真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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ハプニング

「最初のファイナリストは怪盗アサシンに決まったぁっ!!決勝の座席、残る

は正真正銘1つだ!そして、次の戦いでそれが決まってしまう。では、両チー

ムリングにあがってください!」

 

「よっし、今度は私たちの出番だねん。」

 

 

海斗たちが決勝に駒を進め、次なるは準決勝二回戦。

燕と由紀江の出番…………のはずだったのだが、

 

 

「……む?ストレンジャーズ、リングへ!」

 

 

しかし、返ってくるのはマイクの反響だけ。

 

 

「およ?」

 

「どうしたことでしょうか、このまま出てこなければ試合は無効、チーム大和

撫子の不戦勝となってしまいますが……」

 

 

一試合減ると言われ、観客たちからはブーイングが飛び交うが事態が変わる様

子も見られない。

 

 

「一体どうなっているのでしょうか?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「あーあー、もっと戦いたかったぜー。」

 

 

そんな話題の中心人物たちはもう既に会場からは結構な距離が離れたところを

歩いていた。

 

 

「ま、仕方ないって。」

 

「もったいないだろー、次の試合相手めっちゃ面白そうだったじゃんよ。」

 

「はぁ、強敵だからこそあんな公衆の面前で戦ったらアタシたちも本気を出さ

ざるを得ない、そしたら実力もモロバレだろ。そんなことも分からないとは、

小さいのは胸だけじゃなく脳みそもか。」

 

「は?わっちが胸小さいとかマジ意味分かんねー。」

 

「喧嘩しないでくれ、二人とも。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「どうやら本当にいないようですね……」

 

 

いくら待ってもストレンジャーズがリングにあがることはない。

準決勝まできて異例の事態ではあるが……

 

 

「これはストレンジャーズの試合放棄とみなし、よってこの勝負チーム大和撫

子の勝利となります!」

 

 

不満の声も漏れるが、このまま停滞させておくわけにもいかない。

だがそんな観客たちとは裏腹にこの事態を好しとするものもいる。

 

 

(これはラッキー。)

 

 

松永燕は思わぬ僥倖に喜んでいた。

というのも、理由は2つある。

 

 

(次のストレンジャーズとかいう相手は正体から何からして不確定要素が多す

ぎるし、何よりあのコピーみたいな技は厄介そうだし、試合の中で分析するし

かないと思ってたから、避けられて助かっちゃったって感じかな。)

 

 

今までの試合でも特に手の内を隠してきたチームだった。

燕の戦いは情報が少ないと苦戦を強いられる。

コピーだって出したのはあのときが初めて。

本戦まではそれなしで勝ち上がってきてしまったのだ。

 

そして理由のもう1つは……

 

 

(決勝までの体力温存が思わぬ形で叶っちゃった。なんたって相手はあの海斗

クンだからね。ベストコンディションでいかないと。)

 

 

多少の消耗は仕方ないと腹を括っていたものの、疲れは最小限にとどめようと

思っていた燕にこれ以上のことはない。

それに燕には体力を残しておかなければいかない理由がある。

優勝することがゴールではない。

目指すのは先の先の相手、最強の武人……。

 

 

「では、次はいよいよ決勝戦!!急遽のことで予定が狂いましたので、試合ま

で10分の休憩をとります。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

―選手控え室

 

燕は最後の準備とばかりに怪盗アサシンの試合のビデオを見返していた。

そう簡単に弱点など晒しているわけではない。

しかし、わずかな情報でもそれが勝敗を分かつ要因になりうるのだ。

 

 

「んー…………」

 

 

 

怪盗アサシンの試合を見ていて気がつくのはどれもが作戦勝ちだということ。

頭を使い一番安全且つ迅速な方法で勝利をおさめている。

そんなんだから攻略の糸口を見つけるのは困難を極める。

それでも何度も何度も繰り返し見返す。

 

 

「あれ?これってさっきも……」

 

 

それは海斗の攻撃のワンシーンだった。

左拳でのパンチ、その前にわずかに視線を右にそらしている。

だからどうした?といった感じだが、他の試合を見ても全てそうだった。

 

 

「癖……」

 

 

相手に先を読みにくくするフェイント。

本来それは有効打だが、逆に利用できるのだとすれば……

燕はしばしばの思考の後、頷いた。

 

 

「……覚えておいたほうがいいかもねん。」

 

 

気づけば10分などあっという間で、そろそろリングに向かわなければならな

い時間だ。

燕は立ち上がる。

 

“自分の気持ちを犠牲にするやり方なんて間違ってる”

 

そう言葉をくれたのは海斗だ。

次の試合の敵。

小手先の作戦など通じない。

ならば、自分らしく……

 

 

“俺は関係なくやらせてもらう”

 

 

「私も最後までやらせてもらうよ、海斗クン。」

 

 

歩き出す燕の瞳はもう武士のものだった。




遅い時間にごめんなさい。
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