真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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秘密特訓

ガキン

 

夜の空き地に獲物がぶつかり合う音が鳴り響く。

人がほとんど寄り付かない秘密のスポットには影が二つ。

両者ともに刀剣を構えていた。

片やシンプルな日本刀、片や光を放つレーザーブレード。

 

 

「はいよ、一旦休憩。」

 

「うむ、なかなか汗をかいてしまった。」

 

「お前のどこに汗腺があるんだよ……。」

 

 

長身の二つの影の正体は海斗とクッキー第二形態。

二人(?)がこんな時間に刀を持っている変な状況が出来上がっているのには

理由があった。

 

ある夜、海斗はいつものように見知らぬ女の子がガラの悪い者達に囲まれてピ

ンチだったので当然のように助けようと突っ込んだ。

相手は様々な武装をしていて、海斗はそのときたまたま近くにいた刀を持った

者から武器を奪い、大勢の敵に応戦した。

徒手でもなんら問題ないのだが、リーチの面でも不利を消せるので手っ取り早

く済ませるための手段だった。

勿論、海斗が負けるはずもなく瞬く間に敵を倒していった。

 

その一連の様子を偶然にも用事で外に出ていたクッキーが帰りがけに目撃して

しまったのだ。

海斗も普通なら見られないようにと少しばかりは気を遣うのだが、なにせクッ

キーに関してはロボットであるがため気というものがない。

だから戦いに専念していた海斗は全くその存在に気づかなかったのだ。

そして、クッキーは海斗の鮮やかな剣さばきを目の当たりにして、己の内に眠

る剣士としての心に火がついてしまったのだ。

 

以来、海斗と定期的に鍛錬という形で刀を振るっている。

第二形態は何かと血の気が多く、すぐに戦いへの血が騒いでしまう。

そんなわけで海斗も見られたということもあり、つきあってあげている。

クッキーも海斗の実力は認めているので、何かアドバイスをもらえば文句の一

つもなく聞き入れる。

それほどに海斗は刀の扱いが上手いのだ。

 

 

「……そうだ、クッキー。」

 

「ん?なんだ、海斗。」

 

「お前大和にもらしただろ。」

 

「な、何を!?」

 

「何故か大和が俺が刀使えるって知ってたんだが、どうしてだろうな。」

 

「いや、あれは久々の戦闘で興奮してしまい……!」

 

「はぁ、別にいいけどさ。あくまで俺がクッキーの鍛錬に付き合ってる感じに

してくれよ。」

 

「やはり努力は知られたくないのか。」

 

「頑張りやさんなんて言われた日にはむず痒くて生きていけんわ。それに俺が

自分のためだけにやってることなんだからな。」

 

「……ふむ、そうか。」

 

 

海斗の言葉に少し違和感を感じる。

クッキーは人の体の状態を分析し嘘を見抜くことも可能なのだが、海斗はそれ

を一切読み取らせない。

たとえ嘘をついていたとしても脈一つ変えないのだ。

だから真実は分からない。

今感じたほんのちょっとの違和感しかデータはない。

それでも海斗の“自分のためだけ”という言葉が本当には思えなかった。

 

 

「よっし、じゃあ再開するか。」

 

「ふん、切り刻んでくれるわ。」

 

「毎回言うそれ、なんとかならんのか……。」

 

 

クッキーの思考は海斗の図ったような休憩終了の合図によって、中断された。

 

 

「じゃ、とりあえず俺は防ぐから一撃とるつもりで来な。」

 

「いいだろう、最初から全力でいく!」

 

「……!」

 

「クッキー・ダイナミック!!」

 

 

クッキーの最大の必殺技、ただレーザーブレードを上段から振り下ろして斬り

つけるだけの攻撃。

だが、その速さはあの神の目を持つと言われたリカルドが見切れなかったほど

の神速。

それを海斗は難なく受け止めて、はじき返す。

 

 

「まだ終わりではない!」

 

「おっと……。」

 

 

だが、クッキーは己の最強の技に第二斬を用意していた。

それは海斗の腕を認めているからこそのプライドも何もない一撃。

それでも海斗はなんとか止めてみせた。

先程よりは危なっかしかったが。

 

ギリギリの状態だったため力加減にまで手が回らなかった。

海斗の防御によってクッキーが押し返される。

 

 

「いけね!」

 

 

その体が倒れる前に咄嗟に海斗は支えた。

もはや重量などの心配は海斗にするのもおかしな話だ。

だが、海斗が予想していた以上にその体は軽かった。

 

 

「…………なんで第四形態になってるんだよ。」

 

「海斗に抱きしめられているので。」

 

「これは支えてるというんだ。」

 

「私にとってはどちらも同じことです。」

 

 

頬を染めているのを見るとロボットとは思えない。

クッキーには複数の形態がある。

第1形態は丸いフォルムの家事タイプ、第2形態はさっきまでの剣を携えた戦

闘タイプ、第3形態はとてもコンパクトな手乗りサイズの知能タイプ。

そして、この第4形態はより人間に近い形で設計された女の子の形態である。

ちなみに持つスキルは第1形態と同じ、ポップコーン作りと家事。

 

 

「そういや、この形態のことは話したのか?」

 

「まだ海斗しか知りません。」

 

 

この第4形態の存在を知ったのはついこないだの鍛錬のとき。

なんでも人間に対する好感度が振り切ったと言って、より絆を深められるよう

にと現れた形態である。

何故かファミリーの者達には見せたことがないらしい。

 

 

「言ってみれば凄いってなるんじゃないのか?」

 

「私には言わないほうがいい理由がありますから。」

 

「理由?」

 

「このほうが有利に進められますから。海斗はなかなかに難易度や競争率が高

いので……。知らないうちにゲットと。」

 

「もうそろそろ離すぞ。」

 

「イヤです。このままの体勢を継続することを所望します。」

 

「わがまま言うな。」

 

「えー。」

 

「なんか反応が京みたいになってきたぞ。」

 

「海斗を好きな気持ちなら京にだって負けません。」

 

 

真剣な瞳で迫ってくるクッキー。

そう、クッキー4になったそもそもの理由でもあるのだが、クッキーは海斗の

ことが好きなのである。

 

 

「別に俺が修行見てやってるからってそうなる必要は……」

 

「私は別に恩で海斗を好きになってるわけじゃありません。海斗は私のこの見

た目を見る前からどの形態でも分け隔てなく優しくしてくれました。それは純

粋に私を思いやってくれたということ。」

 

「まぁそれはクッキーだって仲間だしな。」

 

「第1形態のときは京に海斗の良いところを聞き、第2形態のときはこうして

鍛錬に付き合ってくれて、第3形態での難しい話も唯一理解してくれるくらい

頭も良く、第4形態の私も最初っから褒めてくれました。」

 

「別にそこまでのことじゃ……」

 

「さっきも元々第2形態の私を必死に受け止めてくれましたし、私は紛れもな

く海斗という男性への好意によってこの形態への変身を遂げたのです。一番、

恋愛に特化したモードへと。」

 

「うーん……。」

 

「だから私は本気で海斗のこと好きですよ。」

 

「確かに俺もクッキーのことは好きだけど……」

 

「なら、また抱きしめてください。」

 

「……ほんと多く接してると似ていくんだな。」

 

 

どっかの誰かさんから悪影響を受けすぎな気もする。

こんな伏兵がいるなんて他の者は知りもしないのだった。




クッキー4も好きなんです
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