真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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感想でヒュームまで原作より強い気がするとありましたが、
自分でも確かに少し強化してたかもしれませんね。
というか原作のヒュームはまだ本気出してないだけで
海斗という相手がいるからこそヒュームの本気が見れるということで。


フィニッシュ

「俺の真剣見せてやるよ」

 

「この期に及んでまだ本気を出していないなどというつもりか」

 

 

確かにまたあの錠剤を使うことで気は増幅している。

しかしこれ以上強くなることなどそうそうないだろう、そう思っていた。

 

 

「とりあえず自分で巻き込んじまったら世話ないからな」

 

 

海斗が百代たちのほうに手を向ける。

 

 

「天陣」

 

 

突如百代たちの前に気の壁が現れた。

突然のことに驚きを隠せない。

 

 

「アン?なんだこのべらぼうな防御壁は」

 

「これは……天陣。川神院の修行僧たちが数十人がかりで完成させる結界術だ。それをた

った一人、しかも一瞬で……」

 

 

恐らく強度も数十人で発動させたものに遜色ない、いやそれどころか遥かにこちらの結界

のほうが強いことは肌で感じた。

 

 

(海斗……あれだけの気を消費して大丈夫なんですか)

 

 

李はただ一人大技を繰り出し続ける海斗の体を心配していた。

 

 

「これで憂いはなくなったわけだ」

 

「何を……」

 

 

海斗はあいさつがわりに真正面から正拳を放つ。

ヒュームも直線的な攻撃にやられるわけもなく蹴りで相殺するが……

 

 

(こいつ、さらに速く……!)

 

 

それだけではない。

相殺はしたものの海斗がまだ力をセーブしていることをヒュームは実力者としての直感で

感じ取っていた。

その危惧はすぐに現実へと変わった。

 

 

「川神流・雪達磨」

 

「しまった……っ!」

 

 

接触しているヒュームの足が凍らされていく。

相殺して受け止めたことは失敗だった。いや、違う。

海斗が力を抑えて相殺になるようにしたのだ、お互いが触れた硬直の時間を作るために。

弾き飛ばすことでは後につながらないから、わざと力をセーブした。

 

 

(足で対応したのは失敗だったか……)

 

 

機動力は下げられるうえヒュームが主とする攻撃手段だ。

一度態勢を立て直す必要がある。

 

 

(手で牽制しつつ後退するか)

 

「『スタン』」

 

「ぐぅっ!」

 

「考えてることくらい分かるぜ」

 

 

今度はヒュームの両腕が電撃を受ける。

足は凍らされ、腕は痺れている。

動きとしてはほとんど制限されている状態だ。

 

 

「これでも不安だからな、念には念を入れさせてもらう」

 

 

海斗が足をバンと床に打ちつけるとヒュームの足元に蟻地獄が発生した。

加えて変形した畳返しもヒュームを囲い拘束する。

 

 

「まだだ、リング」

 

 

スタンで電気の属性を帯びた大きめのリングがヒュームの体に巻きつき縛る。

 

 

「くっ、ここまでして何をするつもりだ」

 

「タフな爺さんと長々やりあうのはごめんだからな。一発で終わらせる」

 

「確かに大層な拘束ではあるが、まだお前に俺を一発で仕留める程度の気が残っているの

か?あれだけ技を繰り出してしかもこの錬度。底をつきてるのは明白だ」

 

 

なにせ最初に天陣まで発動しているのだ。

現時点でありえない消費なのだがそれはヒュームとしてもドーピングのせいと無理やり納

得するしかなかった。

しかしこれで流石にガス欠……

 

 

「……気力回復」

 

「おいおい、冗談だろう……流石の俺でも予想外だぞ」

 

 

気力回復、聞いたことのない技だ。

コピーではないオリジナル技だろうがやっていることはすぐに分かった。

何も攻撃を加えていないのに今まで見えなかった傷や疲労が見えてきた。

つまり、気力回復とは瞬間回復の手順をひっくり返したもの。

自分の体力を削ることで無理やりに気力を上げた。

もうありえないという現実逃避にも飽きてしまった。

海斗は百代たちと同じ種類の化物レベルだ。

 

 

「―『フィニッシュ』」

 

 

信じられないはもう今更使う気にもならない。

燕が最後に見せた大技、それを海斗は発動しようとしている。

あれは衛星でチャージされた莫大な力を借り、九鬼と松永久信の技術を結集した平蜘蛛を

媒介として初めて行える奥義だ。

とはいえ、やはりあれだけの大技となれば溜めるのには時間がかかる。

そこでこの厳重すぎる拘束というわけだ。

 

 

(くそ……物理的拘束だけならすぐに解けるが電撃がいい具合に気の行使を邪魔してくれ

るな……!)

 

 

ヒュームが力づくで拘束を解くのが先か、海斗が力を溜め終わるのが先か。

勝負は単純な競り合いへと帰着した。

 

 

――

 

 

「海斗、あそこまでの力を……」

 

 

百代は驚愕していた。

強いとは分かっていてもあのヒューム相手にあそこまで優勢でいるなんて。

それにさっきから思っていたが燕の技ばかり使っている。

 

 

(私が苦戦した技でヒュームを追いつめるか……気を遣われているのか、傷をえぐられて

いるのか……)

 

「どうですか、海斗は凄いでしょう?」

 

「なんで李が偉そうなんだよ」

 

 

メイド二人はもはや海斗の実力を心配などしていなかった。

 

 

「それにしてもこの絶対防御に入れられていると暇ですね」

 

「ああ、残党勢力も全く歯が立ってないしな」

 

 

さっきから周りで破壊を試みているが結界が揺らぐことは全くない。

 

 

「それでは何か話でもしてますか。私のダジャレ100連発を……!」

 

「あー、はいはい。マジでいいから」

 

「なら、そうですね。ステイシーは海斗のこと好きなんですか?」

 

「ハァ!?いきなりなんつー話題に飛んでんだ!」

 

「いいから誤魔化さないで答えてください」

 

「あんな奴、ただの部下に決まってんだろ!それ以上でもそれ以下でもねぇ!」

 

「そうですか、残念ですね。海斗はステイシーのこと気になるって言ってましたけど」

 

「へ、え、あの……えっと///」

 

「ジョークです」

 

 

ブチッ、と。

そんな音が聞こえた気がした。

 

 

「テメー、李!私をからかいやがったな、許さねー!オラ!」

 

「おっと」

 

 

―ブーーーーーー

 

 

「「「あ」」」

 

 

けたたましくブザー音だけが響き渡った。




なんというコメディ的結末。
感想で戦闘激しすぎてブザー鳴りそうとかありましたが、鋭いですね。
一応それも選択肢の一つでした。
こんなオチにしたのはどこか私の中でヒュームと海斗の間に
明確な不等号を置きたくないというのがあったかもしれません。
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