境界線を越えた先にあるもの   作:✟クロス✟

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なんとか新作を書きたいという欲求を我慢して出来ました第二十一話!
いや〜、まだまだ先の展開の話やらなろう用のアイデアがバンバン出てきて大変でした。
取り敢えず一旦完結するまで書けないってのにねw


予備知識
・原子崩しは高圧電流で防ぐ際反作用のようなものが発生して互いに弾かれます
・むぎのんマジ人外


第二十一話 残骸争奪戦 rank_SSS

PM8:49

 

 

掃き溜め(アウトスポット)と呼ばれる、何時しか人が居なくなり、スキルアウトの溜まり場となっていた地域。

今は人払いの術式により関係者以外無人となったその一角、左右を人気のない寂れた建物で囲まれた、車二台通るのがやっとという程度の道に一人の男が刀身だけで2mはある幅広の大剣を肩に担いで立っていた。

2mと少しという巨漢に、獲物を屠るために研ぎ澄まされた筋肉、幾多もの死線を乗り越えた末身についた気迫。その男、ベルゾレフ=ハルドトスキーを一言で形容するならば『鬼』というものが適当だろう。

 

その男の前方には建物の壁面をガリガリと削りながらこちらへ直進してくる一台の車があった。

 

「うむ、手筈通りじゃのう。

小僧も中々いい仕事をするでないか」

 

ベルゾレフ=ハルドトスキーは予定通りことが運んだことにより緩んだ頬を引き締め、向かい来る車を両断せんと大剣を上段に構えた。

車は建物の壁面をガリガリと火花を散らして引き摺りながら迫り来る中、その天井を破って三人の少女が車外へ飛び出し、路地を通って餓狼達のいる方向へとこちらの計画通りに向かってくれた。

 

(車外へ飛び出したのは三人。

情報によればアイテムの構成員はたしか四人じゃったか。

なれば残ろうは後一人。飛び出した者等は絹旗最愛、滝壺理后、フレンダ=セイヴェルンであったからリーダー格である麦野沈利というLEVEL5の嬢ちゃんがワシの相手か。これも計画通りじゃな。

ここまで計画通りじゃとこの計画を提案してきた、依頼主の遣いだとかいうあの小僧が恐ろしく思えてくるのう。

で、次は『車から原子崩し(メルトダウナー)を撃ってくるだろうからそれを雷属性の技で防ぐ』、だったか)

 

『あの小僧』と言われていた少年の言っていたとおりに車から三条の原子崩し(メルトダウナー)の閃光が放たれてきた。

通常なら不意打ちの原子崩し(メルトダウナー)を目視で対処するなど不可能に近いが、今回は計画により前もって予測していたため、ベルゾレフはすぐに反応し、雷属性を付加(エンチャント)した大剣の腹を向け、扇のように横薙に振り回して軌道を逸らし、勢いそのままに回転して、遠心力を味方に付けた大剣の腹で莫大な衝撃波を起こして麦野沈利がいるであろう車をぶっ飛ばした。

 

車は天高く舞い、そして地上に激突すると同時に爆発、炎上した。

勿論のこと、中にいた少女もそれに巻き込まれ、死亡したーー本来ならそんな運命を辿るだろうが生憎、長い間暗部の深い闇の中を生き抜いてきた彼女にそんな常識は当てはまらない。

 

辺りに立ち込める砂煙と爆煙を引き裂いて、天から雨の如く、幾条もの閃光がベルゾレフへと降り注いだ。

拡散支援半導体(シリコンバーン)で拡散された原子崩し(メルトダウナー)だ。

ベルゾレフはそれを雷属性が付加(エンチャント)された大剣で薙ぎ払い防いだ。

 

彼女は原子崩し(メルトダウナー)を放つと直ぐに後部座席を消し飛ばして脱出し、タイミングよく衝撃波で砂埃が起こったのでそれに紛れて下方射出した原子崩し(メルトダウナー)を推進力に大ジャンプし、上からベルゾレフを奇襲したのだった。

 

未だ煙が立ち込める中、閃光が射出された角度から麦野の大体の位置を割り出したベルゾレフはジャンプして4m程上にいた影を雷を纏った右足で蹴り抜いた。

 

影は凄まじい速度で弾かれ、地面へと叩きつけられた。

 

幼気(いたいけ)な乙女に随分派手にやってくれるじゃない」

 

ベルゾレフは着地と同時に風魔法で立ち込める煙を全て吹き飛ばした。

開かれた景色の中に麦野は平然と立っていた。

 

「あれだけの攻防ができる嬢ちゃんのどこに幼気さがあるというんじゃ?」

 

言った瞬間原子崩し(メルトダウナー)が照射された。

ベルゾレフはそれをなんでもないかのように、雷を付加(エンチャント)した拳で払った。

改めて弾かれた原子崩し(メルトダウナー)を見た麦野は思わず渋面を作った。

 

「にしても、蹴りを盾のように伸ばした原子崩し(メルトダウナー)で防いだのは流石に驚いたわ。

ワシが嬢ちゃんの攻撃を逸らしたのと同じ原理じゃな?

