真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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2-S新メンバー

―2-S

転校生たち3人は色々な意味で歓迎されていた。

 

 

「ヒュホホホ。英雄というからにはそれなりの力を見せてもらわんとな。」

 

 

不死川心がそんなことを言う。

プライドの高いSクラス、ましてや全校生徒の前で4位以下なら退学でいいな

どと大きな態度をとっていたら目の敵にされるのは当然だ。

 

 

「というわけで弁慶、私と決闘しなさい。」

 

 

早速、血気盛んなマルギッテが勝負を仕掛ける。

だがそんなやる気満々なのに対して、弁慶はダルそうだ。

まぁ、ずっとこんな調子なのだが……。

 

 

「じゃあ、戦うのは面倒くさいから……私が錫杖で軽く叩くからそれで動かな

かったらそっちの勝ちでいいよ。」

 

「いいでしょう、来なさい。」

 

 

マルギッテはトンファーを構えてしっかりと防御をかためる。

数々の戦場を生き抜いてきたそれは堅牢のごとき防御だと自負している。

余裕の表情は崩れなかった。

 

 

「そぉい。」

 

「な……うぁっ!?」

 

 

しかし振るった一撃は防御の上からマルギッテを廊下まで押し出した。

流石の弁慶、完全なパワータイプである。

マルギッテはトンファーを握った手に痺れを感じていた。

そして、弁慶の実力を確認したのだが同時に……

 

 

(そういえば、前に海斗にトンファーを破壊されるほどの攻撃をくらったとき

は全く手に衝撃を感じなかった。もしかしなくとも、海斗はあんなときまで相

手のことを気遣っていたのだろうな…………って!私は何故こんなときまで海

斗のことを考えているんだ!)

 

「そんなに強くやったつもりはないんだけど……。」

 

 

その場にしゃがみこんで悶え苦しむマルギッテに声をかけるのだが、乙女の胸

の内など覗けるはずもなかった。

 

 

「次は義経の番だな!義経は自由研究として多摩川の生態調査をしてきたぞ!

皆で地球環境について考えていこう!」

 

 

しーん

 

 

「……あれ?どうしたんだ?」

 

「ったく、くだらねぇぜ。所詮、俺とこいつらは交わらない存在。俺は今一度

問おう。この時間に何を求めるのか。」

 

「あとでカイトのとこ遊びにいこーっと♪」

 

 

S組はさらなるメンバーの加入で独特な人材が一層増えていた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「よし、2-Sに行くか。」

 

 

放課後、言い出したのは大和だった。

 

 

「お、あの弁慶を見に行くんだな。俺様も行くぜ!」

 

「いや少しでも人脈を広げとこうと思ってな。挨拶は基本だろ。」

 

「ガクトはほんと考えが分かりやすいよね。」

 

「とかいって、モロお前も行く用意してんじゃねぇか。」

 

「ぼ、僕はただ英雄のクローンとかに興味があるだけで……」

 

「出たよ、むっつり。」

 

「むっつりじゃないよ!」

 

「ほら、騒いでないで行くぞ。」

 

「お前ら元気だなぁ。」

 

 

コントのような3人を見て、本を片手に海斗が呟く。

読んでいる本は大和でも知らないようなマニアックなものだった。

 

 

「何言ってんだ、流川も行くんだよ。」

 

「は?」

 

「お前なくしてはこの作戦は成功しない。とにかく頼む、来てくれ。」

 

「いいけどさ……。」

 

 

海斗は本にダックスフンドを模した栞を挟んで席を立つ。

仲間に頼むと言われたら断れないのも海斗の優しさだった。

 

 

「海斗が行くなら私も。」

 

「アタシだって行くわ。」

 

「自分も行こう。」

 

「…………ああ。」

 

 

海斗が動くと後に京、一子、クリスが続く。

結局7人で2-Sに向かうことになった。

が、教室の扉の前にはマルギッテが立っていた。

 

 

「検問だ、ここは通れないと知りなさい。」

 

「よし出番だ、流川。」

 

「いや意味が分からんが……」

 

「海斗……!?……来てくれたのですか。」

 

「よし今のうちに通ろう。」

 

「なんと単純な……しょーもない。」

 

「かといって、アタシも気持ちが分かるから何も言えないわ。」

 

 

見事潜入に成功したのだった。

 

 

「あ、流川君!わざわざ来てくれたのか、どうしたのだ?」

 

「いや俺は特に。付き添いだ。」

 

「君が流川海斗ね。私は弁慶。海斗って呼ぶよ、よろしく。」

 

