武装神姫 ~Je vous aime à jamais~ 作:冬沢 紬
「ご主人様ぁッ! 敵をロックは基本中の基本デスヨ!?」
俺はそう叫ぶと、ご主人の揉み上げにぶら下がって全力でブーストを吹かした。
「あっ、いだだだだだだだだッ!」
ご主人は慌てて俺をつかもうとするが、俺はスルリとすり抜けると再び下に――
ブヂブチッ
「ごぉめんなさいぃぃぃぃぃ!!!!」
空中土下座というものの存在を初めて知った。
◇ ◇ ◇
妙に揉み上げが左右不均等になったご主人を前に、俺は反省会を開いていた。
「ご主人様! どうしてロック出来なかったの? 私のアビリティがあれば早期ロックは可能だったでしょ? 事実、私だけなら絶対ロックできてたねっ!」
「そうは言ってもユカリ。僕は初心者だし……。それに尖りまくったユカリの性能を一回やそこらで引き出そうってのは土台無理な話じゃないの!?」
あーでもない、こーでもない。俺たちの反省会はお互いの欠点をあげつらうだけのものになってしまっていた。だが、そこに現れたのは救世主……なのだろうか? とにかく、予想もしなかった人物が現れた。
「そこの少年……何をもめているんだ?」
外国人だった。
予想できるかっ!
俺とご主人は言い合いも忘れてじっと見つめてしまった。
「ああ、すまないな。俺の名はレイルーア・ウォルコット。22歳。このゼルノグラード、“マイブリス”のマスターをやらせてもらっている。マスターランクはA++だ。君は見たところマスターランクDのようだが……。始めたばかりの
さて、ここで一旦「マスターランク」について話しておかなければならないだろう。マスターランクとは、バトルしたポイントによってそのマスターと神姫が格付けされる、という一種の実力の指標だ。上はS++から下はD-まで。Fバトルのランクとは別に、存在する。
さて、そんないきなり怒涛のごとく喋りだす謎の外国人に唖然とする俺だったが、しかしご主人は違ったようだ。
「レイルーアさんって……まさか、あの!? Fバトルでも上位に食い込んで、超有名人じゃないですか!? な、なんでこんな所に……」
彼はHAHAHAと笑いながらご主人の肩を叩いた。
「俺だってマスターの端くれ。たまにはこうやって休暇の時ぐらいバトル会場に顔を出すさ。……で、君とそこの神姫との不和は先程のバトルかな?」
俺はぼーっとしていたが、その言葉に再起動を果たす。
「そ、そうです! さっきのマスターは不甲斐無いったら……。もう!」
「それだ」
「そ、それ?」
俺は急に鋭くなった彼の雰囲気に驚きつつも、反射的に聞き返してしまう。
「基本的に、『バトルマスターズ』は経験が……そして何よりも信頼関係が重要だ。お互いが信頼しあっていないと、ただ足を引っ張り合うだけの物となってしまう。先ほどの君たちのように」
た、確かに……。
「何よりもまずは訓練だ。一人用シミュレータがあるだろう? そこで仮想敵相手にいくらでも練習を積むといい。もし良ければ、俺が暇な時なら付き合ってやることもできる。ほら、少年。ケータイを出すといい。これが俺のアドレスだ」
ご主人は何というか……目を輝かしている。
しかし、確かに理想的なのも事実。これほどの強敵が味方になって練習に付き合ってくれれば、ご主人のランクアップも早いものとなるだろう!
「……おっと、俺は時間が押している。今日はすまないが、相手になってやれそうにないな……。また合う機会も作ろう。後進が育つのは見ていて気持ちのいいものだしな。それでは、Bye-Bye」
なんだか嵐のように去っていってしまった……。
と、ちょうどその時だった。入れ違いに部のメンバーがやってきたのは。
「いいいいいやったっスよぉぉぉぉ! アーイデンティティは、守り通したっスよ!」
鈴莉だ。どうやら裕明とのバトルに勝ったらしい。
「くそ、無念……一年坊主に負けるとは……」
そこで部長が、今日の締め、とばかりに手をパンパンと叩いた。
「はいはい。今日はみんな、何かしら得ることがあったようでよかったよ。今度もまた楽しみながらレベルアップしちゃいましょう! さて、じゃぁ、今日はお疲れ様でした!」
「「「「お疲れ様でした!」」」」
こうして、俺たちの初めての遠征は終わったのだった。
「あれ? このパンフレットなんだろう」
ご主人ー。勝手な行動はダメよー。