレープとデザートにイチゴチョコカスタードクレープを買って近くに設置されていたベンチに座って食べていた。

 

あぁ〜、やっぱりクレープは美味しいな♪

こういう惣菜クレープ?って言うのかな?は今までクレープはスィーツのイメージが強かったから今日初めて食べてみたけど意外と美味しかったな。

まぁ、一番はやっぱりスィーツとしてのクレープだけどね。

特にイチゴシリーズのクレープは至高!

 

「とても幸せそうな表情で食べますね。そんなに美味しかったですか?」

 

照り焼きチキンクレープを食べ終え、デザートのイチゴチョコカスタードクレープを食べていると、横に座っていた肩にかかるぐらいのストレートの藍がかった黒髪の二十代半ばぐらいの女性が話しかけてきた。

 

「ええ、すっごく美味しいですよ。

ところで、貴女はどなたですか?」

 

そう私が誰何すると、女性は『ああ、失礼。自己紹介が遅れました』と言い、懐から出した財布から名刺を取り出し差し出してきた。

 

「私、TOR芸能プロダクションでマネージャー兼プロデューサーをしている尾木清花(おぎさやか)と申します」

 

私は名刺を受け取り見てみる。

 

へぇ、TOR芸能プロダクションって言ったら確かもうじき鳴護アリサが所属することになるけっこう大きな芸能事務所だったっけか。

でもそんな人が私に何の用なんだろう?スカウトかな?

 

「私はとある高校一年の如月樹です。

それで、私に何か用ですか?」

 

「ええ、単刀直入に言うと実は貴女をスカウトしたいんです」

 

「スカウトって…、アイドルをや・ら・な・い・かって感じですか?」

 

とちょっと巫山戯た感じに聞くと、

 

「いえ、アイドルだけではなくモデルや声優もや・ら・な・い・かって感じですね」

 

とニヤけながらそう言ってきた。

 

ノリ良いなこの人。

にしてもアイドルにモデル…‥かぁ‥。

……まぁ良い暇潰しになるかな。

あ、でも一つ聞いておかないと。

 

「それって私がやりたい時だけやることってできますか?」

 

「ええ、可能ですよ。

ですが最低一ヶ月に一度は何かの仕事をしてもらうことになりますが」

 

こんな我儘が可能だなんて懐が深いなぁTOR芸能プロダクション。

 

「じゃあやります」

 

「ありがとうございます。

それでは今から一緒に事務所まで来ていただけますか?

色々な手続きや紹介などをしたいので」

 

「分かりました。では行きましょうか。

空間転移するのでじっとしていてくださいね」

 

私はそう言うと、さっき貰った名刺に書かれていた住所へと空間転移した。

 

 

 

〜第七学区TOR芸能プロダクション前〜

 

 

 

「へぇ、空間転移能力者(テレポーター)だったんですね。

あれ?でも空間転移(テレポート)ってLevel4でも最大飛距離は50mほどでしたよね?

あそこからここまでは軽く見積もっても1kmはあったはずですが…」

 

「私の能力は空間転移ではなく、幻想具現(イマジンドラッグ)という簡単に言えば想像を具現化する能力のLevel4です。

まぁ、そんなことより早く入りましょうよ」

 

「あ、そうですね」

 

そう言って尾木マネと私は事務所の中へと入っていった。

中に入って階段を登り、通路を進んだ先にあった扉を開けて中へ入った。

 

「社長、新人連れて来ましたよ!」

 

中はよくある感じの普通の事務所のような様相で、部屋の奥にある机には社長っぽい人が座って書類仕事をしていて、尾木マネの声に気付いて顔をあげた。

 

「おお!新人というのはそこにいる赤髪の彼女のことかね!?

