武装神姫 ~Je vous aime à jamais~   作:冬沢 紬

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10th Ride

 

 

 

 

 

 

 

 

「神姫センターで、バトルしに行こうってことだよ」

 

 神姫センターで……バトル! おお、これは燃える展開じゃないか!

 

 俺はご主人の顔の前でホバリングすると、ご主人の前髪を思いっきり引っ張りながら叫んだ。

 

「バトル! 対外戦! 安心して、初心者ご主人様! この俺……ワタシが出る以上、勝確だから!」

 

 ブチブチっと聞こえた気もするが気のせいだ!この空戦装備さえあればなんだって出来る気がする。さあご主人、早く装備を外せ。出陣の準備だ!

 

 怒れるご主人を前に、平身低頭しながら俺は意気込んだ。

 

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 再びご主人の胸ポケットの中。そしてご主人は電車の中。神姫センター目指して移動中である。

 

 結局向かうメンバーは、ご主人、部長、灯、裕明、そして鈴莉の5人だった。加賀は何やっているのか、おそらく兼部先だろうと裕明が言っていた。

 

「そういえば」

 

 裕明が話題を変えた。

 

「今夏に発売される、ジールベルン・Aってどうなんですか? 個人的には軽装なところがツボなんですが」

 

 問われた部長が、苦笑いを浮かべながら返す。

 

「カタログスペックすらこの発売直前で公表されていないのに分かるわけないでしょ?」

 

 裕明は「そうっすよねー」と言って雑誌を取り出した。

 

「まぁ結局は、きっとオールベルンやジールベルンのプロトと同じような性能なんでしょうけどねー」

 

「せ、先輩。それは言わない約束ッス……。ってか色々問題発言!」

 

 裕明が黒化した部長を止めに入った。

 

「鈴木先輩……キャラが被るッス! 今すぐキャラ変更をしないと……しないと……アイデンティティ・クライシースッ!?」

 

 鈴莉も楽しそうで何より。というか、実は鈴莉の方がマスター歴が長い。中学の頃からやっていたらしいし、模型屋主催の小さな大会でも上位に食い込んだこともあるらしい。

 

 軽薄そうに見えて、実は相当手ごわい相手じゃないだろうか。俺はそう思い、ご主人を見上げた。

 

「ん? どうしたの、ユカリ?」

 

「んーん。なんでもない。なんでも」

 

 大丈夫。マスター歴たった3日(、、、、、)のご主人でもきっと何とかなるはず。一応俺も元は人間だったんだ。そこらの神姫に判断力で負ける気は無い。

 

 そう。神姫バトルは3つに分かれている。まず『リアルバトル』。実際にこれは神姫同士が生身でぶつかり合うリアルファイトだ。当然CSCが破壊されて事実上の“死亡”となる神姫も存在する。

 

 しかしある程度の武装紳士協定はあって、『過度に致命的部位への攻撃は仕掛けない』などの配慮はある。

 

 ちなみに、予算の足りない大半の高校の神姫研究会はリアルバトルでレベルアップを図っている。そのため同好会・研究会上がりのマスターは自分でのリペアスキルが相当高いのもまた事実。

 

 次は『バトルロンド』。これは神姫自身は戦わず、筐体でバーチャルの神姫同士が戦うのを観戦するバトルだ。神姫が傷つかずにバトルできる上に、オンライン筐体につなげば全世界のマスターとバトルできることから、これが一番人気が高い。ちなみに、公式戦も大体がコレで行われている。

 

 ただし、オリジナル武装の登録には何度か神姫センターに行き、審査・認定・登録・スペックの公表をするなどのデメリットが多い。

 

 そしてもう1つがここ1年程で急に普及した「神姫ライドシステム」という、神姫をマスター自身が実際に操作して戦うバトルがある。それが『バトルマスターズ』だ。

 

 しかしいくら操作すると言っても、行動の主導権は神姫の方にあるので、残念ながら神姫との親密度が低いと思うように操作できなかったり、レスポンスが悪かったりする。それに神姫の特性を理解し、大量の情報を処理しながら戦わなければならないので、1段レベルの高いバトルと言えるだろう。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 神姫センターに着いた研究会一行(いっこう)は早速空きの筐体を探し始めた。すると上手い具合に一台空いたので、まずは挑戦とばかりにバトルロンドに俺は挑むことになった。

 

 相手は……?

