真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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久しぶりにあれが……


主導権はあなたのモノ

「海斗クンって私が想定してる数倍モテてるよね」

 

「いや、別にそんなことはないんだが」

 

「……それ、その状態で言うかな」

 

 

海斗はというと、虎子に肩と肩が触れる状態で密着されて何やら指でツンツンされている。

 

 

「レッパダーン!レッパダーン!」

 

 

どうやらつつくたびに出している掛け声から察するにあれは攻撃らしい。

しかし、どう見ても恋人のじゃれ合いにしか見えないのは、燕が海斗を好きだという嫉妬

心だけからではないだろう。

 

 

「まぁ、燕、気にせず水でも飲め」

 

「モモちゃんも当事者だからね。もう絶対海斗クンのこと好きになってるでしょ」

 

「私は前々から目をつけていたぞ」

 

「それは全く違う意味ででしょうに」

 

 

すっとぼける百代にぷんぷんと怒りながらも、出された水を一気に喉に流し込む。

 

 

「む……。これ水じゃないよね、モモちゃん」

 

「こっそり川神水を注文しておいたんだ。私の粋な計らいだぞ」

 

「いくらノンアルコールとはいえ、やりすぎじゃないかな……。ねぇ、海斗クン?」

 

「………………」

 

 

海斗はテーブルを見るように俯いたまま、押し黙っていた。

その前には空になったグラスがある。

 

 

「海斗クン?」

 

 

なんだかよからぬ雰囲気を感じた燕は不安げに海斗に声をかける。

普段の気軽さは出せない、何故だかそんな緊張感があった。

 

 

「ワッ!……ドウシタノ、カイト」

 

 

海斗は前置きもなく、いきなり隣にいた虎子を自分のほうに引き寄せ、膝の上に頭を置か

せるように寝かせた。

そのまま猫の相手でもするかのように頭を撫ではじめる。

 

 

「カイト、ン……」

 

 

最初は突然の事態への戸惑いから抵抗を見せていた虎子だったが、次第にされるがままに

なっていき、遂には完全に身を任せてしまった。

そんな様子を間近で見ていた燕は……

 

 

「何、何コレ!?どうなってるの!?」

 

 

突然の事態に動揺を隠せなかった。

川神水がそうさせたのだとしても、たったの一杯だ。

それでここまで周りの空気もろとも変えてしまうほどの影響力があるのか。

 

 

「燕、こっちに来いよ」

 

「い、いや、私はちょっとお手洗い行ってこようかなーなんて……」

 

 

今の海斗と対峙してはまずいと燕は本能で悟った。

早々と戦線離脱を試みるが、海斗の手がガシッと燕の手首を握り、それを許さなかった。

 

 

「そう言わずにさ」

 

「か、海斗クン、ちょっと近いって……」

 

 

逃げ道をふさがれた燕の眼前には海斗の顔が近づいていた。

普段は頑張ってもなかなか詰め切れない距離。

それを今は海斗のほうから近づかれている。

慣れない状況に恥ずかしさが先行してしまっていた。

 

 

「いつもは自分からキス迫ってくるくらい積極的なのにどうしたんだよ」

 

「いや、あれはその場のノリとかもあってね」

 

「じゃあ今は俺がそのノリを作ってやるよ」

 

「は、え……!」

 

 

有無を言わさず、燕の頬に海斗が手を添える。

それは優しい手つきながら、しっかり燕の顔を固定し、逃がさないという意志が感じられ

るものだった。

 

 

「海斗クン、こんないきなり……」

 

「燕、目を閉じろ」

 

「は、はい……」

 

 

もはや逆らうことは出来なかった。

完全に海斗の言われるがままになっている自分がいる。

燕は目をつぶりながら、近づいてくる海斗の息を聞いていた。

 

 

「……なんてな」

 

「あっ」

 

 

目をあけると、海斗に額を指でこつんとやられていた。

 

 

「顔真っ赤だぞ」

 

「なっ……!」

 

 

その言葉でさらに赤みを増してしまう燕。

いつもは自分がからかう立場なのに、からかわれっぱなしだ。

しかし、不思議と嫌には感じない。

むしろ、海斗にこうして構われるのは嬉しさを覚えるくらいで……

 

 

(私って、こんなにMの部分あったんだ……うぅ、ショックだよん)

 

 

燕はひとりシクシクと落ち込む。

だが感じたことのない感情が芽生えたのも事実だった。

 

 

「さて、次は百代。団子を食べさせてくれ」

 

「なんで、私がそんな命令を聞く必要がある」

 

「なら俺が食べさせてやろうか?」

 

「くっ、思い通りにさせるか!」

 

 

海斗に引き寄せられ、あーんをされそうになることで抵抗を見せる百代。

しかし、その牽制の攻撃なども全て海斗にさばかれてしまう。

 

 

「くそっ……!」

 

「諦めな」

 

「ふあっ……あ、あぁ」

 

 

力によって征服され、百代も思い通りにされてしまう。

武神をあんな風に片手間で扱えるのは海斗くらいのものだろう。

そんな様子を横目に見ながら、まだ息絶え絶えの燕は思うのだった。

 

 

「海斗クン相手に、主導権は無理かもねん……」




個人的にはいつもは余裕を見せてからかってくるのに、いざというときには
されるがままになってしまう燕ちゃんが好きです。
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