真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

49 / 132
予選

―若獅子タッグマッチトーナメント予選

李と海斗も早速申し込みを済ませて、控え室で第一回戦の召集を待っていた。

 

 

「悪いな、ここまで付き合わせちまって。」

 

「気にすることはありません。私もあまり戦ってないと腕が鈍るので。」

 

「……それは単純な戦闘の腕がってことでいいんだよな?」

 

「ふっ。」

 

「何故そこで言葉を濁す……」

 

 

あまり深く聞いても自分にメリットはないと思った海斗は、これも李の小粋な

ジョークの一種だろうとそこでその話は打ち切ることにした。

 

 

「李静初様、流川海斗様、次の試合が出番となります。」

 

 

タイミングよく順番がまわってきたようなので席を立つ。

 

 

「静初、任せたぞ。」

 

「任せてください。」

 

 

試合前の打ち合わせはその問答だけで終了した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「さて、次の対戦カードは怪盗アサシンVSファールブラザーズです。」

 

「初戦から明らかに怪しい名前のチームに当たったんだが。」

 

「へへへ、ばらばらに引き裂いてやるぜ。」

 

「絶対これなんか反則するだろ。」

 

「ばれなきゃ反則じゃねーんだよ。」

 

「……ほんと今すぐ失格にしてやりたいけどな。」

 

「大丈夫ですよ、海斗。失格も敗退も大して変わりません。」

 

「言ってくれるじゃねぇか、後悔させてやるぜぇ。」

 

「公開処刑で後悔……」

 

「もうさっさと始めてくれ。」

 

「では、試合開始!」

 

 

その合図とともに海斗は相手から離れるようにフィールドの外側へ向かって走

り出す。

 

 

「弟よ、お前はこのメイド女を狩ってやれ。俺はあの逃げ腰男を始末する。」

 

「へへぇ、兄者が追いつく前に倒しちまいそうだぜぇ。」

 

 

兄のほうが頑丈な体つきとは似合わぬスピードでみるみる海斗のほうへ迫る。

そのまま直進を続ける海斗であったが……

 

 

「その先は場外だ、さーてどうするぅ?」

 

「これは、弱ったなっと!」

 

 

端まで追い詰められ、逃げ場をなくした海斗はあろうことかそのまま落ちれば

即アウトの場外へとんだ。

 

 

「ははぁ、逆に潔い死に方だな。」

 

「そう簡単に負けるかよ。」

 

「なっ……!」

 

 

海斗は前傾で飛び込んだその体をさらに折り曲げると……

 

 

「よっ。」

 

「ハンドスプリングだと!?」

 

 

相当無理があった姿勢からにも関わらず、それは手の力だけとは思えない高さ

のジャンプを生み出した。

 

 

「だが、その先はどの道アウトだ。微々たる延命処置にすぎない。」

 

「どうだかな?」

 

「そこまで試合終了!」

 

「なんだって!?」

 

 

海斗の体はまだ場外には接触していない。

審判の判断が早いとかでないとするなら……

 

反射的に振り返るとそこにはメイドの足元で気絶して倒れた弟がいた。

戦闘の音すら聞こえなかったというのに、確かに決着がついていた。

 

 

「この程度の任務、造作もありません。」

 

「な、な……!」

 

「分かったか?少しの時間で勝敗なんて変わるもんだ。」

 

「勝者怪盗アサシン!」

 

 

勝負が決した瞬間、歓声が沸き起こる。

というか、黄色い声援といった方が正しいだろうか。

その主な発信源は川神学園一年生による流川海斗ファンクラブからと、何故か

試合観戦に来ている九鬼のメイドたちだった。

 

 

「相変わらず人気者ですね、海斗。」

 

「あ?なんだって?」

 

「なんでもありませんよ。」

 

 

本当にいい迷惑な男性だと李は呆れつつ微笑むのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

試合の合間の時間。

海斗は気分転換がてら会場の外を一人でぶらぶらと歩いていると、意外な人物

に出くわした。

 

 

「焔か?」

 

「海斗、よかった。こんなところにいたか。」

 

「どうしたんだ?焔も参加してるんじゃないのか?」

 

「いや今回大友は不参加だ。」

 

「そうか、てっきり……」

 

「本当は海斗と組みたいと思い、こちらまで遥々来たのだがな。こちらで他の

者から海斗の言ったことは聞かせてもらった。」

 

「あ……」

 

「諦める覚悟がついたはいいが、そこからペアを組むのにはもう余り者はほと

んどいなくて今回は諦めることにした!」

 

「ごめんな。」

 

「構わん、海斗のさっきの試合見させてもらったが、ペアの相手も足を引っ張

るような腑抜けではなかったようだし……こうなったらこの大友、精一杯応援

させてもらう!」

 

 

そんな焔の嘘偽りない真っ直ぐな姿勢に海斗は救われた。

改めて自分のまわりは良い奴ばっかりだと、実感するのだった。

 

 

「分かった。じゃあ俺は焔の期待も背負って優勝を目指してやる。しっかり見

ててくれよ。」

 

「ああ、その意気だ!海斗ならできると信じているからな。」

 

「つっても、それは結局自分のためだからな。お詫びに今度、俺の知ってる数

少ない川神を案内させてくれ。いや……、一緒にまわろうぜ。」

 

「な……それは二人きりでということか?」

 

 

何故か焔のさっきまでの快活な様子はどこかへ隠れてしまい、困惑していた。

 

 

「あ、西方十勇士の仲間とかが一人くらい一緒だったほうがいいか?」

 

「いや違う!二人でいい!…………二人がいい。」

 

「じゃ約束だな。」

 

「うむ!」

 

 

元気に頷いたその表情は眩しくて。

やっぱり焔には笑顔が似合っていた。




これだけキャラが多いと全てを均等には出せないという困難な問題
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。