境界線を越えた先にあるもの   作:✟クロス✟

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第四話  勇者、ヒーローの世話をする

八月二十四日

 

 

 

絶対能力進化(レベル6シフト)実験から三日後、私はお昼時の公園を歩いていた。

すると、ツンツン頭の高校生上条当麻ことヒーローが自販機の前で騒いでいた。

 

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

どうしたんだろ?

…取り敢えず面白そうだし、話かけてみようかな。

 

「ねぇ、どうしたの?」

 

私が話かけるとヒーローは沈んだ顔で振り返って話し始めた。

 

「実はこの自販機に金を飲み込まれたんだよ」

 

「幾らほど?」

 

「……諭吉さんが一人」

 

ププッ!

まさか一万円も飲み込まれたなんて、どれだけ不幸体質なんだか。

 

「笑うな、笑っちゃダメ、笑わないでください三段活用!」

 

「いや、できてないし。

そうだなぁ、あまりにも可哀想だからなんか奢ってあげるよ。

ちょうどお昼時だしどっか食べに行く?」

 

「いやいや、さすがに初対面のそれも女の子に奢ってもらうというのは男の子として情けないというかいけないというか…。

それにそんなことされてもなんのお返しもできないし」

 

「でもお金ないんでしょ。

大丈夫、こう見えて私はお金持ちだからご飯代ぐらいどうってことないよ。

それにお返しが欲しくてしてる訳じゃないしね」

 

「いや、でも…」

 

「人の善意は潔く受け取るものだよ。

ほら、行こ!」

 

私が有無を言わさず、言い淀んでいたヒーローの手を握って引っ張って行くと、後ろで「この幸運は一体どんな不幸の前触れなんだぁぁぁ!?」っていう声が聞こえた。

いくら不幸体質だって言っても気にし過ぎでしょ。

 

 

ところ変わって私達はファミレスに来ていた。

前世にはファミレスなんてなかったからファミレスについては知識しかなくて実際に来たことはなかったんだよねぇ。

あぁ〜涼しいぃ〜。

私達は店員に案内された席でメニューを見ていた。

ちなみに私が通路側でヒーローが窓際に座っている。

 

「どれにする?

遠慮せずバンバン頼んでいいよ」

 

「そう言われてもな。う〜ん、じゃ俺はこのおろし大根の和風ハンバーグとアイスコーヒーにしようかな」

 

「じゃ、店員呼ぶね」

 

私は呼び鈴を鳴らして店員を呼んだ。

すると、数秒してから店員が来た。

 

「おろし大根の和風ハンバーグAセット一つとロイヤルステーキAセット一つとアイスコーヒーとオレンジジュースください」

 

「畏まりました。少々お待ちください」

 

と言い、店員は去っていった。

向かいの席に座るヒーローの方へ視線を戻すとそこには顔が青褪めたヒーローがいた。

なんで顔面蒼白?

 

「どうしたの?」

 

「ど、どうしたもこうしたもありませんのことよ!?

さっき頼んでたロイヤルステーキって一つ1万五千円もするファミレスのメニューとは思えない超ぼったくりステーキなんだぞ!?」

 

そう言われても……。

私の現全財産10億だから“そんなに?”って感じなんだよねぇ。

 

「言ったでしょ。お金なら腐る程持ってるって。

それに、値段が高ければ高い程満足度も高いって相場が決まってるしね」

 

「確かにそうだけど普通1万五千円もの大金をポンっと出すか?

もしかしてお前って高位能力者?

制服からして俺と同じ高校みたいだけど。」

 

「まぁ、高位能力者って言えば高位能力者なのかなぁ。

私の能力はLEVEL4の幻想具現(イマジンドラッグ)

頭の中で想像した物体、現象を現実に引きずり出す能力だよ。

ちなみに高校は君と同じで、夏休み明けに登校する予定」

 

まぁ、能力に関する情報は魔法を隠すためのダミーだから本当は能力者ではないんだけどね。

どっちかっていうと魔術サイドなのかなぁ?私って。

 

「君の能力は?」

 

「俺はLEVEL0の幻想殺し(イマジンブレイカー)だ。

異能の力ならたとえ神の奇跡だろうと打ち消すって能力だ。

この能力のせいで上条さんはいっつも不幸なんですよねぇ」

 

とヒーローは渇いた笑い声を上げ、不幸だっと小さく息を吐くように言った。

そこで店員が料理を運んで来た。

ヒーローは運ばれてきたハンバーグを前にして目を輝かせている。

この様子じゃぁずいぶんと長い間肉料理を食べてなかったんだろうなぁ。

ホント、不憫だね。

 

「おお、久し振りの肉だ!

では、有難く戴かせて頂きます!」

 

私達は手を合わせて頂きますっと言い、食べ始めた。

数十分後、料理を食べ終えた私達はまだ自己紹介をしていなかったことに気づいたので、互いに自己紹介を始めた。

ホント今更だよね。

 

「俺は上条 当麻だ。よろしく」

 

「私は如月 樹。よろしく、ヒーロー」

 

「えっ、なんでヒーロー?」

 

「……秘密だよ(^_−)−☆」

 

私は可愛くウインクしてごまかした。

ふぃー危ない危ない。

もうちょっとで私の原作知識がバレるとこだった。

神様にはバラすなとは言われてないけど、こういうのは秘密にするものだって相場が決まってるもんね。

今度からはみこっちゃんとバトッた時みたいに精神魔法で注意が向かないようにしないとね。

聞かれたらボロ出ちゃいそうだし。

それにアレイスターが滞空回線(アンダーライン)で見てる中で未来のことを知ってるからでぇす☆なんて言えないしね。

それにしても、さっきよりヒーローの顔が赤くなってる気がするけど、やっぱりファミレスの中といえど男の子にしたら暑いのかなぁ?

