この季節体調管理は気をつけましょう
医務室、部屋の中には海斗とステイシーの二人だけ。
「ったく、簡単にスタミナ切れになってんじゃねーよ」
「…………」
「なんにも応えねーのかよ。…………寝たのか?」
「…………」
あれだけ気を消費して疲弊した状態でベッドに入れば誰でも眠るか。
それにしてもこんなに無防備な海斗を見るなんて、
「こいつ、やっぱ強いんだよな」
今時男よりも強い女なんて珍しくない。
並の武闘家を凌駕する強さ、メイドという立場。
守られるよりも守るというのがステイシーにとっての自然だった。
自己解決が当然の世界で頼れる男なんて意識したことがなかった。
「しかも、結構顔もロックでやがる」
いきなりステイシーと呼び捨てにされたこと。
適当なくせにちゃんと女扱いしてくること。
「……生意気なんだよ」
海斗の顔を覗き込むように眺め続ける。
下手をすれば顔の一部が触れあってしまいそうな距離だ。
現にステイシーの髪が重力によって海斗へとかかっている。
「…………」
海斗の呼吸が聞こえる。
今なら……
「海斗、調子はどうですか」
「どわぁーーーっ!」
突然の侵入者に慌てて飛び退くステイシー。
開いたドアからは李が何をやっているのかという目で見ている。
「いきなり入ってくんじゃねーよ!心臓飛び出すかと思っただろうが、ノックくらいしや
がれ!」
「なるほど。ノックをしなかった結果、ステイシーが飛びノックということですか」
「あー、もういいから」
「今のはなかなか良かったと思うんですが」
李のギャグがステイシーにウケる日はまだまだ遠いようだ。
「どうやらステイシーの一世一代の決断を邪魔してしまったようで」
「いや一切邪魔されてねぇ、つーか決断なんてしてねぇ!」
「かなりの至近距離まで迫っていたように見えましたが」
「あれは……なんかまつ毛にごみがついてたからでだな」
「顔もロックなんでしょう」
「李、てめぇしっかりドアの向こうで聞いてんじゃねーか!」
「静初、そんなにからかってやるなよ」
「ってお前も起きてるんかい!」
いきなり会話に参加してきた海斗にステイシーが全力でつっこむ。
「寝てるなんて一言も言ってないんだけどな」
「一言もしゃべってないから寝てると思うんだろうが……。ん?待てよ、海斗まさか私が
独りで色々言ってたこと聞いてないよな……?」
「安心してくれ」
「はぁ、よかっ……」
「俺は一睡もしてない」
「ファーーーーック!」
―ゴツン
「ステイシー、怪我人にヘッドバット決めるメイドがいますか!」
「うるせぇ、記憶をブッ飛ばすためにはこれしかない」
「海斗、大丈夫ですか?」
「俺は平気だ。むしろステイシーは痛くないか?」
「私の心配してんじゃねぇーーー!」
ペースが乱されっぱなしのステイシー。
もちろんこんなことは海斗以外にはなかったことだった。
「フフ……」
李も静かに笑みをこぼす。
そこでノックが鳴った。
「すみません、入りますよ」
入室してきたのはクラウディオだった。
クラウディオが入ってきた瞬間、李が表情を変えた。
「少し彼とお話がありますので席を外してもらえますか」
「アァン?なんだってんだよ」
「……海斗、すみません」
ステイシーは渋々、李は申し訳なさそうな顔をして部屋を出ていった。
部屋には海斗とクラウディオと二人になる。
「先ほどの試合はなかなかのパフォーマンスでしたよ」
「そりゃどうも」
「ヒュームと相手をしてどうでした?」
「それはベッドに寝ている男に聞くことか」
「フフ、あなたは嘘つきだと聞いたもので」
「嘘つき?」
「驚きましたよ。あの錠剤を口に入れた瞬間、気の量が増幅したり、気の質が変わってい
たりしたのでてっきりそういう効果のある薬なのだと誤認させられました。まさかあれが
全て気をコントロールしたうえでの演技だったとは」
「おいおい、何の話だよ」
「ラムネ、頂きましたよ」
「…………なるほど」
「ちなみに李は必死に隠そうとしていましたよ。私が無理やりに暴いただけですので」
「別に説明されなくても静初のことは信頼してる」
「フ、絆は確かなようですね」
少しの沈黙が流れる。
次の瞬間だった。
海斗が頭を落ち着かせていた枕に刃物が刺さっていた。
「穏やかじゃないな」
「どうやら疲れているというのは嘘じゃないようですね。それにしても最小限の動きで攻
撃を回避しているのは流石といったところでしょうか」
海斗は少し頭をずらして攻撃を回避していた。
「そんな確認のために命狙われるのはハイリスクすぎるだろ」
「あなたが避けなかったら寸止めするつもりでしたよ」
「それであれだけ本気の殺気を出せるのか、流石九鬼の執事は違うな」
クラウディオは刃物をしまうと
「ありがとうございます、あれだけ楽しそうに戦うヒュームは久しぶりに見ました。これ
からもよろしくお願いしますね」
「俺の身体がもつか分からないけどな」
老執事はにこやかに笑う。
「送別会、楽しんでください」
もうごめんなさい。
時間なかったのでろくに推敲とかしてません。
前半のステイシーの可愛さに命かけてます。
それだけです。