これは凄い逸材だ。

髪はサラサラで枝毛など一つもなく顔もこれまで見たこともないほどの美形で肌もきめ細かくシミ一つない身体の肉付きも良い具合で胸も大きくそれでいて形も良い!腰周りには無駄な肉は付いておらずスラッとしており、かと言って決して痩せすぎているのではなく適度に肉がついていて抱き締めるとさぞ気持ちよかろう太腿もムッチリとしていて挟まれるとさぞ気持ちいいだろうことは確定的に明らか!何がとは言わんがナニがとはぶべりゅふぁっ!!」

 

「社長、セクハラ発言はやめてください。ぶっ殺しますよ?」

 

私を視界に入れた途端急に目の前に現れた社長が私の身体中を舐め回すように超至近距離で眺めながら息つく暇もなくセクハラ発言をすると尾木マネが切れて近くに(何故か)あった文鎮で思いっきりぶん殴った。

文鎮でぶん殴られて吹き飛んで行く社長に止めと言わんばかりに尾木マネは手首のスナップをきかせて吹き飛んでる最中の社長めがけて投げた。

尾木マネがぶん投げた文鎮は高速で社長の眉間に吸い込まれるように飛んでいき、それがクリーンヒットした社長は空中でさらに吹き飛んで後ろにあった棚にぶち当たった。

 

何で文鎮なんて置いてあったんだろ?

 

「ご、ごめん…なさ…‥い…ガクッ」

 

社長は敢え無く気絶した。

 

まさか室内に入って僅か数秒で事務所のトップが気絶するとは…。

ていうか良く気絶で済んだなあれ。

普通能力者でもない限りあんなの喰らったら頭かち割れると思うけど…。

これがギャグパートか…。

 

「すみません樹さん。

悪いですが社長は可愛い方や綺麗な方相手だと常にあんな感じなので早く慣れてくださいね。

ちなみに呼び方は社長で構いませんよ。ハッキリ言って社長の名前を覚えている人なんて一人もいませんし」

 

別に隠してる訳でもないのに社員の誰もがその名前を知らないとか不憫すぎる。

まぁこの人はこういうキャラなんだってことで納得しとくか。

 

 

 

 

その後、事務所の主なメンバーと自己紹介を終え、手続きも済ませた私は尾木マネに『ついでですしこのまま初仕事をしちゃいましょう!なぁに、ファッション誌のモデルっていう簡単な仕事だから心配いりませんよ』と言われたので……

 

 

 

第七学区のスタジオにて撮影中なう

 

 

「いいでいいで〜。

新人やゆうからどんな娘が来るのか楽しみにしてたんやけど、こりゃぁ予想を遥かに上回る逸材がきたなぁ。

カッコエエでぇ樹ちゃん」

 

「あはは、ありがとうございます」

 

私は今、上は髑髏を主役とし、周囲をローマ字で彩ったロック調のTシャツの上にフォー付きの黒のジャケットを羽織り、下は黒地のシックなズボンといった完全にこれ男物じゃね?っていう格好でカッコイイポーズを取りながら黒髪の癖毛を軽く整えた感じにした20代前半ぐらいのカメラマンの熾城清明(シジョウキヨアキ)さんに撮影されていた。

なんでも熾城さん曰く、今女性の間ではこういう本来男物の服装であるものを着るのが流行っているのだそうだ。

 

「よし、それじゃぁ最後に……

 

ほれ」

 

熾城さんは徐に側に置いてあったカバンからあるものを取り出し、こちらへ投げ渡した。

 

ってあれは!?

 

「狐!!?」

 

そう、熾城さんがポイッと軽い感じで放り投げてきたのは体長50cm〜60cmほどの金毛の九尾の狐だった。

 

ってどうして熾城さんのカバンの中に狐が入ってるの!?しかも九尾ってことはこの子って本人(本狐?)かは分からないけど確実にあの九尾の妖狐と関係ありそうだし!

でも可愛いから許す!

 

私は欲望の赴くままに狐を抱き締めてそのフワフワサラサラの身体を存分に堪能させて貰った。

 

パシャパシャパシャッ!

