武装神姫 ~Je vous aime à jamais~   作:冬沢 紬

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7th Ride

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様っ! 武装がっ! 武器が足りないよ!」

 

 俺は目の前でのんびりとお茶を飲んでいるご主人に怒鳴った。

 しかしそれもどこ吹く風、ご主人の野郎はズズ……とまた一口お茶をすするだけだった。

 

「てか、そんなに枯れてっとマジでジジくせえぞ! いいから武器と防具を! 俺を“武装神姫”にしてくれ!」

 

「……言葉遣い」

 

「ごめんなさいっ!」

 

 俺は一瞬で平伏する妙技を身に付けた。

 あのあと部活動は終了ということになり、今はご主人の家、結城宅にいる。お世話になってる、なんて絶対に言わない。

 

「ねーねーご主人様ー。武装をー。できればストラーフmk2ラヴィーナの武装をー。漢ならッ! パ・イ・ルッバンカァァァァァッ!! そしてあの長刀……ああ、シビレるっ」

 

「……仕草」

 

「ごめんなさいっ!」

 

 2度目の土下座。ああ、慣れたものさ。

 クソッ、四六時中女らしい事してたらいくらSAN値があったって足りやしねぇ……。

 

「ご、ご主人様ぁ……。お願い! 武装が欲しいの……」

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!

 

「そうだね……バトルするんだもんね。今のユカリの|LP≪ライフ≫っていくつだっけ?」

 

 そう言ってクレイドルから接続された俺のステータスをチェックするご主人。しばらくカタカタとPCをいじっていたが、何やら額に冷や汗を浮かべて俺を見た。

 

「LP……250……?」

 

 俺もご主人も、しばらく動けなかった。

 

「250……?」

 

 俺が問いかける。

 

「250……」

 

 ご主人も答える。

 

「大至急武装を整えることを提案しますがいかがでしょうかご主人様っていうかこのまま戦うとかさすがに常識をはるかにブッ飛んでいるような気がするんですが!?」

 

 残る呼気を全部主張に込めてみた。

 ご主人も青い顔をして、凍りついた頭を剥がすかのようにしてゆっくり頷いた。

 一般的な神姫の初期LPは400前後である。市販品の中で最も低いと言われているHMT型イーダでさえ300近くはあるのだ。市販品と比べて、群を抜いて低いと言える。

 ご主人は残りの項目もチェックしていく。エンターをカタンッと鳴らして俺にも見えるようにステータスを表示させる。

 

 

 

--------------------------------------------

LP……D

SP……D

ATK…C

DEF…D

DEX…S

SPD…S

BST…C

 

特殊アビリティ

 ……センサー+2

 ……SPD+1

--------------------------------------------

 

 

 

「誰だこんなにピーキーに設定した馬鹿はァ!」

 

 俺は思わずクレイドルをブン殴っていた。

 ご主人もうつむいている。

 

「新しい神姫……迎えようかな」

 

「まァァァてェェェェェい! そうなったらどうなるんだ!? オ…私は!? 私はどうなるん…どうなるの!?」

 

「いや、態度治らないし」

 

「ごめんなさァーいッ!!!」

 

 ……本日、3回目の土下座。俺は一体どこまで土下座を極められるのだろうか。

 

「ほら、ご主人様? オンリーワンの機体で優勝したらカッコイイですよ? ね、だから私と一緒に優勝しましょう! ね?」

 

 そう言ってご主人の方を見たら……もの凄く“イイ”笑顔で俺を見ていた。

 その迫力に2、3歩下がって尋ねる。

 

「ご、ご主人……様?」

 

 開いたご主人の口は悪魔か何かのように、血の滴る三日月の形をしていた。

 

「今、言ったね? 優勝するって。ユカリは本当にイイ娘だね。ちゃんと自分からバトルに参加してくれるなんて」

 

 む。ご主人は何か勘違いしている。俺は別にバトルが嫌いなわけではない。むしろ、神姫となったからにはやってみたいのだ。きっとライドシステムといっても風を感じたり、敵を討つ快感を直に感じられるわけじゃないんだろう。だからせっかくだし、どんどん戦いたいというのはある。

 しかし。しかし、だ。

 拳で戦ったら、簡単に手首とか肘関節がイカれるに決まってるだろ! アーマー無かったらCSCが傷ついて俺が死ぬかもしれない。そんな状態でバトルできるか! ……というのを女の子の言葉で丁寧に説明した。

 

