境界線を越えた先にあるもの   作:✟クロス✟

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第六話 垣根、不純物と初戦闘する

私達は研究所に着いてからそれぞれ別行動で任務に当たっていた。

私は研究所に結界を張って外部との通信の切断及び逃走経路の封鎖をした後表口から研究所を襲撃してこちらに注意を引き、それによって警備が薄くなったところでていとくんが裏口から侵入してこの研究所の地下で実験体にされている置き去り(チャイルドエラー)を救出するって手筈となっている。

これは捕われている子供達を安全に救出するために考えた策だ。

そして、私はついさっき結界を張り終え、今から研究所に襲撃を仕掛けるところだ。

 

「さて、私は注意を引かないといけないし、特大級のを喰らわせてやりますか!|置き去り《チャイルドエラー)は研究所の地下深くにいるみたいだから遠慮はいらないし!」

 

私は研究所の上空10m付近で右腕を真上に上げて詠唱を始めた。

 

「世界を照らす始まりの炎よ。

その大いなる聖火は恵みを齎す反面災厄をも齎す。

それはこの星の生命を誕生させ、育んできた始まりの炎であり、この世のありとあらゆるものを燃やし尽くし、灰塵と化す終わりの炎でもある。

終末の炎よ、今ここに顕現し、その大炎をもって敵を焼き尽くせ!!

 

『デフェールフラム』!!」

 

詠唱開始と共に私の掌の上に炎球が生まれ、それは詠唱が進むにつれて大きくなり、詠唱が終わる頃には直径10mの大きさにまで膨れ上がっていた。

周囲はそれが発する膨大な光によりまるで真昼かのように明るくなっており、地上にある草木がチリチリと焦げていた。

私は上げていた右腕を研究所の方へと振り下ろしてその小さな太陽を研究所の表口へと落とした。

 

大炎球はそのまま重力にしたがって研究所に着弾し、その莫大なエネルギーを解放した。

瞬間、辺りは光に飲み込まれ、それだけでも破壊兵器となり得る程の音の衝撃波が後から襲ってきた。

着弾地点にあったものは全て例外なくその超高温で蒸発し、爆風による土煙すらその超高温の熱波により焼失していた。

研究所地上部の3分の2が焼失し、残ったのは熱風によりところどころ溶け、音の衝撃で崩れたりしている瓦礫の山と、融解し、ドロドロになった研究所だったものだけだ。

 

「ちょいとやり過ぎたかな…(苦笑)」

 

私は研究所地上部のあまりの惨状に乾いた笑い声を上げた。

とそこで耳に付けている通信機からていとくんの声がノイズ混じりに聞こえた。

 

『ジ…ジジ…研究所が崩落しない程度でやれ!!ジ…のバカが!!」

 

だいぶお怒りのようである(笑)

と、おふざけはこれぐらいにして私も地上に出てきたここを護っている暗部組織の相手をしないとね。

情報通りなら彼等は暗部組織『フレイム』っていう木原数多率いる『猟犬部隊』(ハウンドドッグ)みたいな体系らしいね。

総数は100人で武器は刀や銃か。

ま、この程度なら直ぐ終わるかな。

 

 

 

SIDE垣根

 

まったく、あのバカは加減って言葉を知らねぇのか?

さっきの炎球の衝撃のせいで研究所が崩落すると思ったぞ。

まぁ良い。陽動としてはちゃんと役割を果たしたみたいだし、あの攻撃じゃぁ地上部にいた研究者も殲滅できただろうしな。

俺もさっさと地下に収容されているガキ共を助けるとするか。

俺は壁と天井のところどころに罅が入った地下階段を下りて行った。

 

確かガキ共は地下7階に収容されてんだったか。

俺は地下7階へ向かい、未元物質でグミのような素材を作って靴の裏を覆い、音が鳴らないようにして階段を駆け下りていた。

そして地下5階に下りてきたところで唐突に壁が吹き飛んだ。

飛んできた爆風や瓦礫は未元物質で防ぐことができたが、階段は瓦礫で埋まり、通行不能となっていた。

まぁ、敵に見つかった以上コソコソと階段で地下へ行く必要はなくなったんだが。

 

「学園都市第二位垣根帝督、悪いがここで死んでもらうぞ」

 

壁が吹き飛んだ時に舞った土煙の向こうから人影と共に声が聞こえてきた。

瞬間、人影の方を向いていた俺の背を途轍もない衝撃が襲い、土煙の中にある人影の方へと吹き飛ばされる。

 

「ガハッ!(俺に気づかれずに背後に忍び寄っただと!?