 

私が狐のフワフワサラサラな身体にスリスリ頬擦りしているとシャッター音が連続で聞こえた。

 

「やっぱり予想通り破壊力抜群の良い笑顔が取れたわ。

その子を連れてきて正解やったな」

 

「なっ!?何を撮ってるんですかぁ!」

 

「何って九尾に頬擦りしてふにゃっと顔を綻ばせてる樹ちゃんをに決まってるやん。

あっ、その赤面も戴き!」パシャッ

 

だらしない顔になって狐にスリスリ頬擦りしているところを撮られた私は恥ずかしくなって抗議の声を上げるが、熾城さんはそれすら逆手にとって私の赤面姿を撮ってきた。

 

「戴き!じゃありません!」

 

「まぁまぁ良いではないか良いではないか〜。

これも仕事の内やと思って、な?」

 

うっ、そう言われると何も言えない…。

 

「まぁその代わりと言っちゃあなんやけどその子をあげるわ。

良いもん撮らせてもらった分のボーナスやと思ってくれればええよ」

 

「えっ!良いんですか!?」

 

「もちろん。その子も樹ちゃんにめっちゃ懐いてるみたいやしね」

 

腕の中の狐を見てみると、狐は私の胸にスリスリと頬擦りしていた。

かわええのぅ…。

 

「ありがとうございます!大事に育てますね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わり、場所は第七学区、とある公園。

そこのベンチに力なく座り込んでいる薄い赤混じりの肩まで届く白髪に淡い紫の瞳を持つ一人の少女がいた。

 

 

SIDE ???

 

はぁ、やはり私の求めるモノはこの世界にもありませんでしたか。

世界が変わればそこに住む者も変わり、今まで見てきた自身の利益だけを考え、その為なら平気で他人を蹴落とす者や、自身と違うものを異物とし、迫害する者もいなくなると思っていたのですが……。

この世界に来る際に貰った能力を使えば他の世界に行くこともできるでしょうから他の世界にでも行くとしますかね。

 

 

いや、どうせ何処に行っても結果は同じですかね。

人間という生き物はどんなに周囲の環境が違っても本質の部分に違いはないのですから。

ならいっそのこと、全世界を破壊して私も一緒に死んで楽になりますか…

 

 

 

「どうしたの?何か悲しいことでもあった?」

 

 

 

頭上から突如聞こえてきた声に反応し、俯いていた顔を上げてその者を見ました。

するとそこには心配そうにこちらを覗きこむ、長く流麗な赤髪をポニーテールにした麗人がいました。

 

「悲しいこと…、と言えば悲しいこと…ですかね。

簡潔に言えば、ただ単に人間という愚かな生き物に辟易していただけですよ」

 

「……そっか」

 

そう言うと、赤髪の麗人は私の隣に腰掛け、

 

「どうして人間に辟易していたのか教えてくれる?

別に無理に話さなくてもいいけど、話せば少しは楽になると思うよ」

 

私はその人の炎のように暖かく、輝かしい瞳を見ていると、自分でも何故だか分かりませんが、この人に話してみたくなり、今までのことを話し始めました。

 

「信じられないかもしれませんが、私には前世の記憶があるんです。

前世では私は一般的な家庭に産まれ、貧乏ながらも楽しく過ごしていました。

しかし、何処で歯車が狂ったのか、いつからか家族は私に毎日のように罵声を浴びせるようになりました。

本人達は冗談のつもりで言ってるのかもしれませんが此方はその心無い言葉で傷つけられているのですから堪ったものじゃありませんよ。

そして高校でも、幸い自分が人間関係で悪い目にあうことはありませんでしたが私の友人が表面上は皆仲良くしていたにも関わらず、クラスの大半から影で虐げられているというのを聞いて、人間という生き物の醜さを垣間見ました。

その他にも自分の地位向上と保守しか脳のない政治家や、災害地の復興支援募金と偽り私腹を肥やす詐欺集団、自分達と少し見た目や思想が違うというだけで迫害の対象とする愚かな人民。

数多の醜い人間を見聞してきました。

そしてそれはこの世界でも変わりなかった。

自己中心的で、偽善的で、打算的で、傲慢で、狡猾で、残酷で、非道で、残虐で。

自身の為なら世界がどうなろうと知ったことではないというクズまでいる始末。

真に心の底から他人を思い遣り、損得勘定なしで動く人間なんて一人もいませんでしたよ。

 

