真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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不穏なタイトル……


海斗の異変

「まあ、適当に座って座って。」

 

 

弁慶に連れてこられたのは普段使われていない空き教室。

教室といっても机や椅子はなく、弁慶が持ってきたのか座布団が二枚置かれて

いるだけだった。

海斗は言われたとおりそこに腰を下ろす。

 

 

「なんか大変なことになってたみたいだね。」

 

「弁慶がいなかったからだけどな。」

 

「私はここの準備をしてたんだよ。この場所確保するのだって苦労したんだか

らね。」

 

「で、いきなり呼び出して何か用か?」

 

「んー……」

 

 

弁慶も向かい側に腰を下ろし、自分のペースで話し始める。

 

 

「とりあえず今朝は助かったよ。主の荷物を取り返してくれてさ。」

 

「あれはどのみち与一が解決してただろ。俺が感謝されるのはおかしい。」

 

「誰のおかげとかは正直どーでもいいんだよね。あのとき海斗が主のために動

いてくれたのが嬉しかった、だからありがとう。」

 

「……そうか。」

 

「うん、そうそう。」

 

 

そう言われると否定するのもおかしくなる。

海斗はその感謝を受け入れるしかなかった。

 

 

「そのことを言うためだけに?」

 

「まさか。そこまで私も暇じゃない。今日は一緒にここで飲み明かそうと思っ

てね。」

 

 

そう言って取り出したのはいつものひょうたんと杯。

勿論中身は酒ではなく川神水である。

 

 

「めちゃくちゃ暇じゃねぇか。」

 

「これはただ飲むんじゃないよ、ちゃんと親睦を深めるっていう目的があるん

だから。そのお供ってこと。」

 

「親睦を深めるってなんで今更……」

 

「いやー、なんか海斗のことをもっと深く知ってみたくなったというか……。

主が興味持つのも分かるかな、なんか面白いんだよ海斗って。」

 

「全く面白くしてるつもりはないが。」

 

「別に見た目が可笑しいとか言ってるわけじゃないよ。顔とかはかっこいいと

思うし。なんていうんだろう……飽きなさそうって感じ?」

 

「へぇ。」

 

 

自分では分からないことだが、それはもしかしたら海斗自身が退屈を嫌ってい

る結果なのかもしれない。

正しいかなど確かめる方法はないのだが。

 

 

「ということで、早速飲もっか。」

 

「あ……、そういや俺するめ持ってたな。」

 

「おー準備がいいね。川神水がさらに美味しくなるってもんだ。」

 

 

食べるタイミングもなかったするめがここで役に立つとは思わなかった。

そのちょっと高級そうな袋を開け、準備を整える。

 

 

「ん……ごくごく……あー美味い。」

 

 

弁慶が最初の一杯を口に運ぶ。

そして、また注いで今度は海斗のほうへ差し出す。

杯はひとつしかないので乾杯などはできない。

 

 

「さぁ、海斗も飲んで飲んで。」

 

「あぁ、それじゃ。」

 

 

海斗は杯を受け取り、口に運んだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

―同時刻、2-F教室。

 

 

「ねぇワン子、海斗どこに行ったか知らない?」

 

「確かにいないわね。義経との決闘申し込んでる間にどっか行っちゃったのか

しら?」

 

「む、自分たちに何も言わず帰るとは……」

 

 

京、ワン子、クリスの海斗の所在が分からなかった。

よく一人で帰ってしまうことはあるのだが、大体じゃあなとか声をかけてくれ

るので今日は珍しかった。

そう思っていたのだが……

 

 

「流川ならなんか弁慶に呼ばれてるとか言ってたけど。」

 

 

近くにいた大和が答える。

早々と席を立ってどこかへ行く海斗に聞いていたのだ。

 

 

「え!?」

 

「弁慶……またフラグを建てる可能性が……。」

 

「京、そんなの心配してる場合じゃないわ!」

 

「どうしたんだ、犬?そんなに慌てて……」

 

「弁慶の持ってる物思い出して!」

 

「弁慶の武器といえば、錫杖だろう?」

 

 

クリスがそれがなんだといった様子で答える。

だが、一子は首を横に振っている。

 

 

「持ってる物…………あ、川神水!?」

 

「あ!」

 

 

導き出された答えにクリスも声を上げる。

 

 

「まずいわ……。」

 

「というか、もう弁慶が助かる道が……。」

 

「無理だな……。」

 

「どうしたんだよ、一体?」

 

 

落胆する三人に全くついていけない大和。

しかし、ここにいる3人とここにはいない由紀江はこの状況がどれだけの事態

かが分かってしまう。

もはや三人はこれから起こると予想できることを決定事項として受け入れるし

かなかった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「いい飲みっぷりだね、海斗。どう、美味しいかい?」

 

「…………弁慶、ちょっとこっち来い。」

 

「んー?」

 

 

目的はよく分からないが言われたとおり、海斗の横まで来る。

 

 

「イカ食いたいか?」

 

「まぁ、せっかくあるんだし川神水にも合うだろうしね。」

 

「じゃ、口開けな。」

 

「……?いや別にそのくらい自分で食べられるって。」

 

「口開けな?」

 

「……!」

 

 

言葉には有無を言わせぬ強さがこもっていた。

まるで同じことを二度も言わせるなというように。

弁慶はあれこれ考える前に素直に口を開く。

というか、体が勝手に従っていた。

 

 

「よし、そのまま待てだ。」

 

「え、どういう……」

 

「そのまま。」

 

「……は、はひ。」

 

 

口を開いたまま舌も出た状態で待てを守り続ける。

さながら飼い犬のようだった。

 

そこでやっと弁慶は海斗がいつもと少し違うのを確信した。

声も話し方も変わっていなければ、顔も赤くなっていないから気づかなかった

が、海斗の見えざるスイッチのようなものを入れてしまったのは紛れもなく、

川神水(アレ)だ。

弁慶はそんなことを考察して気を紛らわすしかなかった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「海斗が川神水を飲むことで発動する……」

 

「人呼んで“調教モード”。」

 

 

親睦のための飲み会はとんでもない方向に向かいそうである。




なんというご都合主義設定でしょうか。
しかし、反省はしません。
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