「ああ、よろしくな弁慶。」

 

「随分と強いらしいねぇ。ずっと義経が海斗のこと自分のことのように自慢す

るもんだから、相当なものを見たんだと思って。」

 

「いや別にそんなことは……」

 

「海斗は強いです。」

 

 

いつの間にかやって来たマルギッテが海斗の言葉を遮るようにかぶせる。

 

 

「海斗なら先程の勝負も簡単に勝利すると知りなさい。」

 

「へぇ、それはちょっと興味深いかもね……。」

 

「全然話の流れについていけないんだが。」

 

「んーとね、この錫杖で軽く一発叩くから、それで動かなかったら勝ちってい

うゲーム。じゃあ、やってみようか。」

 

「俺は立ってるだけでいいのか。まあ、こっちから殴るとかじゃなければ特に

問題はないか。」

 

「それじゃあ、ぬるっといくよ。」

 

(あんまり強そうな感じはしないけど、主(あるじ)があそこまで言ってるし……。とり

あえず少し強めでいっとこうか。)

 

「そぉい。」

 

 

やる気がないように見えて重い一撃。

そんな弁慶の弁慶の大振りは……

 

ガキン

 

4人の乙女たちによって海斗に届く前に止められた。

武器を出している者もいれば、徒手で前に出た者もいる。

 

 

「……咄嗟に防いじゃったわ。」

 

「私も反射で体が動いてしまいました。」

 

「同じく。愛する者のために。」

 

「自分としたことがゲームだということを忘れていた。」

 

 

口々に言い、次々と我に返る面々。

一子もマルギッテも京もクリスも総じて本能で動いていた。

 

 

「……えっと、この場合仕切りなおしか?」

 

「いや、よく分かったよ。」

 

「へ?」

 

「強いかどうかはともかく、人気者ってことがね。」

 

「まぁこいつらが優しいだけだけどな。」

 

「さっすが、主が見込んだだけのことはある。」

 

 

弁慶は満足したようにぐいぐいと川神水を飲み干した。

そして、よく分からないポーズを決めている少年が……。

 

 

「最後のそいつが那須与一か。」

 

「俺に関わるな、不幸になりたくなければな。」

 

「……与一は病気なんだ。」

 

 

弁慶が呆れたように言う。

病気は病気でも中二病というやつだった。

 

 

「ぐはっ、なんか古傷が……」

 

「大和の黒歴史だもんね。」

 

 

同じく火の粉が降りかかったのが一名。

過去は変えられないのである。

 

 

「与一はこんなんだが、いいやつなんだ。仲良くしてやってほしい。」

 

「まぁ、難しいとは思うけどね……」

 

「はっ、俺は独りでいい。」

 

「そんなこと言うな。」

 

「あん?」

 

 

口を出したのは海斗だった。

 

 

「せっかく一緒にいれるのにわざわざ独りでいようとすんな。」

 

「その言い方……もしやお前も俺と同じ特異点か!?」

 

「確かに海斗の過去なら相当特殊かもね。」

 

「常夜のことか?」

 

「それがお前のいた組織の名か!?」

 

「組織……っていうか世界?」

 

「まさか命を狙われたりも……」

 

「……そりゃあっちでは常に教われてたけど?」

 

「おぉ、こんなとこで同士と巡り会えるとは。海斗だったな、これも運命のい

たずらかもしれねぇな。よろしく頼むぜ。」

 

「お、おう……。」

 

 

いまいち理解していない海斗だったが、話はがっちりと噛み合っていた。

まぁ、それだけ海斗の生きてきた世界がアンリアルだということなのだが。

 

 

「与一とも仲良くなるとは驚いた……。」

 

「流川君はやはり凄いのだな!義経はただただ感謝する。」

 

 

新たにSに加わった英雄たち。

それはクローンというだけでなく、同じ学園の仲間として十分に個性的で。

これからまた波乱の……

 

 

「なんだこれ?」

 

「それは多摩川に来た野鳥の調査で……」

 

「真剣(まじ)で?これ一人でやったのか?凄いじゃないか、義経。」

 

「本当か!」

 

「ああ、写真入りとかで分かりやす……あ、このカルガモ可愛すぎる。」

 

「そうだろう!で、こっちは……」

 

「あー、海斗ああいうの好きそうよね。」

 

「動物なら犬猫に限らず、魚も鳥もだからな。」

 

「私だって人間という動物なのに。愛でてくれていいんだよ?」

 

 

本当に波乱の種は尽きないのだった。




移転元が使えなくなりました……
タイトルは思い出せないので仮でつけてます
後で変えると思います
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