武装神姫 ~Je vous aime à jamais~ 作:冬沢 紬
「私は、神だ」
痛い。痛くて痛くて、痒くて痒くて、今にも悶えて転がりまわりそうなほど、痛すぎる一言だった。
「か……カミ!?」
「そうだ……神だ」
俺は呆然とするしかなかった。死んだと思ったら、いきなりグロイ自分の死体を見せられたと思ったらこれである。
なんなんだよ、一体! 何の嫌がらせだよ、全身に鳥肌が立ちまくってるぞ。
このまま見合っていても埒が明かないので、仕方なく口を開いた。
「……で、その……神様とやらが俺なんかに何の用なんですか?」
自称神は大仰にうなずいた後、唐突に話し始めた。
「実はな。私の趣味はフィギュア集めなのだ」
神が、フィギュア……? からかわれているのか、俺は。
「冗談でもなんでもない。私はいたって本気だ。特に武装神姫がよい。うむ。最高だ。女人と機械という歪な組み合わせをここまで昇華させるとは、人間というのは侮りがたきものよな」
そこまで語ると言葉を切り、俺に改めて向き直った。
「おぬしのその根性。死してなお神姫を守り通したその心意気。誰が認めずとも、我が認めよう。お主こそ私が救うに足る人物であると」
どうやら俺は救われるらしい。しかし救いといってもなぁ……。
「だが神様、俺のコレクションはすでに死んだ現世にある。今更やり直しというわけには、流石にいかないだろう? じゃ、救いって何だ?」
俺の質問に自称神は満足そうな笑みを浮かべた。そして、俺の頭上に手をかざす。
「我はお主を平行世界に送ろう。そこでは神姫達が動き、笑い、人と語らう……そんな所だ。悪くなかろう?」
それって、武装神姫の世界設定の中へ行けるって事か!?
「ほ、本当か!? なんで……い、いや、聞くまい。頼む俺を――!」
そこで、ハタと気づく。
神姫って、その世界じゃ一体10万とか余裕でしなかったっけ?
おれはその事実に慌てる。このままの姿で転生させられれば、素性も無い俺がマトモに金を稼げるとは思わない。
仮にどこかの子供に転生させられたとしても、それはそれで困る。一体金を稼げるようになるまで何年かかるんだ! 理解のいい親だとは限らないし……。
「ふむ、そんな懸念か」
待て。
「心を読むなっ!」
「そうは言われてもな。そういうものだからな、我々神というものは。……まぁ、いい。本題に戻ろう」
そういうと右手を大きく掲げた。
「先ほどの懸念は全て必要ない。たった一つのプロセスで全てが片付く。全く気にすることはない。いいな? 安心して身をゆだねればいい」
「ホントか? ……信じていいんだな?」
「元より……君に信じる以外の選択肢があるとは思えないのだが」
一々喋り方がイラッとするが、でもきっとこいつの言っていることは正しいのだろうと感じてしまう俺がいる。
数秒の沈黙の後、自称神が切り出した。
「もう、決まっているようだが?」
「……そうだ。ああ。頼む」
俺は……それでも、どんな風になっても神姫と離れたくない。だから、行く。神とやらのご褒美を受け取ってやる。
自称神は「それは重畳」と頷くと、再び俺に右手をかざした。
「安心するがいい。次に目覚めれば、そこは神姫の世界だ。自由に行動して、我を楽しませておくれ」
結局のところ、それかい。
とにかく俺は目を瞑った。
次に目覚めれば第二の人生。
とても、……そう。とても楽しみだ。
光が強さを増していく。俺はそれにゆっくりと飲み込まれていき、いつしか渾然一体となっていった。
そしてどれほど光の奔流の中を彷徨ったことか……。俺の視界が急に暗転した。今までと違い、俺が何かに横たえられているのがわかる。足先、腹、上半身、手先、腕、そして頭……順番に、自分を構成する全ての存在を認識していく。
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……………………
…………
そして、目を開けた。
目の前には、超巨大な何ちゃら入道。
ガリバー何ちゃら記。
急いで振り返ると巨大なPC。そのモニターに映る自分の姿。妙に機械的な間接。アニメチックな貌。
「な……、何だよこれええぇぇぇぇぇ!!」
俺は――
神姫になっていた。