真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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白熱の幕開け

「第一回戦みやこゆきVS侍&ナイト、はじめぇ!」

 

「京、手加減はしないぞ。」

 

「クリス、私も容赦なくいくから安心して。」

 

「ふ、そうでなくてはな!」

 

「!」

 

 

クリスはレイピアを構えると京のほうへ一直線に向かってきた。

といっても距離は既に空けている。

いくらクリスの磨きぬかれたレイピアの突進が速いと言っても、突きが決まる

までに京が射撃で止めることなど造作もない。

意表はつかれたものの冷静に対処すればなんら問題はなかった。

 

 

「焦りすぎだよ、クリス。」

 

 

京は素早く二本の矢を構えると続けざまに打ち出した。

1本はレイピアを持つ利き手側の肩、もう一本はその逆の足の膝に向けて。

動く的にも関わらず京の射撃は正確にそこを捉えていた。

回避のためには攻撃を中断し、退かざるをえない。

 

 

(そこを狙う……)

 

 

あそこまで勢いのある直線的な動きだ。

咄嗟にさがる方向もある程度限られてくる。

京はそれを分析できるくらいにはクリスを知っていたし、勿論その一発で確実

に急所を射抜く自信もあった。

 

 

「はぁっ!」

 

「な!」

 

 

だが京の先読みは思わぬ形で破られる。

義経がどちらの矢も斬撃で落としてしまった。

正確性がとりえではあるものの威力も伴った京の矢を一振りで迎撃できるのは

やはり義経の実力がうかがい知れる。

 

 

「まだまだ!」

 

 

予定は狂ったが、切り替えが重要だ。

京は対応しにくい位置に不規則かつ連続で撃ちこんでいく。

しかし義経はまるで最初から来る場所が教えられているように無駄の一切ない

動きで完璧に対応していった。

 

 

(やっぱり弓矢の攻撃には慣れてる……)

 

 

相手はあの源義経、那須与一という弓の名手の主なのだ。

実際に対峙する機会などそう多くなくても、自然と目が覚えるというものだろ

う。

悉く京の矢ははじかれて、クリスの進撃がとまることはない。

近接戦闘に持ち込まれるのはまずいとかではなく、あの一突きをくらってしま

えばそれだけで勝負が決してしまう。

そのことは理解できた。

 

 

「終わりだっ!」

 

「っ!待って、クリスさん!上だ!」

 

「!?」

 

 

義経の呼びかけの必死さにクリスは状況も飲み込めないまま、攻撃を中断して

後ろにさがる。

そのすぐ後のことだった。

クリスがあのまま進んでいればちょうどいたであろうその位置に、小雪があり

ったけの力を込めた蹴りで落下してきた。

その驚異的なまでの攻撃力と容赦のなさは大きく抉れた会場のリングが物語っ

ていた。

 

 

(ふむ……かなりの激戦も想定して作られた頑丈なステージを武器も使わずに

破壊するとはなかなかあの娘……)

 

 

観客の安全を守るためにステージの四方の一角を担いつつ、試合を観戦してい

る鉄心も思わず感心していた。

そして驚くべきは会場を砕く威力だけではなかった。

 

 

(なんて跳躍力だ……最初の二連続射撃、あのとき既に地に足はついていなか

った……)

 

 

そう、小雪は試合開始直後に早々と戦場から消えたのだ。

勿論場外に出たわけではなく、遥か上へと。

京の射撃で相手の気を引いている隙に跳んだ。

いや滞空時間や降下のタイミングの正確さを考慮に入れると、跳んだというよ

りも“飛んだ”というほうが適切なのかもしれない。

 

 

「まだまだいっくよーん♪」

 

「ぐっ……」

 

 

なんとかバックステップでかわせたクリスにも小雪は追撃の手を緩めない。

体勢を上手く持ち直せないうちに蹴りを叩き込もうとする。

 

 

「させない!」

 

 

重い蹴りは義経の刀一本で受け止められた。

とはいえ、義経でも止めるので精一杯だった。

 

 

「てぇい!」

 

 

威力重視の蹴りを受け止められた小雪は怯むことなく、鋭さと速さを極めた蹴

りの連撃に移行する。

その変化にも取り乱すことなく冷静についていく義経。

まさに達人同士の試合のようであった。

 

 

「とぅっ!」

 

 

かけ声で攻撃の手が途切れたと思うと、小雪は大きく脚を振り上げていた。

パワーがあるだけでなく柔軟性も兼ね備えたその脚はもはや1つの完成された

武器といっても過言ではない。

しかし、ハンマーのように振り下ろされるそれは義経を捉えきれず、寸前の空

をきった。

 

 

(っ……危なかった……)

 

 

義経が安心したのも束の間。

小雪のかかと落としは手前の地面を大きく破壊し、弾丸のような瓦礫を義経に

向かって射出した。

 

そこで義経は自分の誤解に気づいた。

 

一つ目の誤解。

さっきのステージを破壊するほどの威力。

あれはてっきり圧倒的高度からの重力加速度によって生み出されたものだと考

えていたのだが、違う。

目の前の少女のインパクトそのものがあの威力を持っているのだ。

 

二つ目の誤解。

先程の一つ目の誤解が発覚すれば、前提自体覆ることになる。

つまりこのかかと落としは目測を誤ったのでも、上手くかわせたのでもない。

この間接的攻撃をするためだけの意図したもの。

勿論、こちらは瓦礫をかわすための行動を次にする。

しかしそれは相手に読まれているということで……

 

 

「くっ!」

 

 

咄嗟に腰を落として弾丸は上手くかわせた義経だが、同時にこのかがんだ姿勢

は機動力の減退そのものだ。

小雪のローキックが外れることはない。

だが、この瞬間形勢は逆転していた。

 

義経がしゃがんで姿を現したのはクリス。

あの攻防の間に義経の後ろにつき、レイピアを構えていた。

そして不意をついた最大の攻撃のチャンスが今やってきたのだ。

 

 

「ここだ!」

 

 

……レイピアは正面から力を相殺されて進まない。

その狭すぎる剣先に矢が当たっていたからだ。

 

 

「集中すれば外さない。」

 

 

威力を殺されたクリスには決定的な硬直があった。

それは致命的な隙となる。

ブン、というまるで棍棒を振るうかのような音。

小雪の横薙ぎの蹴りがクリスをはじきとばす。

 

 

「ぐぁっ!」

 

「おーっと、これは決まったか!?」

 

 

痛烈な一撃。

しかし、京には何かが引っかかっていた。

今の攻撃……“何故義経は防がなかった?”

 

 

「っ!」

 

 

気づいたときにはもう遅かった。

クリスのダメージを覚悟したうえでの英雄の高速の攻撃。

クリスと同じく攻撃後の硬直で隙ができた京に受けきる術はなかった。

 

 

「はぁっ!」

 

 

義経の渾身の斬撃が京に極まった。

 

 

「勝者、侍&ナイト!」

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