「おーっと!ブラッディ・ハウンド、その姿を変え、
勝負は分からない!」
「さて……こっからが大変だな……」
「ハッ、覚悟しな!」
向けられる銃口。
次の瞬間、マシンガンが火を噴いた。
「くそ……」
やはり銃火器というのはその存在だけで大きな戦力となる。
戦闘のプロフェッショナルが使っているとなれば尚更だ。
「海斗、ここは私が。」
しかし、プロというなら道は違えどこちらにもいる。
李はすぐさま数枚の手裏剣を重い銃で手がふさがっているステイシーへと投げ
る、とにかく一旦攻撃を途切れさせることができればいいと。
だが、本気になったブラッディ・ハウンドはそんなに甘くはなかった。
「この武器の判断は愚かだと知りなさい。」
マルギッテが手裏剣の軌道に割り込む。
流石に海斗もトンファーではじかれることくらいは予想していた。
しかし、マルギッテの行動はそれを超えてきた。
手裏剣を叩き落とすのではなく、全く同じ力で李のほうに返してきたのだ。
「くっ……」
結局、自分の攻撃によって弾数を増やしてしまった。
李は手裏剣をなんとか転がることでかわす。
しかし、それを避けたからといって銃弾の雨が止むわけでもない。
なりふりは構っていられなかった。
「このまま一気にキメてや……ウォッ!?」
「戦闘に夢中になりすぎだ。」
いつの間にか海斗がステイシーの懐まで潜り込んできていた。
これには銃撃を一旦中止せざるを得ない。
海斗の左手の拳を間一髪で流す。
「感謝します、海斗。」
その一瞬の隙にと、李は立ち上がり体勢を立て直す。
ステイシーはそれを見て、悔しげに舌打ちをした。
「さすが海斗……簡単に突破してくれる……!」
「おっと。」
マルギッテが後方から迫り、トンファーを横に薙ぐ。
海斗は見もせずにそれをかがんで回避すると、体を反転させて次の縦に振り下
ろす攻撃も危なげなくかわす。
そこからもマルギッテは連撃を続けていくが、海斗には一発も当たる様子はな
く、そのうえ復帰した李からの何本ものクナイ攻撃に邪魔される。
一歩間違えば味方への攻撃になりそうなものだが、実際マルギッテへの妨害に
しか影響していない。
海斗はどちらにも当たらずただひょいひょいと体をずらすだけだ。
そんな海斗の動きを見て、石田が呟く。
「さすがにあいつの回避能力には目を見張るものがあるな。あれだけの弾幕の
なかをよく動けるものだ。」
「ああ、私も最初はそう思っていたのだがな……」
「む、どういうことだ?」
「海斗の実力だけでかわすことだって勿論可能だろうが、あの李とかいうメイ
ドも相当上手く当たらないような位置に武器を投げ込んでいる。まるで海斗の
次の行動が見えているかのようにな。」
冷静に見れば、どこからあれだけの本数のクナイが出るのかなどとツッコミど
ころは多々あるのだが、やはりこの攻めには見るものが見れば相当のセンスを
感じるだろう。
単純な飛び道具の命中率、相手の隙をついた攻撃のタイミング、そして海斗と
の息の合った連携、全てが揃って実現する。
しかもそんな繊細さが求められる作業をステイシーから浴びせられ続ける銃弾
をかわしながらやっているのだから、驚きを隠せない。
(李静初か……一体海斗とどういう関係なんだ。)
確かに李の強さは圧倒的であった。
しかし、武神ともなれば壁を超えた者を数多く目にしてきている。
だからこそ百代の目がいったのはその実力ではなく、海斗との相性だ。
まるで海斗のことを理解しているというような迷いのない攻撃。
あそこまでの関係に至っているのに、とても初対面の相手を急遽ペアに選んだ
のだとは思えない。
色々な考えが巡る間にも戦いは進行していく。
そしてバトルの展開を大きく変えるその瞬間
とき
はやってきた。
「ファック、弾がきれやがった。」
強さが確約された銃火器の唯一の弱み。
当然それを海斗が見逃すわけがなかった。
マルギッテがクナイに気を取られたわずかなタイミングを見計らい、全く無駄
のない動作で隣をすり抜けた。
言うまでもなくその先には武器が封じられた丸腰のステイシーがいる。
マルギッテはすぐさまマズイと判断し、後ろから追いかける。
ステイシーを守ろうと意識で頭がいっぱいだったマルギッテには次の海斗の行
動は全く予想外のものとなった。
ステイシーの方へ行くと見せかけたその足はバク宙から、背後に迫っていたマ
ルギッテへと振り下ろされる。
理解は追いついていないものの、そんな不意打ちも咄嗟にトンファーで防ぎき
ってみせた。
しかし猟犬としての勘が知らせていた。
今、自分は罠にはまってしまったのだと。
最初から弾切れのステイシーなど狙っていない。
銃がなくとも元傭兵の彼女に正面からつっこんでもすぐに決着はつかない。
それならばどうするのが一番得策か……?
音もなく元暗殺者はマルギッテの後ろをとらえていた。
分かっていても自分の得物は今海斗の蹴りを防いでいる。
ステイシーにも遠距離攻撃の術はない。
「……チェックメイト。」
鮮やかな当身を一発。
それだけでマルギッテは崩れ落ちた。
「勝者、怪盗アサシン!!」