 

「ありゃ、また挑戦者が現れたか」

 

「マスター、マスターのパンク精神のおかげで、連日連戦連勝です!」

 

 おいおい、何だか濃いキャラだな……。初戦からこんなのに当たるとは……。いやさ、確かに神姫マスターはキャラが濃いのは認めるよ。でも、さぁ……。

 

 ウチの研究会、実は真人間ばっかりなんじゃ!?

 

「結城って言います。あ、これ苗字です。初めてのバトルで緊張していますが、どうぞよろしくお願いしますね」

 

「おうよ、俺の名前は張野(はりの) 良助(りょうすけ)だ。ハリーと呼んでくれ。こいつはアーンヴァルmk2のヴューナ。それにしても、初めてで大会ランカーの俺と当たるなんて、お前もファッキンついてないぜ」

 

「ええ、マスター。では、よろしくお願いしますね、ファッキンシット!」

 

 キャラ付けなのはわかる。分かるけどさぁ……。あんまり自分の神姫に変なこと教え込むんじゃねぇよ……。

 

 そんなことを俺が考えているうちに、武装のセッティングが終わったようだ。ご主人が俺を筐体に送り込むエレベーターに配置する。

 

 それはまるで神聖な儀式のよう。俺は先日の戦い以来、意識すると見えるようになったHUDを展開、セッティングを開始する。

 

「それじゃ、」

 

「まって、ご主人様。私に一言だけ言わせて」

 

 ご主人が首をかしげる。が、俺は無視してセッティングを完了させると、叫んだ。

 

「Are you kiddin’ me !?」

 

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 目を開けると、何も無いバーチャル空間。しかし設定したとおりに、障害物が地面から伸びていき、テクスチャが張られていく。そよぐ風に揺れる花。ここは、まるで本物の戦場……。

 

 ステージは廃神殿。こういう風景は好きだ。風化した柱が倒れ、海を臨む平地。隠れ場は殆ど無い。しかし私には翼がある。そしてこのアビリティ。

 

あらゆる神姫を凌駕するスピードとエイミング速度。

 

あらゆる神姫に及ばないLPや防御力。

 

 ……俺が全く格闘戦向きでないと教えてくれる。それがどうした。全ては叩き伏せ、ねじ伏せるための力。

 

 

 Ready……?

 

 

 

 鼓動が

 

 

 

 3……

 

 

 

 高鳴る

 

 

 

 2……

 

 

 

 イメージするは

 

 

 

 1……

 

 

 

 最強の――

 

 

 

 Start!

 

 

 

 私だッ!

 

 

 

 私の視界がHUDになる。全身のステータスが表示される。オールグリーン。当たり前だ!

 

 私は何も惜しまず、全力でフルブースト。一瞬で敵を追い抜き、両方のニンブスを展開、ミサイルの雨を降らせる。それをヴューナは焦った様子で紙一重で避けるが、その着地硬直を待っているのだ、私は。

 

 そして狙い(あやま)たず、ライフルであるヴェルテクスからの光線の1撃はヴィーナを吹き飛ばした。

 

 現在、相手のLPは3500。対する俺は950。なんてことだ。一発で200程度しか削れない。

 

 私は……(わら)った。

 

「その程度で……吹っ飛ばないでよ。後まだ18発もブチ込んでやらないといけないんだからっ、さぁ!」

 

 狙い済ましたようなLC5 レーザーライフルの狙撃をステップで……じゃない。当たる直前に左に1歩、歩くだけで避ける。

 

「そんなの……当たるわけがないよ」

 

 全部見えている。敵の死角も。敵の弾道予測も。回避方向・方法も。全ての情報が私に入ってくる。人間だった頃ならとっくに脳がパンクしているはずだけど。そんなの関係なしに、私は私のために勝手に情報収集を続ける。

 

 私は、今の私は。

 

 正に、無敵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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