いや、それよりもなんで常時展開してる未元物質のシールドを突き破ることができたんだ!?

あれは通常の物理法則による攻撃ではそれこそ第一位ぐらいじゃねぇと突破できない物だぞ!)

 

「そんなものか?未元物質!!」

 

土煙の中にいた男が拳で殴りかかってくる。

俺はそれを背に展開した三対の未元物質の翼で防ぐが、またも突破され、男の放った拳は未元物質の翼を殴り砕いて俺の腹へ直撃した。

 

「ゴハッ!」

 

男はそのまま俺の横腹へ回し蹴りを()めて吹き飛ばす。

俺は翼をはばたかせて態勢を立て直し、地面に着地する。

そして、土煙の中から二人の男が現れた。

片方の男は忍者の格好をした男でもう片方は軍人の格好をした男だった。

こいつらの攻撃の雰囲気は以前操車場で戦った奴と同じだ。

樹が言うには不純物(イレギュラー)とか云う特別な力を持った異世界からの転生者だったか。

たくっ!厄介な奴等が出てきやがって!!

 

「拍子抜けだな。資料ではもう少しやりごたえのある奴だと思ったんだがな。

所詮戦場のことを知らないただの子供ということか」

 

軍人は俺を見下すような目で見てきた。

ちっ!舐めやがって!

 

「ハッ、そんなにやりごたえが欲しいってんならお望み通り全力で潰してやるよ」

 

俺は一対の翼を敵に向かって高速で打ちつける。

それは20階建てのマンションを縦に粉砕するほどの威力だ。

だが敵はそれを拳で殴り砕き、その隙を狙ってもう一人の男が忍者のような走り方で高速接近する。

俺は翼を再構成する暇も無く迫ってきた男に向かって残りの翼全てを刃状にして忍者を切り裂くが、切り裂いた忍者は氷塊へと姿を変えると同時に忍者を切り裂いた翼は凍りついて粉々に粉砕された。

 

「終わりだ」

 

前からは軍人が黒くなった拳で、背後からは回り込んだ忍者が掌に小さな台風のような球体状のエネルギーを発生させて襲いかかってくる。

……計算通り。

二人は突如床から突き出した純白の槍に貫かれた。

忍者は純白の槍が胸に刺さって即死だったが、軍人は腹に刺さったお陰で即死にはならなかった。

大方、槍が突き出した瞬間回避しようとした結果だろう

まぁ、それでも死ぬのは時間の問題だろうが。

 

「ガハッ!何故…だ…。

俺は見聞色の覇気で周囲を警戒していた。

なのに…何故…俺に気づかれずに…罠‥を…‥仕掛けることができたんだ?」

 

「簡単なことだ。

お前の使う力を解析して、その力を未元物質で阻害して無効果しただけだ。

そしたら後は簡単。

罠を仕掛けてお前等がその位置に来るように誘導するだけだからな」

 

軍人はまるで化物でも見るような目で俺を見て、驚愕の表情を浮かべた。

 

「そんなことは‥…不可能…だ。

あの高速戦闘中に…瞬時に‥未知の力を解析し……罠を仕掛けるなど…人間の…演算速度で‥…できるわけがない!」

 

「それができるからお前は今そうなってんだろ?

