なんとか追及の手を逃れて放課後になる。
本当に今日の大変さだけで葉桜清楚の人気が身にしみて分かるようだ。
ただ授業が終わったとはいえ、昨日の今日で海斗が直接向かうのはやはり危険
すぎるというもの。
そこで海斗は百代に頼んで呼び出してもらうことにした。
で、所定の場所に立って待っているわけなのだが……
「俺様もこの目と耳で確かめねぇと気が済まねぇ。」
「僕も真実を知りたいからね。」
「ということで俺も付き合わされたわけだが。」
隣にはガクト、モロ、大和の三人が立っていた。
どうもガクトが見ると言って聞かなかったらしい。
その勢いに二人は押されたようなものだ。
ちなみに他のファミリー女性陣は大和いわく、いるとややこしくなるとのこと
で事後報告となっている。
「なんも面白いことはないと思うぞ。」
「お前の立場だったらどんなに面白いだろうな!」
「なに泣いてんだよ……。」
馬鹿げた話をしていると百代とともに清楚が到着した。
自転車と並走してるのはどうかと思うが。
「ほら、海斗。連れてきてやったぞ、感謝しろー。」
「はいはい、ありがと。」
「お礼くれたっていいんだぞ。」
「戦いはしないからな。」
「ちぇー。」
「今度なんか奢ってやるから。」
「はぁ、仕方ないな。」
無駄に出費がかさむ武神である。
「お待たせしちゃってごめんね、海斗君。」
「いやそれは全然構わないけど、俺が聞きたいことは分かるよな?」
「うん、なんか思ってたより凄いことになっちゃった。」
「葉桜先輩!はっきり否定してください!」
ガクトが猛烈な勢いで割り込んでくる。
なりふり構わないとはまさにこういうことを言うのだろう。
「まぁまぁガクト、とりあえず先輩の説明を聞こうよ。」
「モロ、あれ見せてやってくれ。」
「うん、用意してあるよ。これだね。」
モロがあらかじめ開いておいたノートパソコンの画面を見せる。
勿論映っているのは昨日の掲示板。
「ここに書かれていることについて色々と聞きたいんだが。」
「つい昨日のことなんだけどね、そのあんまり知らない男の子から告白されち
ゃって…………」
清楚の話では昨日いつも通り読書をして、帰ろうとしたときに呼び止められた
のだという。
1つ学年が下の名前も知らない男子生徒。
「当然相手のこと何も分からないのにお付き合いするわけにはいかないから、
私は“もっとお互いのことを知り合ってからね。”ってお断りしたんだけど…
………」
相手の男子は相当熱烈なファンなうえに待ち伏せで直接アタックしてきただけ
に本気も本気だったらしく、簡単には引き下がらなかった。
その後も“そこをなんとか”と懇願されたらしい。
清楚は直接的な表現などはしないが、相当しつこかったようだ。
「で、何度言っても諦めてくれなくて……そこまで拒否する理由がないんだっ
たら一回試しに付き合ってみてそれで決めてほしいって言われて。」
「俺は大体読めたぞ。」
大和はいち早く事情を察したらしい。
「でも好きじゃない人と付き合うなんておかしいから、私嘘ついたの。付き合
ってる人がいるから無理ですって。」
「まさか……」
ガクトが恐怖の呟きをもらす。
聞きたくないと頭をふるが真実は伝えられる。
「そのとき二年生の流川海斗君が彼氏です、って言っちゃったの。」
「うおおぉぉぉぉおおおお!!」
悲しみの咆哮は天高く響き渡った。
「なんだって俺の名前使ったんだよ。」
「私だって誰でもいいってわけじゃないよ。流石に知りもしない人と嘘でも付
き合ってるなんて言いたくないし……。」
「は?」
「その……海斗君が思いついちゃったから……」
「清楚ちゃんカワユーーーイ!!」
テンションがあがる百代に対して海斗はよく分かっていないようだった。
名前を読書のたんびに見ていたから、咄嗟に出てきてしまったということだろ
うか。
「でも、それだとどうするかな。ここで改めて否定するとその発言がただのそ
の場しのぎってことになっちゃうしな……。そしたら、諦めが悪いそいつだっ
てまた告白してくるかもしれないし。」
大和のもっともな意見に考え込む一同。
特に海斗は一度そういうストーカー的な人物を見たことがある。
あのときは後輩の伊予が困っていたのだ。
あれほどたちが悪いものもない。
「別に俺はいいぞ、そういうことにしておいても。」
「え?」
「どうせ気づく奴は自然にデマだなんてこと分かるだろ。熱くなるのも早けれ
ば冷めるのも早いのが世の常だ。とりあえず、昨日のを否定する内容の掲示板
と逆に事実だっていう内容のも作る。そうすることで情報を信憑性のない不確
かなものにする。そんなころころ相反する情報が主張されれば、飽きる奴は馬
鹿らしくなるだろ。」
「確かにそれは効果ありそうだけど……その例の男が本当は付き合ってないっ
ていう否定のほうを信じたらどうする?」
「そんときはまたいくらでも俺の名前を使えばいいさ。な、清楚。」
「あ、うん。でも勝手に使っといてなんだけど、海斗君は迷惑じゃない?」
「迷惑なんかじゃない。清楚が困った顔してるより百倍マシだ。」
「あ……ありがとね、海斗君。」
「よく見とけー、ガクト。これがモテる奴とモテない奴の違いだ。」
「追い討ちくらわせないでくれよ!」
百代の言葉によりガクトは瀕死状態となった。
踏んだり蹴ったりである。
「そうだ、今日わざわざモモちゃんに私を呼ぶの頼んだんだよね。」
「そりゃ行くのはマズいと思ったからな。」
「私の連絡先、教えておくね。できれば海斗君のも教えてくれると嬉しいな。」
「ああ、分かった。」
「もうこれ以上俺様にダメージを与えないでくれ!」
「ガクトのライフはもうとっくに0だからね。」
こうして事件は見事円満解決(?)したのだった。
「……一子たちにはちゃんと説明しといてくれ。」
「それは確かに……。」