沢山の工場が立ち並ぶなかに死角となる場所。
そこで敵の大将とぶつかり合っていた。
「さっさと終わらせようぜ。」
「ハハハハ!」
その言葉に石田は笑いを漏らす。
まるで言っていることが的外れだと言わんばかりに。
「はっ、あまり見くびるなよ。貴様は勝てると思っていたらそれは大間違いだ
ということを教えてやる。」
スラリと日本刀を抜く。
そして、それだけではなく……
「奥義・光龍覚醒!!!」
叫呼とともに髪の色が突然金色に変化する。
気も先ほどと比べて膨れ上がった。
どういう原理だか知らないが力がオーラとなってあふれ出ている。
「なるほど、強くなったのか。」
「やっと分かったようだな。なにせ寿命を削るほどの大技。この状態の俺に勝
てるものなど川神百代くらいのものだろう。諦めるのだな、ハハハハハハ!」
「それは…………ん?」
石田が斬って捨てようと日本刀を振り上げた瞬間、カツンと響く音。
広い工場地帯、何かがぶつかったのかとも思ったがまたすぐ後にカツンと音が
鳴る。
その音がだんだん近づいてくるにつれて、それらが孤立したものではなく連続
した1つの音だと分かった。
カツンカツンカツンと地を蹴るような音だ。
しかし、音のほうに目を向けてそれも間違いだと気づいた。
蹴っているのは“地”なんかではない。
工場の壁を駆け下りてくる少女。
1つにまとめられた長い黒髪を降下に伴う向かい風に揺らし、海斗たちのほう
に近づいてくる。
手には日本刀、いわゆる臨戦態勢で……
「ちょっ、待て!今来ると……」
海斗が叫ぶが、少女は止まるどころか位置エネルギーの力を借りて、さらに加
速していく。
そして、かたや石田も日本刀を振り下ろす構えに入っている。
ちょうど海斗はそんな二人に挟まれる形だ。
その攻撃は同時に海斗に届いた。
「……ったく、洒落になんねぇ攻撃だな。」
「「なっ……」」
空気を切り裂くような斬撃、だがそれはまさに空気を斬るだけに終わった。
海斗は二本の刀を片手で両方とも受け止めていた。
しかも刃には触れず、指で側面を押さえるという徹底ぶり。
(この女の子、相当力あるな。)
特に変わらない日本刀を防いでいるはずなのに、明らかに少女の得物を止めて
いる右手のほうが負担がかかっている。
しかし、見たことのない顔だ。
敵かとも思ったが、これほどの使い手ならば止められたところで海斗に対して
なんらかの攻撃をしてくるだろう。
では、誰だという疑問が海斗の中に渦巻く。
「俺の刀を止めるとはなかなかや……」
「うるせぇっつーの。」
「ぐあっ!」
考えているときに横で騒がれたのでついど突いてしまった。
集中が途切れるため、咄嗟の行動だったのだが……。
「やったわ、海斗!大将を倒したのね。」
「へ?」
「やったわね、アタシたちの勝ちよ!」
「いやいや、この謎の少女とか解決しなきゃいかんだろ。」
「義経は感動した!」
「お、いきなりなんだ。」
問題の少女がいきなり口を開く。
その瞳は心なしかキラキラしている。
「義経の刀を片手で受け止められてしまうとは……とても強いのだな。」
「いや、ただのまぐれだ……っていうか義経ってあの英雄の源義経か?」
「厳密に言えば、義経はその英雄のクローンだ。武士道プランによって、誕生
した。」
「こんな可愛らしい女の子がか。」
「か、可愛いなんて……、そんなことは全然ないぞ!ん、ごほん!義経は義経
だ。性別は気にしないでくれ。」
「まあ、確かに性別なんて関係なく強いと思ったけどな。」
「本当か、ありがとう!しかし、そちらの実力も見事なものだった。是非、名
前を教えてくれないだろうか。」
「俺は流川海斗だ。実力はほんと別に大したことないから気にしないでくれ。」
「承知した。これからよろしく、流川君。」
「ああ、よろしくな義経。」
「では、さらばだ!」
そう言って義経は颯爽と去っていった。
「あれが今度2-Sに入るっていう転入生か。」
大和が危険が去ったのを見て話しかけてくる。
「武士道プランとか言ってたが、またなんか始まりそうな予感がするな。」
「そんなことよりアタシたち勝ったのよ!」
「あ、すっかり忘れてた。」
これにて色々な謎を残しつつ、いきなりの東西交流線は幕を閉じた。
勝者は川神学園である。
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戦いが終わり、天神館の者たちも去っていく。
「東には完敗であった。また戦えることを楽しみにしている。」
大将の石田がそう告げて、次々に帰っていった。
正々堂々戦った武士らしくすっきりした終わりであった。
そして、海斗の前には……
「海斗……あの携帯番号とか教えてくれないだろうか?」
「全然構わないが。」
「ほんとか!」
わざわざ海斗の前まで出てきた焔が満面の笑みになる。
考えに考えて勇気を振り絞った一言だったということも海斗は知る由もない。
「……帰っても絶対に連絡するから!」
「ああ、待ってる。」
「ふふっ。」
焔も最後に笑顔を浮かべ、仲間の後に続いていった。
「ちょっと待って、海斗。今のどういうこと?」
「またフラグを建てたのか!」
一子と京が抗議してくる。
京に関してはもう結論にたどり着いてるのは流石といったところだろうか。
「別に仲良くなって連絡先交換しただけだろ?」
「なんか複雑だわ……。」
「というか、相手は完全にね。そこを気づいてないのがまた……」
「そんなことでいちいち騒ぐのはやめなさい。」
そこへマルギッテがやってくる。
「う……なんか妙に余裕な発言だわ。」
「この状況でリアクションなしとは珍しい。」
「今更いちいち敵の数が増えたことを気にしても仕方ないでしょう。」
「なんか本当に正論なんだけど、どうしてそんな余裕なの。」
「別に私は覚悟のうえですから。」
終始クールな軍人さん。
京たちは別に先ほどの自分たちのリアクションを恥じてはいないが、こうも冷
静でいられると器の差を見せつけられたようだ。
一番焦って怒りそうな感じでもあるのに、何故ここまで大人の対応なのか。
「で、海斗。私は任務を頑張って果たしたので、その……約束どおりにですね
……ご褒美を。」
「そういうことか!!」
こうして色々濃い一日が終わった。
そして、いきなり現れた義経のクローンを名乗る少女。
次の日からまた大変な日常が始まる予感がしていた。