おまけに吹き飛ばした勢いも原子崩し(メルトダウナー)の逆噴射で殺すとは……戦い慣れとるのう。

じゃが、唯一の攻撃手段を完封された状況でワシに勝てるかのう。

大人しく投降してくれるならワシも楽なんじゃが」

 

「ハッ、誰が大人しく投降するかよ。

暗部で長い間生きてんだ。対策ぐらい講じてる」

 

麦野はそういって手に持っていたバッグから肘まで覆う柔軟性のある機械的なガントレットを取り出して装着し、バッグを投げ捨てた。

 

「ほう、このワシを相手に接近戦か。あまりオススメはせんのう。

【瞬時切替】(ラピッド・スイッチ)

 

ベルゾレフはアイテムボックス内にある装備と瞬時に切り替える特殊技能【瞬時切替】(ラピッド・スイッチ)を使い、大剣を仕舞って、アイテムボックス内の無骨なガントレットを換装した。

 

「手加減はするが油断はせんぞ?」

 

三条の閃光がベルゾレフの右足、胸、頭を狙って放射された。

ベルゾレフはそれを全身から闘気を放出するが如く、雷属性の魔力の衝撃波を放出して防いだ。

 

「言って早々油断してんじゃねぇよクソゴリラ」

 

閃光に紛れて接近していた麦野はガントレットの前腕後部に備えられたブースターから原子崩し(メルトダウナー)を放出して超高速の右フックを叩き込んだ。

拳のミサイルとでも形容できる強烈な右フックを喰らったベルゾレフは左方の建物を破壊しながら吹き飛んだ。

 

さらに、麦野はベルゾレフが吹き飛んだ方向の左右のビルをベルゾレフがいる方が大きくなるように原子崩し(メルトダウナー)で斜めに切り裂くことで自重に耐えきれず滑り落ちた瓦礫による追い討ちをかけた。

 

「うむ、もう油断はせんわい……死んでくれるなよ」

 

瓦礫の下から声が聞こえた次の瞬間、まるで瓦礫が噴火するかのように吹き飛び、そこから全身に雷を纏ったベルゾレフが猛烈な勢いで飛び出し、麦野を思いっきり殴った。

 

「冒険者にはF〜SSSまでランクがある。その上にX、XX、XXXとあるんじゃがありゃ例外じゃ。

とにかく、ワシはその冒険者でSSSランクの位を持ってたんじゃ」

 

「何訳分かんねぇこと言ってんだ電波ゴリラ!」

 

麦野は怯まずに原子崩し(メルトダウナー)でブーストした拳を打ち返す。

 

「そしてウチの制御役とやらによるとSSSランクはこの今の学園都市の兵力で換算すると…」

 

「LEVEL5全員分に相当するらしいぞ」

 

ベルゾレフは打ち返された拳を高密度の魔力で強化した額で受け止めることで麦野を一瞬怯ませ、そこでできた一瞬の隙に麦野の頬に右フックをキメた。

 

全身に雷属性の魔力を纏い神経伝達速度を飛躍的に上昇させたベルゾレフの一撃を受けた麦野は威力を逃がすようにガントレットのブースターを噴出させて自身を回転させ、そのまま遠心力の乗った裏拳をベルゾレフに打ち込んだ。

 

その裏拳は学園都市製の強化コンクリートの壁をも打ち砕く程の威力を秘めていたが、ベルゾレフはそれを直撃しても一瞬首を右に向かされる程度で、気にせずに麦野にボディーブローを叩き込んだ。

 

麦野はボディーブローがヒットしたと同時に下向きに原子崩し(メルトダウナー)を少しだけ噴射して威力を殺し、そのまま少し上にいる麦野の顔の方を向いているベルゾレフの顔面に向けて至近距離から極大の原子崩し(メルトダウナー)を叩き込んだ。

 

流石にこのレベルの原子崩し(メルトダウナー)は全身に纏っている雷程度では防ぎきれないので、両腕に纏っている雷を追加して、顔の前でクロスして防いだ。

 

しかし、流石に完全に防ぎきれず、両腕に装着していたガントレットは表面が溶け、原子崩し(メルトダウナー)を防ぐ際に生じる反作用により、地面に押し付けられた。

 

原子崩し(メルトダウナー)を防いだ両腕もあまりの反作用の強さに痺れていた。

 

「ぐっ、やるのう」

 

地面に着地し、一足早く次の一撃の準備に移っていた麦野はフルパワーでブーストさせた必殺の一撃を、隙ができたベルゾレフの腹に叩き込んだ。

 

「LEVEL5全員分に相当するとかほざいてた割に大したことねぇなぁ!

