真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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東の武士たち

火薬の匂いが鼻につく戦場。

そこに立っているのはたったの二人だけだった。

 

 

「じゃあ、早速いくとするぜ。」

 

「この大友相手に武器も持たずに丸腰で挑むとは……なめるな!」

 

「別になめてない……って!」

 

「大友家秘伝・国崩しぃぃぃぃ!」

 

 

既に相手の砲口は海斗を捉えていた。

返答の間もなく撃ち込まれる砲弾。

もはやかわすのでも精一杯の広範囲攻撃。

 

 

「厄介な技だな。」

 

「よくかわしたな、板東武者よ!思ったよりもいい動きをする。」

 

「可愛い顔して恐ろしい攻撃してくんのな。」

 

「かっ、かわ……こちらを惑わせるとはおのれ卑怯な!」

 

「は?」

 

「だが、大友の砲声が止むことはない。次弾くらえ、国崩しぃぃ!」

 

 

叫号とともにまたも放たれる巨大な熱と暴風の塊。

それが一気に広がる。

やはり撃たれる前に既に動いていないと、避けるのは難しい。

右に左にと上手くかわしていくが、ただそれだけだ。

海斗もそれ以上の行動には出られないでいる。

そこに遠慮なく発射される砲弾の雨。

 

 

「なかなか粘るじゃないか。東の者にしては骨があると見た。しかし、逃げて

いるだけでは大友に勝つことはできないな。」

 

「それはごもっとも。」

 

「なに!?」

 

 

海斗は砲撃が途切れたその瞬間、いきなり相手に向かって走り出した。

その方法は何の変哲もない直進。

勿論、動かない敵など大砲の格好の的である。

 

 

「遂に冷静を失ったか。まっこと板東武者は愚かよ。正面からの突撃などこの

大友の一発で沈めてやる!」

 

 

海斗に砲身が向けられ、思い切り火を噴く。

真正面からぶつかり合うような砲弾と人間。

海斗に今からかわす術はない。

 

 

「そのまま焼け焦げるがいい!」

 

「……川神流・畳返し」

 

「なんだっ!?」

 

 

海斗は正面衝突を待っていたかのように前方から迫る弾丸を見据え、思い切り

地面に拳をうちつけた。

その衝撃でまるで畳のようにコンクリートの地面が壁となってめくれ上がる。

これも百代からコピーした技の1つだった。

 

ドゴーン!

 

物凄い爆発音が鳴り響くが、海斗が作り上げた厚い壁は十分にダメージのほと

んどを防いでくれた。

そして、発生した粉塵を利用して身を隠し、一気に距離をつめる。

 

 

「これで終了だ。」

 

「なにを……!」

 

 

海斗はほぼ零距離まで切迫しておきながら、拳も何もふるわない。

ただ二つの砲口の前に手をかざしているだけ。

 

 

「こんな近くに対象物がいたら、爆発点はここ。撃ったほうも確実に巻き込ま

れちまうってわけだ。簡単に撃てるが、絶対に撃てない。こんな至近距離じゃ

二人とも火傷なんてもんじゃ済まないだろうしな。」

 

「くっ……。」

 

「悪いけど、大人しく降参してくれ。」

 

「なめるな!戦において相手に背中は見せん!この大友、元より自爆覚悟!」

 

「は……それは困るって。」

 

 

あまりにも予想外のことを言い出したので、海斗は慌てて砲術を発動させよう

とするその華奢な両腕をおさえる。

これで自由に自爆の引き金を引くことはできない。

 

 

「ひゃっ……いきなりどこを触っている!離せ!」

 

「いや、離したら大筒ぶっ放すだろうが。危ないっつーの。」

 

「うるさい、大友の覚悟を見せてやる。なめるな!」

 

「別に戦う女の子は嫌いじゃないけどさ、自分の体は大切にしな。傷が残った

りしたら困るだろ、武士である前に女の子なんだから。」

 

「え……。」

 

「勇気と自己犠牲は違うからな。そういうのは大切なものを守りたいときとか

にとっておくもんだ。」

 

「…………うん。」

 

 

海斗は腕から力が抜けるのを感じて、拘束していた手を離した。

どうやらもう抵抗の意思はないらしい。

その頬が紅く染まっていることまでは気づかなかったが……。

 

 

「じゃあ、この勝負はおしまいってことで。」

 

「名前は?」

 

「ん?」

 

「自分を倒した者の名前は知っておきたい。それに……」

 

「そっちが教えてくれたら、教えてやるよ。」

 

「大友焔だ!」

 

「焔か、俺は海斗。流川海斗だ。」

 

「海斗か。覚えたぞ。海斗、今回は大友は負けはしたが、自分以外にも西方十

勇士には強い者が沢山いる。まだ諦めはしないぞ。」

 

