弁慶が大変なことになっている頃……
「あれは私たち3人とまゆっちで海斗を食事に誘ったときのこと……。」
教室では京たちが大和への説明を行っていた。
「たまたまあった川神水を勢いに任せて飲んじゃったのよね。海斗も別に駄目
みたいな素振りは見せなかったし弱そうって感じでもなかったし。」
「ただ飲んだ途端に雰囲気みたいなものが完全に変わった。」
「そう。一見すると分からないんだけど、海斗は川神水を飲むと命令口調が多
くなってちょっと強引になるのよ。」
「それが海斗の“調教モード”。」
「調教って……。」
「いや、間違ってないな。」
「うん、間違ってないわ。」
大和が京の大げさな言い方にツッコもうとするが、あとの二人の反応を見る限
りどうやら言いすぎというわけではなさそうだ。
「逆らえないのよね。」
「恐怖とかではないのだが……何故か拒めない。」
「おそらく海斗の普段は優しくて表に出ないSの部分が川神水の力で緩んでる
んだと思うけど……。」
「あと、ペットっていう感じもあるわよね。」
「つまり、今弁慶がその被害にあってると。」
「また弁慶っていうのがまずい。私の勘では弁慶は私と同じように相手によっ
てSにもMにもなれるタイプな気がするんだ!」
「……それはそれは。」
見慣れたものだがもはや呆れるしかない大和。
「でもね……。」
「そうだな……。」
「ん?」
「このモードの恐ろしさはそんなところじゃない。」
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「……かひと?いつまでこうひへれば?」
「よし、もう食べていいぞ。」
「あむ。」
やっと口の中にイカが入れられる。
ただ海斗の持っているものを口だけで食べているので完全に餌付けのような図
になっている。
しかし、なんとか終わった。
今のがもっと続いていればおかしな気持ちになりそうだったので、弁慶は危な
かったと安心していた。
だが、それは全くの間違いであることに気づかされることになる。
「よく我慢できたな、弁慶。偉いぞ。」
「え……あ……」
海斗の手が弁慶の頭を撫でる。
優しく愛情のこもった手つきに弁慶は力が抜けてしまう。
「綺麗な髪してるな。」
「……ふぁ、あ……」
手は頬のほうにもまわってきて髪も優しくさらさらと撫でる。
くせっ毛であるにもかかわらず海斗の手がひっかかったりすることはない。
とても上手に隅々まで隈なく全体を撫でていく。
「どうした?大人しくなって。気持ちいいか?」
「……うん、気持ちいい。」
元々頭を撫でられるのが好きな弁慶はもう既に骨抜きにされていた。
まさにされるがままの状態である。
「なら、もっとしてやる。いい子に待てたからな。」
「……んん……はぁっ……」
あごをこちょこちょとくすぐる。
それも弁慶は目をとろんとさせて受け入れていた。
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「高圧的な命令が多くなったあと、その命令をきちんとこなすと海斗は打って
変わって褒めまくってくるの。」
「その落差がもうね……。」
「あれは危険だ。」
クリスがしきりに頷いている。
あの前ではこちらの意思などあってないようなものだ。
「褒めるっていっても、単純な言葉をかけて撫でてくれたりするだけなんだけ
どね。」
「ていうか、海斗動物好きで慣れてるからか、相当撫でるのが上手いのよ。だ
から何も抵抗できなくなっちゃうの。」
「まさに飴と鞭、調教モードってわけ。」
「なるほど……。」
「海斗が支配する空間にいることで誰もがどこかおかしな気持ちになってしま
うほどの威力だから。」
「あのときはまゆっちが一番凄いことになってたわね。」
「確かに……京よりも凄かったからな。」
「おそらく普段抑圧されてたものが爆発したんだろうね。まゆっちどう見ても
Mだろうし。」
「……何があったか怖くて聞けないんだが。」
大和も少しはどんなことがあったか想像しただろうが、そのどれもを上回って
いるだろう。
「そのうえ、海斗はあんまり覚えてないしね。」
「覚えていないというか、やった記憶はあっても何故かそれを普段の自分の行
動だと思ってるっぽい。」
「つまり命令したり撫でたりしたことは覚えててもそれをおかしいことだとは
思わないってことか。」
「まぁ性格が根底から変わっているわけではないしな。飼い犬に接する海斗と
かもあんな感じだろう。」
「あの海斗の前ではペットになるしかないわよ。」
「はぁ……もう今頃は……」
3人揃ってため息をつく。
実際に見ていれば想像は容易いのだろう。
しかし、大和は1つ疑問があった。
「でも、そうなったのは全員流川のことを好きな奴だったからだろ?なら、弁
慶もそうなるとはかぎらないんじゃ……」
「いや。調教モードの前には誰しもが無力。最後に残るのは……」
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「…………かいとぉ。」
“海斗に従順な
恐るべしハーレム用スキル