真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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ショッピング

今日は歓迎会に必要なものを取り揃えておこうと朝から買い物に出ている。

沢山の店をまわって一日で全てを済ませるつもりだ。

まわる店の順番も計画を立てて効率的に。

……少なくとも前日の夕方頃まではそう思っていたのだが。

 

 

「海斗クン、お待たせっ!」

 

 

既に予定外のことが起こっていた。

 

 

「よっし、まずはどこ行こっか?」

 

「行き先はもう決まってるから。」

 

 

このノリノリな少女、松永燕がどうして隣にいるかというと全ては昨日の夜に

かかってきた電話が原因だった。

突然のコール、ディスプレイには初めて映る名前が。

何の前触れもなかったので不思議に思いつつも電話をとる。

 

 

「もしもし、海斗クン?」

 

「そりゃ携帯なんだから俺だろ。」

 

「もぉー、初電話なんだからいいでしょ。」

 

「どうしたんだ、燕。なんか用か?」

 

「うんうん、海斗クンは明日何か用事あるかな?」

 

「……買い物する予定だな。」

 

「買い物?何か買いたいものでもあるのん?」

 

「いや、学校の歓迎会で必要な物を揃えておこうと思ってな。」

 

「そっか……じゃあ沢山お店もまわるんだ。ねね、そのついでに川神を案内し

てくれないかな?」

 

「え?俺がか?」

 

「一緒に歩いてくれるだけでいいからさ。なんだったら荷物も持つよん。」

 

「いや、それはいらんけど。ほんと別についてきても大して面白くないと思う

ぞ。いいのか?」

 

「じゃ、決まりだね。明日楽しみにしてるよん。」

 

 

そんな電話のやり取りがあって日をまたぎ、今に至る。

待ち合わせた場所に早めに着いて待っていると、これまた燕も本来の待ち合わ

せ時間より余裕を持って到着した。

学校の制服とは違う今時の女の子らしい私服で登場した彼女。

その飛び抜けて可愛らしい容貌は通りがかる多くの者の注目を集めているのだ

が、本人はちっとも気にしている様子はない。

それどころか海斗の隣に並んでぴったりと寄り添い、肩と肩が触れるのではな

いかという距離だ。

 

 

「近すぎて歩きにくくないか?」

 

「なんだったら手をつないでエスコートしてくれてもいいんだよん。」

 

「はぁ……別にしてほしくもないくせに。」

 

「ふふ、どうだろうね。」

 

 

言葉を濁し、にやにやと楽しむような燕。

また悪い顔をしている。

 

それにこんなに近づいて色々からかってくるので、周囲の男たちのやっかみの

視線が痛い。

休日に美少女連れてショッピングとはいいご身分だな、とでも言わんばかりの

殺気のこもった瞳である。

ちゃんとその優れたルックスなら目立つということを自覚してほしいと思う海

斗であったが、人の目を惹いていたのが燕のせいだけではないというのは言う

までもない。

 

 

「最初の目的地は?」

 

「まず、飾りつけを買いに雑貨屋だ。」

 

「おー、楽しそうだね。」

 

「確かに退屈はしないかもな。」

 

 

向かったのは品物もバラエティに富んだディスカウントショップ。

日用品にとどまらず、パーティグッズなども多数取り揃えているここなら大体

の物は買えると思ったのだ。

初めてくる者にとっては買わずとも眺めているだけで一日楽しめてしまうかも

しれない。

 

 

「自由に見てまわってきてもいいぞ。」

 

「私は海斗クンと一緒にいても色々見てるから気にしなくていいよん。」

 

「……そうか。」

 

 

もっとアグレッシブに動き回ると思っていたのだが、燕は近くで物珍しそうに

きょろきょろする程度だった。

意外に感じつつもあっちは楽しんでいるようだったので、海斗も自分の買い物

を進めていく。

 

 

「このくらいでいいか……。」

 

 

飾りといっても何から何まで全てを買い揃える必要はない。

学校の備品で補えるものも多いし、どちらかといえば海斗が買っていくのは細

かなアクセント程度の装飾品だけだ。

適当に見繕ったところでレジで会計する。

 

お金を払いここでの買い物は終わったので、商品を眺めて待っていた燕のとこ

ろへ戻った。

 

 

「おっ、海斗クン。お買い物は終わったかな?」

 

「ああ、待たせて悪かったな。ほら、これ。」

 

「え……?」

 

 

手渡したのは1つのシンプルなストラップ。

 

 

「なんで……?」

 

「俺の用事につき合わせちゃったからな。」

 

「いや、どうしてこれを……」

 

「それ欲しかったんじゃないのか?俺にはそう見えたけど。」

 

「確かに一番気になってたけど……。私このストラップ手にとっても、じっと

見てもいないのに。」

 

「ちらちら見てた回数が一番多かったからな。」

 

「へ〜……百代ちゃんが言ってた海斗クンは目がいいっていうのは本当だった

んだね。まさかこんなこと見抜かれちゃうなんて。」

 

 

燕はそう言いながら、楽しそうに笑っていた。

この笑みはなんか面倒な予感がするが、どうしようもない。

そんな燕と並んで店を出ると……

 

 

「ん?海斗……何してるんだ?」

 

 

そこにちょうどいたのは川神百代。

早速大きな面倒ごとを引いてしまったらしかった。

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