真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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最強の決勝戦

「さて、多少のハプニングもありましたが皆さんお待たせいたしました。遂に

若き獅子たちの頂点が決まります!怪盗アサシン、チーム大和撫子……果たし

て戦いを制し、栄冠を手にするのはどちらのチームなのか!間もなく決勝戦で

す!!」

 

「海斗クン、勝たせてもらうよ。」

 

「俺も負ける気はない。」

 

 

試合前に色々あった二人だが、リングに立てば戦いに向かう武人だ。

一切の雑念は取り払われた真剣勝負。

 

 

「試合開始!!」

 

「作戦通りいくよん。」

 

「はい!」

 

 

開始早々、由紀江の斬撃が二人を襲う。

とはいえ、そこは決勝まで勝ち上がってきた実力者、各々難なく回避する。

だが既に燕の罠に足を絡めとられていたのだ。

 

 

「おーっと、なんということだ!早くもチーム大和撫子、怪盗アサシンを分断

する作戦に出たー!」

 

 

二手に分かれたのは燕の思う壺だった。

合流を許さないように燕は海斗を、由紀江は李をマークする。

強行すれば合流できないことはないだろうが、相手がここまでの実力者だ。

リスクばかりが高すぎる。

 

 

「まさかいきなり仕掛けてくるとはな……」

 

「さっき海斗クンたちがやってた作戦を使わせてもらったよん。」

 

 

ニコニコと笑う燕。

頭脳も武器にした作戦も得意なものだ。

 

 

「これは上手い作戦だな。」

 

「どういうことだ?」

 

「さっき海斗たちがクリのチームを分断したように結局相手の連携があるほど

この作戦は生きてくる。確かにあのメイドのステータスは想像以上だ。しかし、

やはりチームとしての強さは海斗とのコンビネーションから来ている。対して

燕とまゆまゆはそれぞれの個々の能力が段違いに高い。」

 

「なるほど一対一に持ち込んだほうが都合がいいってことか。」

 

「ああ、海斗の能力がとんでもない可能性はあるが、燕を倒すのは流石にそう

簡単にはいかないだろう。果たして、それまでメイドのほうがまゆまゆの攻撃

をしのぎきれるか……」

 

 

いくら李が強いといっても由紀江の強さはあの海斗との決闘以降、さらに磨き

がかり進化を続けている。

また恋心もその飛躍に拍車をかけている。

一体、今の由紀江の力はどれほどなのか。

 

 

「モモちゃんの解説ありがたいけど、別にあっちが決着つくのなんて待たない

よ。私が海斗クンを潰しにいくから。」

 

「っ!」

 

 

高速の踏み込みから繰り出される拳の二撃。

虚をついた攻撃だったがなんとか回避する。

 

 

「まだまだ!」

 

 

かわしたばかりの海斗に低めの回し蹴り。

軽い跳躍で回避するも、続けざまに正拳突き。

一息つく暇もなく蹴り上げを入れてくる。

まさに怒涛のラッシュだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

一方での由紀江と李。

李は相手と実力の壁が隔たっていることは心得ていた。

様々な暗器を惜しげもなく披露し、遠距離からの攻撃を試みる。

ただ我武者羅に武器を放っているのではなく、由紀江の高速移動も考慮して距

離をつめられたときの回避も常に念頭におきながら動く。

徹底して由紀江の刀の攻撃範囲に入らないような戦い方だ。

 

 

(様々な可能性に対応できるような計算されつくされた無駄のない動き……、

相当の実力の持ち主ですね。)

 

 

実際に対峙して由紀江は見た目異常のやりにくさを感じていた。

自分の動きをさせてくれない。

かといって、防戦一方にも成り下がらない。

隙あらばこちらがやられるという緊張感を常に漂わせている。

まさにプロの暗殺者のなせる業だ。

 

 

(はぁ……はぁ……)

 

 

しかし、それを完璧にこなす李もかなりの疲労が蓄積していた。

体を動かすのもそうだが、常に状況判断をして適した次の一手を選択しなけれ

ばならないため、ずっと気を張り巡らせた状態だ。

相手にプレッシャーを与えるということは自分も緊張感を持つ必要がある。

当然、精神的な負担が大きい。

 

それでも諦めるわけにはいかない。

海斗の足を引っ張るのだけは嫌だから。

いつまでもつか…………。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

休みない燕の攻撃をなんとか避けきった海斗。

 

 

「聞いてたとおり、良い反応だねん。動体視力が優れてるっていうのはだてじ

ゃないみたい。百代ちゃんが興味もつのも分かるよ。」

 

「いい迷惑だがな。」

 

「並外れた回避能力、確かにそれだけでも何にも負けない武器になる。」

 

 

トントンとつま先で地面を小突く。

その何気ない穏やかな動作に海斗は嫌な予感がした。

まるで嵐の前の……

 

 

「でもさ……目がいくら良くても体が反応できなきゃ意味ないよね。」

 

「!?」

 

 

一瞬のことだった。

先ほどのラッシュより何倍も速い動きで海斗の背後をとっていた。

一般人からすればまさに消えたようにしか見えないだろう。

そんな対処不可能の超速攻撃だったが……

 

 

「うぁっ!?」

 

 

苦痛の声をあげたのは燕のほうだった。

腰のあたりに三発ほどパチンコ玉が命中していた。

 

 

「な、どこから……」

 

「別に狙撃なんてしてないぞ。俺が放り投げただけだ。」

 

 

要するにパチンコ玉は宙にばらまいただけ。

燕の人間離れした速度を逆に利用して、威力を持たせたのだ。

速ければ速いほどダメージも大きい。

燕の高すぎる実力が仇となった。

 

 

「いくら速く動けても、目が利かないんじゃ意味ないな。」

 

「…………そだね。」

 

「俺も一方的にやられてるわけにはいかないからな。いくぜ?」




今日の9時くらいに短編あげます
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