「そうだな、勝負は最後まで分からない。だから、さっさと油断せずに大将倒

しにいかなきゃな。じゃあな、焔。」

 

「うっ……あ、ああ。……海斗。」

 

 

非常に真っ直ぐで勝負に対して真剣。

それを感じ取ったからこそあえて海斗は武器破壊などはしなかった。

弾が残っていても不意打ちなんかするとは思えなかったのだ。

 

だから、海斗は次の戦いに足を向ける。

その場を去ろうとして……

 

 

「あ、1つ言い忘れたことがあった。」

 

「なんだ?」

 

 

そこで一度笑って、言った。

 

 

「俺の仲間もかなり強いぜ。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

一子、小雪を相手にする長宗我部は……

 

 

「すばしっこくてなかなか捕まえらんねぇ!」

 

「隙ありだよーん♪えーい!」

 

「な、ぐぉあっ!」

 

 

一瞬の隙をつき、相手の懐に潜り込んだ小雪は下から思い切り蹴り上げた。

その威力は図体のでかい長宗我部を軽々と宙に押し上げたことからも伺いしれ

る。

 

 

「ナイス蹴り上げ!いくわ!」

 

 

そして、それに合わせるように一子が大ジャンプをする。

空中で身動きがとれないとはいえ、一子が何かを仕掛けてくるということが分

かった時点で本来ならなんらかの対処が出来ただろう。

しかし、思い切り顎に小雪のハイキックがヒットしたことによる現在の朦朧と

した意識では良案を考えるのは難しかった。

 

 

「川神流・空衾(そらぶすま)!」

 

 

跳躍からの高さも利用した飛び蹴り。

まるで強固な城壁を崩す大槍のごとき一撃が長宗我部を貫く。

到底ノーガードで受けられる技ではない。

 

 

「ごはっ……」

 

 

地面に叩きつけられた長宗我部はそのまま動かなくなった。

怪我には発展せず、戦闘不能で済んだのはその頑丈さゆえだろう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ビルの屋上から狙撃していた毛利は……

 

 

「フッ、なんて精度のいい弓だ。なかなかに美しい。」

 

 

逆サイドにいる京からの弓をかわすため陰に身を潜めていた。

一度やめばこちらからも狙撃を試みるが、相手とてそれは承知のうえ。

同じように地形を使って防がれるか、同じ弓で相殺されるか。

 

 

「だが、このままでは決着がつか…………ん?」

 

 

毛利の目に入ったのは屋上のど真ん中に立つ敵の弓兵。

つまるところ、京は何も防ぐものがないところに出てきたのだ。

 

 

(長い均衡状態にしびれをきらしたか、あるいは勝負自体を諦めたか。どちら

にせよ……)

 

 

このチャンスを逃がす手はない。

相手も弓を構えているが、そんなのは関係のないことだ。

もし先ほどのように相殺しようとしてきても、三連矢ならば全ては防ぎきれな

い。

 

 

「東の蛮族よ、我が美しき技で沈め。」

 

 

……が、京の照準は端から毛利になどなかった。

その少し下に向けて放つ。

そして、毛利が見たのは燃えている矢の先端だった。

 

次の瞬間、一階層下から爆発音が生まれる。

それに続き、ちょうど毛利の下の足場が崩れ去る。

 

 

「エレガントなこの私がぁぁあぁ!」

 

 

そのまま絶叫とともに落下していった。

 

 

「保身ばかり考えてるから私の隠れ弾に気づかない……。」

 

 

京は相手を狙う弓を射ったあと、ずっと陰のように第二射を撃ち続けていた。

その弓にセットされていたのは火薬。

何度も撃ち続けて積もり積もったそれを最後の炎の弓で爆発させたのだ。

崩したのはワンフロア分なので気絶程度で済んでいるだろう。

 

 

「これで海斗をじっくりと観察できる!!……って、もういないし。」

 

 

ずっと続いていた狙撃の集中もとけたのか、京は深々とため息をついた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

そして、作戦本部。

大和とモロは……

 

 

「凄いよ!どんどんこっちが相手を倒して、巻き返していってる!」

 

「よし、なら次は大将を討ち取って終わらせるか。」

 

「でも、場所は分かるの?」

 

「大体は見当ついてるし俺が行く。」

 

「え!危ないんじゃない?」

 

「今回はあまり大した指示もしてないしな。モロはここで引き続き連絡とかを

頼む。ある意味安全面ではかなりのもんだしな。」

 

 

またも大勢で攻め込んできた相手の軍団を次々と狩っていくマルギッテを見な

がら言う。

一人であの働きとは本当に驚くべきことだ。

 

 

「軍師・直江大和、出陣だ。」

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