真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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新たなる風

―武士道プラン

世界最大の財閥であり、技術も最先端を行く九鬼が掲げた計画。

その内容とは源義経をはじめとする過去の英雄たちをクローンという形で現代

の世に転生させるというもの。

目的としては過去の英雄たちと切磋琢磨し、己を磨く。

インパクトの面でもこれ以上のものはなかった。

 

 

……というわけで。

 

 

「この川神学園に、転入生が6人入ることになったぞい。」

 

 

学長が臨時の全校集会の壇上でそんなことを言い出した。

海斗はというとさっきまでの武士道プランの説明を大和に聞いていたのだった。

 

 

「へぇ、昨日のはそういうことか。」

 

「ていうか、なんで流川は知らないんだよ。今朝はほとんどどのチャンネルで

も取り上げられてた超ホットな話題だぞ。」

 

「いや、テレビ持ってないし。」

 

「……左様ですか。」

 

 

こそこそとやっている間に一人目が壇上に上がった。

 

 

「はじめまして、葉桜清楚(はざくらせいそ)です。今日から3-Sで皆さんと一緒にお勉強させ

てもらうのでこれからよろしくお願いします。」

 

 

ふわりとした挨拶の直後……

 

 

「うおおおおおっ!」

 

「可愛いいいいいいぃぃぃ!」

 

 

男子生徒から熱狂的な歓声があがっていた。

なかには早速ラブコールなどしている奴もいるほどだ。

 

 

「確かに爽やかでいい感じではあるけど……ってどうした、流川?そんな険し

い顔して。」

 

「いや、ちょっとな……。」

 

(なんだ、彼女を見た瞬間ほんの少し感じた正体不明の寒気。見た感じ普通の

女の子だし、別にキャラを作っているという感じでもない。というか、嘘をつ

いているなら見抜ける。だとしたら、あの違和感はなんだ……。)

 

 

気になりはしたがそう簡単に答えが出るわけでもなく。

壇上でニコニコしている彼女を見て、考えるのをやめた。

そこにいるのは何の嘘もついてない優しそうな女の子だ。

 

 

「なお、葉桜清楚という英雄がおらんのは知っておるな。」

 

「ああ、それが気になってた。」

 

「私はまだ誰のクローンか教えてもらっていないのです。でも、本を読むのが

趣味なので清少納言あたりのクローンだといいなと思ってます。」

 

「見た目通りの文学少女か。流川もしょっちゅう本読んでるし、話あうんじゃ

ないか?」

 

「いや、3年のエリートクラスに接点なんてそもそもないだろ。」

 

 

そんな雑談を交わしながらも朝礼は進行していく。

 

 

「では次は2-Sに配属される3人を紹介じゃ。」

 

 

そう言ってすたすたと歩いてきたのは昨日の少女、義経と……。

 

 

「こんにちは。一応、弁慶らしいです、よろしく。」

 

 

義経と同じく女バージョンの武蔵坊弁慶。

ただゴツゴツした体などではなく、妙に色気が漂う姐さん系であった。

また男性陣が沸いたのは言うまでもないので略。

 

一方の義経は緊張しながらも勢いのある挨拶で皆の心をつかんでいた。

上手くいったところでほっと一息をつき、壇上から全校生徒を見回すとはっと

したような顔になった。

 

 

「おーい、流川君。」

 

 

どうやら海斗のことを発見したらしく、嬉しそうに手を振っている。

おそらく衆人環視の状況であることなど頭からすっぽりと抜け落ちてしまって

いるのだろう。

 

 

「なに、義経の知り合い?」

 

「うん、流川海斗君だ。とっても強いから、義経は尊敬している。」

 

「へぇ、義経がそこまで言うって相当だよね。」

 

 

義経と弁慶がこそこそと会話をしたあと、ちらりと弁慶のほうが海斗に目を向

けてくる。

上から下までじろじろと眺めている。

 

 

「うーん、あんまりそうは見えないけどねぇ……グビグビ」

 

「おーい、あの美人なんか酒飲み始めたぞ!」

 

 

どっかの男子生徒が言うように弁慶はぶら下げていたひょうたんから杯に注い

で、ぐびぐびと飲んでいた。

酔いがまわるのが早いのかほんのりと顔は赤くなっている。

 

 

「はぁー、美味しい。」

 

「こ、これは……酒ではなくて川神水だ。皆も知っているようにアルコールは

入っていない。」

 

「まあ、ならいいかとはならないけどな。」

 

「少々特別扱いのように思う生徒もおるじゃろうが、弁慶はテストで学年4位

以下になったら即退学で構わないというように申し出ておる。もし4位でもと

ろうものならその時点でお別れじゃ。」

 

「大した自信だな、流石英雄ってところか。」

 

 

大和の言うとおり相当な自信がある、もしくはなめられているということなの

だろう。

そして、こうして競争意識を高めるのもまた武士道プランの狙いだ。

 

 

「1位葵冬馬、2位九鬼英雄に続くってことか。今となってはその1位はいな

いが、それでもキツイだろ。」

 

「出来んじゃねぇの、なんか知らんけど。」

 

「流川はいっつも平均点くらいだよな。」

 

「学力のことは言うな、悪くないだけいいだろ。」

 

「毎回ぶれずに平均とるのもある意味凄いけどな。」

 

 

