―翌日
“明日になれば分かることだ。”
紋白の発言の謎を抱えながらである手前、色々身構えてしまうような妙な感じ
であったが、事件は早々に起こった。
予告なし突然の全校朝礼。
それも全校生徒が集められるのは勿論、テレビカメラのようなものにその関係
者、九鬼の従者達もいつもより数が多い気がする。
そんな賑やかななか学長である川神鉄心が壇上に上がる。
「さて、今日はギャラリーが多く何事かと思っている者も多いじゃろうから、
早速本題に入ろうかのう。」
どうやらカメラも現在進行形でまわっており、生放送中のようだ。
全国に流すような重大発表でもするのだろうか。
「毎年川神院はこの季節武道の祭りとして川神武闘会を開いておるのはこの学
園生なら誰しもが知っておることじゃ。その恒例行事を今年は義経たちも転入
してきたということで格段にグレードアップ、大規模なものにしようと考えた
次第じゃ。」
ようやく周囲が趣旨を理解し始める。
どうやら年に一度の武闘会がテレビで発表されるくらいの一大イベントとなる
らしい。
色々な憶測が飛び交い、予算の懸念の話までちらほら聞こえてくるが……
「心配せずとも、今回のスポンサーには九鬼財閥がつく。」
なるほど、その一言で現在の校庭を取り囲む面子にも納得がいく。
特に九鬼財閥はあの九鬼揚羽がいるということもあって、何かと武道のイベン
トごとにも積極的だ。
「今日はこの場を借りて、この究極の武道の大会……うぉっほん……!」
大げさに咳払いをして、もったいぶる。
元々お祭りごとが好きな川神の生徒たちはその言葉の続きを息を呑んで待って
いた。
「“若獅子タッグマッチトーナメント”の開催決定を宣言する!」
生徒の端から端までその声は響き渡った。
「若獅子……」
「タッグマッチ……?」
「なんか身に覚えがあるフレーズね。」
一子がそう呟くが、たぶん大半の生徒はおんなじことを思っているだろう。
いや冷静に考えればお互い身一つで一騎打ちの決闘というスタイルが専らメジ
ャーな武道の大会において、ペアという参加指定は斬新なものかもしれない。
ただこの学園の生徒に限っては少なくともそんな考えには至らなかった。
というのも、既に以前学園行事としてタッグマッチが開かれたのだ。
そういうわけで新鮮味という面ではなんというか残念な感じになっていた。
「これ、言いたいことは分かるが最後までちゃんと話を聞かんか。これでもル
ールなども少し変更したりしておるのじゃ。」
「確かに若獅子とかついてるしな。」
「そうじゃ、武とは洗練された肉体だけあればいいものではない。心技体とい
う言葉があるように健全な精神、人との絆。そういったものも必要なのじゃ。
だからこその今回のペアという形をとっておる。」
「それでも二番煎じ感は否めないけどな。」
「そこ黙らんか、野暮なことは言いっこなしじゃ。開催日時はこれより一週間
後、場所は七浜スタジアムじゃ。その間にペアを決めて参加申し込みを済ませ
るということになるのう。では、詳しいルールは九鬼財閥から説明してもらう
ぞい。」
壇上に音もなく現れたのはクラウディオとヒュームの二人だった。
「聞いたとおり、今回の大会名は“若獅子タッグマッチトーナメント”。若獅
子とは才能に溢れ可能性に満ちている若者たち。よって、大会の参加資格は2
5歳以下の男女に限定させて頂きます。また川神学園生であるなら可です。そ
の条件さえ満たしていれば世界各地どこからの参加でもお待ちしております。
多くの力の発掘は九鬼の人材探しにも大いに役立ちますので、今回スポンサー
を買って出た次第でございます。」
その後も流れるように説明がなされていく。
こういうなんでもありの武道の大会だとお決まりの武器についての規定。
刀剣のレプリカから専用弾の説明と耳に馴染んだものが続き……
「さて、ここからが実際の試合のルールとなります。」
「当日七浜スタジアムに用意される広い方形のリング。その上でお互いのペア
2対2の形式で戦っていただきます。」
「勝利の条件は相手ペアどちらか1人でもKOさせることです。気絶、ギブア
ップ、どんな形であれ戦闘不能と審判が判断すればそこで終わりです。」
「なお、以前に川神学園で開かれたというタッグマッチにのっとりリングの外
に出てしまうのも即アウトとなります。ただし、リングアウトとなるのは場外
に足がついた場合のみです、極端な話逆立ちでリング外を歩行する分には一向
に構わないということですね。」
皆真剣にルールに聞き入っている。
細かいルールが設定されていれば、頭を使う者にとってはここから戦いは始ま
っているようなものだろう。
「つまりいくら片方が強くとも、上手くペアの相手を補佐できなければ初戦敗
退などということもざらにあるのです。」
「今回のテーマ、絆……。互いの相性、チームワーク、信頼関係、諸々の要素
が全て勝敗の鍵を握ります。」
「そんな過酷なトーナメントを制した者には九鬼からの豪華商品、九鬼財閥で
の重役待遇確約証文も贈られます。」
「そして勿論当日はテレビ中継もされるので、その勇姿が全国に放送されるだ
けでなく、大会で優勝したという絶大な名声を得るのも当然のこと。さらには
武神・川神百代とのエキシビションマッチの権利まで与えられます。」
まさに超級の賞品の数々に辺りがざわめく。
それほど大規模なイベントなのだ。
「ペアは参加資格を満たした者同士ならどんな組み合わせでも結構。男同士、
男女、女同士、どんなペアでも当日は同じリングの上で平等に戦っていただき
ます。」
「皆さん、この大会に奮ってご参加ください。」
その言葉も今頃電波に乗って全国に届けられているのだろう。
こうして最大の武の祭典のスタートはきられたのだ。