真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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予約投稿またもや出来なかったので
携帯機器からの初投稿
上手くいってることを願う


クローンたちの学園生活

紋白は海斗と別れた後に2−Sにやってきていた。

目的は言わずもがな、義経たちの件である。

 

 

「フハハハ!兄上挨拶に参りました!」

 

「フハハハ!紋!分からないことがあれば何でも聞け!」

 

 

兄との挨拶を交わし、当初の予定通り義経たちのほうへ向かう。

義経の隣には弁慶が立っていたが、なんというか思ったとおり与一の姿はそこ

にはなかった。

紋白にとっても彼は心配の種なのだ。

 

 

「義経、弁慶。クラスではうまくやっていけているか?」

 

「ああ。まだまだこれから友達を増やしていきたいが……。」

 

「私は順調だよ、川神水飲んでても誰にも咎められないし。」

 

「まぁ、兄上のクラスならそうであろうな。あとはやはり与一か……。」

 

「それなんだけどな、紋白!」

 

「おお、どうしたのだ?」

 

 

義経が満面の笑みで嬉しそうに語る。

その様子に紋白も少々予想外で驚いていた。

 

 

「なんと与一が自分から相手によろしくと言っていたんだ!」

 

「ほう、あの与一がか?」

 

 

それは義経たちを誰よりもよく知る九鬼の者にとって信じられないことだった。

昔はそれは素直で優しい与一だったが、今は少しひねくれてしまっていて友達

ができるかなど心配だったのだ。

強引に仲間に引き入れてくれる者でも現れてくれれば僥倖程度に思っていたが、

まさか与一のほうからアクションを起こすなんて考えもしなかった。

 

 

「いやー、ほんともほんと。私もこの目で確認したからね。」

 

 

弁慶も杯を傾けながらしきりに頷いている。

仲間としてよほど与一の行動が嬉しかったのだろう。

 

 

「それで誰なのだ?あの与一と友になったという特殊な者は。」

 

 

こんな様子なのだから嘘をついてないことは分かる。

しかし、それとは別にどうしても信じられないと思う心もあるのだ。

与一が誰かと関わろうとするとはそれほどのことなのだ。

 

 

「流川君だ!」

 

「流川海斗っていうね。なんか2−Fの生徒らしいけど、なかなか面白い感じ

の男だったよ。義経もなんか認めているみたいだし。」

 

「海斗……さっきの……。」

 

「あれ?もう会ったことあるんだ。」

 

「ああ、ついさっきな。しかし海斗か。確かにあいつなら可能な気もしてしま

うのが不思議だ。初めて話したというのに人に好かれる者だというのがよく分

かったしな。」

 

「ん……そうだね。人を惹きつける魅力って言うのかな。そういうのは感じら

れたね。」

 

「流川君のおかげで与一も人と話せて義経はいたく感激した!」

 

「……なら心配はないな。与一もすぐとはいかずともいずれ人の輪の中に入る

ことができるだろう。」

 

 

紋白は予想外に早い問題解決に満足そうだった。

義経たちにも学校生活を送るからにはしっかりと満喫してもらいたいのだ。

そこに一人だけでも楽しめない者がいないほうが嬉しい。

 

 

「あとの一人……葉桜も大丈夫そうだな。今もあそこにいるのだろう。」

 

 

クローンたちも思ったより順風満帆のようだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

―川神学園図書室

静かなそこに噂の彼女、葉桜清楚は佇んでいた。

ただ椅子に座って本を広げているだけなのだが、落ち着いた雰囲気、ぴしりと

伸びた背筋、何より整った顔立ちが多くの男子生徒の目を集めていた。

文学少女好きである彼らの贔屓目を抜きにしても、その光景はまるで絵画のよ

うに完成された芸術であった。

 

そんな図書室がいつもより少し騒がしいのは清楚のせいだけではなかった。

男子生徒だけでなく女子生徒もざわざわと浮かれていた。

その理由は先程図書室にやってきた男子生徒、流川海斗だ。

彼もまた本を読むことが多いので度々図書室は利用する。

とはいっても、清楚のようにここで本を読むことが目的ではなく、本を借りて

好きなときに読めるようにしておくことが主だ。

たまに一年生女子が勉強に困っているのを助けることもあるが、基本長い間と

どまるということはしない。

なので、自ずと話せるチャンスは限られてくる。

今日が当番だった図書委員の女子生徒はひそかにガッツポーズをするのだった。

 

 

「あれ?」

 

 

海斗は本棚に向かうが、目当ての本が発見できない。

そこでカウンターに行く。

 

 

「今日入ってるっていう新刊は?」

 

「あ、はい!そこの葉桜先輩が……」

 

「あー……」

 

 

本屋でよく経験するパターンだった。

買うつもりの本を立ち読みされていて、買わないならさっさと自分に譲れと思

うあれだ。

しかし、図書室の場合そんな文句を言うわけにもいかない。

読み終わるのを待つ、もしくはまた別の機会にと考えた海斗だったが……。

 

 

「ごめんなさい、これだよね?」

 

「あ?」

 

 

どうやらやり取りが聞こえていたようで、振り返ると清楚がすぐそこに立って

本を差し出していた。

海斗としては接触するつもりはなかったのだが。

というのも……

 

 

「ちょっと顔そらすな。」

 

「ええっ!……ど、どうしたの?」

 

 

海斗が顔を固定して瞳を至近距離で覗き込む。

清楚は突然のことに何がなんだか分からず、顔を赤くして慌てている。

ただ言われたとおり、顔はそらさずに目だけ背けているのが律儀だ。

 

 

(やっぱり何も隠し事をしているようには見えない……。なら、あれはただの

勘違いだったのか?)

 

 

そう、気になっているのはこの前の全校集会のときに感じたもの。

結局分からずじまいだったのだが、今こうしてみてもやはりあのときの違和感

の正体を掴むことは出来ない。

逆に今思えばあれが夢であったかのようだ。

 

 

「……そ、そろそろいいかな?」

 

「あ?ああ、悪い。」

 

 

清楚は恥ずかしそうにしながら、一歩離れて距離を置く。

 

 

「流川海斗君だよね?」

 

「ああ、そうだけど……どうして俺の名前を?」

 

「そこに出てる図書カード見れば分かるよ。いっつも私の読む本に先回りした

ように絶対名前が書いてあるから、どんな人かなって思ってたんだけど君だっ

たんだね。」

 

「あー……」

 

 

確かに結構多くの本を読んだが、ほとんどの本で見たとなると本の好み自体も

相当似ているのかもしれない。

まさか本に入っているカードで名前を知られていたとは。

 

 

「今日こそは新刊だったから初めて海斗君より先にと思ったんだけど、また全

部終わらないうちに先越されちゃうみたい。」

 

「別に俺が後でもいいぞ。」

 

「うそうそ、もう慣れすぎて海斗君の名前がない本を読んでるのもなんか安心

できないしね。」

 

「じゃあ、借りてくけど。」

 

「うん、でも読み終わったら教えてね。私はたぶんここにいるから。」

 

「分かった、じゃあな清楚。」

 

「またね。」

 

 

手を振るその姿も可憐。

色々な意味でレベルが高すぎる二人に誰も割り込むことはできず、ずっとその

やり取りを眺めているだけだった。




清楚なあの子も……
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