真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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歓迎会

広いホールのような教室。

壁には紅白の幕が取り付けられ、沢山のテーブルや椅子も配置についている。

ところどころには細かい装飾が施され、会場全体の雰囲気を華やかで明るい印

象に仕上げている。

そして、前方の中央には金屏風が堂々とその存在を主張している。

今日開催される歓迎パーティの準備は着々と進められていた。

 

 

「おぉ、よく数日でこれほどのものができるものだな。」

 

「皆、歓迎会に賛成で協力してくれたからな。」

 

 

感嘆の声を漏らす紋白に海斗がこたえる。

こうして見ている間にもどんどん会場設営が進行していく。

急遽必要になったことではあったが、人手は十分すぎるほどに足りていた。

手伝いに女子ばかりが多いのが、海斗の若干偏った人脈を表しているようだっ

た。

 

 

「海斗、この重い置物もあっちに運んじゃうわね。」

 

「ああ、気をつけろよ。」

 

「ヘーキヘーキ、これも鍛錬よ。修行って大事♪」

 

 

一子が張り切って置物を運んでいく。

力仕事まで女子がこなしているというのがこの学園らしい。

 

 

「こっちもだいぶ進んでるみたいだな。」

 

「あ、海斗先輩!」

 

「よ、伊予。美味そうな匂いがしてるな。」

 

「海斗さんいらしてたんですね。」

 

「どうだ由紀江、準備のほうは順調か?」

 

「はい、なんといっても海斗さんがこんなに強力な助っ人を連れてきてくださ

いましたから。」

 

 

パーティには欠かせない食事。

その担当は由紀江、伊予、辰子、弓子の4人に頼んでいる。

いつも料理を作っているからかその手際には微塵の不安もない。

料理覚えたて(←海斗のために)の伊予は細かいことや下ごしらえを主にこな

していき、あとの3人が幾度もの経験で培われた技術を持って料理人にも勝る

とも劣らないような料理の数々を完成させていく。

由紀江の言うとおり、これ以上ない助っ人だった。

 

 

「海斗くーん、見に来てくれたんだー。」

 

「辰子、大変なことやらせて悪いな。」

 

「海斗君のためなら全然だよー。」

 

「弓子もいきなり頼んだのにありがとな。」

 

「そんな……、歓迎会には私も賛成だし。でも私の料理でいいのか……」

 

「弓子の弁当美味かったから大丈夫だって。」

 

「あ、う……分かったから。」

 

「海斗君、ちょっと味見してみるー?はーい。」

 

 

辰子がまだ盛り付けていない料理を箸でとって、海斗の口の前に運ぶ。

食欲をそそる匂いに食べる前からその出来のよさが窺い知れた。

 

 

「どぉ?美味しいかなー?」

 

「ああ、よくできてる。」

 

「海斗さん!私のも味見してください!」

 

「あ、ああ……」

 

 

その後は味見といいつつ、競い合って食べさせるのでほとんど普通の食事みた

いになってしまった。

結構な足止めとなったことは言うまでもない。

 

 

「海斗、2−Fの皆を連れてきたぞ。」

 

「おお、ご苦労さん。」

 

 

クリスには人を集める仕事をしてもらった。

パーティだ、参加者は多いほうがいい。

それに義経たちのためというだけで集まってくれる良い奴ばかりだ。

 

 

「こちらも連れてきました、海斗。」

 

 

その後に続いてやってきたのはマルギッテ。

彼女が率いてきたのは肝心の義経たちが所属する2−Sの生徒たち。

彼らもこの会には欠かせないメンバーだ。

 

 

「ヒュホホホ、此方も来てやったのじゃ。感謝するのじゃな。」

 

「おう、ありがと心。」

 

「ちょっとは相手せんかぁ!」

 

 

普通の対応のつもりだったのだが……

海斗には心が何が気に食わなかったのか分からなかった。

ともあれ、準備は完璧に整った。

 

 

「あと足りないのは主役だけだな。」

 

 

どうせならサプライズということで今日のことはまだ知らせていない。

海斗は携帯電話を取り出す。

義経、弁慶、与一の3人とはそれぞれ別々の場所で事前に今日待ち合わせの約

束をしておいた。

そして全てが完了した今、待ち合わせ場所変更のメールを全員に送信する。

新しい待ち合わせ場所はこの会場の入り口の前だ。

 

しばらくして3人全員が集まった頃。

一気にドアを開け放った。

 

 

「わ、なんだ!?」

 

「歓迎パーティにようこそ。」

 

「歓迎……?え、海斗君これは?」

 

 

まだ上手く状況が飲み込めないらしい義経。

これでこそ今まで秘密にしていた甲斐があるというものだ。

後ろの弁慶も驚きに目を見開きながらも、現状は理解したらしい。

与一に関しては素直に来てくれただけで大きな収穫だろう。

3人に席に着いてもらったところでようやく義経も何が起こっているのかを理

解し始めたようだ。

 

 

「じゃ、代表して義経にあいさつでももらおうか。」

 

「あ、ああ。今日は義経たちのためにこんな素敵な催し物を用意してくれて本

当にありがとう。ここまでしてくれる皆の期待を裏切らないようにこれからも

日々精進していきたい。」

 

「かたいよ〜、義経。」

 

「う……」

 

 

弁慶のつっこみで会場から笑いがもれる。

その最高の雰囲気のままパーティは進行していった。

義経は緊張しつつも素直に終始嬉しそうにしており、弁慶もそんな義経を見つ

つ幸せそうだった。

与一も表情では分からないが、少なくとも途中で抜け出して帰るなんてことも

なく、一緒に皆との時間を過ごしてくれた。

 

 

「海斗、本当に感謝するぞ。」

 

 

紋白がパーティの最中、横に来て声をかけてくる。

 

 

「我一人だけではこんなに心のこもった最高の歓迎会にはできなかったであろ

う。それもこれもお前のおかげだ。」

 

「そんなことないぞ。こうやって成功したのは沢山の奴らが協力してくれたか

らで俺は呼びかけただけだ。それに俺やそいつらが行動したのは紋白が義経た

ちのことを思いやる気持ちが俺たちの心を動かしたからだ。きっかけがなきゃ

こんな歓迎会は開かれなかったんだぞ?」

 

「海斗……。」

 

「だから自信持っていいぞ。十分に紋白の力だ。ほら、今日は義経たちに負け

ないくらい楽しめ。」

 

「うむ!」

 

 

気づけば時間はすぐに過ぎていき、結果として大成功に終わった。

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