拍子抜けだな。最初はもう少しやりごたえのある奴だと思ったんだが。

所詮超能力者(化物)のことを知らないただの無知な子供ということか」

 

俺はそう言って背に展開した三対の翼で切り裂いて止めを刺した。

 

「さて、敵は潰したし、床をぶち破って一気に7階まで行くとするか」

 

俺は未元物質で地下7階まで床を分解して直通の穴を開けてそこから地下7階まで飛び降りた。

 

地下7階はこれまでの研究所らしい造りではなく、何もかもが分厚い特殊合金製で収容所のような造りだった。

 

「さて、どんどん開放していくか」

 

俺は一番近くにあった扉から順に扉を未元物質で分解して開けて、中にいたガキ共を開放していく。

そして最後に残ったやけに厳重にロックされた分厚い扉を破壊しようとしたところでさっき開放したガキ共の内の一人が服の裾を引っ張ってきた。

 

「どうした?」

 

「気をつけて。その中にいる人はここに来た『木原』って人に改造されてもともと強かった力がもっと強いものになっちゃってるから。

暴走したらあなたでも危ないかも」

 

「……『木原』…か…」

 

一応未元物質の膜で全身を覆っとくか。

俺は分厚い扉を原子レベルで分解して中へ入った。

そこには研究者がDNAの流出を防ぐ為に髪を切らせずにいたのか、長く無造作に伸びた黒髪で目元が隠れた中性的な顔立ちの少年がいた。

 

「……垣根…帝督か。

何をしに来たの?

暗部組織への勧誘?それとも抹殺命令でも下ったのか?

まぁ、どちらにしろ僕には碌な未来はないな。ハハハ」

 

俺を知ってるのか。

つうことはこいつも不純物(イレギュラー)か…。

 

そいつは全てに絶望したとでも言うような表情で感情の篭っていない笑い声を上げた。

…むかついた。

こんな表情をして諦めてるこいつも、こいつをこんな風にした環境にも。

 

「どっちも不正解、大外れもいいとこだ。

俺達がここへ来たのはお前等を助けるのとこの研究所を研究者ごと消し飛ばすためだ」

 

そう言うと、少年の眼に少しばかり光が戻った。

 

「本当に、本当に僕達を助けに来たの?」

 

「ああ」

 

「でも、どうしていまさらになって上は僕達を助けになんて…」

 

「親船最中がスクールに依頼してきたからだ。

大方、木原に改造されたっていうお前の能力を善行に活用しようとでもしてんだろ。

それより早くここを出るぞ」

 

「う、うん。わかったよ」

 

そうして俺とガキ共(20人弱)が奇跡的にまだ生きていたエレベーターで地上へ出ると、あたりには地獄絵図が広がっていた。

地面はドロドロに溶けてマグマとなり、辺りにはクレーターが多数、そしてバカでかい高さ約10m程の氷柱が幾つか地面に突き刺さり、聳え立っていて、地上から地下5階までをぶち抜く巨大な穴まで空いていた。

 

「ハァ、やり過ぎだ」

 

「にゃはは、今回の敵はちょっと厄介だったから一掃するために広範囲殲滅型の技を使ったからね」

 

右を見ると、樹がいた。

その姿は体に傷こそないものの、服はところどころ破れて素肌が見え、血の痕がところどころについていた。

大方、傷を負ったけど能力で治癒したってところか。

 

「珍しいな。お前が傷を負うなんて。

不純物(イレギュラー)でも混ざってたか?」

 

「混ざってたっていうか全員不純物(イレギュラー)だったね」

 

「どうりでこうなる訳だ」

 

俺は辺りの惨状を見ながら言った。

樹はそれに対して目を逸らして露骨に話のベクトルをガキ共へと変えた。

 

「それよりこの子達はどうするの?」

 

「こいつらは部屋が用意できるまでは第七学区にある冥土帰し(ヘブンキャンセラー)のところへ預ける。

ということでいつもの頼む」

 

「了解」

 

樹はワームホールを形成してここと冥土帰し(ヘブンキャンセラー)の勤務先の病院の空間を繋げた。

 

「じゃぁ、俺はガキ共を預けに行くから後始末は頼んだぞ」

 

「えぇ〜、私が預けに行くからていとくんが後始末してよ〜」

 

「仕様がねぇな。じゃぁガキ共は頼んだぞ」

 

「まっかせなさい!さ!みんな行こっか!」

 

樹はガキ共と手を繋いでワームホールの中を通っていった。

さて、俺もさっさと終わらせて帰るとするか。

 

 

 

 

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