そうやって李さんに叱られたいです。
すっかり夜になった川神院。
依然として百代は海斗に寄り添っていた。
「落ち着いたか?」
「うっ……いつまで人の頭を撫でているんだ……」
「いつまでって、百代が安心できるまでかな」
「っ……お前はずるいな」
「何がだよ」
「あれだけの強さを見せつけておいて、勝負が終わればそうやって優しくする。こんな女
の子扱いされるのは、その、慣れていないしだな……」
「別にいいだろ。現状、百代は俺より弱いんだ。最強の美少女を女の子扱いできるのは俺
だけだろ?」
「なっ……!」
百代の顔がさらに熱くなった。
冗談まじりで自分のことをよく美少女とは言うが、他人から面と向かって言われるとここ
まで恥ずかしいものだったとは……。
強さゆえに女の子扱いなどされることはほとんどなかったが、今はそんな自分より強い者
の腕に抱かれている。
置かれている状況を改めて考えて、心がとても満たされていることに気がついた。
前に一子と話した時のことを思い出す。
~~
「お姉さまが海斗と戦いたいのは本当だと思うわ。でも、その本当の目的が何かまで見
えてない」
「ワン子が私の気持ちを分かるっていうのか?」
「分かるわ、他でもないアタシだからこそ」
~~
今なら百代自身にも分かる。
自分の本当の目的も、一子から向けられた真っ直ぐで真剣な瞳の意味も。
自分は海斗と“戦い”たかったわけではない。
戦うだろうが理由は何でもいい、“海斗”に会いたかったのだ。
エキシビションマッチで海斗の強さの片鱗に触れ、少なからず惹かれた。
その優しい人間性は接することで分かっていたし、一子をはじめとするファミリーの女子
たちからも海斗の色よい話題は尽きなかった。
そんな感情が積もりに積もって確かな形を作り上げていたのに、自分の中で整理も理解も
追いついていなかったからもやもやして、戦闘衝動と決めつけてしまっていたのだ。
しかし改めて実力の差を見せつけられて、そのうえこんなに至近距離で介抱されたら自覚
しないでいれるはずがないだろう。
「ファミリーの中では私が最後の砦だったんだがな……」
「ん?何か言ったか」
「海斗は女の敵だと言ったんだ」
「なんでだよ……」
「自覚ないところが本当に天然たらしだよな。しかし、私も気をつけていたのにその毒牙
にまんまとかかってしまったわけだ」
「相当に誤解されそうな言い方だ」
「他の誰にも見せたことのない女の部分を半ば強引に引っ張り出されたんだ」
今まで海斗の腕の中で大人しくしていた百代がばっと海斗に抱きつく。
「責任とってもらうにゃん♪」
「責任ってなんだよ」
「なんだかんだ海斗は競争率高いからな、ここで一気に前進してしまうという手もある」
「どういう意味だ……って」
百代と至近距離で視線がかち合う。
その距離は相手の吐息や鼓動が感じられるほどだ。
そんな状態で百代の顔がさらに近づいてくる、そして……
「ダメーーーーーッ!」
「おおっと」
物凄い速さで何かが近づいてきたかと思うと、海斗の肩をグイッと引っ張った。
結果、接近していた百代の唇は空を切る。
今も海斗の肩に手を置いている阻止した張本人は他でもない一子だった。
「お姉さま、行動が早すぎるわ!」
「私は即断即行タイプなんだ」
「海斗の気持ちも考えて!」
「考えるのは、海斗じゃなくてワン子の気持ちだろう?」
「うっ……それは」
「…………ふっ。気づけたぞ、私自身が気づかなきゃいけないこと」
「分かってるわ、これでお姉さまもアタシと同じ競争相手」
「わざわざ敵を増やすとはおかしなことをするなぁ」
「武道じゃお姉さまにはまだまだ全然敵わないけど、アタシこの勝負じゃお姉さまにも、
他の誰にも負けるつもりはないから」
「私も勝負事なら勝ちを譲る気はない」
姉妹はバチバチと視線で火花を散らす。
言いたいことを言い、真正面から向き合うその姿は微笑ましくもあるのだが……
「俺を挟んで繰り広げないでくれ……」
二人の大きさの違う胸が当たって悩ましいのだった。
最近体調崩してしまって折角の時間を執筆に充てられなかったのが辛いです。
昨日あげられなかったのは本当にただの予約ミスですが。
李さんほんとごめんなさい、「めっ」ってしてください真剣で。
病床で妄想だけはしてました、はい。