若獅子タッグマッチトーナメント決勝。
それは突如、急展開を迎えていた。
「なんということだ!フィールド上で凄まじい爆発が起こっている!」
「なっ、これは……!」
「言っただろ、あいつはルール無用の勝負なら敵なしだ。」
「確かに重火器の利用も認められてるけど、あれだけの爆発物を用意してくる
なんて……」
「違うな、別にルール無用の勝負ってのは爆発物の使用を指して、言ってるん
じゃない。」
「え?」
「いくら李が隙を見つけるプロだっていってもな、由紀江ほどの実力者を相手
にしながらあれだけの爆弾を設置してくのは不可能だ。」
「……でも現に成功してるよね?」
「ルールはないって言っただろ。由紀江と戦っている途中に仕掛けられないな
ら、その前にあらかじめセットしておけばいいだけだ。ここまで言えば、流石
に分かるよな、燕?」
「まさか……さっきの試合……」
燕がすぐに思い浮かべたのは侍&ナイトとの試合。
ストレンジャーズが棄権したので、ほんの1つ前を遡るだけだ。
最初から一貫された違和感を感じさせない試合運び。
相手を分断して、厄介な義経を海斗が引き受け、冷静に残ったほうを撃破する
という筋の通った作戦だった。
だからこそ、クリスからしばらく逃げ回っていたのは迎撃のクナイでワイヤー
を張るための伏線だという言い分を鵜呑みにして、今まで自然に信じて疑おう
ともしなかった。
だが、由紀江とあそこまで上手く渡り合う能力を持ちながら、あんな計算しつ
くされた仕掛けを駆使して、慎重に戦いを進める必要があるのか?
それこそ後には決勝が控えている状況で無駄な体力消費は何のメリットもない。
だとすれば、他に目的があったという結論に辿り着くのが至当。
決して穏やかとは言えないクリスの攻撃を避けつつフィールドを大きく逃げま
わりながら、予定通りのダミーのワイヤー作戦を演じるために正確にクナイを
放ち、尚且つ誰の目をも欺きながら陰で決勝での決定打となる数え切れないほ
どの爆弾を設置していった。
いくら隠密行動のプロでもその難易度は計り知れない。
だから海斗も挑発をしてまで義経の気を引いておく必要があったのだ。
それは義経を留めておくだけでなく、英雄の本気の斬撃を引き出しかわしてみ
せることで一種のパフォーマンスとして観客の目をも逸らすため。
確かにフィールドはリセットされないし、トラップを仕込んでおいてはいけな
いというルールはどこにもない。
準決勝の段階でもはや決勝を見越して、ここまでの下準備を完成させた。
この事実だけで計り知れないチームだ。
十分に只者じゃないことは理解していたはずなのに……
「ここまでだったなんてね……。」
燕は目の前の爆発を眺めていることしか出来なかった。
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熱い風が李の肌を凪ぐ。
自分をも巻き込む大規模爆発の威力をひしひしと感じていた。
「ふぅ……」
爆発といっても直接ダメージを与えることが本来の目的ではない。
由紀江の体力、防御力など未知の要素をいれれば、作戦成功の確実性が失われ
てしまうからだ。
わざわざ広範囲の床に爆弾をセットしたのはフィールド破壊のため。
つまり狙うところは場外に出すことだ。
だからリスクを負ってまで由紀江を疲れさせる必要があった。
当たりさえすればダメージは関係ない。
回避できないようにしなければならなかった。
李は爆発前に放ったクナイから伸びたワイヤーに左手で掴まって、ギリギリ場
外に出ないよう、その体を支えていた。
これで先にフィールドアウトした相手の負け……
「……まさか!」
「はぁ、はぁ……」
勝負は決していなかった。
「おーっと!決まったかのように思われたが、黛選手なんと刀を足場にして生
き残ったーー!」
まさに咄嗟の行動。
由紀江はボロボロになりながらも刀を地面に突き刺し、その柄を足場にした。
「行きます!」
右足で刀を踏んで李のほうへ移動する。
同時に左足で刀をはじきその手に構える。
一瞬すぎてまるで武器をとり宙を蹴ったかのように見えているだろう。
「予想以上であることは認めます……が!」
李は空いている右手を伸ばすと、袖から鎖が飛び出した。
それは直進してくる由紀江の足を正確に捉える。
「くぅ……」
「残念ながら私の得意分野です。」
普段の由紀江ならかわせただろうが、今の突進も捨て身のようなもの。
このまま鎖が完全に絡まればそのまま落下で場外負けだ。
助かる道は……ない。
「助からないのであれば……はぁっ!」
「何を!?」
由紀江はあろうことか刀を投げた。
その矛先は李をつなぎとめる命綱
ワイヤー
。
本当ならクナイで迎撃するのは造作もないこと。
(しかし、今は両手が塞がって……!)
右手は相手を追い込む鎖、左手は自分を守るワイヤー。
どちらも離すわけにはいかなかった。
(刀がワイヤーを切断し、私の足が地に着くのが早いか……!)
(鎖が巻き付いて、私の足が地に着くのが早いか……!)
決着はわずかな差でつく。
そして、ほぼ同時に二人は地に落ちた。
活動報告とか見てくれたら、嬉しいなって