場はざわざわと騒がしくなる。

そう、3人と言ったのにまだ2人しか現れていない。

 

 

「む、那須与一はどうした?照れておるのかのう。」

 

 

その後いくら呼んでも一向に出てこない。

もしかしなくても初っ端からサボりというやつだ。

義経は必死に謝ってフォローしていた。

どうやらなかなかの問題児らしい。

 

 

「……ごほん、次は気を取り直して、武士道プランの関係者の二人じゃ。とも

に1年生で1-Sに所属することになる。入ってまいれ!」

 

 

そこで突然荘厳な音楽が流れ出す。

堂々と歩いてきて、壇上に立ったのは小さな女の子と……明らかに学業は全課

程とっくに終了していそうな老人。

そして、全員の注目が集まったところでの第一声。

 

 

「我、顕現である!」

 

 

それだけでほとんどの者は誰の関係者か理解した。

そう九鬼英雄の妹である。

 

 

「我の名は九鬼紋白、紋様と呼ぶがいい!護衛の手を煩わせないよう、武士道

プランの受け皿である川神学園に飛び級してきたのだ。我は退屈をよしとせぬ

ゆえ、互いに楽しくやろうではないか。フハハハハーーーーーッッッ!!」

 

「まさにあの兄あって、あの妹ありって感じだな。」

 

「退屈が嫌なんだと、どっかの誰かさんと同じこと言ってるな。」

 

「今となってはそんなこと言ってた頃が懐かしい。」

 

「まぁ、この学園で退屈なんてそうそう有り得ないってことだ。」

 

「けど、1年生は二人だろ?またサボりか?」

 

「1年で凄い度胸だな。」

 

「何を言っておる、さっきからずっと横におるじゃろう。」

 

「「…………」」

 

 

どうやら現実逃避は許されなかったようだ。

スーツを身に纏った老いた外人が一歩前に出る。

 

 

「新しく1年S組に入ることになりました。ヒューム・ヘルシングです。皆さ

んよろしく。」

 

「なんでもありか、この学園は。」

 

「ヒュームは紋ちゃんの護衛じゃ。」

 

「あの爺さんがヒューム・ヘルシングか。」

 

 

後ろのほうで百代が口を開いた。

隣にいた弓子が反応する。

 

 

「百代、知っているで候?」

 

「ああ、九鬼従者部隊零番、最強の実力者だ。しかし思っていたほどではない

な、やはり老いかな。」

 

「ふん……まだまだお前も赤子よ。」

 

 

次の瞬間、壇上に立っていたヒュームは百代の後ろに移動していた。

 

 

「なっ!?いつの間に後ろに。」

 

「ただ咄嗟に殺気に向けて、小石を投擲したのは褒めてやろう。」

 

 

なんなくキャッチした小石を指の力だけで握りつぶす。

瞬く間にさっきまで形を持っていたものは粉へと姿をかえ、風にさらわれた。

 

 

「しかし、こんなものでは攻撃力が足りんな。実戦では気をつけておけ。」

 

「は?小石?」

 

「あれ、消えた?」

 

 

百代の言葉を聞く暇もなく、またヒュームは姿を消した。

そんなことが起こっていた遥か前方のほうでは。

 

 

「流川、何してんだ?」

 

「別に気にすんな。ちょっと珍しい石が落ちてたから気になっただけだ。」

 

「そうか、ならいいけど。どんな風に珍しいんだ?見せてくれよ。」

 

「ん……失くした。」

 

「どうやったらそんな短い時間でどっかいくんだよ。」

 

「不注意だな。」

 

(あまりにもリアルな殺気出しやがるから、つい反応しちまった。)

 

 

そして、壇上にはいつの間にかヒュームとは違う銀髪の老執事がいた。

 

 

(わたくし)、九鬼従者部隊、序列3番。クラウディオ・ネエロと申します。私達九鬼

気の従者は度々学園に来ることもあるので以後よろしくお願いいたします。」

 

 

クラウディオの挨拶で臨時の全校集会は終わった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

―屋上

そこには今日の集会に参加しなかった者が横になっていた。

 

 

「ハッ、よくやるぜ。あんな馴れ合いに意味があるのか?」

 

 

どこか冷めた中二病の少年、那須与一。

 

 

「くだらねぇ、このままHRもサボるか……。」

 

「いえ、HRには出ていただきますよ。」

 

「げ、桐山……。」

 

 

出てきたのは九鬼家従者部隊序列42位の桐山鯉。

武士道プランの遂行にあたり、彼らクローンのお目付け役でもある。

 

 

「抵抗する場合は武力行使とさせていただきます。」

 

 

その言葉とともにメイド姿の二人が背後から現れる。

金髪で髪を二つにまとめたアメリカンなほうはステイシー・コナー。

序列は15位。

短めの黒髪で落ち着いた雰囲気漂うほうは李静初(リージンチュー)

序列は16位である。

 

 

「なるほど、3対1では確かに手加減ができん。いいだろう、出てやる。」

 

「ハァン?何言ってんだ、あのヴァカは。」

 

「男子特有の時期があると聞く…………ん?」

 

「アン?どうした、李。」

 

「いえ、何か少し懐かしい感じが……。」

 

「どういうことだ?」

 

「…………なんでもありません、戻りましょう。」

 

「おう……?」

 

 

多くの者が入り乱れる川神。

彼らはどう関わり、運命はどこに向かっていくのか。

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