武装神姫 ~Je vous aime à jamais~   作:冬沢 紬

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9th Ride

 

 

 

 

 

 

 俺が空中でポーズを決めた時だった。二人の闖入者によって扉が押しのけられたのは。

 

「こんにちは、みなさん」

 

「こんちわッス!」

 

 片方はタレ目とロングヘアーが特徴の、優しそうな……先輩だ。襟章からして、間違いない。胸でかいな、くそ、俺だって……って違ぇ! 俺は無くていいの! いや、あるけど……。

 

 不毛だ、やめよう。

 

 まるで使い切った絵の具チューブみたいな溜息を吐いてから、スイーッと空中を滑空してご主人の頭の上に着地する。

 

 もう一人の、特徴的な語尾の娘をじーっと見つめてみる。ボブカットが活動的な印象を与える、背の低めな娘だ。小さいころは男の子と間違えられたんじゃないかというほど、雰囲気が、こう、なんというか……異性を感じさせない。きっといい友達になれるだろう。

 

 ご 主 人 が な !

 

 はぁ、とひとつため息をつくと、ご主人の頭を小突いた。

 

「ほれ、挨拶だz……挨拶しなきゃダメでしょ?」

 

 あ、うん、とご主人が返事するより早く、ボブカットの娘が話しかけてきた。

 

「1年生ッスか! おお! 待望の同学年がついに!」

 

 テンション高ぇ……。外見を裏切らない君の性格に乾杯。

 

「私、武藤(むとう) 鈴莉(りんり)って言います! 神姫はアルトレーネの『エンネ』ッス。神姫共々よろしくッス!」

 

 鈴莉? へぇ、よく似合ってるじゃないか。

 

 俺はそんなことを考えながらご主人の自己紹介を聞き流していた。

 

「次は私の番ね。私の名前は日乃元(ひのもと) (あかり)。3年で、副部長をしているわ。で、パートナーは『サフィ』よ」

 

 そう言った後カバンの専用ケースから出てきたのは、騎士型のサイフォスだった。起動するとサフィは見事な一礼をし、マスターの傍で直立不動の体勢をとった。

 

「そういえば、結城君の神姫って何ッスか? ウェスペリオーの装備っすけど」

 

「そうね、私も見たことがないわ」

 

 2人が口々に疑問を吐き出す。それはそうだろう。この世に2人といない、唯一(オリジナル)の機体。その名も――

 

「赤鬼型ディルージュ。それが、ワタシさ」

 

「うん、ユカリっていうんだ、かわいいでしょ?」

 

(そっちなの!?)

 

 俺はそう心の中で叫ぶと、二度(ふたたび)空に舞い上がった。

 

 灯ねぇ……。そうか。いいや、アダ名を考えるのも面倒だし。灯って呼ぼう。

 

 自己紹介は済んだかい? と部長が近づいてくる。

 

「あれ? 滝乃さんは?」

 

 聞かれた灯は、困ったような顔をしながら自分の両手を組んだ。

 

「いくら仲良しだからって、いつも一緒にいるわけじゃないわよぉ」

 

「あはは、そうだね。で、何か用事?」

 

「うん、よく知らないけれど……」

 

 部長たちがそんな話をしているのを見ていると、鈴莉が鈴木に……あーもう、裕明(ひろあき)! 鈴木って結構よくいるから裕明でいいや。とにかく、裕明に挨拶をしてこちらに向かってきた。お目当てはやはり――

 

「かっこいいッスその神姫! みしてもらって良いっすか?」

 

「うん、いいよ。あと、別に敬語じゃなくてもいいよ。僕たち同級生なわけだし」

 

 鈴莉は頭をかきながらアハハー、と笑った。

 

「こういう口癖で、どうにも治らないッスよ。ま、キャラ付けだとでも思って欲しいッス」

 

 キャラかよ。自然と作り上げたキャラ……なかなか手ごわいぞ、こいつは。

 

 ……何がだか。

 

 俺はご主人にパーツを外してもらうと鈴莉に近寄った。

 

「先に言っておくけど、『みぎぃ』って握っちゃだめだからね!」

 

「あはは、どこの鬼畜ッスか、それ」

 

 そう言って俺を持ち上げ、くまなく観察する。何だか恥ずかしい。巨人の女子高生の掌の上でじろじろと見られる……なんだか妙なシチュエーションだよ……。変な方向に目覚めてしまいそうだ。いやいや、特殊すぎるだろ、考え直せ。

 

「オリジナル神姫……凄いッスね! 人は見かけによらないもんッスね!」

 

「……『悪意が無いということは、時として最大の悪意となりうる』」

 

「ユカリ、フォローありがとう……」

 

 その空気で気付いたのだろう。地雷を踏んでしまったと。

 

「す、すまなかったッス! 私、てっきり結城君が作ったものと……」

 

 俺は溜息をひとつつくと、話し始めた。俺がご主人の物置から見つかったこと。前のオーナーの記憶や記録が無いこと、主武装が壊れていること、そして超ピーキーな性能のこと。

 

 それを聞いたら、鈴莉はひょいと顔を上げた。

 

「それなら、私に顔馴染みの神姫関係のスタッフがいるッス。掛け合てみるッスか?」

 

 ご主人は、迷わなかった。

 

 迷わずに首を横に振った。

 

「ユカリは、僕の神姫だ。だから、修理も僕が勉強して直してあげなきゃいけない。それが僕のオーナーとしての責務ってもんでしょ?」

 

 そうか。お前が直してくれるのか、俺の装備を。なら、待つさ。何年かかろうが直してくれよ。

 

「なら、早くしてくれよ。直る前に優勝したっていうんじゃ、ちょっと華が無いじゃない?」

 

 それを見て、鈴莉も笑顔になった。

 

「言ってくれるね、ユカリ」

 

「私も忘れないでほしいッス。私だって頂上を目指すならライバルの1人ッスよ!」

 

 お互いにそう言ってニヤリと笑みを交わしたときだった。部長が今日の活動を発表したのは。

 

「今日は、外に出ようか」

 

「……? どういうことです?」

 

「神姫センターで、バトルしに行こうってことだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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