真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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戦いのその先

「皆様、これで一通りのブロックの試合が終わり、合計4組の準決勝進出者た

ちが決まりました。」

 

 

白熱の四連続試合を見ている間に時間はとっくに過ぎ去っており、気づけばも

う午前も終わろうとしていた。

 

 

「では、一旦昼休憩とさせて頂きます。皆様、昼食などをとって午後からの観

戦にお備えください。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

―選手控え室のうちの一室。

そこにはベンチに座ってうなだれた天使と傍に立つ一子がいた。

 

 

「スマねぇ……ウチがもっとねばれてれば……」

 

 

天使は相手の卓越した棒さばきに太刀打ちできなかった自分が情けなくて許せ

ないようで頭を下げっぱなしだった。

落ち込みながらも拳は悔しさできつく握られていた。

 

 

「そんな謝らないでよ、アタシだって……」

 

 

確かに勝敗を最終的に決めたのは天使が場外に飛ばされたことだ。

しかし、それは結果論でしかない。

あのまま続いていればボロボロの自分が倒されるのも時間の問題だった。

遅かれ早かれ勝負は決まっていたのだ。

それでも天使は自分を責め続けてしまっている。

 

一子は一体どんな言葉をかけてあげればいいのだろうか。

おそらく明確な答えなどはない。

負けたという事実はそこに存在して、悲しみや悔しさは強くなりたかったから

こそ絶対に感じるものなのだから。

これが一対一の試合だったなら己自身の強さ一つで乗り切れる。

しかしチーム戦の場合、どうしてもペアに負い目を感じてしまうのだ。

 

それでも一子は今言うべきことをしっかりと見つけた。

 

 

「昔、アタシが海斗とペアを組んで学校の大会に出場したとき……、アタシは

正直強敵と当たった試合では足手まといでほとんど海斗の力のおかげで勝った

ようなものだったの。だけど、海斗は言ってくれたわ。ペアのどっち片方がい

なかったら、この勝利の結果はなかったって。」

 

「海斗が……」

 

「今回は負けちゃったけど、それだって同じよ。どっちが悪かったとか、足を

引っ張ったとかじゃなくて、アタシたち二人が全力でぶつかった結果なの。だ

からまた思いっきり修行して、強くなって……今度は絶対勝ちましょ!!そう

でしょ?パートナー。」

 

「…………は、そうだな!ウチがあんなのにやられっぱなしでいられるかって

の、ゼッテー強くなってやる。」

 

「その意気よ!アタシだってこのままじゃ終わらないんだから。」

 

「じゃ、とりあえず午後は海斗の応援いこーぜ!}

 

「そうね、今までは自分たちの試合のことでいっぱいだったからあんまり集中

して見れなかったし。」

 

「よっし、そうと決まりゃまずは腹ごしらえだ。」

 

「それならお店までの競走で負けたほうの奢りよ!」

 

「いいぜ、受けてたとうじゃん!」

 

 

勝負の世界には必ず二つの結果が待っている。

敗北もまた彼女たちの絆を深め、強く成長させるのだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「……これは何をしているんですか?」

 

「ん?ポテトを食ってるんだが。」

 

 

休憩室に入った李は先にいた海斗に問いかけていた。

というか、そんな答えは見れば分かる。

 

 

「すみません、言葉が足りませんでした。“ステイシー”、何をやっているん

ですか?」

 

「アン?何を聞いてやがったんだ、ポテト食わしてやってるんだよ。」

 

「はぁ……」

 

 

だから、そんなことは見れば分かるのだ。

ステイシーのことだから分かっていてふざけているのだろう。

 

 

「何故そのようなことを?」

 

「私に勝った部下へのご褒美兼餌付けだな。」

 

「まだその冗談続いてたのか。」

 

「ファック、黙ってポテト食ってろ。」

 

「おい待て、そんな本数一気に……ぐふっ」

 

「ステイシー、こんなことをするタイプではないでしょう。随分と気に入った

ものですね。」

 

「いいだろ、別に。こうして部下を可愛がることで上下関係をしっかり認識さ

せといてやってんだよ。」

 

「そうですか、なら好意などではないのですね。」

 

 

そこでしばし硬直するステイシー。

そして何かを悟ったようにいやらしい笑みを浮かべる。

 

 

「……ハァン、つまり李は嫉妬してるってわけか。」

 

「なっ、何を!」

 

「意外と可愛げあんじゃねーか、斬新な一面だな。」

 

「違います、あくまで海斗は恩人ですから。私はただステイシーがまたおふざ

けで海斗に迷惑かけるのを心配しただけで……」

 

「なら私が真剣(まじ)でいっても構わないってことだな。」

 

「うぉっ!」

 

 

ステイシーはニッと笑うと、いきなり海斗の肩を抱いて、李に見せ付けるかの

ように引き寄せた。

その欧米産の豊満な胸が目一杯押し付けられて、ひしゃげる。

 

 

「ステイシー!冗談もいい加減にしてください。」

 

「いや、海斗なら外見も言うことなし。それに戦い方も最高にロックだったし

な。そこらの餓鬼とは違ってダークな世界を生き抜いてきたんだろ?本気にな

っても何もおかしくはないよな。」

 

「う…………」

 

 

李は海斗の良さを認めてるからこそステイシーに反論できなかった。

そう考えると海斗はずるすぎる。

 

 

「ヘイ、じゃもう一本いっとくか!」

 

「はぁ、海斗も大変ですね。」

 

 

ステイシーの真意は分からないが、人を惹きつけるのは海斗の魅力。

今はこの部下へのご褒美とやらを眺めておこう。




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