死ね!クソゴリラがァ!!」

 

「粋がるな小童(こわっぱ)!」

 

麦野の必殺の一撃を、強固な防護壁を展開する防御魔法『プロテス』を無詠唱で三連続展開して防ぎきった。

 

ベルゾレフは攻撃を防がれてできた僅かな隙を逃さず、麦野の腹に膝蹴りを極め、そのまま常人が確実に気絶する量の三倍の電流を流し込んだ。

 

「グァァガガギググガガァァァァアアアアアアアアア!!!」

 

麦野は高圧電流により痺れた喉から獣のような断末魔を轟かせ気絶した。

 

「まったく…、こんな苦戦させられるなら態々徒手空拳に合わせず大剣で相手をすれば良かったわい。

相手の実力を正確に測りきれんとはワシもまだまだじゃのう」

 

ベルゾレフは表面が溶けたガントレットをテキトウに放り、気絶した麦野に念のため、依頼人から支給された麻酔を打った。

 

「それにしても此奴に放った攻撃は全て常人が気絶する程度の電流を伴ったものだったというのに、痙攣すらせず、挙句の果てに常人なら致死量である電流で漸く気絶とは…化物じゃな。

……本当に人間か?」

 

ベルゾレフは麻酔の入っていた注射器を電撃で消し炭にしながら、捕まったエイリアンを見る科学者のように気絶した麦野をジロジロと見ていた。

そこにタイミングよく黒のワゴン車が現れ、ベルゾレフの前で止まった。

助手席の窓が開き、窓辺に肘を着いた天牙が顔を覗かせた。

 

「ご苦労さん。さっさと用済ませてアジトの医務室に行きてぇから早くそいつ連れて乗れ。

残骸(レムナント)は面倒な奴に奪われたから回収は中止だ」

 

「なんじゃ、奪われたのか情けない」

 

ベルゾレフは後部座席のドアを開けて気絶した麦野を乗せながら軽い落胆の声を吐く。

 

「相手がHsSK-01なんだから仕方ねぇだろ。

あんな化物と真正面から対峙できんのは『レイブン』の中じゃテメェぐらいしかいねぇっつの」

 

「ほう、アレと対峙して無事とは主等も悪運が強いのう。

アレは開発途中の現段階ですらLEVEL5の2位以下を軽く凌駕するというのに」

 

後部座席に腰を据えたベルゾレフは先程とは打って変わって感嘆の声を上げた。

 

「優月がいなけりゃ死んでたがな」

 

「なんじゃ、女の子に助けて貰うとはやはり情けないのう」

 

「事実なだけに余計うぜぇんだよクソゴリラ!」

 

「なんじゃと!クソ坊主!」

 

「まぁまぁ二人とも落ち着きなって。

ベルゾレフはいい歳した大人なんだからそんなことで怒らないの。

天牙も女の子に助けられたからって気にしすぎ。

仲間なんだから助け合いは当然でしょ?」

 

「う、ぐぬぬ…済まぬ」

 

「……ちっ、悪かったよ。

次は俺が護ってやるからな優月」

 

「うん!私も天牙を護ってあげるね」

 

(空気が甘いのう)

 

『レイブン』の3人と気絶した『アイテム』メンバーを乗せたワゴン車は第十五学区へと向かって走り抜けた。

 

 

 

 

 




今回冒険者ランクというものが出てきたので軽く説明します。
冒険者ランクとはその名の通り冒険者ギルドで付けられる冒険者個人又はパーティの強さを表す指標にして称号です。
ランクごとの強さをわかり易く表にまとめるとこんな感じです。(数値は総合的な平均戦闘力)

Fランク 子供 10

Eランク 一般成人男性 100

Dランク 武器武術の心得のある大人 500

Cランク 中堅冒険者 1100

Bランク ベテラン冒険者 2000

Aランク 上級冒険者 6500

Sランク 凄腕冒険者 10000

SSランク 将軍クラス 100000

SSSランク 人類最強クラス 100500

Sランクからは強さの度合いが桁違いに違ってくる



ベルゾレフですが彼は本来大剣による豪快な攻撃や、それに魔法を織り交ぜた大量殲滅戦などが得意で、今回麦野に苦戦したのは徒手空拳であったのと、加減が難しかったのが原因で、仮に今回の戦いが殺害目的の殺し合いならば残念ながら麦野は秒殺されていました。


PS

(ガチムチ主体作品を除いて)漫画やラノベって大抵ガチムチ枠は噛ませだったり大して強くなかったりしますが……ウチのガチムチ枠は人外魔境です。

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