「仕掛けさせてもらうか」
海斗は最初の攻撃と同様ステイシーに向かって走り出した。
しかし最初とは全くと言っていいほど異なっていた。
「速すぎんだろ……!」
「く、援護に……っ!」
海斗は目にも止まらぬ速さでステイシーに接近しながらも、放ったクナイで李の動きも牽
制していた。
そして厄介なコンビネーションを封じた状態で近づいたステイシーに連撃をくらわせる。
ステイシーもなんとか反応して攻撃をさばいていった。
(ファック、このままじゃジリ貧だな)
回避と防御を織り交ぜながら海斗の攻撃を受け続ける。
この状態を続けていても埒が明かないと分かっていても反撃のチャンスは訪れない。
横に動き振り切ろうとしても、後ろに逃げ間隔を空けようと試みても海斗は全く姿勢を崩
さぬままステイシーに張りつく。
(でも防ぎきれないわけじゃねぇ!)
思えば海斗は李とステイシーの参戦以前から戦っていたのだ。
自分が追い込まれていくビジョンが見えていたが、海斗のペースのほうが落ちるのが早い。
これなら反撃も……
「っ!?ステイシー、ダメです!」
「なっ!」
気づいた時にはもう遅かった。
ステイシーの左足をついていた地面が蟻地獄のようになり、ステイシーの脚を飲みこむ。
「なんだこれ、足がとられて……!」
「くっ、おかしいとは思ってましたが」
李は先ほどから言い知れぬ不信感は抱いていた。
というのも海斗がステイシーを攻めきれないわけはないのだ。
いくら疲労がたまってるとはいえ海斗から仕掛けてきていてあんなにもたもたするわけと
は考えられない。
そして海斗が何か技を使うモーションを見せたときにやっと気づいたが時すでに遅し。
見事に罠にはめられた。
「こんな技、いつの間にやってやがったんだ!」
「さっきステイシーに蹴りを入れたとき……あの地面に手をついたときですよ」
「ハァ!?」
あの最初のやりとりで既に仕込んでいたのだ。
そしてさっきまでの攻撃はステイシーに防御と回避をさせながら、所定の仕掛けの場所へ
と誘い込んだのだ。
あの修練を積んだ武闘家ですら称えるような回し蹴りも海斗にとっては伏線のひとつにし
か過ぎなかった。
海斗の合図でもう片足も同じように固定され完全にステイシーは動けなくなる。
「クソ、動けねぇ!李、冷静に解説してねぇで早く私を助けろ!」
「私が戦闘中にただ解説をしているだけだと思いましたか」
「おお!」
流石、李だ。
分析して相手の気を逸らせつつも何らかの手を講じていたなんて。
一体、どんな策を……
「私も先ほど捕まってしまいましたから助けに行けません」
「ファーーーーーッック!!!!」
道理で暢気に解説をしている余裕があったわけだ。
体を動かせないから口を動かしていたまでのこと。
ステイシーにしてみればとんだ期待外れもいいとこだった。
李の足元を見るとステイシーと同じように蟻地獄に捕まっている。
しかし李が立っている地面には海斗は触れていない。
ならば何故こんなことになっているのか。
それは先ほど海斗が投げたクナイのせいだった。
李がクナイをはじき自分の周りの地面に落としたところで技が発動したのだ。
直接触れずともクナイ数本を媒介として。
李は海斗の実力を知っているのだから、考えなしに海斗の用意した武器をはじいて落とし
てしまうという事態は回避できたかもしれない。
そうさせなかったのはあの攻撃がステイシーへの高速移動の最中に放った単なる牽制のア
クションでしかないと思わされたことだ。
(一瞬……でしたね)
通常、たとえ選択を誤りクナイを落としてしまったとしても術発動の気配さえ感じ取れれ
ば捕まる前に対処することも可能だ。
しかし海斗相手に前準備を成功させることを許してしまえば、技の発動までにはコンマ一
秒の余裕すら与えられない。
「なんとかこれで無事二人捕まえられたわけだが……少し話がある」
そう言って海斗は二人の耳に顔を近づけた。
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「数が多すぎるっ!」
百代は苦戦を強いられていた。
普段ならなんともない相手だが、自分の力が制限されたうえでの多対一がこれほどキツイ
ものだとは思わなかった。
武神としての戦闘センスをもってなんとか耐えているものの連携もよく取れた九鬼の従者
部隊をこれ以上相手していれば危険だというのは感じ始めていた。
(私が負ければ海斗まで……)
「オラ!」
「なんだっ!?」
百代に迫る敵を吹っ飛ばしたのはステイシーだった。
「あまり不用意に動かない方がいいかと」
百代に近づく敵をとどめているのは李だった。
「悪い、助けに入るのが遅くなった」
そして百代の前に守るように立つのは海斗だった。
海斗、李、ステイシーの三人が百代を囲うように立つ。
「こっからはフォーマンセルだ」
感想も少なくなってきたのでモチベーション維持を頑張りつつ書いてます。
需要がないものを書いてても仕方ないんですけどね。