それとも私の魅力に落ちたか?ムフフフフ♪

……ってないか、あの鈍感ヒーローだもんね。

 

「顔赤いけど大丈夫?」

 

「えっ、ああ、大丈夫大丈夫。

問題ありませんのことですよ。

ハハ、ハハハハ」

 

もの凄くぎこちない笑い声だね。

まぁ、大丈夫なら良いんだけど。

本当に大丈夫なのかな?

……ん?なんだろあの白いの?

 

「ねぇ、ヒーロー。

あれヒーローの知り合い?」

 

ヒーローが私が指差した方を向くと一気に顔をひきつらせた。

そこには女の子がしてはいけないような表情をした白い修道服を身に纏った少女が鬼気迫る表情で涎を垂らしながらファミレスの窓ガラスにへばりついていた。

ああ、そう言えばあれって大罪シスターことインデックスか。

シスターなのに暴食、怠惰、嫉妬、憤怒、の4つもの大罪を犯したことで有名な。

うん、お前本当にシスター?

とか考えていると何時の間にか大罪シスターはファミレスの中へ入って来て、ヒーローの横に座ってヒーローに『当麻はどうしていつもいつも気がついたら可愛い娘と一緒にいるのかな!?』とか『一人だけお肉を食べてるだなんて許せないんだよ!』などと文句を言っていた。

 

「で、その娘は一体何者?」

 

「こいつは俺のところに居候してるイギリス清教のシスター、インデックスだ。

…ああ、イギリス清教とか言ってもわかんないか。

まぁ、細かいことは気にしないでくれると助かる。

そして唐突だが今現在上条さんには財布にも銀行にもお金がなく、全財産28円です。

そして、次の奨学金が入るのは約1週間後です」

 

と、一旦区切り、ヒーローは突然席を立って勢い良くジャパニーズDO☆GE☆ZAをした。

おおぉ〜、これがジャパニーズDO☆GE☆ZAか!

生で見れるとは思わなかったな。

と、私が謎の感涙をしていると、ヒーローは、

 

「ド厚かましいことこの上ないですが、どうかこの上条めに食べ物を恵んでください!

お願いします!!」

 

もうね……。なんというか…。不憫だね…。

 

「ヒソヒソ(ねぇねぇみんな見て。あそこの席のカップル女王様プレイなんてしてるって訳よ)」

 

「ヒソヒソ(若さ故の超過ちというやつですね)」

 

「ヒソヒソ(というか彼女さんはすごく可愛いのにどうして彼氏さんはイケてないのかしら)」

 

「ヒソヒソ(結局あんなの遊びに決まってるって訳よ。

たぶん本命はすっごいイケメンね!)

 

「ヒソヒソ(だよね、釣り合ってないしww)」

 

「ヒソヒソ(私はそんな報われない彼氏さんを応援してる)」

 

ヒーローが不憫過ぎて泣けてくるね。

ていうか周りからの視線という名のデスビームが痛い!!

 

 

「わかったから早く顔上げて!

これじゃ私が女王様プレイしてるみたいでしょ!!」

 

「ありがだぎじあわぜでございばず」

 

と、涙ボロボロ状態で席に戻った。

 

「ていうか急にどうしたの?

大罪シスターが来た途端ああなったけど」

 

大罪シスターじゃないんだよ!!

と言う戯言が聞こえたが無視する。

七つの大罪の内の怠惰、暴食、嫉妬、憤怒の4つを犯してるシスターを大罪シスターと呼ばずしてなんと呼ぶ!!

 

「いや、こいつの顔見た瞬間現実に戻されたっていうか、お金がない現実を突きつけられたっていうか……不幸だ」

 

成る程、そう言うことだったのか。

現実に戻されたっていうことは私との時間は幻想みたいだったってことなのかな?

それはまぁ、嬉しいかな。

 

「それよりもご飯くれると嬉しいな」

 

「ハイハイ、好きなのいくらでも頼んでいいよ」

 

「ホント!?ありがとうなんだよ赤髪!」

 

「私の名前は赤髪じゃなくて如月 樹ね」

 

私はそれからすぐに、先ほどの発言がどれほど愚かで浅はかな発言だったかを思い知った。

なぜなら、ファミレスに嵐が訪れたからだ。

インデックスは食べながらもさらにどんどん注文していって店員はあっちへ行ってこっちへ行っての大忙し。

厨房では大量の皿洗い、調理で大忙し。

お金なら全然大丈夫だけど、私は決めた。

店員の為にも、もうこんな愚かなる発言は決してしないと……。

 

 

 

「お会計39万9847円となります」

 

店員が若干引きつった営業スマイルでそう告げる。

あんなことがあったにも関わらず若干引きつりながらも営業スマイルを浮かべるその精神……感服するよ。

勇者である私ですら無理だもん。

私は財布からブラックカードを取り出してそれで払った。(その際ヒーローが横で『ぶぶぶブラックカード!?ヒェェエエエ!!』とかいろいろ騒いでいたが無視した)

そしてこの時、私の中で『大罪シスター=できる限り関わらない』という鉄則ができた。

 

 

ファミレスから出た後の会話の流れで自宅が隣同士だと分かった私達は一緒に帰宅していた。

そして、これまた会話の流れで夏休みの宿題を手伝うことになった。

ヒーローは一体どれだけ私にお世話させる気だ?

 




注:上条フラグは建っていません。
あくまでもこれは勇者の純粋な善意による行動です。
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