真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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鬼ごっこの死闘

メイド軍団vs海斗&与一。

なんでもありの追いかけっこ開幕だった。

 

 

「は、まずこの包囲から抜け出させねぇよ。」

 

「……与一、しっかり捕まっとけよ。跳ぶぞ。」

 

 

次の瞬間、海斗はあずみがいない後方へと跳んだ。

それは楽々背後を守っていたメイドたちを越える高さの跳躍。

海斗は着地も綺麗にすると、そのまま人のいないほうへと走り出した。

 

 

「ちっ、逃げやがった。追うぞ!」

 

 

メイドたちは各小隊ごとに散開した。

 

 

「くそ、やっぱり追ってくるか。与一、弓は持ってきたか?」

 

「ああ一応な。」

 

「いざとなったらそれだな。」

 

 

海斗はこのまま大きく迂回して接触せずに行こうと思ったのだが……

 

 

「……どうやらそう簡単にはいかないらしい。」

 

 

先回りしていた他の部隊が待ち伏せしていた。

衝突は避けられないということか。

相手から様々な飛び道具が放たれる。

 

 

「……ぴったり背中にくっついといてくれよ。」

 

 

海斗は与一にも当たらないように全てをかわしていく。

ただ与一もなにもしないわけではない。

 

 

「得物手に入れたぜ。」

 

「ナイスだ与一。」

 

 

相手のクナイの1つを見切って掴み、海斗に手渡した。

その手際の良さといったら流石目の良い弓使いというところだろうか。

海斗はその1本で回避だけでなく防御も出来るようになり、前進していく。

だが、相手は戦闘の訓練もこなした九鬼のメイド。

当然距離をつめれば体術に切り替えてくる。

 

海斗は相手の拳をいなしつつ、逃亡の機会を計る。

出来るだけ無駄な戦闘は避けたいのだが、この人数の戦闘のプロ相手に中途半

端な覚悟で突破できるわけもない。

 

 

「しょうがない……。」

 

 

海斗は相手の攻撃をかわすのではなく、正面から同じ威力のものをぶつけるや

りかたに変える。

それによって相殺しつつも少しの間相手に攻撃後の硬直時間ができる。

その隙をついて着実に逃走の歩を進めてゆく。

だが、少しこちらの威力が勝り相手がぐらついてしまったりすると……

 

 

「おっと、大丈夫か?」

 

「あ……は、はい。」

 

 

つい手を伸ばして助けてしまうのだった。

まあ相手もそんなことをされて、敵対意識を保っていられるはずもないので結

果的に問題はなかったのだが……。

 

 

「兄貴!後ろからも追いついてきやがった!」

 

「やばいな……与一、弓で足止めしてくれるか?」

 

「おう、任せろ。」

 

 

海斗の背中から一旦飛び降りる。

そして、どこからともなく弓を出して構えた。

後ろからの遠距離攻撃は海斗が対応していき、その間に与一が弓の弦をひく。

わずかな時間で狙いを正確に定め、矢を射った。

 

 

「ちょ、待て!」

 

 

海斗は咄嗟に地を蹴って走り出した。

一瞬の動きで放たれた弓を掴んで止める。

迫ってきていたメイドに当たる直前だった。

 

 

「威嚇射撃でいいんだよ!」

 

「おぉ、それはすまねぇ。」

 

「……あれ当たってたら俺たちが悪者だからな。」

 

 

作戦が失敗したのでまた与一を背負いなおして走る。

ちなみに助けられたメイドも戦意喪失状態だったのは言うまでもない。

 

 

「なんとかこのまま行ければいいんだが……」

 

 

海斗たちは橋に差し掛かっていた。

ここを渡りきればもう本屋までは近い。

しかし、物事はそう上手くはいかないものである。

前方には立ち塞がる男の姿。

 

 

「ここは通せませんね。」

 

「桐山……!」

 

「なんだ知り合いか?」

 

「こいつは少し厄介だ。」

 

「……そんな感じはするな。」

 

 

ティーポットを持ってふざけたポーズをとってるが感じられる気は流石九鬼の

従者部隊だ。

しかも後方からの追っ手も追いついてきて挟み撃ちの状態になる。

その先頭にはあずみが立っていた。

 

 

「これはちとマズいな……。」

 

「流川、もう追いかけっこは終わりだ。」

 

 

ただでさえ行ける場所が制限される橋。

加えて前後方だけでなく、まわりにも他のメイドたちで完全な包囲網が築かれ

ている。

 

あずみがクナイを構える。

絶対に標的に当てる技術を持っていることはよく知っている。

だがクナイを防ごうと桐山のほうに背を向けるのは危険すぎる。

逆に桐山に向かえばあずみがその隙を見逃すはずもない。

まさに八方塞がりの状況。

それでも相手は容赦などしてくれない。

あずみの手から複数のクナイが放たれる。

 

 

「ちっ……」

 

 

どうなるかが分かっていても迫る危機を無視するわけにはいかない。

クナイは冷静に対処し、防ぎきることができる。

次の後方からの攻撃には確実に対応が遅れてしまうことを受け入れてだ。

 

しかし、桐山のキレのある鋭い蹴りは届かなかった。

同じ蹴りで相殺されたのだ。

これでも桐山は足技だけはかなりの域に達している。

普通の者に止められるはずもない。

それをしたのは白く長く伸びる足。

 

 

「カイトに攻撃なんてさせないよ〜だ。」

 

「小雪!」

 

 

突如海斗の危機に現れたのは小雪だった。

どうやら海斗を探していて偶然通りかかったらしい。

会って早々抱きつきたかったのだが、状況が状況だ。

自分の大切な人を守るために手に入れた力。

女の子にしては筋肉がついてしっかりしたその足は、九鬼の序列二桁台の蹴り

と正面から張り合って押し負けていなかった。

 

 

「よし、一気に突破だ。」

 

 

海斗は拮抗状態の桐山に一本だけ持っているクナイを投げつける。

かわそうと一瞬崩れた瞬間、海斗は与一を背負った状態のまま小雪を前に抱え

て、空いた穴から走り抜けた。

とてつもなくデジャヴを感じる体勢だ。

 

 

「カイトー、僕戦うよ〜。」

 

「流石にあの場に小雪だけ残していくのはできねぇって。このまま本屋までつ

きあってくれ。」

 

「あはは、カイトとデート♪」

 

 

小雪は海斗の腕の中ではしゃいでいる。

海斗のこういう優しさがやっぱり嬉しい。

 

 

「どこまでもメンドくさい奴だ……。」

 

 

あずみは去っていく海斗たちの背中を見て、ため息をついたのだった。

 

 

………

 

……

 

 

 

だが、海斗たちがなんとか辿り着いた本屋には既にメイドが待ち構えていた。

考えてみれば最初にされていて当然の作戦だ。

結局与一は本は買えたものの、すぐに家に送還ということになった。

 

 

「なんだったんだ、あの苦労は……。」

 

 

海斗はその日小雪に抱きつかれながら、数冊立ち読みして残ったわずかな時間

を過ごしたのだった。

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