だから私は人間に嫌気が差したんです。

ありきたりな理由でしょう?」

 

「確かにありきたりな理由だね。

でも、ありきたりな理由だからこそ重大な問題でもある。

だって、ありきたりな理由ってことはそう思う人がたくさんいるってことなんだから。

でもね、私からしてみればそんなのは思春期で精神が不安定になっていることからくるただの悲観的な考えでしかないと思うよ?」

 

「……どういうことですか?」

 

「そのままの意味だよ。

世界は悪と苦でみちている!だの人間はクズしかいない!だの。

そんなのは思春期で精神が不安定になるから悲観的になってそんな考え方になるだけなんだよ。

 

周囲が悪意に満ちてるっていうのならその悪意を逆に利用して善意を振り撒いて伝播させればいい。

人間に嫌悪感を抱くならその人とは関わらないで自分が嫌悪感を抱かない人間とだけ関わればいい。

なんなら世界に影響を与えられるような存在になって世界を変えればいい。

そう楽観的に考えれば世界はまた違ったものに見えてくるんじゃないかな?

まぁ楽観的になりすぎてもそれはそれで問題なんだけどね。

何事もバランスが大事ってね」

 

と冗談っぽく言った麗人は慈愛に満ちた、まるで聖母のような微笑を湛えながらこう続けた。

 

「それにね、確かに人間には汚くて醜い者もいるけど、それだけじゃないんだよ。

「助けて」っていうたった一言で他人の為に命をかけることができる人や、世界を護る手助けをするためだけに自身の誇る強大な力を容易く放り捨てる人だっている。

 

だから、諦めるにはまだまだ早いと私は思うよ?

まずは自分がそんなお手本になるとこから始めるべきじゃないかな?」

 

「貴女の口振りからしてそういう人たちは本当にいるのでしょうね…。

 

どうすれば、そんなふうになれますかね?」

 

「ふふ、私にはもうその答えが分かってるように思えるんだけど?」

 

「………護るべき存在や譲れない信念を得ること……ですか」

 

「さぁね。

でも、それを得ることができれば世界が変わるっていうのを私は経験で知ってる」

 

赤髪の麗人はそう言ってベンチから立ち上がりました。

 

「世界を変えて幸せになるも世界を変えずに不幸になるも全ては貴女の選択次第だよ」

 

彼女はそう言ってずっとベンチの足元で丸まっていた九尾の狐を連れて公園の外へと歩き始めました。

 

「私の名前は聖守羅です!!

貴女の名前は何と言うのですか!?」

 

気がつくと私はベンチから立ち上がり、去り行く彼女の背にそう声をかけていました。

振り返り一瞬瞠目した彼女は朗らかに笑い、

 

「私の名前は如月樹だよ。

また縁があれば会おうね」

 

彼女はーー樹さんはそう言って後ろ手に振りながら去って行きました。

私はその背を見送りながら、噛み締めるように言いました。

 

「はい、また、いつか…」

 

既に見えなくなった樹さんの去った方向を見つめながら、私は静かに決意しました。

 

「私は変えますよ。自分が見る世界を。

そしてそのための魔法名(信念)は……

 

splendide702。

意味は…、闇を照らし導く者。

 

貴女の言う通り、まずは自分なりに世界を変えてみようと思います。

悪意を善意に変えることで…」

 

 

 

 




うん、改めて思うけどやっぱ能力とか武器の設定を考えるのが一番楽しいね♪


不死者の王(ノーライフキング)について

不死者の王(ノーライフキング)とは、生死の理を理解し、生死の理を超越し、肉体の枷から解き放たれたもののことをいう。
生死の理を超越しているので死に縛られることがなく、どんなことがあっても死なない。
唯一の弱点は本体である魂への攻撃。
不死者の王(ノーライフキング)となって得られる物は不死性と、その人物に適した固有能力のみである。
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