ワァーーー!
「なんということだ!第一回戦から白熱の試合だ!これが本選なのか!」
会場の盛り上がりも当然。
それほどの試合が繰り広げられたのは誰もが認めるところだった。
「今の試合、解説に聞いてみましょう。」
「いやー面白い試合だったな。お互いのチームとも読みあいと読みあいの合戦
だった。」
「ふん、結果義経たちの勝利だとはいえ、あそこまでの喰らいつきは評価に値
するな。」
衝撃を受けていたのは観客や百代たちだけではなかった。
(あの榊原という娘、確実にワシが知っておる実力よりも進化しておる。彼女
だけではない、椎名やクリスにしてもそうじゃ。これもあやつの影響かのう。
全く……厄介なものじゃ。)
鉄心は寸考のあと、自分の仕事に戻る。
次はその厄介な男の試合だ。
「では続いていきましょう、第二回戦、ブラッディ・ハウンドVS怪盗アサシ
ンだ!」
「まさか早速李とぶつかるとはな。」
「お互い全力をつくしましょう。」
百代は対峙する二人を見ながら呟いた。
「九鬼のメイド同士の戦いか。なんか面白くなりそうだな。」
そして、控え室でモニタリングしていた他の出場者たちも。
「あれが海斗のペアなのね。」
「どれほどの実力か、見せてもらおう。」
李と海斗の関係性なんてここにいる誰も知らない。
ならば、実力に目がいくのは自然なことだった。
「では第二回戦開始!」
「パーティ開始はド派手にいってやるぜ!」
「む……!」
ステイシーは懐から手榴弾を取り出すと、豪快にピンを口で引き抜き放った。
そこに李は避けるどころか突っ込んでいった。
「おーっと!いきなり捨て身の突撃だぁー!」
李は手榴弾の前に構え、どこからか見たことのない工具のようなものを一瞬取
り出したかと思うと……
「完了です。」
手榴弾は地に落ち、重い金属の音だけを響かせた。
「チッ、あの一瞬で不発弾に変えられたか。」
「その程度の手の内は熟知していますよ、ステイシー。」
これが同僚であるが故のやりやすい点。
李は言いながらまたどこからかクナイを取り出す。
暗器といえども無尽蔵ではない、李の手際はその常識を忘れさせるものだった。
「……そして、早速チェックです。」
李はクナイをステイシーに向けて真っ直ぐと投擲した。
元暗殺者の急所に正確且つ迅速に狙いを定めることを除けば、何の変哲もなさ
すぎる攻撃。
「ファック、こっちだってそんな芸は見飽きてるなぁ!」
いくら相手の裏をつきやすい暗器でも、その能力を知られていれば効果は半減
どころではない。
これが同僚であるが故のやりにくい点。
「……しかし、やりにくいからこそやりやすい。」
パシッ、と。
確かにステイシーの真後ろで何かを掴むような音が聞こえた。
相手は何度もこちらの技を見ているのだから、冷静な対処をされることは目に
見えていた。
しかし、逆に言えば相手がこちらの攻撃を分かっていることをこちらは分かっ
ているのだ。
手の内が知られているからこそ、簡単に回避できると高をくくる。
取るに足らない安全圏の攻撃だから後ろに回っていたペアの存在に気づかない。
「流石にこの距離なら俺でもはずさねぇな。」
海斗は受け取ったクナイを背後から避けきれない位置へ投げ返す。
しかし、それはトンファーによっていとも容易くはじかれた。
「……妨害されない場合に限るが。」
マルギッテは海斗のほうに体を向けつつ、後ろにも警戒を怠らなかった。
仮に今、李がクナイを投げたとしても結果は同じだろう。
「油断をしすぎです。」
「ペアっつーのがすっかり飛んじまってたぜ。」
「次は当てます。」
李の言葉とともに今度はさっきとは形状の違う3本のクナイが取り出される。
殺傷能力を低めた代わりに速度が出るタイプのもののようだ。
「くっ……!」
同時に放ったにも関わらず、狙いは寸分も狂わずにステイシーとマルギッテを
捉えていた。
最初に普通のクナイの速度を見せておいてのこれというのがやり手だ。
とはいえ不意打ちの攻撃はある意味戦場に生きた二人には日常茶飯のようなも
のであった。
今度はステイシーも冷静に威力不足のそれを叩き落す。
「ハッ、なめんじゃねーよ。」
「待ちなさい、まだ……」
マルギッテの静止にステイシーも違和感に気づく。
そう、まだなのだ、何かを見逃している。
先程李が構えたクナイは3本……うち2本は正確に二人を狙ったが……
いや、しかしこちらに飛んできていないなら被害はない。
(……違う!)
マルギッテは心の中で叫ぶ。
さっき確認したはずじゃないか、これは“ペア”の戦いなんだと。
海斗のいたほうを確認する必要はなかった。
なぜなら自分たちから大きく横に逸れたそこ。
1本だけわざと外されたクナイとそこに拳を打ち込もうとする海斗の姿があっ
た。
その攻撃は矛先がこちらに向けるだけでなく、威力も速度もさっきのただの投
擲とは段違いのレベルのものに昇華させる。
今のままではほぼ不可避の一撃だった。
バキン!
クナイは届いたかと思った瞬間、ばらばらに砕かれた。
「やはり最初からこうしておくべきでしたね。」
そこには眼帯を外しクナイを破壊したトンファーをまわすマルギッテと重たげ
なメイド服を脱ぎ去り水着の格好で銃火器を構えるステイシーが。
「こっからが本番だ、ファック野郎。」