真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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しおらしいステイシーって可愛いんじゃないかと


嘘つき

「まったくこんな終わりになるとはな……」

 

 

ヒュームがメイド二人の顔を見てため息をつく。

二人も場を支配する気まずい空気に顔をあげられない。

 

 

「あの……悪かったよ、海斗」

 

「私も少し気を抜きすぎていました」

 

「二人とも気にすんなって。実は俺も最後の技ははったりだったからな。あんなもん撃て

やしないから、気を溜めてごまかしてただけだ」

 

 

海斗は笑いながら二人を責めるようなことはしない。

むしろここまで百代を守ってくれたことに感謝している。

 

 

「俺としてはこれ以上なく不服な終わり方だったんだがな……」

 

 

ヒュームの威圧するような雰囲気から海斗が二人をかばう。

 

 

「で、結局卒業試験は不合格か。また一週間とか残留すればいいのか?」

 

「フ、心配するな。俺を引きずり出した時点で試験は合格していたようなものだ」

 

「引きずり出したというか、自分で勝手に出ていったんでしょう」

 

「一言余計だぞ、クラウディオ」

 

「フフフ、ヒュームが子どものようにはしゃいでいるからですよ」

 

 

クラウディオは終始笑顔で言う。

力を存分に出しきって戦っていたヒュームを見れたのが嬉しかったのだろう。

ヒュームが全力を出せる相手などそうはいない。

 

 

「てことはなんだ、無事卒業でいいのか」

 

「フハハハハ、そういうことになるな。よくやったぞ、その強さしかと見せてもらった」

 

「フッハハー、海斗ー!我は信じていたぞー!」

 

 

紋白が走る勢いそのままにダイブしてくる。

受け止めると体のまわりをぐるんと一回転して着地する。

 

 

「こうしてはおれんのだ!今すぐ卒業パーティの準備をするぞ、海斗また後でなー!」

 

 

紋白は一刻も早く準備をしたいのか、すぐに走っていってしまった。

まったく元気が有り余っているという表現がふさわしい主様だ。

 

 

「そうか、合格か……ははっ。そう考えたら安心して力が抜けるな」

 

「ってオイ!」

 

 

崩れそうになる海斗の体を咄嗟にステイシーが支える。

 

 

「あれだけ気を使って体を酷使していれば当然です。早く休んでください」

 

「いいぜ李。こいつは私が責任もって医務室まで運ぶからよ」

 

「……そうですか。ではお願いします」

 

 

李はステイシーに海斗を任せると決めると道をあけた。

 

 

「フン、情けないな」

 

「ヒュームもちゃんと休んでくださいね。相当な無理をしてるんですから」

 

 

実際海斗は気を使いすぎたことで疲労気味なのだろうが、単純な被ダメージだけでいえば

明らかにヒュームのほうが多いだろう。

 

 

「では行きましょうか」

 

 

クラウディオや揚羽たち全員がその場を後にしていく。

最後尾にいるのは李、他の後に続こうとして踏みとどまる。

一人残った李は海斗が戦っていた付近まで歩いていく。

 

 

「……これですね」

 

 

そして海斗が一気に使ったときに零れ落ちたと思われる白い錠剤を拾い上げた。

それを服の中にしまおうとして……

 

 

「随分と彼のことを想っているのですね」

 

「っ!クラウ爺」

 

 

いつの間にか皆と一緒に去ったはずのクラウディオが李の背後に立っていた。

 

 

「しかし証拠隠滅を図るのは感心しませんね。いくら李の想い人とはいえ、それを調べて

違法な薬であったら見逃すわけにはいきません」

 

「海斗はそんなことしません!」

 

 

李は珍しく感情を高ぶらせて叫んだ。

海斗はそういう誤解をされるのには出身を知る李としては耐えられなかった。

尊敬するクラウディオに海斗をそんな風に思ってほしくなかったのだ。

 

 

「ならばその薬を渡してくれますね、無実を証明するためにも」

 

「いえ、それは……」

 

「何ですか?彼を信じているのでしょう。合法なドーピング薬であれば別に戦いの最中に

服用したことを咎めるつもりはありませんから安心なさい」

 

 

李はそれでも渡すことはできなかった。

渡せない理由があった。

勿論海斗の罪をかばっているなどでは決してない。

 

 

「…………」

 

「何が彼のためになるのかよく考えなさい、李。悪人の道から正しい方向に修正すること

もまた愛情です」

 

「…………分かりました」

 

 

李は大人しく白い錠剤を手渡す。

これで海斗に疑いがかかってはそれこそ李の本意にはそぐわないものだ。

 

 

「では私は海斗の容態が心配なので見てきます。あと……、」

 

 

李はいつも通りのクールな口調、それでいて口角を少しあげて

 

 

「海斗は嘘つきですが、悪人ではありませんよ」

 

 

李はそれだけ言うと海斗のほうへ向かってしまった。

何をあそこまでして隠したかったのか。

クラウディオは何粒かある錠剤の一つを取った。

そして親指と人差し指を使って握りつぶすと、粉末状のそれを一舐めした。

 

 

「ム、これは…………なるほど。これは確かに大層な嘘つきですね」

 

 

懐かしいような安っぽい味わい。

咀嚼した後に残るパサパサとした口当たり。

 

 

「やれやれ、これは証拠品としては使い物になりませんね」




もう察した方が大半ですかね。
あと李の嫁感が半端ないですが作者の趣味なので気にしないでください。
気にしたら負けです。
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