長い死闘は終了した。
会場がざわざわとざわめく。
「なんとほぼ同時にフィールドアウト、どちらのほうが先に落ちたかはこちら
では判断できません!」
「こんなことって……」
「………………」
海斗、燕も含めた誰もが驚いていた。
純粋に勝利を目指した二人の一進一退の攻防は目が離せないほどの迫力だった。
「流石決勝戦、かつてない接線を見せました!なんと勝敗の結果は映像判定と
いうことになります!」
「静初、大丈夫か?」
「はい、威力自体は元から抑えていたので。とはいえ、流石に少しは疲れまし
たけどね。」
「ああ、よく頑張ってくれたよ。ありがとな。」
「海斗、本当に私は大丈夫ですから。どうぞ。」
「……なんでもお見通しだな。」
「海斗の優しい性格は心から理解していますから。」
「はは、んじゃ行ってくるわ。」
「本当に相変わらずですよね。」
李は海斗の変わらない姿を見ながら、嬉しそうに呟いた。
「由紀江、大丈夫だったか?」
「海斗さん……怪我とかはないですから、心配してくださってありがとうござ
います。」
「あの時よりもかなり強くなってたな。もう俺じゃ太刀打ちできないんじゃな
いか?」
「そんな滅相もありません。海斗さんにはまだまだ遠く及びませんよ。」
「あれでも静初は組織の中でも凄腕だったらしいぞ。その静初が綿密に仕掛け
た作戦をあそこまで対処できるんだからな。」
「そうですね……。実際に手合わせしたので、十分に伝わりました。モモ先輩
とかとは違う強さを持っていらっしゃる方でした。」
実際、李は一つ二つの作戦を看破されても、次の作戦に瞬時にシフトしていた。
「準備が出来たようです、今からあの大画面に表示されるVTRに優勝チーム
はゆだねられました!」
「お、いよいよか。これで負けたらもうしょうがないな。自分の出来ることは
やりきった。」
(できれば勝って阻止してやりたかったが……)
大画面にはあの戦闘時の様子の二人にズームして、スローで流されていた。
ごまかしの効かない映像を全員が見つめるなか……
二人の足は確かに同時に着地していた。
「これは映像判定でも判断しがたいですが……」
「同時じゃよ、寸分違わず全くの同時じゃ。」
傍らで見ていた鉄心が言う。
鍋島やルーもうなずいた。
「同時……ということは引き分けでしょうか?」
「これ優勝はどうなるんだ?あの二人にこれ以上無理はさせられないぞ。」
「うむ……流石にワシもこんな稀な事態は予想しておらんかったからのう。」
「ん〜、ここまで拮抗するのは誰も予測できないよねん。」
不測の事態に会場も動揺し、成り行きを見守っている。
「じゃあもう優勝者なしってことで、賞品とかエキシビションとか諸々のこと
は……」
「ちょっと待ったぁーーー!!!」
声を張り上げて、フィールドに飛び降りてきたのは百代だ。
海斗はにやにやと笑う百代を見て、嫌な予感をひしひしと感じていた。
絶対に不吉なことを言い出すだろうと。
「観客もこのままでは不完全燃焼だろう。無論、私もな。エキシビションはす
ぐに行うぞ、さっさとそれを直してくれ。」
半壊のステージを指して言う。
「じゃがのう……こればかりは判定で選ぶわけにもいかんし、勝者が決められ
んからのう。」
「よく見ろ、じじい。ちょうど二人生き残ってるじゃないか。」
「むぅ?」
「おい待て、それはもしかしなくても……」
「松永燕に、流川海斗。実力的には申し分ないだろう?この三人で三つ巴のエ
キシビションマッチを行うぞ!」
百代の言葉に答えるように観客席から歓声がとび、会場全体が震えるほどのか
つてない盛り上がりを見せる。
完全に他人事だと思いやがって……
「ふぅん、私はオッケーだよん。」
「お、流石燕。話が分かるな。」
「私も元々モモちゃんとは一度本気で戦いたかったしね。」
「ははは、私としても大歓迎だ!早速、死合おうじゃないか!」
「ちょっと待ってくれるかな?私も本気の本気、平蜘蛛を使うから準備させて
頂戴なっ!」
そう言って、腰につけていたモノを取り外す。
そこから取り出された金具をまた腰で組みなおしている。
まるでその見かけは変身ベルトのようだ。
「松永の機械の力をとくと見せてあげるっ!……装・着!!!」
途端にまぶしい光を発する。
その中から現れたのは……
「準備おっけー。んじゃ、始めようか。」
黒いぴったりとした戦闘服に身を包んだ燕だった。
右手にはいかにも機械な仰々しい手甲が装備されている。
「それが平蜘蛛……」
「モモちゃん、一緒に遊んでた時間は本当に楽しかったよ。」
「いきなりどうした?」
「……ふぅ。川神百代、とある方の依頼で試合で負けてほしいんだってさ。松
永の家名のため、お仕事させてもらうよ!」
「ほぅ、面白い。来い、全力で受けて立ってやる!」
「ちょっと待て。」
「お?」
「おりょ?」
まさに一触即発の空気だったところに海斗が割り込む。
「なんだ海斗、てっきりまたごまかして回避するものだと思ったが、なかなか
にやる気じゃないか。」
「ちょっと事情が変わった。そんなもん見せられたらな……」
(あの武器……思った以上にまずそうだ。)
「ふふ、面白くなってきたじゃないか!!」
3人がフィールドに立つ。
「始めようじゃないか、真剣勝負を!」