武装神姫 ~Je vous aime à jamais~ 作:冬沢 紬
俺が空中でポーズを決めた時だった。二人の闖入者によって扉が押しのけられたのは。
「こんにちは、みなさん」
「こんちわッス!」
片方はタレ目とロングヘアーが特徴の、優しそうな……先輩だ。襟章からして、間違いない。胸でかいな、くそ、俺だって……って違ぇ! 俺は無くていいの! いや、あるけど……。
不毛だ、やめよう。
まるで使い切った絵の具チューブみたいな溜息を吐いてから、スイーッと空中を滑空してご主人の頭の上に着地する。
もう一人の、特徴的な語尾の娘をじーっと見つめてみる。ボブカットが活動的な印象を与える、背の低めな娘だ。小さいころは男の子と間違えられたんじゃないかというほど、雰囲気が、こう、なんというか……異性を感じさせない。きっといい友達になれるだろう。
ご 主 人 が な !
はぁ、とひとつため息をつくと、ご主人の頭を小突いた。
「ほれ、挨拶だz……挨拶しなきゃダメでしょ?」
あ、うん、とご主人が返事するより早く、ボブカットの娘が話しかけてきた。
「1年生ッスか! おお! 待望の同学年がついに!」
テンション高ぇ……。外見を裏切らない君の性格に乾杯。
「私、
鈴莉? へぇ、よく似合ってるじゃないか。
俺はそんなことを考えながらご主人の自己紹介を聞き流していた。
「次は私の番ね。私の名前は
そう言った後カバンの専用ケースから出てきたのは、騎士型のサイフォスだった。起動するとサフィは見事な一礼をし、マスターの傍で直立不動の体勢をとった。
「そういえば、結城君の神姫って何ッスか? ウェスペリオーの装備っすけど」
「そうね、私も見たことがないわ」
2人が口々に疑問を吐き出す。それはそうだろう。この世に2人といない、
「赤鬼型ディルージュ。それが、ワタシさ」
「うん、ユカリっていうんだ、かわいいでしょ?」
(そっちなの!?)
俺はそう心の中で叫ぶと、
灯ねぇ……。そうか。いいや、アダ名を考えるのも面倒だし。灯って呼ぼう。
自己紹介は済んだかい? と部長が近づいてくる。
「あれ? 滝乃さんは?」
聞かれた灯は、困ったような顔をしながら自分の両手を組んだ。
「いくら仲良しだからって、いつも一緒にいるわけじゃないわよぉ」
「あはは、そうだね。で、何か用事?」
「うん、よく知らないけれど……」
部長たちがそんな話をしているのを見ていると、鈴莉が鈴木に……あーもう、
「かっこいいッスその神姫! みしてもらって良いっすか?」
「うん、いいよ。あと、別に敬語じゃなくてもいいよ。僕たち同級生なわけだし」
鈴莉は頭をかきながらアハハー、と笑った。
「こういう口癖で、どうにも治らないッスよ。ま、キャラ付けだとでも思って欲しいッス」
キャラかよ。自然と作り上げたキャラ……なかなか手ごわいぞ、こいつは。
……何がだか。
俺はご主人にパーツを外してもらうと鈴莉に近寄った。
「先に言っておくけど、『みぎぃ』って握っちゃだめだからね!」
「あはは、どこの鬼畜ッスか、それ」
そう言って俺を持ち上げ、くまなく観察する。何だか恥ずかしい。巨人の女子高生の掌の上でじろじろと見られる……なんだか妙なシチュエーションだよ……。変な方向に目覚めてしまいそうだ。いやいや、特殊すぎるだろ、考え直せ。
「オリジナル神姫……凄いッスね! 人は見かけによらないもんッスね!」
「……『悪意が無いということは、時として最大の悪意となりうる』」
「ユカリ、フォローありがとう……」
その空気で気付いたのだろう。地雷を踏んでしまったと。
「す、すまなかったッス! 私、てっきり結城君が作ったものと……」
俺は溜息をひとつつくと、話し始めた。俺がご主人の物置から見つかったこと。前のオーナーの記憶や記録が無いこと、主武装が壊れていること、そして超ピーキーな性能のこと。
それを聞いたら、鈴莉はひょいと顔を上げた。
「それなら、私に顔馴染みの神姫関係のスタッフがいるッス。掛け合てみるッスか?」
ご主人は、迷わなかった。
迷わずに首を横に振った。
「ユカリは、僕の神姫だ。だから、修理も僕が勉強して直してあげなきゃいけない。それが僕のオーナーとしての責務ってもんでしょ?」
そうか。お前が直してくれるのか、俺の装備を。なら、待つさ。何年かかろうが直してくれよ。
「なら、早くしてくれよ。直る前に優勝したっていうんじゃ、ちょっと華が無いじゃない?」
それを見て、鈴莉も笑顔になった。
「言ってくれるね、ユカリ」
「私も忘れないでほしいッス。私だって頂上を目指すならライバルの1人ッスよ!」
お互いにそう言ってニヤリと笑みを交わしたときだった。部長が今日の活動を発表したのは。
「今日は、外に出ようか」
「……? どういうことです?」
「神姫センターで、バトルしに行こうってことだよ」