「確かにね。うん、手元には……神姫を迎えるために準備していた8万があるから、それで何か買いに行こう。よし、明日は休日だから、デートだね!」

 

「デートじゃねぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 翌日、部長と鈴木がご主人にひっついてきた。

 

「ごめんね、ユカリ。せっかく2人きりのデートって思ったんだけど、よく考えたら詳しい人がいるといいからね」

 

 また面倒な……。きっとこいつらは神姫に対する|薀蓄≪うんちく≫ばっかり語って、余計にご主人を混乱させるだけなんだ。

 ……待て、今のは別にご主人をかばったわけじゃない。うまいこと無知なご主人を誘導できなくなっただけだ。ご主人が騙されたらどうしようとか、そういったあれじゃない。ないったらない。

 俺がご主人の胸ポケットの中でアウアウと混乱していると、どうやら目的の店についたようだった。

 

「ここかぁ、凄いですね! どこ見ても神姫だらけ……。ここなら何時間でもいられますね!」

 

「でしょ? ここらへんでは最大級の店だからね」

 

 これが……未来の神姫ショップ……。すごい! 桃源郷だ! くっそう、こんな身ではオーナーにはなれない……それが悔しい! が、エアリアルパーツで戦うのも何だか燃えてくるものがあるぜ!

 俺が1人テンションを上げまくっていると、武器コーナの試用台に下ろされた。

 

「なんぞ?」

 

「いや、お金も結構あるし、早速武器を選んでもらおうかと思ってさ」

 

 ご主人はそう言うと、1挺のスナイパーライフル……いや、これは対物ライフルか? とにかく、随分安そうな作りをしたものを俺に渡した。

 

「コレちゃっちいね……。本当に実戦にもつの? ご主人様」

 

 そう言ったら頭をかきながらご主人はその銃をヒョイッと取り上げた。

 

「やっぱりそうかぁ、わかっちゃう?」

 

「わからいでか」

 

 また別な武器を物色しながらご主人は弁解するような口ぶりで自分のチョイスを覆い隠す。

 

「いやさ、それ¥3,980で安かったからどんなものかって思ったんだけど、やっぱり純正の方がいいかな……」

 

 すると後ろから、店に入った直後に別れたきりだった鈴木が顔をのぞかせた。

 

「最初は純正にしとけー。ってか、ここのコーナーよりもセットパーツを一式買ったほうがいいぞ? 運用思想が統一されてるから、やりやすいと思うし」

 

 そう言うと、俺たちをシリーズ武器のところまで案内してくれた。

 

「防具も入ってるからな。ここらへんから選ぶといいよ。俺としてはそうだなぁ……。アルトアイネスなんかいいんじゃないか?」

 

 ご主人はアルトアイネスのパッケージを見つめて――

 

「これに決め」

 

「決めるなっ!」

 

 いそいで俺は遮った。

 

「オ…私の戦闘適性はインファイトシューターでしょ!? だったら素直にアーンヴァルとかウェスペリオーとか選んでおけばいいのに!」

 

 ご主人もそうだったね、と俺のステータスを思い出しているようだ。

 

「うーん、今後のことも考えると、費用は抑え目にウェスペリオーにしとくべきだね。それに追加で補助ブースターと拳銃か小剣か……ってチョイスじゃないかな?」

 

 脇で見ていた部長も俺のアイデアに賛成を送ってくれる。

 

「なら、当面のパーツはウェスペリオーメインで行こうと思います。追加ブースターは……バラ売りのウェス子パーツで。あとは……小剣“ハダル”でどうかな?」

 

 ……本音としては、ストラーフmk2型の装備が欲しいところだけれど。かっこいいんだよなぁ、アレ。

 結局ウェス子装備+αを買って今日は解散ということになった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「ようやくっ! オっ……私にも武装が! これで空が飛べるよ、この空をッ!」

 

 俺は家についてからというもの楽しみで、辺りを踊り歩いていた。

 

「空をッ! 飛ぶのッ! デス!」

 

 ポーズをつけて、ビシッとご主人を指さす。

 

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「そうだね、僕も楽しみだよ……でも。その前にクレイドルで充電ね。もう残量少ないでしょ?」

 

 ギク。今日は調子に乗って動き回ったからなぁ……。

 チクショウ、ならば明日こそ!

 ……こんなに興奮して明日を楽しみにするなんて、いったい何年ぶりだろうか。童心を取り戻したかのような気分の今、少しは神とやらに感謝してもいいかもしれないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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