武装神姫 ~Je vous aime à jamais~   作:冬沢 紬

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12th ride

 

 

 

 

 

 武装解除した俺はバトル台の横で、先輩の裕明と同級生の鈴莉の戦いをカスタムスペースから、モニターで見ていた。

 

 なんと意外なことに、終始鈴莉が圧倒していた。だがしかし、マスター歴で比べれば裕明よりも鈴莉の方が長い。だからとは一概には言えないだろうが、鈴莉の方が圧倒しているのだろう。

 

 鈴莉は中距離でオールマイティーに戦うタイプのようだ。アルトレーネ型の特性を利用しつつ、アルヴォPDW11で確実に削っていく。攻めと守りの時流を心得ているのがよくわかる。

 

「強いね……これは戦ったらただじゃすまないかも……」

 

 そう言うご主人に俺も肯き返す。

 

「バトロンじゃ私だって負けないけど、バトマスじゃね……ご主人様の腕は知らないけど、勝てないんじゃない?」

 

 そう言ってくるりと振り返り、俺はご主人を見上げた。

 

 ご主人は頭をかいて「まぁ、やったことないしね……」と頼りなさげに笑った。

 

 その時、スッとご主人の隣に並んだ影が一つ。

 

 それは、道着と袴に身を包んだ、見るからに、その、何というか……。

 

「イロモノ……。なんでこんなに神姫のマスターには変なのが多いんだろう……。ご主人様、お願いだから変な方向性には目覚めないでね……」

 

 ご主人は乾いた笑いを返すのみだった。不安に不安を倍掛けした気分の中、そのイロモノがご主人に話しかけた。

 

「ふむ、話を聞くにバトルマスターズはやったことが無いそうだが……。どうかな、私が一戦相手になろうか?」

 

 いや待て。さすがに考え無しなご主人でも――

 

「いいんですか!? ぜひお願いします!」

 

 おいいぃぃぃぃぃ!!!!

 

 変な人にホイホイ付いて行っちゃだめだろうが!

 

「おっと、申し遅れた。私の名は二之宮(にのみや) 衛士(えいし)。これが連れの“ことり”だ。神姫共々、よろしく頼む」

 

 項垂(うなだ)れる俺を尻目に、ご主人が挨拶をしている。俺の頭の中は、1つのワードで埋め尽くされていた。すなわち――

 

「関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった関わってしまった…………」

 

「どうしたのユカリ? ほら、筐体が空いたよ。さ、行こうか」

 

 俺は茫然自失したうちに手早く武装を付けられ、ステージに送り込まれた。

 

 とりあえず相手を分析しようとする。敵を知り、己を知れば、というやつだ。

 

「ご主人様、見たことない武装だよ、相手……。スペックはわかる?」

 

「うーん……。見たところ、ストラーフをベースにガン○ラで外殻作った感じかなぁ?」

 

 ゾクリ、とした。ご主人、もしかして、もしかすると、化けるかもしれない。

 

 普通は自作した神姫のパーツなんて知りようがない。しかしご主人はそのものズバリ言い当てたのだ。たぶん。

 

 ひょっとして、観察眼だけは一流……か?

 

「……考えすぎ、かな?」

 

 そう呟いた次の瞬間、前触れもなく電子音的なアナウンスが響いた。

 

――Ride on!

 

 バチンと何かが切り替わる感覚が体を支配し、意識はありつつも自分の体が自分ではないような、何かに侵食される気持ち悪い感覚を味わった。

 

 なんだこれ……。体が動かないっ!?

 

『わー、すごいねユカリ! これがいつもユカリが見ている世界なんだね!』

 

 俺の視界を通して見ることのできたステージ:コロシアムの風景を興味深そうにぐるぐると見回すご主人。

 

「それどころじゃないよ、ご主人様! 体の指揮権を返せ! これじゃ、戦えないよ」

 

 俺は結構マジで言うがご主人はどこ吹く風、そして無情にも試合開始のカウントダウンが始まる。

 

 

 

――3

 

 

 

――2

 

 

 

――1

 

 

 

――Fight!

 

 

 

 

 

 

 と、とにかく索敵を――

 

 

 

 ドンッという、衝撃。

 

 

 

 俺は無様に吹き飛ばされていた。

 

 何をされたかもわからない。とにかく敵を見つけようとするが、いつものHUDも立ち上がらない。

 

「体をっ! 返ぇせえええええ!」

 

 そう叫ぶと、無理やりその場から脇目もふらずにブーストジャンプし、距離をとる。耳元でブンッと言う音がし、髪の毛が何本か持って行かれた。

 

 LPは!? とっさにステータスを呼び出すと、最早200しか残っていなかった。

 

 俺は背筋に氷が落ちるのを感じた。

 

「ご主人様、しっかりして! 次、来るよ!」

 

『え、え?』

 

 俺はまた、力ずくで足だけ支配権を奪うと、バック転で2撃、3撃目を躱す。

 

「しぶとい(かな)、マスター!」

 

『応、“ことり”、征くぞっ!』

 

 一糸乱れぬマスターと神姫のコンビネーションで俺を追い詰めていく、二之宮&ことり。

 

 それに比べて……。

 

「マスター、反撃を! いや、とにかく敵のロックを!」

 

『だめだ、速すぎる! ロックできないよ!』

 

 

 

 

 結局。着地でオートバランサーが働いた瞬間に背中から一刀、刺し貫かれて、バトマス初戦は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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